不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計 作:何処にでもある
最後の中間テストと人攫いとの遭遇です。
「今日は頑張るぞ!」「一番楽そう」「俺も輝きてーぇ」
「絶対一位になるわ!」「つまらなそうだな」「教養とか自信ないな…」
「今日は一番とみんな気合い入ってるなー」
(やっぱり一月も経つと元々何処の国に住んでたのか分かって気合い入るのかな?)
学校に付属してる草原に建てられた簡易的な天幕の下、その前に俺たち生徒は立っていた。
目の前に桃色の長髪と眼にメガネをかけた、縦セーターと白衣を着た女性が喋る。
「こんにちはー!今日は教養と錬金学の授業にしてテストの最終日です。やる事はこれまでに比べると簡単かなー?なんと皆さんが今日に至るまでに作ったり見つけた魔道具を魅力的に発表するだけ!ね、単純でしょう?」
教養のアニー先生、偶に真っ白な鳥の羽根っぽいのが帽子から飛び出てくる人だ。
神国の「司祭の階級」産まれの特徴だな。絶対に覆らない階級社会にする為に、不可逆の肉体改造をして翼を生やすんだよな。
「なんの期待をしてるか知らないけどさ、俺とアニーが教えてるのはどっちも地道な積み重ねで出来上がるんだ。事前の用意が全てな以上、このテストも準備がしっかりした奴が勝つ。なに?発表するものを持ってない?おやおやしかも大半が持ってないじゃねーか」
真っ白な長髪とおでこに白衣。何かと質問する機会がある錬金学のフラン先生だ。
ここにメスや縫い目とかあればあっという間にマッドな見た目になりそうだな。
「それはいけませんねー、そうだ、発表出来ない子達は失格にしましょう!」
静寂が訪れた。生徒達の背中に冷や汗が流れているのが空気で分かる。
「……もちろん冗談ですよ?それは次からです。今日は初めてなので、皆さんには特別にこの草原を探索する機会を与えます。制限時間は45分、それまでに発表に使えそうな魔道具を見つけてください!」
「どれを選ぶかはお前ら次第だ。良い物は評価を得易いが、代わりに複雑でプレゼンする為の性能確認に時間がかかる。しょーもないものは評価もしょーもないぞ」
「そしてこれは教養のテストです。目上の私達に失礼しないマナーを考え、それをやって下さい。思い遣る心があれば自然と満点は取れますよ!」
(…ざわめきが消えた。人が話してる間は喋らない。もう始まってると判断したんだね…私も気を付けないと。少なくとも忘却によって各国の独自文化の作法は点数外だろうし、本当に思い遣りが大事になる)
このテストはなぁ…発表自体はさっさとやれば問題なく終わるんだよ。
代わりにこの草原に散らばった魔道具と生徒達が危ないんだよね。今のこの草原は深淵よりも高価な物が転がってる宝石草原も同義だからな。
「では発表したい方はあそこの台まで!終わったら手伝うのも帰って休むのも自由ですよー!では他の皆さんは探しに行ってくださいねー!」
「分かったなら散った散った。言っとくけど魔道具はこの草原にしかないからな?森や学園の方には行くんじゃねーぞ?…あ、もし助けが欲しかったら空に球の魔法を撃て!これだけは覚えとけよー!」
(おーみんな走ってく。宝探しかー、リーロに言われて持ってきた奴あるし私はやらなくて良いかな?)
戦闘もあるけど、あるとこの発表は素早く終わるからな。一石二鳥の作戦は上手くいきそうだな。
「フラン先生、アニー先生、自作の魔道具の発表をしても宜しいでしょうか」
「お、早速だな。お前は…サーシャか。予想して準備してるなんて感心だなぁ、他が帰るまで幾らでも紹介しな、その山盛りの魔道具、全部気になるし」
「はい、サーシャさんですね。先生達は30人同時に聞けますので、待ち時間が発生するまではご自由やってみて下さい」
「はい、では早速やらせて頂きますね」
(…とは言っても、どうせ長時間はダレるって減点は避けたいよね。分かりやすく明白に、尚且つ聞き取り易い声と発音で…喉の古傷がハンデだな)
実際ゲームでもここはサーシャの点数は上限よりも下に限界が設定されているらしいしな。
襲撃で満点取るには限度があるんだよ。これはもうどうしようもない事だ。
(魂との会話関係が無理だから…「混合時間採取機」は魅力的じゃ無さそうだし、昨日見つけた奴で良いかな)
「今から「真空下における魔力圧縮による爆発とその力の利用」について、王都魔法学園1年生サーシャが発表します」
「…真空?」
「魔法を使わない爆発…?無属性しか出来ない筈だろ?」
「コチラをお待ちになった上で魔力視を行いください。今から『通信』の魔法で資料をお届けしますね」
(あ、造語の解説もしなくちゃか…なら即席で資料を作るのが早いな。タイプライター型魔力通信機1号と2号と3号、君達がここに居て助かったよ)
なんで通信なんて戦闘関係以外も持ってきちゃったんだサーシャ。さては選ぶのが面倒になってまとめて持ち出したか?
