不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

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 基本的に時魔法が使える人の行動は、全部知れる終盤ほど理解出来る動きが多いです。
 収監からの時系列。
1日目
 4と5の襲撃。
 サーシャが昏闇層の沈没監獄に転移。
 ジャッジ怪我深刻。リーロサブクエ。
2日目
 4と5と先生達とカーリーが戦闘、脱出。
 サーシャが深淵との会話する方法を発見、シーシャの発注開始。
 リーロはサブクエとスターとコミュ。
3日目
 サーシャがシーシャと共に転移の脱出に挑戦。
 4と5とジャッジ達が戦闘、ループに囚われる。
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4日目
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 シーシャによりジャッジ達が撤退判断、ループ脱出。

 現在、4日目お昼。リーロがヘルシングルートの確認に食堂に来訪する。




薔・薇・三十

 

 

「その結果、お嬢様ったらペガサスメガ盛りデラックスジュニアみたいな髪型になりまして」

『なにそれ一回実物みたい』

 

 ピピっ

『おっ通信の魔法が…ダルクどうしたの?』

[リーロ、先生達が帰って来たぞ。場所は深淵階段だ]

『本当!?早速会いに行くよヘルシング!』

「え、僕もですか?」

[いや、それがサー]

 ピっ

 

 お昼に食堂でヘルと雑談していた時、ダルクが『通信』の魔法で、サーシャを捜索していた先生達が帰還したことを教えてくれた。

 先生達が出発してから1日経ち、帰ってきたなら居ても立っても居られない。早速ヘルシングを引き連れて先生達の下に向かった。

 「深淵階段」はこの学園の地下三階だ。深淵関係の施設の奥深くにある。

 其処に繋がる扉の前で、壁にもたれかかって休息している先生達とダルク、そして全裸の女の子がいた。

 

『サーシャは!?サーシャは居た?!』

「リーロ…残念だが、サーシャの所までは行けなかった。時属性のMMを持つ二人組にやられたらしい」

『そっか…でも、それだけじゃないよね?何か分かったことは?』

「それについては…俺から話そう」

『エイハブ先生!その怪我大丈夫なんですか?』

「問題ない…ベアトリーチェ先生が祈ってくれている。その内復活する」

 

 エイハブ先生が身を起こし、姿勢を正す。

 ぱっと見だと血塗れで重傷に見えるが、よく見れば傷口は浅くなっていて塞がりかけている。

 神学の先生が居る場所が最高の治療室なる以上、此処で安静にするのが最善なのだろう。

 

「サーシャが転移したと思われる昏闇層の沈没監獄に入ることは出来た。だが、其処にサーシャは居なかった。有ったのは僅かな転移魔法の痕跡と、横で寝ているコイツと同じ見た目の死体だけだった」

『この気絶した子が…シーシャ?』

 

 先生が顎で指した方に目を向けて、改めて少女の容姿を確認して気付いた。

 其処に居たのは、千年後で続編の主人公として活躍するはずの少女その人だった。

 …なんで?え、シーシャと同じ死体が何人も?本当に何が有ったの?

 シーシャは確か続編のゲームだと流浪の旅人だった筈。その生まれは誰も知らず、都会のことは何も知らない女の子だった。

 相棒枠のMM、喋れる機能付きのカエルの人形と共に魔導文明国家のコロニーで活躍するシナリオだった筈…え、なんで早く産まれてるの?

 

「知ってるのか…まあ、そんな訳だ。外に連れ出せた時点で氾濫した魔物か迷い込んだ人間。何十人も同一の存在の死体があるのは不明だが、時魔法なら不自然でもない。そんな訳で限界も近かったし、一旦チラ見してから退却する事にした」

『…昏闇層から更に転移した痕跡があるんですよね?其処まで行ったら追いかければ…』

「言っただろ?限界だったんだ。繰り返したり増えたりする奴と、操作してくる奴。どっちも逃げるか耐えるしかなかった」

『なら、その二人の仮面はなんて書かれてました?』

「あー…4と5だな」

 

 アンテナとループ、2年生で遭う連中じゃないか。

 アンテナの『獲得』の魔法は看破した情報量に比例してキャラのコントロールを奪い、完全に理解されると「人形化」の永続バフで永遠に支配下に置かれる。

 ループの『往復』の魔法は事前に保存した時間を幾らでも繰り返し複製して現実に反映でき、有利なターンを繰り返して永久ハメ出来るんだよ。

 どっちも面倒な相手で、倒すには速攻以外不可能だったのをはっきりと覚えている。

 これらの魔法の使い勝手が悪くなかったら許されないタイプだな。

 

