不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

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 MMを手に入れて何が一番嬉しかったか聞かれた場合、サーシャは身体能力の底上げと死に戻りの二択て15分は迷います。




帰・往・三二

 

 

 ふと、首が跳ねる感覚がしなかった。

 隣をみれば、懐かしい者が側に居た。

 

「‭─‬‭─上に居るんだね?」

 

 言葉はそれだけ。だが、その言葉がどれだけ頼もしいものか。

 この時の俺の心境は今の俺には語りきれないだろう。

 

『うん!お願い!』

「任された。『修復(劣)』」

 

 サーシャの新たな魔法によって首と胴体がつながり、繋がった状態で秒針に戻る。

 

[情報は‭─‬…]

「…分かった。それなら直ぐに終わる」

(あーもう懐かしい。さて、深淵の奥で二ヶ月半暮らした分で鈍ってないといいけど)

 

 こうなると後はサーシャの言う通りに魔法を使うだけで良い。

 深淵とか考えてるし、新たに見知らぬ札を二つと腕輪をしている分修行帰りみたいで頼もしさが段違いだった。

 

《Time:s》ピッ

 

 バチッ!

 

 異変を感じたのだろう。アンテナの干渉が有ったが、水属性の抗魔の体質は随一だ。高レベルの操作能力も静電気一つしか起こせない。

 

「‭─‬‭─‬分析完了」

(『獲得(劣)』の取り出せた部分は…人形化した人形を操れる効果だけか。肝心の人形にする手段がないけど…今必要な部分は取れたから良いかな)

 

 サーシャが『獲得(劣)』を行使し、ループの隣に立っていた人形化した人の操作権を奪う。

 視界や感覚が共有される訳じゃないから攻撃は勘だ。

 魔力を遮断しているのか魔力視でも視認出来ないから、完全に予想で動くことになる。

 

起動(スペルワード)『次元切断』」

(操作対象の反応があれば位置も分かる。ならそこに向けて火力を叩き込めば良い)

 

 だがサーシャが必要としたのは人形ではなく、その位置だった。

 呪符‭─‬ゲームだと中盤のヘルシングの協力の下作れる発明品‭─‬を起動させ、認識した位置に呪符に込められた魔力を解き放った。

 もうなんで作れているかに関してはツッコまないが、流石は固有魔法すら普通の魔法と同じように登録して扱える利便性に特化した発明品だ。コレで劣化した時魔法を普通に扱えるようにも出来るな!

 MMを通して倍々に威力を増してから転魔法をぶちかますなんて大抵の敵は倒せるだろう。

 これなら魔力の補充さえあれば最後まで……どうやって転魔法の呪符なんて作ったんだ?

 後で聞けば良いか。

 

「…こっちの流れは分かり易いね」

 

カーン…

 

 バシャン!

 

「‭─‬‭─‬『難題(劣)』、『貸与(劣)』、腕輪(ホムンクルス発生期)そして水球を幾つか。全員分魔法の対象を移し替えた。もう繰り返しは効かないよ」

(そして『往復(劣)』は…再現できたのは時間を記録して見直せる機能だけ。後で振り返る分には役立ちそうだね)

 

 難題で可否を確かめて、貸与で"往復する時間"をホムンクルスと水球に貸与。繰り返す際の立場を魔法に押し付けた。貸与が劣化していても時魔法限定で受け流し性能高いのが助かったな。

 

 念願のループ脱出成功だ。

 

「さて、これでお互いに土俵に並んだね。何もなければこっちの勝ちになるだろうけど…ある?」

(驚くほど近かったね。まさか隣だなんて)

 

 サーシャが何もない場所に手を置くと、サーシャに肩を掴まれたループが見えるようになった。

 黒髪ツインテールのV(5)の仮面。大鎌も併せて死神っぽい見た目の人だ。

 

「…私今から3日後に此処に来たんだけど。なんで過去に引き摺り込まれてるの?」

「鏡魔法『五日鏡』は、5日以内にその場に現れる人物を今現在に引き寄せる」

「あー、撤退したのを追って来なかったのはそういうこと…」

 

 『往復』は使用中、同じ位置に居ないと発動できない。だから未来か過去に必ずループはこの場に現れる。

 解説と解析をしたサーシャは、その性質を利用してあっさりとループを捕らえてみせた。

 

「そう言う訳なのだ。この場に現れた以上、もう私らから逃げられるとは思わない事なのだ」

 

「なのだなのだうっせえんだよグリーンマッシュヘッド!ついさっきまで良いようにされてた身でイキってんじゃねー!」

 

「のだ!?」

 

(うわビックリした。急に叫ぶじゃん)

 

 サーシャ、終わりの時計塔は大概口が悪いからこんな事で驚いてたらキリがないよ。

 あ、待った。そうなるとこの後の展開は…!

 

「あーくそ!私が嫌いなのは有利になった途端調子こく奴とキノコなんだよ!あー見ててムカムカして来た…もういいや一旦殺すわ」

 

‭─‬‭─‬ギィィィッギッ!!

