不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

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 今のサーシャの魔法使いのレベルは薔薇族やシーシャの蠱毒のお陰で25(MAX)です。
 ステータスはこんな感じ。

魔法使い(水) Lv.25
HP131
MP500
力7 守2 速12 器11
知30 魅27 謀33 運9

 「上級職」への転職は名声値を稼いで、称号を手に入れる必要があります。




礼・氷・三五

 

 

「はい、それではね、属性学を始めていきましょう。はい、今日も帰属性第一層への挑戦となります。才能があり、やりたい方だけ残って下さいね、はい」

 

「相変わらず才能の世界だね」

(最初こそ素質を伸ばす方向だったのになー…ある程度進むとやっぱり才能か。一応私は有る側らしいけど、相変わらず実感はないなー)

 

 属性学、それは才能を伸ばす学問。

 ここで言う才能とは、複数の属性を持ち合わせられる魂と脳に関係するものだ。

 そもそも属性って一つの魂に一つだけだからな。それを増やすんだから、碌な方法では無い。

 だってこの技術は、禁忌の研究に並ぶ、「鏡魔法の探究」から派生した物なんだから。

 

 四大大罪、それはザルな法律にも定められたマジでやっちゃダメな物。学園の授業は、そこから派生したものが幾つかある。

 禁忌からの錬金、鏡魔法からの属性学、魂の改造からの神学、新人類からの教養。

 それは戒めであったり、問題ない部分の活用であったり、奇跡の根源であったり、対抗策であったり、その理由は十人十色だ。

 錬金ばかり言われるけど、地味にここら辺もヤバいんだよな。

 その中だと属性学は安全だ。犠牲になる世界が有るのが欠点だが、才能のあるこの世界の人物には害はないのだ。

 

「それではね、はい。()()()()()()()()()()ね、はい。それで自分を見つめ直せばいつかその属性の自分と出会えるはずです。出会ったらすかさず手を握りましょう。逃せば2度と出逢えません」

 

「はい!…とは言ってもねえ…」

(さーて今日も鏡と向き合う時間だ。休憩代わりにやってるけど、鏡魔法の術式を作った事のある身としてはかなり碌でもない魔道具だ。なにも考えずに手を握るのは憚れる)

 

 並行世界の自分の魂を誘拐してるらしいしな。そりゃあ遠慮もするか。

 才能が全てだが、逆を言えば才能さえあればここほどチョロい勉強もないとも聞いたし。

 才能がない事例?ダルクみたいな素で珍しい属性持ちの奴。鏡の魔道具に写った瞬間自分が殺到してくるぞ。

 

「そもそも稀だけどね。帰属性の自分は」

(かと言って他世界の自分を誘拐するのも…向こうからすれば一瞬とはいえ、世界単位だとなー…)

 

 サーシャを始めに何百人かの生徒が曇った鏡を見つめてる光景はシュールだな。

 偶に別の自分が映し出されたと思わしき生徒は魔力視で属性を見ては残念がっているし、神学の祈りも地味な光景だ。側で見てもつまらないが、かと言って自分同士の戦闘が始まった時に俺が居ないとダメ、割とこっちも辛い授業だな。

 

 …自分でやれば違ってくるか?

 

 その時ふと思った。俺が映るとゲームのリーロとかに逢えるのかと。

 暇なので早速試す事にした。

 

『サーシャ、私が映るとどうなるかやってみて良い?』

「んー…MRC入りのMMを開発した世界線が他にもあれば…映るだろうけど…良いけど私と一緒ね」

『ありがとう!』

 

 早速鏡に一緒に映るように座る姿勢を模索した結果、サーシャの膝上に俺が座る形になった。

 …これ3歳の女の子の見た目だから許されてるけど、中身的にヤバい光景じゃないか?人形みたいに抱えられてるけど、これ許されるか?