『情報を抜かれすぎたら支配されるのと、保存した時間を繰り返すの…よく切り抜けられましたね』

「祈りと戦闘達者が居なけりゃ死んでたさ。んで…情報か…こりゃあ何度も同じ奴がいっちゃダメだな。既に何百回も繰り返して相当な情報が抜かれてるだろう」

 

 どっちも一人だけなら問題ない。

 『獲得』は情報を隠して不意打ちを繰り返せばいいし、「人形化」前なら操作出来る時間も限りがある。

 『往復』も問題ない。繰り返す回数が嵩むほど再現性が落ちて脱出する可能性も倒せる可能性も増える。

 だが二人が合わさると隙がぐんと減る。『往復』の再現度低下で可能な限り情報を安全に集め、『獲得』の操作で詰みの場面になるまで試行錯誤できる。こうなるとどれだけ手札を晒さずに数百回の繰り返しを乗り越えられるかの勝負だ。

 

『その二人が合わさった戦闘を三階も超えられたなら上出来です。普通なら最初に死んでますから』

「伊達にここの先生やってないからな。実力もないし、ギミックが厄介なだけだ」

『そのギミックを乗り越えられる人が少ないんですよ』

 

「……んんぅ…」

 

『あ、起きた!』

 

 そうやって先生と話し合っていると、エイハブ先生の隣で気絶していたシーシャが眼を擦って起きた。

 なんで此処にいるのかは多分サーシャの影響だから良いとして、肝心のサーシャの場所を聞き出す必要が有った。

 

「…ここどこ?」

『おはよう、シーシャ。ここは魔法学園で君は砂漠の監獄から救出されたんだよ』

「がくえん…さばく…そうだ、ママ。ママはどこにいるの?!」

『名前は?事情を説明してくれないと何も答えられないよ』

「ああもう、サーシャママ!わたし達のお母さん!」

『…サーシャがママぁ?』

 

 そう答えると、シーシャはイラついたのか地団駄を踏んだ。話す時に忙しなく動いてるのもあって、見た目こそゲームと同じであるものの、印象はずっと子供らしい。

 本当に今さっき産まれたばかりみたいだ。

 

「もーぉ!ぜんぶ?ぜんぶ言わないとダメ!?ママが深淵にうったえてわたし達を産んだの!」

「深淵で…まさか、お前は魔物…なのか?」

()()()!!今は氾濫のおかげで人!!」

『一旦落ち着いて話そう』

 

 それから数分間、シーシャを宥めて事情を聞き出す事に成功した。

 サーシャが転移したこと、謎の踊りで深淵へ話しかけたこと、その結果シーシャが魔物の一種として産まれたこと、一緒に出るために自ら同族同士で殺し合ったこと。

 そして転属性の仕様と枷による妨害でサーシャを深淵の奥へ転移させてしまったこと。

 

「あとは…ばくはつでねちゃったから知らない」

「転属性の仕様にそんなのがあったのか…」

「それについては私の方が詳しいから話の主導権渡すのだ」

 

 黙って安静にして聞いていたジャッジ先生が身体を起こした。

 エイハブ先生は話し疲れたのもあるのか、また身体を横にする。

 

「時属性が顕著だが、固有魔法はある程度仕様違いがあるのだ。殆ど変わらないのは証の魔法だが、転属性はその間。空間を繋げる、移動するのに特化しているのだ」

「うん。だからママもわたしにたよったんだ!」

「属性を自在に変えられる器官…その眼を持った魔物を作る…理解できなくは無いけど、本当にやれる奴は居ない…居なかったのだ。なんでやれてるのだ?」

「ママが天才だったから」

「のだぁ…」

 

 シーシャの解答に、ジャッジ先生が唸る。勝手に思考を読んで魔物を作る存在に対し、枷も併用して正確な制作指示を出したのを信じきれないのだろう。

 そもそも言語が通じる相手じゃ無いからな。他国の人が作った音楽を聞いて同じイメージを抱くようなものか?

