不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

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 予定通りと予定を投げ捨てた奴。
 今後後書きで人物紹介があったらそれはサーシャ書き文字です。




市・零・四十

 

 

『なんで貴族であろうとするの?』

「あら、それなら貴女はどうして幽霊になってまで尽くそうとするの?」

 

 そう言って、共感性が欠けた『獲得』は学校を作り、何代も先の子孫の為に死んだ。

 

『なんで逃げ出さないの?』

「責務だからだ。それ以外にあるかね?」

 

 そう言って、悪銭と戦った『貸与』は銀行を作り、信用こそが大事だと言って死んだ。

 

『なんで立ち向かうの?』

「恐怖故。恐ろしく思う故に、妾の傅けにこの憐れみまで至らせたくない故な」

 

 そう言って、困難に立ち向かう『難題』は騎士達と共に立ち向かい、氾濫で犠牲者を出さずに死んだ。

 

『なんで祈るの?』

「何事にも終わりはやって来ます。だからこそ人の拠り所とはあるべきで、少ない時間を割く価値があるのです」

 

 そう言って、終わりを迎えた『往復』は孤児院を作り、新たな始まりを祝福して死んだ。

 

『なんで嘘を吐かれても諦めないの?』

「罪は平等で、裁きは不公平に御座います…故に人は思考し、罪の平等に裁きを合わせなければならない…思考とは、誠に有り難き物に御座いますなぁ」

 

 そう言って、絶えず考えていた『推理』は裁判所を作り、最後の一瞬まで罪人の償うべき量を計り続けて死んだ。

 

『なんでそんなに我慢するの?』

「簡単な話デス!裏切りとか悪意とか、悪口とか殺意とか、やってて楽しくないデショ?だったらそういうのナシナシ!たくさん食べれば問題ナシ!…この瞬間は、誰でも嬉しく感じた時が有ったデショ?」

 

 そう言って、飢饉で苦しんだ『逆転』は人々が食べられる食事を考案し続け、皆が大飢餓を乗り越えたのを見届けてから飢えで死んだ。

 

『なんで進み続けるの?』

「止まって何になんだよえっーーー!?オイラはなぁ!!今のままが良いとかほざく奴が大っ嫌いなんだよド腐れ脳ミソがーーっ!!分かったらお前も走れ引き篭もりがーーっ!!」

 

 そう言って、走る場所を求めた『停滞』は村と街を繋ぐ道の魔物避けを完成させ、子分に飛脚を任せて人々の心の距離を縮めて死んだ。

 

『なんで積み上げるの?』

「なんでって…みんなが誇れるものを作ってみたいからやん…先祖が頑張った分だけ立派な図書館を作りたいんだよね、当たり前じゃない?」

 

 そう言って、先祖の素晴らしさを知る『宣布』は世界中の知恵を集め、大霊書庫の大部分を担う立派な図書館を作り上げて死んだ。

 

『なんで新種族を作ろうとするの?』

「死にたくないから新しい身体をー…ってのは冗談ね。本当はー…面白いの作りたいんだよねー。でもこの世界余裕無くてツマんないまんまじゃん?だから余裕作って面白くしてやろうってワケ。キシシ♪」

 

 そう言って、神国の影響を受けた『大罪』はサーシャの残した本から遺伝子の概念を読み解き、最強の作物と家畜の初代を農家と畜産業に託して死んだ。

 

『なんで…そんなキラキラなの?』

「ご先祖がみんな凄すぎてーェ!やる事見つからなくてェ!取り敢えず金細工とか凝ってみたけどなんか違くてェ!でも金属に可能性は感じててェ!やっと見つけたのがこのめちゃ輝く白い金の鉱脈!何に使えるんだよもー!!鎧にしたけど目潰しにしか使えないよーォ!私もう先祖に顔向け出来ないよーォ!」

 