 兎も角、早速鏡を見ると、曇っていた筈の鏡が綺麗に映り出した。写っている人だけは綺麗に見える鏡の魔道具、実際にやってみると不思議な感覚だな。

 

『おおー、まだ普通だ』

「一応おさらいね。この魔道具は「可能性の鏡面」、使ってる人にしか見えず、平均5分置きに別の可能性を歩んだ自分が映る」

 

 そしてサーシャは、自分がしている手袋を片手だけ外し、俺に渡した。早速付けておく。

 

「そしてこの手袋が「拐い手」、「可能性の鏡面」に写った自分の魂を拐える物で、向こうが手を出した時の対抗手段になる。もし向こうが手を伸ばして来たら、手袋を付けた方で全力で鏡を割ってね。その世界とは繋がらなくなるから」

『分かった、気を付ける』

 

 なんだかんだサーシャが居ない時に属性学は受けてなかったし、ちょっとワクワクする。

 危険もあるが、それ以上に別の可能性を歩んだ自分が気になるんだよ。スケートのメダリストになった自分とか映らねーかな、そしたら俺は小躍りする程度には嬉しいんだけど。

 そんなことを考えている内に5分経ち、鏡面が水滴が落ちたみたいに波紋を広げ始める。始まったらしい。

 

『始まった…!』

「ふむ…学生の私達だね」

 

 映ったのは、サーシャに抱えられたリーロ、つまり自分達とほぼ同じ世界だった。

 相違点はサーシャの雰囲気が気持ち明るいのと、リーロがより女の子っぽい感じがする所だろうか。

 おー…俺の行動とは別に動いてる。あ、ピースしながらウィンクした。それなら俺は鬼瓦の真似だ!トゥース!

 

『お、向こうのサーシャの方にウケてる。変顔は音が聞こえなくても通じる良い文明!』

「代わりに向こうのリーロが『あれは私じゃない!』とばかりに慌ててるね。あ、向こうのリーロが叩き割った」

『ちょっと涙目だったし、私より女の子してたね!』

「ぽかぽかと私を殴ってたし、こっちより年相応な感じで…ふむ」

 

 ほんの少しだったけど、あれの中身俺じゃないな。

 憑依前の普通のリーロか、それとも俺とは別の憑依者か。

 どっちか分からないが、あの時死んだ俺が憑依する原因がランダムな物なら中身が別の可能性はあるのだろう。ある意味順当な結果だと思う。

 

『あ、また波打ち始めた!』

 

 そうしている内に5分経ち、今度はサングラスをかけたサーシャと、同じくサングラスをかけたリーロが映った。

 服装は水着で背景が砂浜であることを見るに…海のある深淵で遊んでやがるな?何してんのマジで。ギャグイベに突入しやがって…あれサーシャが死ぬパターンがあるからリスキーなんだぞ?

 なんで普通の鏡と授業用を間違えて持ってきちゃったんだお前達は。あーほら慌ててるし。

 

『ま ぬ け!』

「私達も行くなら気を付けようか。持ち出し自由にかこつけてこうなるのはごめんだよね」

『深淵は魔物も居るのに…安全対策の研究なしで遊ぶと死にかねないのに…!』

「…海で遊ぶ為の技術…この場合はネットと人員とマニュアルか…一応魔力で文字作って注意してあげようか」

 

 サーシャは魔力で文字を作り、それを察知したのか、向こうのサーシャもサングラスを上げて魔力視をした。

 どうやら意図は伝わったようで、軽くお辞儀をするとそのまま鏡を横にずらし、繋がりを遮断した。

 しかし海かー、この世界には深淵以外には無いから珍しいんだよな。行けたら行きたいもんだ。

 

『海かー…』

 

「…良し」

 

 俺の呟きに何やらサーシャが反応したが、まあ大した事にはならないだろう。

 程々に楽しめたし、次でラストにしよう。

 鏡面が波打ち、新たな可能性を映しだす。

 

 略奪兵に負けて奴隷になっているサーシャを引き連れた帝国の軍人と、その人に持たれている秒針が映った。

 奴隷用の首輪こそしてはいるが、ボロ切れではなく研究員の様な見た目をしている所を見るに、頭脳は買われてるようだな。

 頭脳奴隷兼使用人ってところか。最初の略奪兵に負けるとか、バッドエンドの中ではまだ運がいいな。大成はせず故郷の村も貞操も守れないが、命と生活は不自由しない。

 

「あ、氷属性」

 

 サーシャは即座に手を伸ばして鏡面に映るサーシャに触れ、掴んで引き抜く様な動作をする。

 途端鏡面に映っていたサーシャは魂が抜けた影響で倒れ、軍人は倒れたサーシャに蹴りを入れて起こそうとして…。

 

「…これが世界の停滞。時間停止に似てるね」

 

