不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

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 最後の5人目の攻略対象と、三日に渡る中間テストの始まりです。




依・存・三七

 

 

「『魔法大会』?」

「今度の月末休みに、王国主催でやるそうだ」

「…早くない?」

「予定は早く立てる方が良いだろ?」

 

 自習の時間、()はサーシャと一緒に勉学に励んでいた。

 サーシャは語学を、俺はこの世界の歴史だな。元々この世界の住民であると分かった以上、妙な遠慮はせずにこの世界に馴染む努力をすることにしたのだ。

 一人称は…心の中はまだ俺で通させてくれ。直ぐに踏ん切りは付けられないからな。

 あのことは俺とサーシャの二人だけの秘密だ。少しずつで良いだろう。先ずは地に足をつけた思考からだな。

 

『魔法大会かー』

 

 それは兎も角、魔法大会である。

 ダルクが誘ったこのイベントは、王国の示威行為が多分にあるものの、学生としては自分の実力を測れる良い機会でもある。通しで三日、朝から夜までぶっ通しでやるぞ。

 

「私戦闘はすごく弱いよ?参加しても直ぐに散らされる塵芥だけど」

「それは決闘や集団戦の部門だろ?ほら、ここを見てみろ」

 

 そんなスケジュールで学業は大丈夫かって?問題ない。

 この世界は週末に1日の休みがあり、月末に一週間の休みの週があるのだ。4月は中間テストで潰れ、5月は研究と事情聴取で潰れていたから何気に初の純粋な月末休みだな。

 ゲームならイベント目白押し、長期間のクエストや、攻略相手とのデートも有るからここで差を付けたい所だな。

 その前に6月中旬…明日から定期テストがあるけどさ。メインイベが進行して世間が荒れるだろうし怖いもんだ。

 

「…()()()()?」

「魔法の芸術さを競う部門だ。如何に人を傷付けず、尚且つ美しい魔法を使えるかで競うんだ」

「へぇ。ダルクはどうするの?」

「俺は芸術部門だ。コレでも副科目は芸術だしな。光の色を変える魔法で参加するんだよ」

「あー、副科目か。ならそうなるよね」

 

 ダルクは4月からサーシャの研究に参加しているが、それはそれとして副科目にも参加するようになった。

 ゲームだと心に引っかかった記憶を探る目的で入ってたが、此処だと別のクラスに行った妹を探す目的で入っている。一クラス100超えるからな…手がかりはMMの姉の顔だけ。

 そう簡単には見つからないまま続けて、最近は芸術の面白さが分かってきたらしい。

 

「それでどうだ?他にも魔法での演奏、魔法を利用した競馬、魔法を使った狩りの腕争い。副科目にあるのは大体部門としてあるぞ。いつも研究ばかりだし、偶には出たらどうだ?」

「ふぅーん…まあ、運動不足なのは実感してるし、折角だからどれかには出るよ。もし芸術で会っても遠慮なくやるからよろしくね」

「ああ、その時は正々堂々競い合おう」

 

 ダルクが立ち去ると、サーシャは大会のチラシを畳んで懐に入れた。

 口角が上がってるし、参加はするだろうな。

 

『楽しみだね!どれに参加する?』

「芸術と集団戦、後は流れで飛び入りかな。面白そうならどんどんやろう」

『ワクワクだー!』

 

「自習の最中でしょうが、皆さん注目して下さい。ダンテ先生から言うべきことがあります。」

 

「やべ、席につけ!」「なんだろー?」「テストか…」

「今回は何があるのかな?」「後で話そうぜ!」「…んあ?」

 

「…テストに関してか」

(リーロがMMに戻った…何かあるんだろうなー)

 

 まあその前に定期テストだ。上半期で頑張った成果を注ぐ物にして、騒動が確定してる所だぞ。気合い入れて行こう。

 

「今回の定期テストは事前にチームを組んでもらいます。最低二人、最大15人、MMは人数に含みません。明日から3日続けて行う試験です。よく考えて組みましょう。」

 

「チーム…」「中間テストと似たようなものか?」「ねえ組もー?」

「友達誘うかー」「実力ある奴が欲しい…」「ふーむ…」

 

「そこは予想通りか…」

(中間テストでチーム組んだ方が有利になるようにしてたし、其処は順当かな)

 

 数が少ないほど好感度が稼げて、多いと平たくなるぞ。

 ここはサーシャが誰を選んでも問題ないな。最終的に合流できるし。

 ダンテ先生は手を挙げて、ざわつく生徒を静かにする。テストでやることを言うみたいだった。

 

「‭─‬‭─‬今回のテストは「ミニチュア都市運営」です。今まで学んだことを活かして、より発展した都市を作ったチームが最も多くの賞金を得られます。赤点ラインは都市の消滅です。」

 

「「「…ミニチュア都市?」」」

 

「ミニチュア…?」

(中間テストみたいな感じかなぁ?)

