不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計 作:何処にでもある
サーシャの死に戻りによる性能とかの補正は放置ゲーの転生ボーナスが近いです。
性格とか矯正させられますけど、死ねば死ぬ程強くなれるなんてお得ですね。
ドンッ!!
「──ッッシャア!!!」
俺の首が離れて最初に動いたのはベアトリーチェ先生だった。
立ち上がりながらシーシャを殴り飛ばし、跳ねた首と俺の胴体を掴んでくっつけ、一喝を祈りとひて傷口を塞ぐ。
流石は歴戦のシスターなだけは有り、MRCの魔力で構成された身体も癒してみせた。
すごいな、半分は秒針という無機物なのに治せたよ。奇跡ってすごいんだな。
「散ッ!!」
「生徒ども!顔も喋りも隠せ!出来る限りこの場から離れろ!MMに戻るな!!」
先生達が自分たちの距離を空け、魔力で自身を防御する。生徒を守る壁は作らない。もし操られた時に利用されたらおしまいだからだ。
ダルクとヘルシングが急いでこの場から離れ始める。
「──ッッシャア!!!」
俺の首が離れて最初に動いたのはベアトリーチェ先生だった。
2回目だ。完全に死ぬと死に戻りが起きてしまうが、死ぬまでに治してくれるなら問題ない。
今すぐ伝えるべきこともある。大声を張り詰めた。
『ここから逃げられない!
「さ…読まれてるのだ…!」
「あーくそ!だが顔と喋りは隠せ!情報は抜かれるな!」
ゲームではループの起点は特定のマス目や行動、ダメージレースだった。
罠と一緒にセットして即死させるマス目ループ。
魔法や行動に制限をかける行動ループ。
食らったダメージが多いと繰り返して死ぬまでやられるダメージループ。
サーシャの研究に付き合ったから分かるが、恐らく三種類時間がある影響だろう。
純粋、個体、魂、どれがどれだか分からないが、使い分けて繰り返してくるのだ。
『そしてこの場に居ないなんて有り得ない!どっちも近距離じゃないと発動出来ないから何処かに居る!』
「それってどこなんですか!」
問題はそこだ。何が目的かわからなくても、殺しに来てるのは分かる。
そして隠れて殺しに来てる時魔法の発見は困難だ。なにせゲームでも隠れ方に複数のパターンを用意していたし、其々の魔法を使った応用が半端ない。
「指示は任せるのだ!勝手が分かるなら有難いのだ!次のループがあればここら辺無視して指示するのだ!」
「回復しますが、くれぐれもご注意を。貴女は一番脆いですから」
「パンはパン屋だ。先生達は割とお前の思う無茶振りは出来るって念頭におけよ」
「捨てループが必要ならそうしろ。そのくらいなら俺でもやれる」
「大変なことに巻き込まれましたが…これまでの恩も友好もあります。遠慮なくご指示を!」
「んんぅ…?…ついていけないけど…大変そうだししたがってあげる」
そして流れで俺が指示する流れになっていた。ループを覚えられるならその人が司令官になるのは順当とはいえ、まさかゲームみたいにみんなを指示する機会が巡ってくるとは。
よし、ここは一丁思い出しながらやってみよう。
『みんな…!分かった。それじゃあ『通信』!』
[全方位へ魔法を放ちまくって!なるべく広範囲に効くやつ!]
情報を隠すならコレだろう。通信を繋げて小声で連絡するのが一番良いとみた。
ドンッ!!
「──ッッシャア!!!」
俺の首が離れて最初に動いたのはベアトリーチェ先生だった。
3回目。行動トリガー確認。現場にいるのは確定した。
帰り道のループを説明し、すぐさま次の指示をする。
[魔法、球を作るやつで天井に!]
そもそもここは地下3階だ。隠れる場所には制限があるし、深淵から手を出すには空間の歪みが邪魔をする。
そしてここから下は深淵しかなく、上に階層があり、横の移動が制限されてるなら方法は一つだろう。
ドンッ!!
『──ああ!!?』
俺の首が離れて最初に動いたのはベアトリーチェ先生だった。
落ちた俺の首を殴り付け、壁にめり込む。アンテナの操作だろう。
やってしまったという顔をしているのを見るに、意識の支配まではしてないようだ。
[天井、攻撃]
『通信』を使い、ダルクに指示を出す。不慣れだからか多少は驚いていたものの、持ち前の冷静さで持ち直して天井に光線を放った。
「人形化」までは操れる時間は総合だからな。ゲームでも1%で1ターンまで。
リアルだと3秒のみ操られる計算になる。
完全に支配されるまでに合計99ターンも操れると考えると長いが、1ターン3秒だと297秒、合計5分弱と考えると少し短く感じられる。
ゲームの全戦闘合わせて99ターンだ。先ず一人だけなら穴がある。
ドンッ!!
