不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

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 そろそろ人手が欲しくなる頃合いです。




解・礼・三四

 

 

「それでは教養の授業を始めます。皆さん、起立、気を付け、礼、着席。ではシーシャ、今日やる事を」

「本日は先ず、最近の事に関して3人で話し合います!その際には口調、姿勢、内容に気を付けましょう!1人は目上役に、残り2人は年上がいることを想定してください!」

「シーシャ、ありがとうございます。では15分時間を取ります!話、会議、情報交換などにおいて教養は円滑な進行の助けになります!意義のある、仲良くなれる話し合いに挑戦しましょう!」

 

「…成長したなー」

(シーシャの喋りが聴き取りやすくなったな。毎日声をこうして張り上げてるし、その成果かも)

 

 あれから一ヶ月。サーシャは無事に復帰して、今まで通り学園の授業に復帰した。

 俺はサーシャの手元で収まり、シーシャは教養テストで倫理観がないとして、人の価値観を覚えるまでアニー先生の助手となった。

 これで全部解決…だったら良かったのだが、後から聞いたサーシャに行方不明の間にやった事が問題だった。

 呪符、これは問題ない。ヘルシング/シープルートを先取りしただけだ。

 薔薇族、これも問題ない。ゲームでも第二章の戦争編で神国の生物兵器として居た。放棄したのも…まあ、この際良いだろう。野生化すればただの魔物に戻るだろうし…性能がゲームと同じなら、だけど。

 深淵との交信法、これもまだマシだ。オルガ/カーリールートで発見される手法だし、使える場所も限られる。

 神になる大魔法、使うとバットエンド確定の問題児だ。ダンテ/スタールートで発見する手法であり、使うと神になる代わりに全ての問題を薙ぎ払える力を得られる。が、エンドが固定される。

 

「知ってるかもだけど、私はサーシャ。魔法が好き、今日は宜しくね」

「よろー、ワタシは姉のモモって言うよー。サーシャ居るとかマジヤバくね?」

「私は妹のリンゴだよ。分かるわー周りのプレッシャーヤバだよね」

「姉妹…果物の名前なんだね?」

「そそ。サーシャのお陰でMMから聞きましたー。ワタシらはー王国のフルーツ村にある果樹園農家の姉妹らしいでーす。あ、MMは実家の犬でしたー」

「私は村長の娘のウリ…幼馴染ねー。こっちに教えてもらったの。村に居る時は三姉妹って揶揄されてたらしいよー?覚えてないけど」

「ま、今はモミウリも覚えてないし良いんじゃね?」

「学園長マジ鬼畜ー。ま、卒業すれば思い出せるらしいしい良いけどねー」

 

(あー…仕方ない事だけど気まずくなる…)

 

 そして『精肉』なる未知の魔法だ。神になる大魔法の対抗としてサーシャが作ったらしいが、ゲームだとそんな物はなかった。ホムンクルスと無の力の発展形らしいが、生身の情報を保管しそれに更新し続けることで神になるのを抑制するのだとか。

 そのおかげでサーシャは今もゲームだとモブだった人達と楽しく授業を受けられてるんだが…コレって肉を精製するって名前じゃ不適格じゃないか?『現状復元』って名付けた方が正しい気がする。

 

「なに話すー?」

「学園生活で感じた不便なこととか?」

「…良いね、今後の研究題材の草案に使えそう」

「え、マジ?今この会話でサーシャの研究が決まるの?」

「ヤッバ」

「そんな恐れられるようなことをした覚えはないよ?今やってるのもそう凄いことでもないし」

「じゃあ戻ってきてからやった研究内容言ってみ?」

「MRCの嗜好品に専用の味と服、魔力生産機能にオンオフ機能搭載、通話魔法に画面機能搭載、雷属性の呪符制作、水魔法の開発、自動車と列車の試作品と交通網の立案、電卓、鉛筆、ボールペン、錬金の自動化と品質均一方法、数学の公式の発見を少々、今は製紙技術で植物の紙を作れないかなって試してる」

「トレビアーン自分の国でも興すつもりですかー?目上確定ぇ」

「私初めてなんだよね、自分の発言一つでこの世が変わるかも知れないって状況になるの」

 

(うーん、こういう授業じゃないとみんなに距離を置かれるようになっちゃったな。片手間に困ってる人の手助けとしてやってるだけなんだけど…)

 