「…何だこの挙動。注いだ俺の魔力が打ち込みと一緒に文字に加工されて…どうやってリンクしてるんだ?」
「うわすっごい!自分の魔力じゃなくて、相手の魔力を動力源に!?こっちの方が気になりますね…!」
「何だこれ…魔力視してるのに魔力の糸も無いし…どうやって情報を伝えてるんだ?この俺が、全く分からないぞ…!?」
「はいではお手元の資料をご確認ください。魔力、空気、光のない状態、属性は問いませんが真空の中に急速に魔力を入れると…」
(通信の方はごめん無理。魂の波長で周波数を保護した波で伝えてるだけ。魔力はインクや紙や送受信のアンテナ代わりとかにしか使ってない奴なんだよ。魔道具かは怪しい品だから発表はねぇ…)
研究者に対してかなり殺生な諸行を考えつつ、サーシャは発表を進めていく。
そして話の流れで実際に発射してみる事になり、直径5mのメカメカしい砲身に俺を突き刺しレバーにして起動した。
エンジンを人力で動かして空気中の魔力をエンジンに取り込ませ、それを元に爆発。その初動をやれば後は勝手に発射される。
俺が制御して一発撃てば止まるようにしてはいるが、理論上MMの制御がなければどんどん発射速度が上がるからな。弾を込め続ければ最終的にレーザーになるんじゃないか?
ギョォォォオ──……
「では空中に向けて試し撃ちしてみましょう」
ヒュッ………───ドッ!!!
(うわ、初運転が成功したのは良いけど威力やばっ…もしかして本当にとんでもないもの作っちゃったかな)
ザアアアーー!!
遅れてやって来た爆風を
全方位水の壁が有るのに、思わず髪を抑える風圧ってなに?ガチでやばいもん作っちまったか?
大砲の方の実射はサーシャも俺もこれが初だったが、遠目でも500mは爆発していたし…一夜のひらめきで作れていい物じゃない。
「…いつから俺は戦略兵器の紹介をされてたんだ?」
「武器の発表として実演するのは確かに効果的で分かり易いですが…これって誰に向けて使うものなのでしょうか」
「人間だろ。深淵の魔物に使うには火力がデカ過ぎるし……これを持ってる奴の側には居たくねーな。爆発に巻き込まれなくたって、風圧だけで街一つ崩壊させられるぞ」
「今のは水球を弾丸にした最弱威力です。仮に無属性なら今の一万倍に、火属性なら100倍になります。そしてコイツは初動は3秒に1発撃てて、まだ試してませんが理論上1000発までなら連続で撃てます」
「おい、ホラで済ますなら今の内だぞ。ほら、冗談だって言え。……言えよーぉ…」
「Ms.トレビアーン?世界でも滅ぼすおつもりですかー?」
「そしてこれと同じ仕組みの魔道具で人々の生活に役立てる方法もあります。これを変形させると…はい」
(さーて、旗色悪いからここからは大嘘付きになる時間だ。発射モードから待機モードへ変形させる機能で騙くらかすのに挑戦だ)
大砲に俺を根本の溝に突き刺して、時計の針を巻き戻すように回転させる。
するとそれに応じて大砲の根本が変形して六角形の土台が出て来て、砲台の先に蓋がされた。
全体としてはボルトみたいになったな。そこはかとなく発電所っぽいぞ。
「名前を「
(嘘だよ。ただ空気中の魔力を集める機能を使ってるだけだから、そこまでのエネルギーにはならないよ)
「おお、なんだよしっかり平和的な利用法も考えてるじゃねーか!これで危険性と利益の両方をしっかり示したな」
「良かったー。一ヶ月だけでとんでもない兵器を作る生徒なんて居なかったんですね」
「アニー先生、目を逸らすな。コイツはガッツリ作ってる」
「魔法を扱うのに自分の魔力を使わなくていい。考え自体はMMと同じです。ですが私は、そこに一つ付け加えたんです。新しく莫大な魔力を使える様になる炉心を。あらゆる人が魔法を楽しめる様になる魔法の竈を」
(勢いで誤魔化せ絶対にバレるな…!魔法の竈って何だよ。ここまで来たらそのまま終わらせたい!)
