不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計 作:何処にでもある
地味な事ですが、終わりの時計塔はタイムアウトと読みます。
──いる?』答えないといいえと見做すから」
「あー…クエストさん、君の両親と子供って言って貰いたい?」
「は、はぁ!?」
「残念だけどその為には後5400人分の時間が足りないよ」
「落ち着いて…未来のどこかで教える機会があったんだ…」
「何がどうしたらそうなるんだよッ!」
(これで通算100回目か…思えば長い付き合いだ。実時間は合計…10時間?…体感だともっとだし、一戦闘にしては長いかな…そろそろ決めたい所だけど、先ずは戻し作業からだ)
ああ、良い加減魂だけの俺も疲れ果て来た。この無限に続く戦闘も丁度キリ番だし、成功させよう。
ふぅ…よし、一つずつ丁寧になぞって行かないとな。
「君は「残念だけど昨夜も今朝も今も私は常にMMを所持していた。抵抗できない死はあり得ない」
「…なら「恨みも友情も恋愛もあらゆる人の縁は悪縁ではないよ。私は常日頃から研究に打ち込んでいた」
「……「その疑問の解答ははい、はい、いいえ、はい、いいえだよ。私は特別な生まれではなく、ただ才能だけは有った村娘だ」
「今からアンサーは「…急に未来視のギアが上がったじゃないか…どうなってるんだ…」と言ったけど、その答えは重点的に見ていたからだよ。戦闘時のパターンをしっかり把握するとか普通なるでしょ?」
(秒針で受け流し3回、後方半歩、受け流し16回前進しつつ回転…)
最早攻撃を見る必要はない。どこに秒針を振るえば当たるか暗記出来ているんだから。
変化自在の風も、無限に深い闇も、使い手の脳が限界になる。
だからこそ暗記で対処できるし、再現できるならこうして涼しい顔も出来る。
「…ズィーベン…はぁ、バレてるし本名で良っか…アンサー、コイツは確かに殺さなきゃマズいけど、私らだけでなんとかならないでしょ。兵士が要るよ」
「そうだね…囲んで殺さなきゃ…」
「だから出すよ、「ラプスの大隊」をさ。みんなへの報告とか一緒によろしく」
「…分かった」
(そろそろ…もうちょい近くで…)
クエストが扇子で宙を切ると周囲一帯に裂け目が出来た。
そこから、胸に時計の文字盤を付けた兵士が10体降り立つ。敵の増援であり、一体で一つの魔法使いの小隊と並ぶ実力の
真っ当にやると学園の卒業した魔法使い80人分。
その作り方は素体となる魔法使いに79人の魔法使いの時間を
うん、少なくともSRPGで出しちゃいけない戦力差だな。
「あっはっはっは!!それじゃあ全員撃てエッ!!」
全方位から極彩のビームがサーシャを襲う。辺りの大地を抉り、酷い土煙が辺りを覆った。
仮に
事実、防御した時はそうなった。
「はーっ…やーっぱこれだよ。面倒なことが一切ない暴力装置!あー、私こっちのMMが良かったなー」
「それは無理だ…固有魔法は向き不向きが激しい…特に俺たちのは骨董品のMMだし…今時のもの程強制力はない…」
「知ってるよー。だから愚痴も言いたくなるじゃん。だって私の奴タイマン限定だし、もっとばあーん!とかどぉーん!ってやりたかった!」
「そう、じゃあもう10年は叶わないね」
「は?」
ゴッ…、
(戻し終わり。ここまで3分で、ここからお祈りだなー…当たりは付けてるけど、細かい数値が…)
クエストが振り向くより
1秒にも満たない出来事であり、早送りされた動きであり、今のサーシャが周囲に被害を出さない上で最も火力の出る方法だ。これでも気絶だけで死なないんだから、ボスキャラってのはタフだよな。