 

 一回似たようなものを不意打ちでやらされた分、生徒には耐性が出来ていた。

 だが、次にダンテ先生が指パッチンで全生徒の前に真っ白な箱を出したのには驚いていた。

 

「では約束事を説明します。今から貴女方に時と転魔法で作った魔道具「反映箱」を三日間お貸しします。中を開いてみてください。」

 

「切れ目は…暗号…語学で習った所だ。解答方法は…魔力の糸による文字だね」

 

 サーシャが真っ白な箱に映った問題を解くと、上部の蓋が開いて中を覗けるようになった。

 その中にはこじんまりとした街があり、周囲の土地があり、小さな人が生活していた。

 手を入れようとしても透明な壁に阻まれるが、指を滑らせると視点が動かせる。

 事前の情報も併せて直感的にコレを育てるのだと理解させる仕組みだった。

 

「反映箱、その効果は世界の何処かにある街の過去…街として認められた時間と繋がり、街の管理と発展を行える物です。王国、神国、帝国、商国、どの国の都市と繋がるかはランダムとなります。」

 

「他の人は…別の街だ。本当にランダムみたい」

(とはいえ、本当に世界中なのは出鱈目が過ぎる…王国限定にすれば街と認証する過程で条件を満たせるだろうけど…だから忘却して生徒に自分の所在を分からなくさせた?)

 

 サーシャ大正解。その辺り、ゲームでも王様は頑張ってたからな。

 この定期テストはその成果だ。ただでさえ少ない貴族と管理者を補う為の苦肉の策であり、テストとしてはすごく実践的なものに仕上げた物。ゲームで言ったら内政の予行練習(チュートリアル)だな。

 

「ただ、本当に繋がるには特定の条件を踏む必要が有りますが…それは今は良いでしょう。ともあれ、貴方達の前にある小さな都市は、現実と変わらない反応を示す事さえ理解出来れば構いません。」

 

「現実(仮)…ってこと!?」「おいおい領主の体験会か」「昔の姿…この人達は本当に生きてるんだ…」

「ねえこれフルーツ村じゃ…」「地元当たったとかマジヤバ」「…故郷が誰かの手に渡る?怖っ」

 

「三日間…その間は授業もないだろうし、付きっきりになるね」

(言うなれば…現実に反映されるかも知れない仮想現実。時と転の魔法が手を組んだらなんでも有りだね)

 

 今回のテストで育てた都市は上位1〜2名しか反映されないのだが、それでも影響は多岐に渡る。

 在校生が多少増減えたり、王国が強くなったりだ。変わる都市が一つだけでも、周辺の村や街に与える影響は甚大だ。

 交易、治安、税、水辺なら治水や使う水量など、変化は計り知れない。

 そしてコレの何が恐ろしいかと言えば、後知恵で統治が出来るという事だ。

 つまり既に王様の手によって全ての街をいい感じに管理し反映された箱庭。自分のものを反映させるにはそれを上回る必要がある。毎年一人か二人は居るのが逆に驚きだよな。

 

「概要は理解出来た所で…では、具体的に何がやれるか?‭─‬‭─‬なんでもです。時間を加速して様子を見る。戻してやり直す。街に降りて問題を解決する、自身の研究や知識を与えても良いでしょう。」

 

「コレで街を消滅させるのは確かに赤点だね」

 

「ですが、どうすればそれらの機能を使えるかは自身で模索して頂きます。解けない作りにはしてませんので、各自頑張りましょう。」

 

 其処に問題を仕込んで、使えてる機能が=で実力の最低保証になる仕組みだ。やる気を出させる手法だな。

 サーシャは此処までの説明を聞いてチームを組ませる理由はなんだと思っているが、すぐにダンテ先生は答えた。

 

「此処までの説明を聞いて「チーム組む意味ある?」と思われる方も居るでしょう。理由は単純です。この箱は、"近づけると大きくなるんです"……"チーム同士、確実に隣接した上で協力することが出来る"。最終日は全て合体させて…おっと、喋り過ぎましたね。あ、今回はチームではなく個人で採点しますので、チームのみんなに任せっきりにならないようにしましょう。」

 

「合体して確定で隣街…!?」「…どういうこと?」「…専業化し易い?」

「最後に戦争でもするのかしら…」「最大人数が15…」「最後どうなるの…?」

 