昨日の今日だけで実用化はできてないからな。将来的に出来る予想は立ててるけど、それは今じゃない。
バレる前に終わらせるのが一番良いな。
「それがこの理論で、私の魔道具です。一つだけでは壊すことしか出来なくても、みんなで手を取り合えば新しい物を創り出せる。それがこの炉心で、国家規模でやらないと効果が薄いやつです。……この子を兵器にしたくないならサーシャ、サーシャをお願いします。以上、発表を終わりにします」
(もう後半ボロボロだったな…もう今回はダメだ見捨てよう)
最後に一礼し、大砲もとい「
本人としては上手く発表出来なかったと感じてるだろうけど、別に失敗しても致命傷にならないから問題ないぞ。
自分で作ってるからこそ言えることも言えたしな。点数は悪くないだろ。
「…癪だから本当に魔力の竈作って終わりにしようか」
(なんだか癪だなあ、嘘吐いちゃったからね。もう無の力以外を魔力に変える方法探そう。力を水にするのは普段からしてるし、その逆をやれば……)
あ、核融合と核分裂の発想と同じこと考え始めた。
魔法の時点で物質化は出来てるから、後は勢い良く回転させて…それだと熱にしかならないか。
あれ、案外難しい問題か?
「…ティンと来ない。ここ最近は調子良かったんだけどな」
(考えるほど無理な気がする…思えば魔力って世界中にあるけど、それを作ってるものは一つも無いよね…あれ?もしかして将来魔力が枯渇したりする?)
するよ。実際続編の「不遇水魔法使いの禁忌術式─2─」ではその問題の解決で新主人公のシーシャが奔走してたし。初代の10倍売れてる超人気タイトルだったよ。
あー懐かしい。言ってて思い出して来たわ。
サーシャの作ったのが大体残ってて、マジックパンクとでも言うべき有り様の1000年後の世界でな。かく言う俺も2から1に入ったタイプなんだよ。
時代が進んでただけある爽快さだったなー、懐かしい。
「…考えても仕方ないかな。誰か手伝いに行こう」
(早速魔力枯渇問題に挑戦しても良いけど、MMとの会話手段の方が優先かな。ダルク、ヘル達、リサ…よし、ダルクを探しつつ道すがらアドバイスだ。大きな爆発で驚かせたお詫びもかねていこう)
そうと決まればサーシャの動きは速い。水滑で効率よく移動しつつ、魔力視で周囲の魔道具や魔法使いの位置を確認していく。
そして一番近くの魔法使いに立ち寄った。
「おーい、何か困ってる事……居ないな」
(あれ、豊富な魔力が見えたんだけど…そういう魔道具かな)
残念ながらそこには誰も居なかった。代わりに会ったのは一枚の羊皮紙だけだ。
「これは…なになに?