「え…物理?…魔法使いだよね?」
「水魔法よりも時魔法よりも、そしてこの大砲よりも、殴るのが一番楽だったのが悪い」
「…でもどうやって?…確かに逃げられない程の面制圧だったはずだ…」
(残念だけど…1人だけになった以上、応える義理はないんだよね)
色々試した結果なんだが、一応金属であり割と重い俺で殴ると体内がかなり揺れるんだよ。
だからここら辺で脳を揺らして気絶させると楽だったんだ。
気絶させれば周りの兵士に命令することもないしな。
(既に『推理』も『難題』も解析し終わった。疑念を抱いた時間だけ遅延する魔法、成果を得る為の時間を使った事にして、一瞬で成果を得る魔法…ややこしい使い方をしてるだけで、どっちも根本は分かりやすかった)
この戦闘で最初の周でやったのは、出来るだけ安定した死に戻りの回数チャージを探すことだった。『貸与(劣)』ならもうあるからな。
飴玉に該当する羊皮紙を出させる方法を見つけ、時間を奪う相手も丁度近くにあった「
無駄にデカくした甲斐が有ったというもんだ。魔力は生産出来なくても時間を取り出す炉心としては十分に働いてくれたな。
(
3回目に殴って気絶させてどっちも打倒するルートを確立した。
4回目に死に戻りのチャージを確実に出来るルートを確立した。
5回目で徹底的にこの2つの魔法を解き明かした。
そして今に至るまでの19回を死に戻り回数の復活に、75回を使って問題を解決に当たっているのだ。
「…なんだよ…急に黙るなよぉ!!」
(疑念加速、不敵に微笑んで得体の知れない感じを…70、80、99…来た、加速率100倍!! リーロ!)
ほい来た。
──難題「停止した時間の中で動ける魔法か魔道具」 これで
(上等、この魔法の本質はどんなことも魔法だけで出来るようにする効果だ。それさえあれば自力で何とかする)
加速した時間の中で研究を再開させたサーシャを見つつ、魔法の維持をする。
…うん、これが今取り組んでる問題なんだ。サーシャはこの戦闘で二つの魔法を覚えた。
『推理(劣)』は『推理』の効果を反転させる効果だけ発揮し、
『難題(劣)』は時間の消費も自動願成効果も消え、多少の魔力を使って「難題として提唱できれば理論上出来ることだけは分かる」肯定返事の一部分の効果だけ残った。
その二つが揃った時、サーシャは真っ先にやったのが今の研究環境の作成だ。
「停止した時間の中で動ける魔法か魔道具」を難題として出せるか確認し、出来たので理論上作れるってことで製作に踏み切ったという訳だ。
死に戻りで戻れる最大10分までの7分を100倍にして、一回700分の時間を確保して研究する。
(&@: @,);!:@,”—)?,@:&,?/&/@,);!/@/(,!……)
「ひ…ひぃ……なんだよその魔法陣はぁ…」
さて、俺が終わらせたい理由はもう分かるだろう。
サーシャは俺を加速した時間から切り離し、100倍になって聞き取れない思考と訳のわからない複雑な魔法陣を周囲に展開させて実験を進めていた。
俺はまだ10時間程度しか経ってないが、サーシャは既に一ヶ月以上この戦いで研究している。眠りも休みもしないで一月以上だからな。
何故かゲームよりも研究能力が高くなってるサーシャが一ヶ月だ。かなり苦戦してるのは間違いない。
そうしてこの場は、恐怖で立ち竦むアンサー、気絶したクエスト、指示がないからか自動送還されていく兵士達、魔法の維持だけしてる俺、実験してるサーシャがお互い干渉しないまま6分経過した。
うーん、今回もダメだったかな。そろそろ自殺用の魔力暴発の準備するか。
そう考えていた頃である。
ドドドドドドドドンッ!!