『──ああ!!?』
操作した行動を『往復』に記憶し、それを繰り返させればカウントは減らない。
こうなるとお手上げだ。繰り返される時間を認識出来ている分、俺の精神力の戦いになる。
ドンッ!!
ただ、突破口はある。繰り返されてはいるものの、数が重なるほど『往復』には粗が出る。
ベアトリーチェ先生が自力で攻撃を寸止めするまで数百回のループを耐えばいい。
ゲームでもリトライを重ねる程弱くなる親切設計だったし、この弱点は諦めなければ必ず突ける。
ドンッ!!
触覚がないのが幸いした。お陰で痛みも感じずに済む。
そして突破口はもう一つある。
このループは繰り返してはいるが、時間を巻き戻してる訳じゃない。ただ同じ状況にしているだけだ。
ドンッ!!
だからこそループで相手のリソースを削ったり出来る訳なんだが、これは俺にも利点がある。
死に戻りのチャージが進む事だ。
今の死に戻れる回数は1、秒針の根本だけが黒い余裕のない状況だ。
ドンッ!!
初日に5→3。2日目に3→4→3。3日目に3→4→0。そして今日の早朝に回復した分。
普通の人なら一回分多くはあるが、この脆弱な身体で挑戦するにはあまりにも心許ない。
俺はMMとして活躍することは出来ても、サーシャや協力者が居なければできることは少ないのだ。なにせサーシャ居ないと水魔法も使えない。
ドンッ!!
劣化した時魔法は属性の関係で使えはするが…使いこなせる自信も結果の予測も出来ない。
あれ使いこなしてるサーシャの才能があるだけだ。
なので今の俺が出来ることは…。
ドンッ!!
このループを耐える以外はどこにもない。
まあループさせる指示さえ遅れなければ良いんだ。他に変化が起きるまで待つことにしよう。
何か変化があるまでは…幾つか動き方の想定でもしておこっと。
変化が有ったのは、それから4日後だった。
「がんばれー!」「みこさまがんばれー!」「まけるなー!」
「えー…これより薔薇族トーナメント決勝戦を始めます。両者前へ」
ワー!!!
「これでどちらが正しいか、その答えが出ますね。お兄様」
「そうだね、ミラー。僕が勝てばみんな一緒にサーシャ様と共に過ごし…」
「私が勝てば、みんな一緒に"外の世界"に向かう。どちらにせよ慈悲深きサーシャ様は我々と共にある。ならばこの場においては御託は不要。お互いの全力をぶつけましょう」
「そうだね、お互い負けたら言いっこなしだよ」
薔薇の花畑が咲き誇る赤茶色の砂漠で、広々とした土台の上で並び立つものがいた。
深淵に落ちてから
環境整備で時間を放出する生態にした以上、薔薇族は自らの死に場所を自分で決めて一人前になる。そういう文化に調律した影響で、この部族は世代交代が高速で行われていた。
お陰で巫女たちは時間と共に心も身体も大きくなっていき、今では二人ともサーシャを超えて170まで大きくなっていた。
「ではお互い、礼」
互いに冠の薔薇を一つ千切り、相手に投げると共に礼をする。
花弁が互いの上に振り、その礼を華やかなものにした。
「──始め」
「位相ずらし『零次元のプラズマ』!」
「観測せよ『炎の館の防衛本能』!」
この場に広がったのは一点の小さな穴程度も破れることのない次元の雷、それによる絶対なる崩壊。
それに対抗して鏡の向こうから現れたのは、異世界に存在する外なる神の住まう館、その防衛機構。
どちらもサーシャを一秒と経たずに挽肉に出来る超火力の魔法である。
「どうしてこうなったんだろうね……ミラーがんばれー」
目の前でサーシャと共に開発した魔法と、サーシャが二人の誕生一ヶ月記念として、スクロール技術の発展系として与えた「
「捩れろ『空間湾曲の三重奏』!」
「欺け『観測シャットダウン』!」
あれからサーシャは二人に増やした巫女に平等に教育を施し、より生真面目な方を比較的褒めることで、ことを荒立たせずに帰還しようとしていた。
順調だったのだ。外の世界が良いものだと教え、好奇心を煽り、薔薇族達による神様扱いにも合わせた。
自分よりも圧倒的強者を育てるのだ。どんな扱いでも、最悪工房がバレて奴隷扱いされるかも知れないと慎重に育てた。
「やるな、なかった事にしたか!」
「お兄様も良いセンスです!」
想定外だったのは、巫女達も神様扱いしてきたことだ。
おかげで薔薇族にとって神とはサーシャと発言するレベルにまで浸透してしまった。
それによって何が起きるか?引き篭もり度の上昇である。
いつの間にか教育は神話の話となり、外の世界とは神のいた場所扱いになった。