(…魔道具を見つける為の問題文かな…よく見たら他にもあるし、多分そうかな。存在証明って奴か。ふーん、普通に面白そうな宝探しじゃん。私も忘れてくれば良かったな)
──説明できるからしようね
「心の声を聞く様に、内密にね」
残念だけどこれはズィーベンの時魔法…本名がクエストって奴の仕掛けだよ。
だからこれは問題じゃなくて、クエストが質問してるって状態の表現になる。
分かりやすく話し言葉にしようか。
クエスト「ねぇねぇ、戦争って起きるかな?」
実質こんな感じに書かれてるんだよ。
だから問題ではあるけど、どっちかと言うと質問なんだよね。これに書くと返事をしたって事になるから。
うん、察してると思うけど、終わりの時計塔の仕業だね。生徒達を支配下に置く為の戦略だと思う。
先に言うとこれの仕組みは──────
─────という感じだから、注意して進んでね。
──それだけだよ
「…先に時間の回収やろっと」
(羊皮紙を貸与で…あ、支配下に置けた…とりあえず石から死に戻り用の時間を回収しよっと)
サーシャは時間の回収を行いつつ、道なりに魔力の多い場所に向かって行った。
辿り着いてもどれもが羊皮紙で、未だに人を見かけない。どうやら既にクエストの時魔法の影響下に入ってしまったみたいだ。
サーシャは探索に見切りを付け、空に向かって水球を複数打ち上げた。先生に助けて欲しいと伝える合図だな。
「うん、先生に来てもらった方が良い。みんな証明素材になってるみたいだし」
「おいおい…つれないこと言うなって…急いでないで…ま、座れよ…」
「…………」
(リーロ説明、聞いてた外見の特徴も性別も一致しない)
──コイツはゼクス、本名をアンサーと言って──
さっと説明し、ささっと戻した。流石にこなれてきたな。一瞬で出来たよ。
そう考えてる間にサーシャは、目の前のウェーブのかかった黒髪で片目隠しをしている男性の前の石に座った。
5月なのにマフラーをしてるのが目に付く相手だな。MMなんだろうけど、マフラーで死ぬとかどういう経緯なのか地味に気になる。
(…なるほど、2人体制か。どっちも初見殺し…死亡回数はさっきチャージしたから5回までなら大丈夫。で…助けは来ないな。気付いて辿り着く時間が
「はぁ…無言で座られちまったな…俺はズィーベンじゃないのに…」
「じゃあ答えようか。誰も居ないのは君達の仕業なんだね」
「あら…確信持たれちゃった…おじさん悲しいな…そんな決めつけよく無いよ…仲良くなろう…お互いに質問とかしてさ…」
「問題を出されると発動する。答えを解答
「え…ちょっと待ちなよー…どうやって知ったんだー…」
「それが周囲には遅延してるように見える。知ってる理由は私が未来を見れる物知りだから。だからこそ私の行動の全ての答えは、貴方を倒す為だ」
(そして「問題を出されてる」って条件があまりにも緩い。アンサーが理解できない行動は全て対象だ。だからこそ、私は全ての行動の答えを解説しながら倒す必要がある)
「うわあ…未来視かあ…すごいな…全ての答えに当て嵌められるよ…」
(実際は魔力視でマフラーに書いてある魔法陣から読み解いただけだけどね。そこまで言う必要はないか)
疑問に対して時間を奪う事で解答時間を増やし、不可解で対処できない問題は相手の時間を止めて後回しにする。
それがアンサーの持つ『推理』の時魔法だ。
ゲームだと使用する魔法を使う程移動範囲や速度の永続デバフが深刻になってたな。
この時限定のコマンドの「解答」を使うと敵AIが賢くなる代わりにバフが緩くなってて面白かったのを覚えている。
「でも…」
「未来視の由来は私のMMの固有魔法。持ってる理由は親の遺産。この学園の生徒なのに覚えてるのは水属性の抗魔性能の高さ。そして今──」
ガチャチャ、
「…なにこれ…」
サーシャがまごついてる相手の胸に秒針を当てて、「混合時間採取機」を…メーターのついたバケツ程度の大きさのタンクを秒針に取り付けた。秒針の先から採取し、俺を倒すことで多少物質として保ち易くする手法だ。
空気中から取ることも出来るが、時属性相手にこうして奪い取る道具にもできる。
最初は無防備な仕様がそのままだったのは有難い話だったな。
お陰でこっちが初見殺しを行える。
カチッ
「──貴方を突き刺したのは、みんなの時間を取り返す為だ。『貸与(劣)』、採取完了まで5秒」
「え…あ…あ…あああああぁ…疑問が消えていく…全て、全ての疑問が……」
プシュー…、
「ぐっ…完了」
(と言っても、取れたのは精々100人程度…誰のかも分からないし、停止した時間に囚われて、こっちから干渉出来ない相手を探すのも骨だ。タンクに収まらなかった3人分は私の方で預かったけど、時属性じゃないのに過剰に時間を持つのはツラい…!)