 そう言って、白金の鎧を纏った『黄金』は用途をサーシャの本から知り、義肢や教会に置く医療器具の職人を育てて死んだ。

 

『みんな死んだ…でも、全員後悔は無さそうだったな』

 

 見届けて、手伝って、会話して、約束して、数多の終わりと意思を知った。

 実際に問いかけた訳じゃない。ただ、その生き様からそう答えられた気がしたのだ。

 それに、終わりの時計塔に捕まった人達だけでこれだ。そうじゃない人達も含めて数えれば20人を超える。

 『複線』を初めに『日蝕』と『四門』…知らない人達が沢山いて、『複線』のバラを除けば、みんな名前は伝えずに死んでいった。

 きっと俺が背負わないように気を遣われたのだろう。そんな風に言い含められてる気がする。

 

『そうして発展して…いつの間にか王都よりも発展してないかな?』

 

 客室の窓から外を見ると、50階は余裕で超えてそうなビルが幾つも建っていた。

 多分隣街なんだろうけど…街と街の間も住宅地が沢山あるな。まるで東京みたいだ。

 サーシャ…俺の先祖はみんなすごいし、サーシャの期待にバッチリ応えられてるよ。コレはもう仕切り直して最適解を求める必要もないんじゃないか?

 だって1000年まであと300年あるんだよ?折り返しだけどやり直しは心が折れそうになるよ?

 

 ウィーーン。

 

 自動ドアが開き、今回の当主…二十五代目が入って来た。

 

『ようこそ、ニ十五だ…なにそ…えっ本当になにそれ?』

「義体ヤンケ手足無しに産まれたヤンケ。でも母チャンの作った「白金義体(プラチナイズ)」の魔道具のオカゲで生きてるヤンケ。それとコイツ妹ヤンケ挨拶するヤンケ」

「妹で〜す!わ〜、動いてると私に似て可愛いですね〜!」

『うわぷぷぷ…』

 

 振り返ると、全身ロボとふわふわした髪の女子が居た。

 今まで兄弟姉妹が居る方が少なかった事を考えると快挙ではあるが、そこに加えて現代的な服装だと感覚が狂うんだよな。

 絶対ゲームでもここまで発展してなかったし、『宣布』の時にサーシャが大量に置いていった本までは確認してないから…本当に大丈夫か?バッドエンドにならない?

 技術の過剰搭載で世界が終わる結末はイヤだよ?

 

「時間を纏う『時纏』ヤンケ宜しくヤンケ。オマエが妹の子孫ヤンケ?」

「もう〜お兄ちゃん、本来なら生きてなかったってギャグは笑えませんよ〜。あ、私は『時球』です。時間を物質化出来るってだけですけど、ぶつかれば老化や若返りとかやれるんですよ〜」

『相変わらず濃いなー…よろしく、二人とも』

 

 ご先祖達、みんな性格が濃いのばっかりなんだよな。

 はちゃめちゃだし、悪びれないし、取り敢えず勢いで解決しようとして…でも、みんな輝いて生きていた。

 会ったのはほんの数分だけなのに、脳と眼に焼き付いて離れなくなるくらい必死に生きていた。

 

「先ず何を伝えます〜?魔法使いが増えたこととかどうでしょう〜?」

「それよりも言うべきコトガ有るヤンケ。学園を言うヤンケ」

「あ、そうでした〜そうでした!王様が世界中の魔法使いを集めて学ぶ、王都魔法学園が始まったんです〜!すごいですよね〜、345年掛けて作っただなんて〜、私達には途方もない時間ですよ〜」

「ただチンタラしてただけヤンケ。態々1箇所に集めずとも王国だけで建てれば、周りも慌てて似たようなの作るヤンケ一人でやる意味ないヤンケ」

「も〜そんな事言っちゃダメですよ〜。きっと短命の私達には思いもよらない考えがあるんですよ。先祖の『四門』様の不老処置で長生きなんですから〜」

「時間の富豪ヤンケしばきたいヤンケ」

 