それによって何が起きるか?引き篭もり度の上昇である。
「広がれ『
「崩壊せよ『
結果、薔薇族はこの狭い砂漠の地で神の教えの下充実な日々を暮らせていた。
サーシャが一番困る結果である。
「いつの間にか保守的になったし…行きたがるのは鏡魔法で他世界や並行世界を覗けるミラーくらいだったよ。…野心を持たせるべきだったかな」
いい加減味変にも限界がやってきた所だ。そろそろ村と学園に帰りたい。
サーシャはホームシックになっていた。中間テストの一月の研究期間から収容まで10しか休められてない影響がモロに出ていた。
「補完しろ『
「蠢いて『
そんなことを考えてる今も、サーシャの命運を決める決闘は続いていた。大技を連発し、超火力で殴り合う、決闘にしては随分と剣呑な技の数々。にも関わらず未だ元気に続いていて、観客やサーシャに怪我がないことには理由がある。
スクロール。魔法陣や詠唱代理文を刻むことで魔力を流すだけで発動出来る技術。
巫女達の誕生プレゼントとしてサーシャが考案したのはスクロールの発展系、「
従来通りの利便性に加えて「殺傷/非殺傷」機能を搭載し、一度作れば何回でも使えるように術式の構築方法や素材を一から作った品だ。
最悪宝石や鉱石さえあれば出来る
MMと構造は殆ど同じだが、生き物を素材に使わずに記憶容量や魔力量、殺傷能力の問題も解決した一品である。
「…くっ魔力が!」
「奇遇ですねお兄様。私もです!」
こうして巫女達の分に加え、最初の頃に埋めた魂や薔薇族にも配布した結果、決闘の文化が急速に発展しあらゆる物事を決闘で決める文化が加えられた。
「「咲き誇れ、薔薇の花達よ『修復』!!」」
「「再開
空間の捩れと一緒に捩じ切る魔法、転移を利用した質量のある残像、迷路を創り出す空間拡張…。
起きなかった可能性で上書きする魔法、一国の終わりを持ってくる魔法、異世界に在する迷宮を踏破した
そして、薔薇族の種族由来の限定的な時魔法。世界に欠けた時間を調律する生態を利用した物体に宿る魔力と時間の全回復。この魔法と「
壊れていれば直せもする状態復元の力である。サーシャでもこうなるとは想定してなかった進化だった。最初の笑って泣いて忙しい薔薇とは大違いである。
「この子達引き連れて帰る…学園に住める場所あるかな」
その発言はミラーが勝つことを前提にしたものだった。
その次の発言は、成功をまるで失敗のように扱う言葉だった。
「最悪村を何処かに作ってー…まあいいや、成功したならその時はその時だ。リーロの様子も見ないとね。まだ向こうでは4日しか経ってないし、ギャップがすごそう」
この日に至るまでの二ヶ月半、サーシャは確実に帰るために積み重ねて来た。
食料兼帰宅手段に薔薇族を、反乱防止に教育と親愛を、必ず帰るために「
「これで…終わり!」
茨の剣が喉笛に添えられる。勝負アリだ。
「…そこまで!」
歓声が広がる。決着が着いた。
「良い決闘だった」
「流石お兄様、
「そうだな。みんな一緒だ」
ようやくなのだ。ここまで来て決闘の結果次第なのが受け入れられないほど、疲れているのだ。
勝負の着いた二人に近づく。ゆっくりと、いつも通りに。二人がこちらを見て手を振った。
穏やかに手を振り返した。
「だから…悪く思わないでね、
サーシャがこの二ヶ月で研究した技術は3つある。
一つは「
登録した魔法を魔力の続く限りMMを使った時と同じ感覚で放てる魔法。"スクロールと同じく、使い手の属性には依存しない"。
一つは『修復(劣)』
薔薇族の独自に進化した時魔法を研究し、出来る限り意図通りの挙動になるようにした。"使い手の時属性や時間に関係なく、失敗作を成功作に作り直せるようにした"。
一つは「
MRC無しでも成立するように独立させ、魔法学で学んだ「ゴーレム」を参考に無の力がサーシャの血肉に変わる過程を魔力で再現。"魔力で編まれた肉体を生の肉としても構築出来るようにした"。
その全てを合わせれば、こんな事も出来るのだ。
「──え?」
「サーシャ様…なんで…」
『私は帰りたいから。ほら、巣立ちってあるでしょ?親が子供離れするやつ…逆だっけなー?…まぁ、今がその時なんだよ』
サーシャが二人の「
サーシャはそれを掴み、その場から離れる。誰もが千切った方のサーシャに注目し、逃げてるサーシャに気付かなかった。
自身を囲んだ水の光の透過率と反射性能を弄って、不完全ながら迷彩機能を搭載させているのが効いていた。
「よし両方の「
決められた動きをする生身のゴーレムに悪役を押し付け、自分は離れて二人の「