脈略のなく、サーシャは100倍の加速でアンサーを何度も秒針で殴り木に叩きつけ、気絶させた。
同時に加速したサーシャの思考が遅くなっていく。時間の加速に使っていた疑念を調整し、出力の半分を遅延に使って均等にしたのだ。
(!>|£\+]#~!.£ ,>\+]%|€,───リーロ、お待たせ。漸く難題
おお!やるんだなサーシャ!今、ここで!!
もう倒せると分かった上で態と戦闘を長引かせなくてもいいんだな!!
これ以上俺のサーシャのキル数を増やさなくていいんだな!!!
「じゃあ…解説しよっか。魔法自体は研究開始から5回で作れた。でもこの魔法は兎に角大量の魔力が必要で…私の全魔力の1億倍必要だった。洗練させればいけるかと思ったけど、100分の1が精々だったから、研究の方向性を変える事にした」
サーシャは俺に向けての解説をしつつ、時間を吸い取って完全に錆び付いてボロボロになった「
これでもサーシャが周囲の水分を排して錆びつきを遅らせていたのだが…それでも一万年分の死に戻り分の時間の吸い取りは致命的だったな。
「魔力を工面する方向に。でもそれだけの魔力を周囲から集める魔法は難しい。枯渇問題もあるしね。だから魔力を生産する魔道具の開発をする事にした。20日くらい頑張った気がするかな」
サーシャの錬金はこの研究により喋りながらでも作れる領域に達したらしい。
全身の錆も含めて光り、光が収まると、大砲の残骸は手の平サイズの大きめなボルトとなった。
複雑な幾何学模様が仄かに蒼く光っていて神秘的だな。魔力がこれから漏れ出てるのが異質感を高めてるわ。
「大変だった。自力で魔法陣の理念、骨子、構成を作らないといけなかったんだから。でも、聞き齧った…かがく?の知識のお陰で苦労はしなかったかな。面倒だったけど」
(さて、性能を上げる方策は可能な限り考えた。後は実際の挙動の確認をしつつ、実態に沿う方策を採用するだけでいい)
すげぇ…手の平のビッグなボルトが再錬金で急速に変形してるし。首にかけてた
うん、次回作のメインシナリオの主軸の解決策創り出すとか、今のサーシャはどこへ向かってるんだろう。
ゲームより賢いにしても限度があると思うんだけどな…それで未だに解決してないMMとの会話難易度高すぎでしょ…方法に拘ってるにしてもすごく難しい問題な気がしてきたな。
「…完了。これが本当の「
(我ながらすごいな……魔法陣の構造だけでコンピュータとやらの仕組みを再現できたし、それで魔力の調律を自動でやらせてる……私じゃない私が作ったみたいだ)
最終的に手元に残ったのは、青白く光る半透明な魂、と形容すべきものだった。
サーシャはそれを秒針に押し付けて…待て、俺にそれを入れようとしてないか?どうなるか説明してから入れるべきじゃないか?
待て、待てったら。い や あ あ あ あ あ!!!
『肝心の説明はしないのはどうかな!? なに無心で入れてるの!?』
「お、成功した。いえーい、念願のMMの中にある魂の実体化に成功したぞ」
『はっ!? えっ!? ……半透明な身体が!! 喋れてる!!』
ぷかぷか浮かびつつ狭まった視界で身体を確認する。
茶色い髪、真っ白なワンピース、幼い手足、間違いなく死ぬ直前のリーロの身体だった。
どういう事だサーシャ、説明しろ!