 普通ならやる前に脳を覗かれておしまいだし、深淵に最初に踏み入った一人目になるだけでも、神様や過去の人々という壁がある。

 砂漠の特異性とサーシャの特殊さという条件下で起きたレアケースだった。

 

「先生、『通信』の魔法を作ってる以上信用するしかないですよ」

「だな。俺も協力したとはいえ、大半はサーシャが主導していた。無理な話じゃないだろう」

「だからといって信じ切れるほど私はサーシャって生徒を知らないのだ…知らないが…今はそれを前提に考えるのだ」

 

 一緒に着いてきていたダルクとヘルシングもジャッジ先生に一声かけ、先生は渋々といった感じで納得した。

 

「ともかく、転魔法は離れた空間が繋がるという共通項はあるけど、どう繋がるは使い手によるのだ。普通ならある程度確かめてからやるけど…」

「ママは空腹でよゆうがなかった…」

「その通り。だから細かい条件を確かめずにやって、順当に失敗したのだ。転移門やこの鍵のMMが便利だから転魔法は便利に見えるけど、実際は固有魔法の持ち主だけが転移するタイプが主流なのだ。だから今回の結果も普通なのだ。転移しただけまだ優秀でさえあるのだ」

「そんな…わたしは生きのこるべきじゃなかったの?」

『そっか、サーシャが知ってる転魔法は門とジャッジ先生の奴だけだし、それが最上級のものだって知らなかったから…』

 

「…そして、転移した先はもう観測してるのだ。‭─‬‭─‬この深淵の最深層、深淵の中の深淵、最も深い世界の浅瀬。一度踏み込めば帰られない…「深淵」にいるのだ」

 

 先生の説明は現状の分析として正しいのだろう。

 

「…それなら、()()()()()()()()退()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…少々お待ちを。なんのことですか?()()()()()()()()()()()()()3()()()()()()()()

「…ん?何を言ってるんですか?キー(語学の)先生が万全の為に一年生を担当する全教師を動員したじゃないですか。お陰で今一年は全生徒自習ですよ」

「…あー、それマジな話か?」

 

 転属性の1番と2番を見て誤解し、転属性では普通よりちょっと上のシーシャの魔法で失敗した。

 

「マジなのだ。息遣いや動作から嘘は言ってないのだ」

「…だとすれば、私たちは…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「今すぐ戻るか?いや、もう俺達は随分と情報を取られた。次に行く時は「人形化」は免れない」

「…あーくそ、今が術中なのかそうじゃないか、判断できないのだ…」

 

 シーシャが落ち込んでいるが、それを慰めるほど俺も余裕はない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『‭─‬‭─‬え?』

 

 サーシャが居なければ、この世界では余りにも簡単に死んでしまうから。

 首が地面を跳ねていると、特にそう思う。

 

 


 

 

 白と赤の砂漠が広がる深淵で、少女の周りを薔薇の生えた人型が囲んでいた。

 

「サーシャ、次、なに、教える、?」

「次は"外の世界"だよ。ここから出た先はなにが待ってるかを教えよう」

「そと?」「おそと?」「せかい?」

「あるの?」「気になる」「教えて」

 

 サーシャと進化した原始薔薇人間である。

 あれから1()0()()()。サーシャの教育の成果か、はたまた人型に憧れを抱いたのか、薔薇人間達は人と変わりない容姿へとその身を変態させていた。

 茨は柔らかな肌に、薔薇は髪に、頭には花冠を付けたように赤や青色の薔薇が咲き、小さな果実を実らせている。

 一応赤い薔薇がオス、青い薔薇がメスとして創り上げたのだが…人間の身体として参考になるのがサーシャしか居なかったからか、身体付きは全員女性的だ。

 薔薇の花弁をサーシャが錬金して作った布を纏っているのも相待って、今や立派な"部族"と言えた。

 

「よし、それじゃあ…おや、"巫女"くんが居ないね。困ったな、これじゃあ教えられないよ」

「困る、?」「サーシャ、困る、?」「…それは、ダメ」

「探す」「巫女、探す」「分散、別れる」

「…私が探してくるからみんなは待っててよ。時間ならあるしね」

「…分かった」「待つ、?…待つ」「サーシャ、言う、従う」

「良い子達だね、それじゃあみんな待っててね」

 

 サーシャは今日も教えようと囲んだ薔薇人間を見渡すと、"巫女"の役割を与えた子が居なかったので探す事にした。

 

 "巫女"

 

 それは幾つか創るのに成功した転属性の魂を参考に創り上げた、最高峰の転属性の魔法を持ち合わせた薔薇人間のことだ。

 この教育の目的が転属性の子が魔法を使えるように、そして寂しくないようにする為に集めてる以上、主役不在では始まることは出来なかった。

 

「おーい、巫女くーんどこに居るのー?……居た、あそこだ」

 

 とはいえ、この砂漠で隠れられる場所はそう多くない。

 魔力視で探すまでもなく、ちょっとした砂山を越えれば見つけることが出来た。

 