「
「二人に気付かれないように脱出する為の魔法を作る…思ったより深淵の周りの環境が酷くて、二ヶ月半もかかっちゃったな」
信用してなかった訳ではない。ただ、薔薇族にも意思があることを巫女の不貞腐れで理解したからこそこうしたのだ。
信用した、自分の教育と彼らの賢さを、
信用した、欲がなくて現状に甘んじる精神性と優しさを。
信用した、あまりにも強く無の力から産まれた魔物である出生を。
信用した、前日に外に行くことを数時間かけて説得したのに、結局決闘になった家族会議を。
「あーあ、みんな一緒に来てくれれば良かったのに…そしたらこんな手も使わずに済んだ。…ミラーちゃん、君が勝って一緒に行けるの、私は最後まで期待してたんだよ?」
「…お考え直しください」
「ごめんなさい、サーシャ様。戻ってくれませんか?」
「…『水界結界』」
私はこの決闘が儀式的なものであり、その内実二人とも此処に残ることを望んで共謀していると、信用した。
「────!」
「──────!」
振り返れば薔薇族を率いた巫女達が居るのだろう。
「
生物の範囲にならない程度に知能を与えるのには苦労した。本当に良くやってくれた。お陰でコンピュータという概念が何かも理解できたし、便利な使い方を学べた。本体である演算機は持ってきてる。働いてくれた分、一緒に行こう。
「オアシスに仕込んだ魔法陣、『水纏』から発展させた侵入禁止の結界。水だけだと厳しいから、転と鏡の
オアシスの底を歩く。私が居なくても薔薇族が生きていけるよう環境は整えたし、文化や言葉を残す手段も用意した。
彼らに対する義理はもうないだろう。産んだ責務は果たした筈だ。伝えるべき言葉も
「──"スペルセット"」
工房の更に下。無の力が溢れる穴に落ちてしばらく泳いだ先にある祭壇。
今日に至るまでに創り上げた、大魔法を行使する場所を用意した。
MMの代わりになる
魔力になる無の力なら周囲いっぱいに広がっている。
「"始まりに火があった"」
力が渦巻き、無の力を魔力に変換する。MRCがあるから、遠慮なく使い倒す。
「"火を保つ空気が生誕した"」
深淵から入るのが難しいなら、更に外から勢いを付ければいい。
「"空気を留める大地が産まれた"」
そう考えて創り上げたのがこの魔法だ。
「"次第に大地を潤す水が産まれた"」
転魔法で道を創り、鏡の魔法で成功する道筋を抽出する。
「"そして生き物が産まれ 人が降り立った"」
私は転属性でも鏡属性でもない。だから此処まで単純にしないと魔法を行使できない。
「"解明 深淵 復讐 生命 循環 解放 選択 明暗 調律 奇跡 ここに神がかつて通った道筋を示した 我が前にて名乗りを挙げよ"」
そこで時魔法レベルで調べ上げようとする程、巫女達を信用してなかった訳でもなかったからだ。
ここに留まらないなら、二人に協力して貰うだけで帰れたからやらなかった。
…私も、これを使わずに済む未来の方が良かった。
『"
神学、語学、歴史、魔法学、属性学、教養、錬金学、実技、死に戻りの補正…全ての学んだこと、発見したもの、得たものを総動員して創り上げた。
鏡魔法で神の力を自分に被せ、世界に自分を神の子供であると騙る。
そして神の力と転魔法で世界をこじ開け、侵入する。
最後に水属性の清浄の性質で自分を戻していく、鏡転水の複合魔法。
時間経過で神に近づいてしまうデメリットがあるが…そうでもしないと帰れないなら仕方ない。
生身を創るやり方は得た。それを使って自分を保ち続けながら治し方を研究する。
出来なければ…その時はその時だろう。
──翼が生え、悪魔のような尻尾が生え、皮が爛れ、魔力でも無の力でもない力に置換される。
「…
それら全てを魔法と知恵を振り絞って押し返した。
翼は堕ち、尻尾は萎びて排出され、皮を張り直し、生身に置換し直す。
空間の狂った道に太い杭のように一本道の空間を学園辺りに突き刺した。後は落ちれば良いだけだ。
「想定通りだ───行こう、我が親愛なる友の場所まで」
「ゴーレム」
人々が集まって村を作り、街を作り、国を作ると、魔物のゴーレムがやって来ました。
王国以外の国はただの魔物の襲来として殺しましたが、王国は様子が変だと見守ってみると、人に攻撃する様子が見られませんでした。
そこで色々反応を試して、ゴーレムが多く群れる者に従う性質を持つと理解し、王国の民として向かい入れました。
そうして今では、人の手でゴーレムを作れるようになっています。