「炉心としてネタとして作った強化ルートがまさか正解とは…我ながらすごいな…やっぱり実際にやってみなきゃわからないなー」
『サーシャ、MRCは炉心なのに、どうやったらこうなるの!? 幽霊になっちゃったよ!』
「良い表現だね。よし、これからMRC入りの魂は「
困惑と喜びを同時に感じるとこんな気持ちだろうか。
ぷかぷかと浮かびつつ周囲を見渡すと秒針が無い。どうやら丸ごとこの体になってしまったらしい。
ここから止まった時間へ侵入して助けに向かうと考えていたから、本当に不意打ち気味の事だった。
(まぁそれはそれとして、喜ぶ前にMMとしてまだ働いて貰うよ。助けに行かないとだ。秒針に戻りたいと願えば戻れるよ)
サーシャは困惑してる俺の手を握り、新たに魔法を使う指示を出してきた。どうやらこの身体だと触れない限り心の声は聞こえないらしい。
異論はないので秒針に戻り、魔法の準備をしながら説明を聞くことにした。
「前にホムンクルスの構想とか考えてたでしょ?魔力を身体として構築する奴。それとこの炉心は相性が良かった。ずっと魔力を出しっぱだと困る事もあるだろうしね。普段はMMの幽霊化のリソースにして、杖として扱う時だけ魔力を生産する構造にしたんだ」
(魔力問題も会話も全て解決する。ね?天才的な発明でしょ。正直私も出来たのは想定外だった。分かったらその事は後回し。みんなを助けに行くよ)
偶然じゃないとすれば、今までの研究内容に近いものの研究だから上手くいったってことか?
…閑話休題だな。少し寄り道をする事になったが、今からやる事に変わりはない。
自分の底から溢れてくる、属性のわからない魔力を必死にかき集めて魔法陣を展開する。
上に掲げられた秒針からはみ出し、空に幾つもの立体の魔法陣が展開された。
「──魂は魔力に落ち 黄金の時間に流される」
あまりにも、あまりにも大きく果てしない魔法だった。
執念と狂気を混ぜたような、
「四肢の巡りは拡大し 肉体は形成され 最果てにて完成し 消え去っていく」
ガコンッ!!
魔法陣が回転し、低い重低音を出して動き始めた。
あまりにも大きいと、魔法陣も音を出すらしい。
「しかして今も動かずの岸辺は有りて 時の流れの砂浜にて只人は彷徨うだろう」
俺の方だけでは詠唱が足りないから、この魔法はサーシャも詠唱する必要がある。
停止した時間は流れる時間のそばで停滞しているから、そこに辿り着く必要があるみたいだ。
「我は空 我は時 この足は川の上 時の川から這い出る水の魔法使いなり」
普通、魔法は消費魔力と同じくらい記憶を圧迫する。
サーシャは500まで魔法を覚えられるが、この魔法は減らしに減らして一千万だ。
こんな大きな魔法は、製作者でも覚えられないだろう。
…ん?それなのに、どうやってサーシャは覚えてMRCに刻んだんだ?…後で聞くか。
「大願成就──現れろ」
まぁ、それを魂で覚えているのがMRC、俺に突っ込まれた魔力の炉心だ。
無限に魔力を作れるってことは、無限に魔法を覚えられるのと同義だからだ。
『
世界から色彩が消え去る。
全ては灰色に満たされた。
ここから先は全てが静止した時間の外郭。
選ばれた者だけが通れる灰の世界。
「おっみんな居る居る」
(早速このタンク…より先に私の中にある3人の時間の持ち主から探そうか)
雰囲気だけならそんな感じのラスボス空間で、俺達はみんなの救助を開始した。
「よし終わり。全員元に戻した…と」
(ローンよりもずっと楽だったな…)
一面ボスのステージだからな、例外がなければサーシャソロでもこんなものだ。
こうして、サーシャは無事助けられた。
いやー、過去最多で死に戻る強敵だった。
…つっっかれたあぁぁ………。
「
ついさっき、水魔法使いの少女が友人達を助ける為に、魂の強化パーツを作りました。
それは無属性の魔力を作り、幽体になれて、無限に魔法を記憶させ、素敵な力がいっぱいです。
作るのに必要な物は、50Kgの鉄と、魂のレプリカと、圧縮記憶した魔法陣と、出会った時の恩。
将来争いの火種になりかねないこれは、少女にとっては恩返し以上の意味は有りませんでした。