 おぉ、即座に二人の世界の空気が作られた。普段からこんな風に話してるって分かり易いな。

 それにしても、なんで不老処置を自分達にしなかったんだろうな。出来るならやればいいのに。

 

『なんで自分達を不老にしなかったんでしょうね。そうすれば寿命も気にしなくても…』

「…それ、本気で言ってます〜?」

 

 ざらりとした空気が辺りに流れる。何か変な事を言ってしまったみたいだな、謝ろう。

 

『あ、不快にするつもりは…ごめんなさい!』

「ソンナニ謝る必要はないヤンケ。妹、物騒ヤンケ収めるヤンケ」

「あ〜ごめんなさい〜…でもそっか〜子孫には()()は残ってないか〜…」

 

 え、寿命以外にもまだ聞いてないことあったの?他人事でも無いし出来れば聞いてみたいな。

 

『…その戒めを教えてくれませんか?』

「良いですよ〜。顔が似てて妹が出来たみたいですし〜身内なら知るべきことですから〜」

「率直に言うと"時魔法による不老は何処かしらの時間を奪ってる"ってだけヤンケ。そもそも時魔法で時間を生成するのは出来ないヤンケ。操ったり動かしたりがセイゼイなのは知ってるヤンケ?」

『はい、そこは知ってます!』

 

 思い返すと、サーシャも時間という物質を抽出する装置は作っても、無から創り出すことは出来てなかった。

 薔薇族の始祖として生き物を創造して、そこから時間を取れる生態を作ったとは聞いたが、それでも直接時間を創り出せてはいない。

 "何かしらに付随するものが時間"って事なのだろう。それが絶対だから、何があっても時間を作る時魔法は産まれない。

 

「そこで『四門』による不老のケースを見てみましょ〜。幾らでも長生き出来るってことは〜幾らでも時間を待ってる。"時魔法では時間を産み出せないのに、時間が幾らでもある"んです〜…さて、時間は何処から貰ってるんでしょう〜?」

 

 女性の問いに思考する。生き物には生き物の時間、物には物の時間がある。

 そのことを踏まえれば、生き物の時間を集めているのは理解出来た。

 だけど、それだけであんなに不穏な空気になるだろうか?

 だが、確か『四門』は主にサーシャが与えた出産に関しての知識を広め、出産で母子が死に難くなるように努めた人だった。

 その人が果たしてこんな反応にさせるような事をするのか?だが…言うだけ言ってみよう。

 

『…子供…とか?』

「わあすご〜い!大体正解です!正確には、"産まれるはずだった子供の可能性"ですね〜」

「ただ産まれなくなる訳では無いヤンケ。"王国民のそうなったかも知れない可能性を取ってる"だけヤンケ」

『うーん?例えばどうなるんですか?』

「そうですね〜…私達で言えば"短命が治る可能性"や"兄弟が産まれる可能性"から時間を採取してる感じですね〜。絶対に叶わない代わりに、1日2日伸びるんですよ〜」

「それを全国民にやれば一人の不老は余裕ヤンケ?でも不老が増えたら大変ヤンケどうなるか怖いヤンケ」

『こ…効率が悪い!』

 

 段々理解して来た。『貸与』が見たら顔を青くするくらいの鮫トレ(不等価交換)で人々の可能性を摘んで生きながらえさせてたんだ。

 え、王様の不老ってそんなヤバい品物なんだ。

 

『それ、もっと効果的な時魔法でなんとかならなかったんですか?『時球』でも若返りは出来るんですし、歴代で良い感じの時魔法の持ち主が出張れば…』

「あはぁ〜それじゃあダメですよ〜。それだとタイム家が全滅すれば終わりじゃないですか〜」

「それに短命のコトモ打ち明ける必要が出てくるヤンケ。軟禁でゆっくり終わりを迎えかねないヤンケ」

「初代はその日記に旅をした未来の事を書き記しました〜。其処に打ち明けず不老にする未来が書かれていた。だからその案は使えませんね〜」

『…よく分かりました。では今回の知識を貰いに行きましょう』

 