 サーシャは不服そうにしているけど、一人で産業革命している奴を見たら誰だってそうなる。

 ゲームでもそうだったけど、見てて清々しいほどの反則っぷりだよな。

 大きな発明は攻略対象と一緒にやってても、一人でも工場地帯をゼロから作れる才能には震えるぜ。絶対敵対したくないわ。

 

「じゃあ学園で困ったこと言い合おっか。私は暇が多いなって感じる」

「あー分かる。勉強の息抜きでやれることがないよね」

「暇つぶしかー。副科目は私やってないからなー…製本技術…印刷所…工場…うん、空想小説を書いてみんなに配れたら楽しそうじゃない?造る?錬金工場」

「おっと早速重大な決断が来た気がするけどサーシャに任せるわ」

「錬金…学んでるけどあれほぼ職人技術…いや私予想皆混乱不本意」

「むー…なら追々作っておくね。他にある?」

「ワタシ始めてなんだよね。何でも願いを叶える超常存在と話してる気分になるの」

「分かる。神様と会話する時ってこんな感じかなーってなる」

「失礼だね、私は人間だしその内私以上の存在は出てくるよ」

「「………そっか、そうだと良いね」」

「……?」

 

(ちゃんと神にならないようにする魔道具は正常稼働中だし、完治する為の治療法も探してるのに…解せぬ)

 

 気味が悪かったって思われるぞその発言は。

 序盤に激動が起きたから感覚が麻痺してたけど、この学園って本来こういうのほほんとした空気なんだよな。日常って感じの。

 

「証拠に私も悩み事くらいある。生理が面倒とか」

「あーめっちゃ分かる!魔力ダダ漏れ出し回復遅くなるしで面倒だよね!」

「血がヤバいよね。ドバドバだし、気分悪くなるし」

「私も水属性の清浄効果で何とかならないこれはキツい。病気の元にもなるから尚更」

「あーね、普段のサーシャは汚れたら勝手に綺麗になるもんね。自分の血は例外だったかー」

「下着がダメになるのがやだよね。洗濯も面倒だしさ」

「洗濯かー…なら吸水…構造と構築…下着に貼り付ける形に…使い捨てに…廃棄処分は…ズレないように…膨れて包む…やれそう」

「マジ?ならお願い。有ったら絶対便利だし」

「後は気分が楽になるの欲しくない?毎回ストレスやばいんだよね」

「分かった。やってみる」

 

(まあ、私はそんな物として受け入れてたけど…やっぱり嫌な人は嫌なんだなー。でもそうか、生活に必須になる物…言うならば生活必需品…必需品…これは良い概念だ…その工程を行う際に必須になるもの。MMみたいな物…)

 

 あ、サーシャが新しい概念を理解した。順調に成長しているな。

 いやー、周回の固有魔法がなくてどうなるかと思ったけど、ゲーム以上にサーシャが賢くて安心出来るな。コレならどの相手とくっ付いたとしても良いエンディングに入れそうだ。

 個別ルートに入ると他ルートのキャラとかバンバン死ぬけど、俺はそこまで生き残らせたいって拘りはないからな。サーシャが幸せで一番最悪な展開の世界崩壊とか起きなきゃ何でも良いぞ。

 

「で、他に困ってることはある?」

「…なんかあるかな」

「なくね?それより他の事話そうよ。恋バナとかさ。ちなワタシはダルク。冷静、賢い、優しい、サーシャの研究に着いていけてる。言う事なしでしょ」

「良いねー私ならダンテ先生かなー。顔が良い高嶺の花って感じが良き。授業はもう少し優しくして欲しいけどねー」

「次は私か…私はなー…先ず水魔法ってだけでマイナス印象持たれるだろうし、学園に居る時は良くても、記憶が戻ってから撤回されるなんてザラらしいから…好いてくれるなら誰でも?」

「ええ〜!?サーシャなら寄り取り見取りじゃん!みんな狙ってるよ!?」

「そうそう、私らより才能あるし、頭も良いじゃん!水魔法ってだけでそんなのなる?」

「なるんだなーこれが。記憶を思い出したら分かると思うよ」

 

(正直私が結婚や家庭が作れるって思えないんだよなー…そりゃ欲しいけど、誰だって()()()を持ちたくはない。女が賢いのも…結婚には不利だなー)

 

 サーシャと二人の相違が出たが、コレはサーシャの方が正しい。

 設定集と大霊書庫に有った寓話でこんなのがある。

 