「思惑が絡まり過ぎる…最適解は無理か」

(単純な話にはならないよねー…三日かけてやるなら、少人数の方が戻し易い。数が居るのは有利だけど、災害時に()()()()()()()()の争いになる…痛し痒しか)

 

 数が多いと便利だぞ?魔物の襲来で周りに頼れるし、技術交流や交易や利益が盛り沢山だ。

 代わりに点数が個人のみである影響で、足の引っ張り合いになりかねないけどな。

 賞金も景品も、現実に分かりやすく結果が出るんだから。

 少人数?多数とは逆の利点と不利がある。

 

「では説明は終わります。今から10分、チームを組みましょう。最低2人、最大15人。終わった方から手を繋いで着席を。」

 

 ダンテが片手を上げる。振り下ろされた瞬間が地獄の始まりだ。

 

「さて…走ろっか」

 

「‭─‬‭─‬始め。」

 

‭─‬‭─‬教室は、阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

 

 それが終わったのはきっかり10分後。

 サーシャの奪い合い、シープの奪い合い、魔法による妨害と逃走、そして共闘。

 起こったことは山ほどあるが、言うべき結果はチームの内訳だろう。

 

「宜しく。見事に私を勝ち取ったね」

「…不本意ですがね!」

「リサはオレとチームを組もうとしてたからね。でも来てくれたなら心強い!今回はヨロシクね。オレはグリム、しがない童話好きさ!」

「私、リサ、グリム、3人の少数精鋭か。良いね、同盟を組むなら良い塩梅だ」

『役に立つか分からないけど、サーシャのMM、私もいるからね!』

『己はオーブと言う。リサ様の元護衛騎士…らしい。記憶にはないが、騎士としての実力は衰えてはいない。仮に魔物の襲来があれば出向こう』

「オーブ、騎士の実力は認めますが、私の杖として働いた方が好ましいです」

『むううん…』

 

 先ずは王国革命のサーシャチーム。

 政治と研究+αの進みが早くなる組み合わせだな。

 リサと、リサと婚約予定のグリムのチームにサーシャを入れた形だな。

 つまり攻略対象だ。現時点でゲームで攻略対象だったのがどれだけ役立つかは不明だが、隠しキャラに会ったからには言わねばなるまい。

 

 癖っ毛のある金髪にカモメが飛んでそうな蒼い海を彷彿させる眼。

 趣味の寓話集めに影響されたのか、靴先はトンガリ、緑の旅人っぽい服を愛用している。

 本人はピーターパンのつもりでやった見た目にネットで付けられたあだ名は「グリーンデイ(自然ゴミ)」。

 愚かな長男、王国を継ぐ者としては余りにも政治に向かない能天気。

 若ければ小悪魔系で通せたが、背の高さと胡散臭さが災いしてる善人。

 MMの中身は小人っぽい蟲の大群。良いところは沢山あるけどダメ男っぽさが抜けない奴。

 ゲーム開発者はなぜグリムを隠しキャラにしたのか?

 グリム・フォン・サテライトだ。王国継承者長男だぞ。

 

 罵倒が多い?俺はこのキャラを攻略出来てない…少なくとも()の記憶には無いから全部ネット情報だ。…多分()は最後までやったんだろうなー…その記憶がないとか…家族の名前も顔も思い出せないし…あれ?私って生きる価値あるかな…?

 役立たずのリーロはここで死ぬべきでは…ダメだ、死んでも巻き戻るばかりだ。眺めることしか出来ない…。

 

 ええい!ネガ禁止ー!そういうのは良い結果になった試しがないからな!

 私にはサーシャがいる!だからだいじょーぶ!

 

 …愛されてはいるが、攻略キャラとして見られてたかは疑問が残る感想が多かった。それで良いじゃないか。

 引き続き他のチームを紹介しよう。

 

「…サーシャだけは捕まらなかったな」

「最後にタッチしてたのがねリサちゃんじゃなければねー」

「別に良くない?研究は頼りっぱなしだし、私らで頑張ってみよ?」

「芸術の知り合いも3人と研究の仲間が2人。俺を含めて6人か。先ずはお互いに自己紹介をしよう」

 

 研究芸術のダルクチーム。ダルクとモブ5名の平均チームだ。

 文化と研究の進みが良いと考えれば悪くはないだろう。地味だが、普通のチームよりお互いの仲が悪くないのはかなりのアドになる。ダルクのリーダーシップ次第だろう。

 