 二人を引き連れて大広間に向かう。

 驚くべき事実ではあったが、もう終わった話なら仕方ない。『四門』の時に気付かなかった俺が悪い。

 そして二人に当たり散らしても仕方ない。ピリついた理由が可能性の変換から来てるなら、二人にとってもこれは不服な出来事だから。

 何となく、サーシャの頭脳にしてはゲームの選択肢やエンディングが少ない原因かなって考えたけど…これも考えても仕方ない。俺に出来るのは、サーシャに伝えて頼み込むだけだ。

 …そろそろ、心から頼み込む必要があるだろう。

 

『だから…何とかならないかなぁ?サーシャなら寿命も可能性も、全部何とかならないかなぁ?』

[突然電話したと思ったら…時属性の短命と不老の時間捻出先ね…それならグリムも短命って事になるし…友人の婚約者が早死にするのは見過ごせない。良いよ、何とかする]

『ありがとう!サーシャ大好き!』

[うん。私もリーロは好きだよ。じゃあ引き続き宜しくね]

 

 サーシャに全力で感謝と好意を伝え、連絡が終わる。

 さすがサーシャ…なんでグリムに繋がるのかはピンと来ないが、俺以上に全てを知ってるな。

 

『…でも、グリムの名前が出てくるってことは…』

 

 あの言い方的にグリムの父が王様なら、母がタイム家になるってことか?なら900年代のタイミングで会うのかなー、グリムの母。…あれ?コレ、タイム家を変えすぎたらグリムとその弟が消える可能性あるか?

 

『でもサーシャなら何とかするだろう。だって私よりも賢いもん』

 

 信じてるぞサーシャ。何考えてるか分からないけど、みんなの為に頑張ってるのは知ってるからな。

 

 


 

 

‭─‬‭─‬神国の「大渓谷」の壁をくり抜いて作られた街、その宿屋の一室で二人の仮面を付けた男女が居た。

 

「王国の弱体化…ですか」

「そそ。ほら、今のままだとサーシャの影響が強い王国の勝ち確じゃん?それだと人の時代が来なくて困るんだよね」

「サーシャ…組織内での噂で聞いています。今後人類史に永遠に現れない大天才だと…生かすと世界を滅ぼすと」

 

 サーシャも何回か遭遇した組織、終わりの時計塔のまとめ役、0席(ヌル)と補佐役の11席(エルフ)である。

 人類の今後、数億年の歩みをより長くする為に動く組織の首脳陣は、その知名度の無さと拠点の不要さから、適当な安宿で会議していた。

 高尚な組織だがその在り方はボランティア組織に近い。その潔癖とも言える在り方は、この会議場に如実に現れていた。

 

「全く困っちゃうよね!世界の終わりにでも産まれれば、人類の復活にその頭脳が使われただろうに…まだ世界が出来てから千年よ?何作ってもオーバーテクノロジーだよ!」

「産まれる時代は選べない物です。かく言う私達だって、神がせっつかなければ世界の終わりかけで発足するような組織では無いですか」

 

 普段は個別に活動しているからだろう。久しぶりに出会った二人は、直ぐに本題には入らずに雑談を繰り広げていた。

 首脳陣がこのスタンスなのが、この組織が不承不承に創られた組織であると語っていた。

 

「あーあのヘラヘラ神?イヤだよねーあれ!僕がタイム家の最後のメイド長をやってたからってさ、組織作れってずっと夢に出て来たんだよ?バカだねー、それならお前の口を縫い付けて黙って10年も待てば勝手に出てくるだろうに!」

「ヌル、神国でそういうことは内密に。神への愚痴大会が始まって会議どころではなくなりますから」

「あ、エルフ〜ごめん!ここじゃ僕の経験は序の口なの忘れてたや!」

 