 いざ蹴りを入れようとした所で鏡面の景色が固まり、時間が止まった時と同じく白と灰色に染まっていく。

 これが「可能性の鏡面」の更なる効果、魂を取り出した世界の停滞である。向こうからすれば一瞬で済む原理の正体だな。欠落を以てその世界に不完全を訴えて停止させる。

 鏡魔法の探究が中止された理由であり、仮に並行世界で闘争する場合、される程不利になるものだ。まだ神話の時代だから大した事にはなってないけど、シーシャが主人公になるゲーム辺りの将来に、これのせいで世界同士の戦争が起きるぞ。

 

 それにしても…。

 

『魂を取るのは憚れるんじゃ?』

「それは向こうが幸福な場合に限るよ。不幸なら、抜かれた側も不利益だけじゃ無いから」

『…そうなの?』

「私が死ぬまで私の力として動く代わりに、私の知識と経験を得られるんだよ。力になってる間は意識はないみたいだし、向こうからすれば一瞬でパワーアップして帰れる。個人単位なら相互に利益があるからこそ、授業として取り入れられてる訳だ」

 

 どうやら見えなくても持ってる感覚はあるらしい。持ってる時に手をワキワキさせていた。

 サーシャはそう言うと、抜き取った魂を額に突っ込み、魔力を氷に変換し、手で軽く挟んで砕いた。

 

 ピキキ…パリーン…。

 

「…脆い。余裕があったら最低限あそこから逃げて生活出来る魔法くらいは考えてあげよう」

 

 氷魔法は水と比べると足場作りやかまくらなど、移動や拠点作りに使える魔法だ。

 魔力が有れば雪を降らせたり、氷柱のドリルで穴掘りしたり、氷の車で大規模輸送も出来るぞ!

 

 攻撃?無いよ。秒針で殴る方が強いよ。

 この世界の氷魔法で使った氷は、生き物に強く当たるとクッキーよりも儚く砕け散る。

 なんで氷属性のサーシャが負けたのか明白だよな。水魔法の『渦巻』枠すら無いんだ。

 水魔法がサーシャの頭脳じゃないと救えない不遇だとすれば、氷魔法は戦闘面がサーシャでも救えない産廃な代わりに、土木に使える魔法だと言えるぞ。

 

『…このサーシャの為にも拐った方がマシ…かぁ』

「そういうこと。世界単位で見れば凶悪で悍ましくても、個人で見ればむしろ救っている。それが帰属性の覚醒だよ」

『これを覚醒と呼んでいいのか疑問だけど…それならいっかー』

 

 ゲームだとここら辺の説明はサラッと流されて、次回作の伏線になる塩梅だった。

 サーシャと俺には関係ないけど、知ってるとなんだか複雑な気分だ。

 感慨深いやら、途方もなく感じるやら、変な危機感が出てくる。漠然とした将来への不安だ。

 

『それで、この後はどうするの?』

「…覚醒はここまでにしようか。氷属性は得たんだし、もう新しい属性に用はない。念属性を狙うのはリスキーだしね」

『英断だね、授業が新しいものになる二年まで放って置く?』

 

 念はねぇ…ゲームだとバットエンドフラグになるから…。

 単体なら大丈夫なんだけど、「王の冠」とか「支配の腕輪」とかあるとな…。

 

「うん。代わりにこの時間は個人で氷魔法を研究する。水の特性は清浄だけど氷は知らないし、検証は山積みだ」

『特性かー…水以外は何があったっけ』

「ちょっと待ってね、寮に戻る間で教えるから」

 

 そう言えば水は綺麗になる清浄だけど、他の属性は知らないな。

 ゲームでは…見た気がするけど忘れた。なんだっけ。細かいことだって暗記復唱からは端折ったんだよな。

 サーシャは先生に帰属性のことを報告した後、教室から寮に戻る最中におさらいしてくれた。

 おかしいな、俺ってこういう世界観の豆知識を教える立場の筈なんだけどな。姉のリートと比べて不甲斐ない…!