「猿の子」

 ある所に、火と水が互いに惹かれ子を授かりました。

 しかしその子は親と似つかない猿の子でした。

 属性を持たず、人のように賢くもなく、毛は薄くても醜悪な姿をしていました。

 人々はそれから水を迫害し、属性が落ちることを拒絶するようになりました。

 

 要は原始人である。実際は化粧をした現代人程度の容姿があるとは言え、精霊の魔物を起源とした「人類」よりは醜いのは間違いない。空想から現実に堕ちる様に神様が調律したとはいえ、「それ」になる恐怖は凄まじいんだろうな。

 友人になるのは良くても、その先が困難極まりないのだ。

 だからこそ、これ程の才能があるのに恋愛ゲーとして成立するくらい手応えのある攻略難易度になる。

 サーシャがその才能にかまけずに自ら攻略()()()()ではなく、()()()になる理由にもなる。

 

「…欲しいよ、私も。老人になった時、死ぬ時には誰かが隣にいて欲しい。私の全てを託せる子供が欲しい。生きた証が欲しい。私は魔法が第一に好きだけど、六年前におじいちゃんが死ぬまでは家族が一番好きだった。その"家族"を、"家庭"を一緒に築いてくれると言うなら……」

 

「……クリティカルな話題出しちゃった」

「…ごく…言うのなら?」

 

 サーシャは一瞬、その言葉を言う時に光のない据わった眼になった。

 

「‭─‭─‭─‬私は、その人の為なら世界も壊してみせる」

 

 その言葉に嘘偽りがないことは、俺が重々承知していた。

 ゲームで何度もやり過ぎで世界を滅ぼしてたからな。

 今はダンテとの契約で研究内容に是非を取ってたらやってはいるものの、ゲームのサーシャですら研究の発展の()()()()で壊してたからな。

 効率プレイをするとそうなるんだよ…。

 周回で研究を10年突き詰めてみるとな、宇宙に飛んだり無限増殖する生物兵器とか作れる様になるんだよ…やり過ぎでバットエンドになっちゃうんだよ…。

 程々に楽しくプレイが出来る範疇で、尚且つやり過ぎない調律が求められるわけだ。プレイヤーの腕が鳴るな。

 

「…マジやばー…」

「錬金と教養のテストで盛大な"花火"を上げただけあるわー…」

「あ、見てたの?やだもー!あれ即席で作った未完成品だから忘れてよー!本当ならアレの数千倍は出せるんだよ?"今の所"使い所はないけど…あ、完成品ならあるから持ってくる?理論上上空10万m先に使えば問題もないしさ、丁度良くない?」

「なにが?」「丁度良いの?」

「試運転の理由になる」

「だめー。ワタシ世界が終わる引き金は引きたくないわー」

「サーシャは兵器じゃなくてさー、もっと平和なことを考えようよ。化粧品とかさ」

「化粧……変身…変装…アクセ…あっ…水魔法…幻像の造り方は…遺伝子の改造と復元…カートリッジ方式…我が子の為になるのは…」

 

(まあ本気で言った訳じゃないし、話題逸らしには乗ろうか。しかし化粧かー…時短や手軽さがあれば面白い…見た目の醜悪を誤魔化す…あ、もし仮に子供が出来たとして、コレが使えれば受け入れられるって物を作り出せば…私の将来の子供へ送る生活必需品…今回はガチるか)

 

 サーシャの意識が逸らせたと判断すると、話してた二人は冷や汗を拭った。

 悪く思わないでくれ、サーシャは話の流れ次第で不穏な空気を出す癖があるけど、心情は普通なんだ。ブラックジョークって奴なんだ。

 でも子供を周囲に受け入れられる見た目にする為に遺伝子から弄ろうとするのはやめよう?やり過ぎると薔薇族を悪化させた奴になるぞ。

 

「ほっ…」

「やっぱり怖いね、世界を壊しかねない人って」

「MRC作ってきた時点でもーワタシらでも分かるくらいにはとんでもないよね」

「ねー。どれだけヤバいか分かんないけど、ヤバいのは分かるよねー」

 

「仮想と現実…認識変化…魔法の抽象化…時魔法の劣化再現からして…ならば魔法には属性に寄らない体系が…深淵との会話を世界単位に…他世界の法則具現化からして…」

 

 早い思考回路のせいで心は読めないが、呟く内容からして今までの知識を総動員しているのは分かった。取り敢えず属性魔法と固有魔法とは別の体系理論はやり過ぎに半歩入ってるからやめてくれ。