 

「‭─‬‭─‬ラァっ!!」

「ガっ!?」

 

(…あっ)

 

 瞬間、サーシャの隣から飛び出したループがジャッジ先生に飛びかかり、大鎌と風を纏った手刀が火花を散らし、ループが大鎌の刃を()()()()()()()首を刈り取った。

 

 「魔跡封石」、サーシャが投獄される際に装着させられた枷の素材となった、物理しか認めない鉱石。ループの大鎌は、その鉱石で刃先をコーティングしている。

 その結果出来たのは、魔法が効かない代わりに肉も切れない鈍らの鎌。

 魔法も奇跡も効かないが、代わりに武器としての性能も消えた。

 

‭─‬‭─‬ループの『往復』は、動作や状況を繰り返す魔法だ。それでコーティング前の大鎌で切った状況を()()()()()、鈍らの刃にかつての栄光を与えられる。

 

「…あー…忘れさせてたんだっけ、なら往復するよねーキノコぉ〜、お前を前に切ったの私。治りにくいよそれ。傷口に封石の粉混じってるし。首切ったら割と死ねるぜ」

 

 結果できるのは魔法や奇跡を無力化する無敵の剣。

 今の状態をそのままに、同じ動きを往復させる時間の刃。その限定展開。

 触れてる物に魔法を使わせる事は阻止するが、使われるのは阻止しない封石の特性と噛み合った攻撃だ。

 

 ループは首だけになったジャッジ先生の頭を踏み、こっちに振り向く。

 仮面を僅かに外し、真っ赤な双眸でコチラを睨んだ。誰もが圧倒され、蛇に睨まれた蛙のように固まっていた。

 

「それで、手がなければ勝つよ…だっけ。あるよー手札は。鍛錬と勉強も研究もぜーんぶ往復。つまり『往復』の魔法が使える私は結構強いんだ」

 

「そっか。じゃあ戦う前に二つ聞いても良い?なんでこんな事をするのか、君たちは誰なのか」

 

「ゼクスとズィーベンはー…アイツらが話す訳ないか。良いよ、私が言おうか」

 

(ローンへの繰り返し中での聞き出しではそこまでは無理だったけど…口が軽いのは助かる。結局その二人、学園に身柄を取られて案の定逃げられちゃったし)

 

 サーシャは焦らず、ループに問いかける。死に戻りすれば良いと判断しているからだ。

 ループはジャッジ先生の頭でリフティングしつつ回答した。

 

 

「私達は「終わりの時計塔(Time out)」。この神話の世界を終わらせ、最も望ましい未来へと誘う時の代行者(タイムキーパー)。神に望まれて存在する、タイム家の代行者だよ」

 

 

「‭─‬‭─‬タイム家…どういうこと?」

(リーロの関係者なのは知ってたけど…)

 

 サーシャにとっては聞き捨てならないんだろう。

 ループもリフティングに飽きたのか、ジャッジ先生の頭を壁に蹴り付けていた。

 

「そのまーんま。愚かな人類が時属性のお貴族様を殺しちゃったから、その人達がやってた役割を誰かがやらないといけなくなった。なので有志の私らが集まって、神様のご要望通りに出来るだけ人類の為になる未来に導きましょーってやってんの」

 

「ならどうして殺しに来てるの」

 

「…は?…あーっはっはっはっは!!!お前がそれを言うの?マジで?あーっはっはっは!!」

 

 サーシャがそう言うと、ループは一瞬固まった後大笑いした。相当ツボにハマったらしい。

 

「ひーっ…そりゃあもう此処に未来に悪影響を与える奴が山ほど居るからだよ!なに?自覚ないの?ないんだろーなー、忘れてるんだし!」

 

「そこまで言われることをした覚えはないけど」

 

「うるせーよ終末級!お前が居ると世の理が狂うんだよ!なに数百万年先の技術見つけてるんだよばーか!人の倫理観と優しさは技術みたいにポンポン上がらないんだよ今の野蛮な人類にそんなの持たせてみろ一瞬で自滅しておしまいだばーか!」

 

「えっ私っていつからそんな評価になってるの?」

 

「終末級に上がったのは3日前…ついさっきだよ。まさか長年行方不明だったMM(リーロお嬢様)が好奇心と合理性の塊のような人間に持たれてるって分かった時は本当に驚いた!」

 

「私が持つことに不都合でも?」

(あー逃したのマズかったのか。死に戻る時はやり口変えようか)

 

「じゃあ逆に聞くよ?リーロお嬢様を盗みも殺しも躊躇のないとても賢い推定悪人が持ってたらどれだけ警戒する?」

 

「最大限警戒し、最大限の労力をかけて回避不可の殺害を行う」

(…困ったな、リーロなら悪人相手でも、心が読めても騙されそうだな)

 

 流石にそんな人の指示には流れないし従わないよ?俺のこと舐めてるのか?俺はそんな目で見られてるのか?ちょっと怒るぞ。

 

「そういうこと。こっちはタイム家の方々の保護も神様から頼まれてるし、どんな時魔法なのか未知数だからマジで警戒してんの。そっちは未来視を公言してるみたいだけど…絶対にそれだけじゃないでしょ。時属性がそんなに弱い訳ないのは嫌と言うほど知ってるんだ」

 

(…この人達、居ると命を狙われるけど、殺すとそれはそれで大変なことになる相手だ。無力化って難しいんだぞ?)