 酷い言い草ではあるが、神国での神の扱いはそんな物だった。

 王国民が聞けば驚くだろう。神国と名乗ってる癖して神に対してのヘイトがあまりにも高いのだから。

 二人は笑いながら其々ベッドの上と椅子に座り、背筋を正す。どうやら親睦を深める時間は終わった様だった。

 

「さて、本日議題はさっき言った通りだ。今のままだと先の戦争で王国が勝つ。それを阻止する為に王都魔法学園に出向いて欲しい」

「王国が勝つと何か不都合が?あの国が勝てば永遠の停滞によって、人類史の長さだけなら一番伸びるではないですか」

「うん、()()()()()()()()()()()()()()ね。長さならそれでも良いよ?でも神様の目的は神になる人類を増やすこと。刺激がないとダメなんだよ」

 

 終わりの時計塔には、ある共通認識がある。

 二年後、どうやっても世界大戦が起き、そこで勝利した国家によって世界は大きく歩む方向を変えることだ。

 

 王国が勝てば神の家畜として安寧と停滞しかない世界が。

 帝国が勝てば人類の業で世界を壊しながらコロニーの中で繁栄する世界が。

 商国が勝てば人類の業で世界を壊しながら国家規模の会社が争う世界が。

 神国が勝てば人外に堕ちた元人類が狂いながら快楽を貪る世界が。

 

 どの結末になるか、どの国が勝利するのかは時計塔の力だけでは確定出来なかったが、概ねこうなるという結果を確認することはできた。

 

「ベストは帝国だ。神の力を望む人物が多く、帝商神の中では最も世界の壊し方が大人しい。神の要望を満たすならここだろう」

「はい、それは周知しております。ですが、それは最もあり得る可能性に過ぎません。帝国が勝ってもコロニーが作れなかった。交通網が構築出来ずに人類同士敵対する。ベストかつリスキーな国家です」

 

 どの国も勝ち筋があり、隠し札があり、同盟を組む理由も敵対する理由もある。

 未来と過去を見れる時計塔ですら全貌を把握し切れない、4ヶ国の本気の殺し合いだ。例え神であっても、この戦争を支配することは出来ないだろう。

 

「うん。だから僕達はどの国が勝っても良いようにリカバリーの準備をして来た─‬‭─‬サーシャを見つけるまではね」

「…サーシャですか」

「うん。びっくりする事に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよね。僕達が全力を尽くしても無理だったのにね、怖いね」

 

 この話の要が出て、エルフはコメカミを抑える。

 何となく話の流れが見えて来た。

 今まではどの国が勝っても良いように対策を講じてたのが、一人の少女…否、偉人の登場によって変更を余儀なくされた。

 一人の人間の機嫌次第で全て決まるのだ。気が気では無いだろう。

 

「別に王国が勝つだけなら良い。世界を盛り上げれば良いからね。でも、サーシャ付きで勝つのはダメだ。サーシャの与える刺激と発展に王国は追いつけない。100滅ぶ」

「フィア、フェンフ、ゼクス、ズィーベン…4567が口を揃えてましたね。時属性のMM持ちでアレは反則だと」

 

 リーロがMMになったものだとは知らなくても、その事実だけで危険視と注意を向けるには十分だった。ただ、リーロがMMだと判明すれば…即座に全員集合した上で殺しに行かなければならないだろう。

 希望者だけで創られた組織なだけはあり、全員が少なからずタイム家と因縁があるが故だった。

 

「困ったよね!この情報を知った上で未来を見たら今までの10倍くっきり見えたもん!アハハ、ヤベー、世界の中心見つけちゃったよ」

「詳細な情報を知ってる程未来が見えるMM…今まで見えなかった原因が分かりましたね」

「王族大富豪教皇皇族、全ての情報を筒抜けにしてもぼんやりだったのにね!怖いね!」

 