「つべこべ言わず、勝たせてやるからついて来なさい!」

「お嬢様が頼り甲斐のあるお言葉を…!」

「ヘル、持ち上げは時と場合によると心得なさい。今は邪魔よ」

「お嬢様…」

 

 大経済のヘルシングチーム。

 金を稼ぎまくって金の暴力で殴る編成、脅威の15人チームだ。

 あの調子だと深淵がある王国の街(マップ)を引けたのだろう。商国式の経済戦略をやるのが目に見えている。

 

『みんな其々に良さがあるねー』

「今回は失敗しても戻せるからね。後知恵統治なら悪い結果にはならないよ」

『その上でどう発展させるのか、ワクワクだね!』

「…テストで」

「そうだね!今回はテストだけど、三日間一緒に頑張るんだ。楽しんでやった方が、顰めてシワだらけになるよりずっと良いとも!」

『ぇっ…ぁう…』

「どうして怖がるんだい?さっきまで元気に自己紹介してたじゃないか」

 

 急に声をかけられたのでサーシャの後ろに行くと困惑された。

 …? 自分でもなんで怖がったのかは不明だが、これでは失礼だな。

 背中から出て、返事をする。挙句に隠れたのは驚いたってことにしておこう。

 

『………びっくりしたー。そうだね、一緒にがんばろー!』

「うん。オレも急に出てごめんね?ほら、手を出して?コレで仲直り!遊ぼうよ!」

『…王子、はしゃぎ過ぎないように。まだチーム登録が終わってません』

「硬いこと言わない言わない!騎士は硬くなってみんなを守るのが仕事でしょ?その上言葉まで硬くなるなんて疲れて石になっちゃうよ!」

 

 グリムが俺の両手を握ってクルクル回り、リサの騎士(MM)が諌めても変わらずにらんらんと笑って踊った。

 今じゃなければ楽しい踊りだけど、今は周りの目がキツいからやめてくれ。

 

「コレが婚約者…王国を継ぐ者の姿ですか?コレが……おぉ…」

「…ふむ」

「…友人として相談するのですが、コレを矯正する方法はありますか?」

「あるけど作りたくない。洗脳も刷り込み教育も、子供の夢を壊すのも趣味じゃないから」

「なら仕方ありません…私も根気強く向き合います」

 

 二人がそんな風に話し合っていると、ダンテ先生がやって来た。チームの確認で周っているらしい。

 

「此処のチームは3人…と。チーム名はどうしますか?」

「あ、ダンテ先生。それなら「童話の王子と姫と従者」で」

「了解です。74番目のチームなのは覚えておいて下さいね。では次は…」

 

 ダンテ先生へのチーム命名を踊らされながら見守りつつ、目が回ったのでダウンした。

 

『うーん…目が回る…』

「あちゃー、ごめんよ!悪気は無かったんだ。ほら、オレのマントの上で横になると良い。そうすれば気分も良くなるさ。そうだ、歌も歌おう。穏やかな子守唄なら気分も安らぐ筈さ」

 

 うーん、良い人なんだけどね…余程大切に育てられたのか精神年齢が…よく言えば天真爛漫、悪く言えばグリーンデイ(自然ゴミ)に出したくなる奴だ。おバカって言ってやっても良い。

 

「グリム、あんまり人の子に迷惑は掛けないで下さい!」

「私の子供ではないよ?」

「あわわリサ、そうカンカンにならないで。今リーロちゃんに必要なのは燃えるような熱じゃなくて、涼し気になれる穏やかな心だよ!」

「もしかして自分が怒られてるとは思ってないタイプ?」

「違うのかい?」

「グリム!あなたって人はー!」

 

『コレでも己は水属性だ。ほら、飲めば多少は良くなるだろう』

『ありがとうございます…ぷはぁ…サーシャの水より硬いですね』

『王子曰く、己は騎士だからな。水も自然と硬くなったのだろう』

 

 単にアルカリ性なだけ…とはいえ、性格が水に影響を与えるかは不明だし、ここは正しいって事にしよう。

 ゲームで見たことのない組み合わせでも上手く行くと思ったんだが…思ったより噛み合いが悪いチームだな。

 

『「はぁ…」』

 

 奇遇にも、サーシャと一緒に溜息を吐いた。

 

 






「ミニチュア都市」
 「反映箱」と呼ばれる魔道具を用いた定期テスト。
 街認定された瞬間から再現されていて、現在に至るまで自在に統治する事が出来る。
 「反映箱」同士でくっ付けば大きくなり、複数の街を同時に統治することも可能。
 上手く統治するには、今まで学んだ全ての学問を活用する必要があり、仮に国王の統治を上回ればその結果が現実に反映される。

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