「………」

「どーしたの、巫女くん。こんな所でさ。みんな待ってるよ」

 

 そこに居たのは、黒曜石のように真っ黒な肌と白い髪、銀色に光る薔薇の冠を生やした少年だった。

 女性的な薔薇人間しか居ない中で珍しい、男の子の造形な薔薇人間だった。

 サーシャは膝を曲げ、体育座りでジッとしている巫女の返事を待つ。脱出に必要な子である以上、嫌われるのは絶対に避けなければならなかった。

 

「………」

「…今日は外の世界について教えるの。きっと巫女くんも夢中になれるよ」

「…やだ」

「どうして?気にならないの?外の世界」

「…違うもん………教えて貰うのは楽しいけど、全部貰い切ったら、サーシャは何処かに行くんでしょ?僕、そんなのやだ。ずっと一緒が良い。だから行かない」

「うーん…」

 

 巫女に限らず、この部族は賢く純粋な子が多い。大概のお願いには従い、教えることは直ぐに学べる。

 しかし最初に人類に友好的にした影響なのか、サーシャを大事にしがいがちだ。

 嫌われて殺されるよりは問題にはならないとはいえ、それでこういったことが起きるのは不本意なことでもあった。

 

「大丈夫だよ、私は消えない。何処かに行かない。ただ、巫女くんにも世界の大きさを知って貰いたいだけだよ」

「世界はここだけだよ。僕はここで産まれたし、ここで育った。それに外って本当にあるの?僕は産まれてから世界中を走り回ったけど、端っこには白い砂壁と、ご先祖の遺体しかなかったよ?」

「そうだね、ここはそれだけしかない。でも巫女くんの持っている力を使えば行けるんだよ。捩れた空間も、ズレた次元も、乱れた位相も、狂った時間も、全てを飛び越えて行けるんだ」

「…いらない。僕はここだけで良い」

 

 巫女が頬を膨れさせてそう言うと、そのまま何処かへと走り出してしまった。

 

「…ふむ」

 

 それを見たサーシャは少し考えて、自分の説得だけでは時間がかかり過ぎると結論を出した。

 立ち上がり、最初に自分がこの深淵に着地したクレーターに向かった。

 今や湧き上がる水が溜まったオアシスとなり、様々な実験をする工房に改築した。

 教育で薔薇人間達には不可侵の聖地として扱わせ、信仰という防壁で囲った。

 その工房がある場所はオアシスの底。錬金で構築した、水中洞窟の空気溜まりを参考した秘密の工房だ。

 工房に入るや否や、サーシャは保管していた魂と死んだ薔薇人間の遺体を幾つか取り出して、錬金用の陣の上に置いた。

 

「作ろっか、二人目の巫女。そして競争させよう。私の愛情に価値を見出してるなら、そうした方が早くここから出れる」

 

 パチリッ。MMのない錬金は魔力のロスとして雷が発生する。

 5日で作ったその場凌ぎの工房な以上、仕方ないものだった。

 

「この空間の1日が外の1時間な以上、残弾(死亡回数)の補充がここだと20日待つ必要がある。それはリスクだ。リーロの為にもならない…悪く思わないでね、巫女くん。実質妹か弟が出来るだ…あっ……」

 

 多少の罪悪感と共に、サーシャは錬金と魔法陣を展開した。

 MMも無しに立体型の魔法陣を複数展開し、錬金によって最高峰の転属性の魂を創る。

 創造は成功した。真っ黒な肌、白い髪、銀色の薔薇冠、女の子らしい小さな子供。

 

「ちょっと失敗しちゃったけど…属性は……観測、投射、反映…名付けるなら鏡属性かなぁ?多分最高峰に出来たと思うけど…まぁこっちでも脱出は出来そうだし良いか。お前も家族だ」

 

 錬金陣の上の子供、秘匿した研究、怪しげな笑顔…その様子は、「魔女」と形容すべきものだった。

 

 






「魔女」
 法が出来ると、魔法使いにも犯罪者が出てきました。
 王国から禁忌の研究(災害の蘇生)、神国から新人類の創造(革命の火種)、帝国から魂の改造(MM技術の残虐化)、商国から鏡魔法の探究(並行世界の観測)
 そのどれもが世界を揺るがし、4人の大罪人が「大罪人の砂漠牢」と言う深淵の遊泳層に収容されました。
 それから何百年か経ち、いつしか人々は彼らを「魔女」と呼び始めました。

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