 

 

「先ず最初に言っておくね、特性は魔力を消費せずに使える魔法みたいなものだよ。普通に魔法を覚えるなら、先ずこの特性を使える様にならないとダメ。そこから魔力の扱いを覚えるの」

 

 火は種火、火種を作ったり火力を上げたりする。料理に便利。

 熱は保温、周囲を任意の温度で保つ。瞬間冷凍で食べ物を長く持たせられるね。

 光は後光、背中から光を出したり日焼けを無効化する。暗いとありがたいよ。

 

「火属性はこんな所。種火は『火球』、保温は『保温』、後光は『光放射』の元になった特性でね、どれも水魔法に応用されたり世間一般に広まってるだけあってとても優秀なんだ」

 

 へー、『水球』や『水放射』の起源ってそこなんだ。

 基になる現象を再現する所から魔法が始まってる辺り、なんだか納得だ。

 

「次は風魔法。こっちも身近な魔法に繋がるよ」

 

 風は風纏、身軽に動けたり風を読んだり盾に出来る。高い所の木の実が取りやすい。

 音は音速、体を音にして音速で動ける。手紙屋さんに行くと会いやすいよ。

 雷は反射、力のそのまま跳ね返せる雷の壁が出せる。旅人に見せて貰ったけど面白かった。

 

「風はこんな感じ。風纏は『水纏』に繋がってて、音速を参考にした属性に変身する現象は火と風関係専用、反射も同じく。強いけど、土と水、火と風に明確な強さの壁が出来る理由になってる」

『…今のサーシャなら反射と水に変化するのは出来るんじゃない?』

「出来るよ?でも『水滑』で移動は充分だし、反射した所でたかが知れてるからいいかな」

『そっかー』

 

 めっちゃお世話になってる魔法の起源じゃん。

 でも最初から全部水魔法で再現できる訳じゃないのか。

 ゲームだと研究すれば出来てたから意外だ。

 もしかしてゲームで『反射』や『水変化』の魔法の研究が終わった辺りで注目される様になるの、この反射や音速を水魔法に落とし込んでたからか?

 

「続けていくね?土関係だよ」

 

 土は浮土、土の仲間ならなんでも動かせるよ。村に来たダンテ先生が壺を空かせて持ってきた奴だね。

 木は植木、魔力を種にして植物を生やせる。栄養は無いから食料にならないけど、桜や梅とか綺麗だよ。

 闇は星座、夜空に星を作れるらしいよ。夜にキラキラしてるのは闇属性の人達が遊んだりそれで連絡したりしてるからなんだって。

 

「…ここは一世を風靡している魔法の起源かな。浮土は『結界』、植木は『幻覚』、星座は『認識』、どれも「貴族狩り」で使われた魔法ばかりだし、今も現役だよ」

『すごい、私が死んだ原因だ』

「私が捨てられた原因疑惑でもあるよ。私の産まれ貴族かも知れないし」

『はー…昔と今って繋がってるんだなー』

 

 めっちゃ身近な魔法来た…俺の第二の死因じゃないか。

 これで全部か。なんだか見知った顔ばかりだったな。

 

「そして最後に…水は清浄、汚れや病気や魔法の異常を弾きやすい。多分状態異常全般に強くなれる魔法作れる。氷は今から調べる。念は嫌な予感がするから調べない」

『無属性は?』

「全部。あれは知ってればなんでも出来るのが特徴だし」

 

 ふーん…あ、そうだ。これはゲームでも大事だったし言って置くか。

 

『それなら清浄を魔法に出来たら今の暗殺主流に一石投じられないかな。今のままだと何かを世間に発表しても暗殺されて死にそうだし』

「…良いかも。私はこのコンボを使うつもりはないし、対抗策が広がるなら私が有利かも。護られやすくなるしね」

『絶対良いよ!うん、みんな欲しいだろうし絶対良い!』

「となるとー…生活用品、食事の魔法、特性の再現…うん、良い感じに溜まってきた。これから忙しくなるよ」

『うん!私も手伝うね!』

 

 ようやくゲーム知識を活かせた気がする。

 サーシャの進む向きを整える程度しかやってないけど、俺にはこれが限界だ。

 

 …戦争の準備なんて、活かさなくて済めば良いのになー。

 

 






「上級職」
 戦士に儀礼剣、魔法使いに称号、村人に商隊、全ての職はより上位の物を目指せます。
 レベルの上限が上がり、25→50→100と三段階の変化です。
 殺すほどに強くなり、しかし魔法を武器とするせいで全然気付かれないシステムですが、打たれ強く賢い存在になるのは間違いありません。
 是非武器を奮い、成り上がりましょう。

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