 ヌルがお手上げとばかりにベッドに寝っ転がる。

 今までの苦労は何だったのかと思わずにはいられない状況なら然もありなん。エルフも苦笑いして励ます他になかった。

 

「兎に角、サーシャ付き王国は阻止!サーシャ付きなら商国が安牌!なので王国弱体化させて見捨てさせまーす!元からやる予定だったけど、エルフはこの学園の中間テストへの干渉、成功させてね?」

「了解。私に学園の中間テスト…アレですね」

「うん、アレね。バッチリよろしく!」

 

 具体的な言葉は使わずとも、お互いに通じ合う。

 時魔法は使い方が特殊な分、多少抽象的でも作戦が通じる利点があった。

 エルフは部屋から出て行こうとして、ドアノブに触れた辺りで移動手段を考えて止まる。

 転移門がある街までここから馬車で3日。後1日で終わる中間テストにはどうやっても間に合わないと気が付いたからだ。

 

「…既に2日目ですし、転移門も厳しいのでは?」

 

 そう言って振り向いたエルフに、ヌルは鍵を投げ渡した。

 挙句に掴んで確認すると、王様だけが持っている原始的な鍵の魔道具があった。

 門外不出、王様が持つ転属性の貴族との絆の証、幾ら時属性のMMが大量にある組織でも手に入れるのは困難な物が手元に投げ渡された。

 声にならない悲鳴を上げて狼狽する。貴重品の粗雑な扱いにエルフの胃にストレスがかかった。

 

()フェンフ(5席)に頼んでおいた。王様言いくるめて、帝国のやらかし情報と交換で幾つかの頼み事の一部でそれ、戦争開始まで貸し出して貰ったよ。壊さないでねー」

「望んだ場所に行ける鍵…感謝します。今回の任務が終わったらお返しで?」

 

 ヌルは身を起こし、エルフの隣に立つ。どうやら一緒に王都に向かうつもりのようだ。

 

「良いよそのまま持ってて。他のメンバーも好きに使って確実に事に当たってね。拠点と情報網はドライに頼んでたのを使う。最重要項目なんだし、最大戦力でやろう」

「それは随分と豪勢に…いえ、当然の処置ですか」

「そゆこと。あ、鍵の使い方、手本見せるね。"王都学園、誰も周りに居ない廊下か部屋へ"」

 

 ガチャリとエルフの持つ鍵が周り、扉が開く。

 その先は宿屋の廊下ではなく、学園の寂れた部屋に繋がっていた。

 埃が溜まり、謎の機材が納められた倉庫。アバウトな要望をしっかり満たした先だった。

 

「‭─‬‭─‬じゃ、始まりの偉人(サーシャ)終わり(Time out)を告げに行こう。今回はその一歩目、しくってケチ付かないようにやろうぜ」

 

 それはリーロの知るゲームより、サーシャが確認したゲーム知識よりも一年早い本気の行動。

 完成するはずの無い物を作り、御せると判断し甘く見積もった。

 その結果、本来より多くの人を動かす判断を相手にさせた。

 

 ヌルの王国生まれあるあるの予定変更(行き当たりばったりな性格)による、砂を噛ませて狂った時計塔が今、回り出した。

 

 






「グリム・フォン・サテライト」
 王族の次期国王第一候補にして、リサを許嫁に貰った箱入りの童話好き。
 属性は無属性だが、母親の血筋から時属性に覚醒する可能性があり、その血の定めに短命が約束されている。
 ただ、死ぬ前に王権を渡されて不老を引き継げばこの問題は解決するようなので、そこを上手く利用すれば王妃になれる気がする。まぁ、解決する為の魔法研究をした方が早いけどね。
 リサは半分見切ってるし、婚約者の立場を奪って諸々を乗り越える…アリでは?水属性への嫌悪感を漂わせる世間のイメージ払拭に最適な相手なのは間違いない。性格も悪く無いしね。

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