 

 随分と滑舌の良い人で助かったな。ここら辺はサーシャに説明すると流石に怪しいから言い出せなかったんだよ。

 終わりの時計塔、未来から見れば悪い組織ではないんだけどねぇ…今現在の人々から見ると戦争起こすし、未来に悪影響を与えるって理屈で劣兵に変えられるしで、悪の組織過ぎるんだよな。

 数億年先を考えた状況の調整であちこち行くから各個撃破は容易いけど、倒し切ると強制バットエンドになる厄介な連中だ。基本殺さない方が良いぞ。

 

「…理屈は分かった。それならこうしよう。私は今から未来のために自害する」

(リーロ、出合い直しちょっと前にいこう)

 

 オッケー魔力暴発だやれー!

 

「…は?」

 

カチッ

 

 ドドドゴーーォォオンッ!!!!

 

「‭修復完了。秒針には戻らずにやってみよう」

『分かった。背中に引っ付いてるね』

 

 首が地面に落ちるまでに感じたのは、地上に何かが盛大に落ち、天井を砕きながら進む渦巻く水の轟音。

 次に感じたのは、サーシャの手の平で修復が完了したこと。錬金と比べると直せるだけの劣化版。発動が早いのが唯一の取り柄である時魔法だが、こういう戦闘時だとその早さがとても役に立つ。

 即座に『水界結界』なる魔法を行使して、気絶したアンテナの人形を閉じ込める余力もあるのだから。

 

「くそっ」

「手出し無用!全員見守ってて!

(場所は見た。だったら先手で攻撃して隔離するのが良く、物理で解決するのが良い)

 

 真っ赤な大鎌を避け、水球で怯ませつつ殴り付ける。

 色々すごい魔法は覚えている筈だが…呪符は非殺生設定だと中々気絶しないし、転も鏡も殺意が高い魔法だらけ。

 水魔法も未だサーシャから行使を頼まれない辺り、深淵では防御系に割り振ってたらしい。

 

 殴り合いが一番無力化に向いていた結果、魔法使いにあるまじき肉弾戦が始まった。

 俺が秒針になってないからステゴロである。ゲームだと絶対負けてるわ。

 

「がっ!?」

 ドッパンっ!パン!ゴッ、

 

 そこら辺に落ちてた石を握り魔力を纏わせて殴り、大鎌の挙動を予測して回避とカウンターを放つ。

 時折り離れて火の魔法を使おうとしてくるが、防御系を頑張った甲斐も有り無力化には事欠かない。

 これで火の魔法と大鎌を合わせられたらマズいのだが、使わない様子を見るに併用は難しいようだ。ツインテールの髪飾りのMM、使い難いのかな。

 

「テェ…ッダラァ!」

「ぐはっ‭─‬ラァ!!」

 

(決闘の教育の為に修行して良かった!)

 

 二十程度殴り付けた辺りで、大鎌の大振りの隙を足先で蹴り飛ばした。相手の身体がくの字になり、吹き飛ばれる。サーシャは追い討ちに地面に着かせずに連撃を喰らわせた。

 鎌の振りに合わせて勢いを増させてひっくり返し、MMで増した身体能力で天井に叩きつけ、膝蹴りや鉄山靠に似た技で吹き飛ばし、相手が行動に移せないよう頭部をアッパーで叩き揺らして混乱させる。

 やけに体捌きが様になってる辺り、深淵では肉弾戦もそこそこやってきたらしい。決闘をするとか、本当に何があったんだろうな。ゲームと比べたら圧倒的だ。

 

 ざっ

 

「‭─‬‭─‬‭─‬トドメ」

 

 ドゴンっ!

 

 決め手、ラリアット。

 

「こはっ…魔法は…どうした…」

 

 どさっ…。

 

「ふぅ…肉弾戦禁止なんて言われてないでしょ?」

 

 4日間に渡る俺の耐え忍びも、サーシャの長かったのだろう冒険も、全てこの一撃にて終演となった。

 

 






「魔法以外の攻撃」
 先ず前提として、この世界に生身の多い生物は少数でした。
 魔物は魔力を基本に、人間も魔力から少しずつ生身に、植物だけが確実に生身があります。
 そのせいか物理では基本的に攻撃の通りが悪く、相手を殺すことはできません。
 MMで身体能力を底上げする魔力循環が行われて、ようやく気絶させられるようになりました。

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