 一応ダンテ先生との契約から「許可のない王国ないし世界に被害を与えかねない研究を禁ずる」約束はあるから、それには従った内容だとは思うけど…側にいる二人が不穏な空気を感じ始めたぞ。

 

「…なんで紅を入れるだけでこんな単語出てくるの?」

「もう自分だけの世界に入ってるし…こわー…」

「止めた方が良いかな…止められるかな…」

「無理じゃない?我が子って言ってたし、将来産まれるかもしれない自分の子供の為に考えてると思う。つまりおかあ。おかあには勝てんなー」

「…だねー。子を思う母には勝てないわー。おとうなら兎も角なー」

 

 この世界は全員見た目が良いせいか化粧が発展してないからな。顔に紅や紫色を添える程度の話でこんなことを呟いか始めたらそりゃあ怖がるか。

 そして二人のギャル語の語源が読めてきたぞ。おとう…おかあ…間違いなく訛りだ。

 彼女らが住んでた地域はギャル語っぽい言い回しになってる…つまり商国方面の村か。

 確か、サーシャの居た帝国方面の村は王都に近く、商国方面は若者言葉っぽくなり、神国方面は古臭くなるらしい。

 コレは其々の国との交流の結果そうなったらしいが…実際に見たのは初めてだな。

 ゲームだと特定の褐色ギャルキャラの設定に乗ってあっただけだったし。

 そいつ神国方面だったけどさ。…死語は古臭いに含めて良いのか?

 

「……良し、「遺伝装填(コーディネート)」とでも呼ぼうか。体内にある間はあらゆる恩恵を与える魔法の新しい姿。食事という行為に魔法的意味を見出す「魔法のレシピ」、魔法を料理という形で形成し、消化によって優性(バフ)を獲得する。"理論上可能な魔法体系"」

 

「あれ…それだけ聞くとむしろステキじゃない?化粧かは疑問だけど」

「食べたら力が溢れる…イメージし易いかも。お腹いっぱいになると元気になるよねー」

 

「そう、その現象に魔法の力を上乗せする」

 

(そこまでなら普通の研究、()()()()()()毎日食べさせる事で肉体を"自然な形で"今の人類に限りなく近付ける。肉体を構成するのは食事。なら、この工程を利用すれば穏当に受け入れられる。コレが遺伝の追加装填、遺伝子の化粧(コーディネート)計画だ)

 

 お、まだマシな方に行ったな。ダンテ先生との契約はしっかり効いてるようだ。

 食べるとバフが入る食事ってだけだし、ゲームなら王道な要素だ。

 バフ系のアイテムが増えたり、戦争時の兵糧に追加効果を乗せられて便利だぞ。

 

「既にカーリーへの日々のお礼として渡したクッキーで似た様な事はした。出来る」

「…その研究ならワタシ、参加してみたいかも。良い物いっぱい食べられそー」

「なら私もー。食べ物なら食べる人は沢山居るよね?」

「歓迎する。食事はみんなとする物。この研究は人が多いほど良い」

 

(治験に私は不向きだからなー…不利な効果は清浄特性でなくなるし。でも、友達になれそうで良かった。コレから関わっていくなら仲良くなれるチャンスもあるよね)

 

 お、授業大成功だな。新しい研究員が二人増えた。

 サーシャも嬉しそうだし、教養の授業効果が現れ始めたな。

 こうして知らない人と自然と話せる機会が設けられるから、人手を増やすチャンスになるんだよ。

 そして、時間だな。

 

「ではそこまで!話してる途中でも切り上げてくださーい!」

 

「あ、時間だ」

「じゃあまた今度ねー」

「やる時は食堂で声かけてねー。入り口から四つ目の列にいつも座ってるからー」

「うん、また今度」

 

 さて、次のメインストーリーが進む6月中旬の上半期テストまではこの調子も続くだろう。

 それまでに避けられるイベントを避けられたら…だけど。

 終わりの時計塔はあくまでも暗躍してるだけ。ゲームのメインは戦争だ。

 メインストーリーもそれに準ずる。

 

 今は5月、しばらくはフリーとサブ、個別のイベントが挟まる事になりそうだ。

 

 






「研究員」
 学園での評価を上げ、教養の授業で見つけましょう。
 人との繋がりは礼儀を伴ってこそ、人の力とはそうして手に入る物です。
 もし中々仲良く出来ないのなら、私、アニー先生にご相談を。
 選択肢やプレゼントに相応しい物を、一緒に悩んであげますよ。

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