俺を伝って溜め込んだ疑問を全て採取し尽くし、足りなかった容量分はサーシャが自ら受け持った。
時魔法で奪った時間とは、丁寧に料理され取り込み易くした食べ物と同じだ。
今のサーシャの状態は食べ過ぎに近い。あんまり長く持ってると吸収して自分の時間にしてしまうし、そうなると返せるものも返せなくなる。
「あ…あ…やめてくれ…時間がないと解答を
「時間を使っての現在改変なんて、そんなの認めないよ。決め付けた解答に準じてその人が過ごした
サーシャが水球で相手の頭部を覆い、呼吸ができない様にする。
これで終わってくれたら楽なんだが…そう上手くはいかないよな。
だって、コイツらはペアで動いているんだから。
「いやだ…いやだ…なんぶくぶくぶく……!…『助けてくれーー!!クエストー!』」
「ねぇねぇ!なんで…って、こら!私はゼクス、貴方はズィーベン!手荒な呼び出しも呼び名も全部誤答だよ!」
「…ちっ」
(溺死に失敗した。理由は「なぜクエストは助けてくれないのか」「俺はここで死ぬのか?」と疑問に思って自分とクエストの時間を徴収。それで「自分は喋れて、クエストはここに居る」ことにしたか……面倒な相手だよ)
現在は変わった。サーシャはある程度離れた位置にいた事になり、アンサーとサーシャの間にクエストが居た事になった。
背は低く、橙色の短髪の女の子…の見た目なだけの30代の女性だ。王都の現代っぽいファッションだととても浮いている扇子のMMが目に付く。
『推理』の時間は終わり、サーシャとの敵対という問題への解答編が始まろうとしていた。
「ごめん…ごめんね…でもありがとう…この難問の答えが出せたんだ…」
「ねぇねぇ!本当に私が必要?あんな弱っちい相手、少しキュってすればイチコロじゃん!」
「無理だよ…相手は俺たちよりもずっと賢くて、物知りなんだ。未来を見れる相手なんて、過剰にやらないと殺せないよ…」
「本当?それなら…えいっ」
サーシャの前に羊皮紙が構成されて、視界を塞ぐ。顔を横にずらしても追尾し、秒針で殴っても跳ね返された。
その内容は「君は目の前の二人組に勝てるか?」と書かれていた。
「…だから2人いると面倒だったのに…指相撲なら大体50%だよ」
(さーて、復習だ。リーロの言った通り、どっちも厄介過ぎる相手だね)
紙は燃えて、その解答に準じて現在は改変された。
今から指相撲をすれば、その勝率は50%になるだろう。
"はい"でも"いいえ"でもない、平衡の答えだ。
「マジじゃん。私の『難題』が完璧に対策されてる」
「そうだね…だからここで俺たちは…奥の手を使わないといけない…難題書は精々視界封じにしかならないよ…」
「チチチチッ!!ムカつくなぁ…!雑種は大人しく純血の言いなりになっとけよ…!」
「どう思うかはそっちの勝手だけど、囚われたみんなは返させて貰うからね」
(『難題』の時魔法は問題を提示し、その難題の内容と解答で現在を改変する……)
難しい魔法なんだよな、『難題』って。
肯定はそのままに今を改変され、否定は逆転して今を改変するんだよ。
そして曖昧な難題や返答だと、どう改変されるのかを向こうが選ぶことができるんだ。
まさに夢の様な願成器具合だが、致命的な弱点もある。
それは"はい"か"いいえ"に分類できる解答をした者は全ての時間を奪われ、改変の為の燃料として過ごす事になることだ。因みに答えないのはいいえに分類されるぞ。
そうなれば最後、使われる時まで停止した時間に囚われる。
(兎に角、対処法は曖昧で規模を小さく。使われる時間は「学園のみんな」だ。大それた改変はみんなの寿命を減らすのと同じ。…それが通常の使い方をした『難題』の対処法)
「初歩的なことだ…君は俺たちに勝つ道筋は見えたのか?…『ここはもう君の死亡現場なのに』…」
「ねぇねぇ、『君は蘇らせたい人はいる?』答えないといいえと見做すから」
サーシャは竜巻の浮かしを捌き、闇魔法による影の手を水球を身代わりにしながら返答した。
「それなら夢の中にでも出しててよ。相手は…誰かを言うにはあまりにも今は時間が足りないかな」
「なにせ自分が死亡してないアリバイを証明しないといけないんだから」
(さーて、のらりくらりしつつ、相手の魔法を解き明かさないとだ…大変だぞぉ…!)
舌戦しつつ解析しつつ戦闘しつつ、3方向の頭脳肉体総合戦が始まった。
「階級」
商国は神様>>>>>>富豪>>>>>探窟家=商人=神職>兵士>その他>商品になった人と定めました。
帝国は帝王>>>神様>>>官僚=軍閥>民=外国人>奴隷と定めました。
神国は司祭層>>>>>>支配層>>>>>>>戦士層>>>>>>庶民共>>>>>>奴隷>>>>>その他>神と定めました。
その頃の王国は、王も貴族も民も、ふんわりと神様とお互いを敬いつつ過ごしてました。