不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

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 今回の賞金も併せたサーシャの資産
 780万A(アニマ)(学園内通貨)、410万L(ライブ)(王国通貨、通信技術の特許料)
 寝床付き研究地下室、数多の試作品と成果物、カーリーの集り。




銀・誤・四四

 

 

[無属性と時属性の魂を共鳴させてる間に肉体の差異を調律し直し、この結果から短命になる構造を洗い出して改善する方法…ヒントは与えてたけど、趣味で研究している当主が居てくれて良かった]

『送る知識にヒントを残す…のは分かるけど、大分博打をしたね』

[念の為グリムの服に魔力の糸で答えを縫っていた。元々の予定ではそれを見て気付かせる方針だったね]

『ふーん…でも良かった。私の代までに解決してくれてさ』

 

 あれからなんとかゴールドとグリムをまとめて送り返す手段を見つけ、サーシャに丸投げして困難を超えた?後、俺は自分が死ぬ年代の987年まで辿り着いた。

 それまでにサーシャによる文明促進やらグリムの再登場と行方不明未だ見つからず…があったが、終わりの時計塔の登場ほどの災難はなかったから良いだろう。

 

『でもあんなに文明を促進したのに、貴族狩りは止められなかったね。結局貴族の位も返しちゃったしさ』

[これで防げるなら王様がやってる。目立ってないけど、『誤認』を始めとする認識阻害の魔法はMMに並ぶ革命的な魔法だった]

『現代の主流の戦法になるだけはあるよね。王国を除け者にする為に大霊書庫の対策もしっかりやってるだけはある』

 

 基礎的な『誤認』に関しては学園でも入学式とかで使われてるけど…その発展系が不透明で遅々として進まないんだよな。ゲームでもこの魔法に関しては研究出来なかったし、しっかり独占されてるわ。

 

[大霊書庫にあれば王様が見つけてるだろうし、口伝か…"人の皮膚に髪を縫い付けた"か。貯蓄される知識の執筆手法にも条件はある。その上で『認識汚染』らしき物を研究自体に掛けて、構想を練るだけで私の抗魔力でも防げない魔力の暴走を引き起こされる]

『それを効率的な自殺手段として利用したのは引いたけどね』

 

 話しながら、今や廃墟となったタイム家の屋敷を見て寂しさを覚えた。

 領は続編の舞台みたいなサイバーパンクって感じに発展して、教育は王都魔法学園までは行かなくとも小中高の学校へ子供を通わせ、そこで過ごす人達は幸せそうに、或いは忙しそうに歩いていた。

 

 領主が居なくても、この都市は何の問題もなく稼働していた。

 

『短命だから自らが居なくても問題ない作りにしていたとはいえ、廃墟を片付けて記念像を作るくらいはしてくれたって良いのに…』

[人は忘れる物だし、この土地の名義は王様。下手に手出しをするのは身を滅ぼすから仕方ない]

『貴族狩りに爆破されたらしいけど…やるせないなー…』

 

 サーシャと黄昏てるのもそこそこに、時間を進める必要があるだろう。

 

 ボンッ!

 

『うわっ!…何があった?』

 

 瓦礫を重ねてお墓を作ろうと立ち上がった瞬間、瓦礫の山が爆発した。

 

「寂しく黄昏てる子供にーー!オレがやってきた!」

 

 グリムだった。最後の最後まで仕事をしないで放浪し続けた奴が今更なんの用だろうか。

 

『…どうして瓦礫の下に居たの?』

「いやーははは、死体探しだよ」

『死体探し…?』

「ほら、タイム家の時計…死体が盗まれただろう?そして屋敷が壊された。大半は盗られたんだろうけど、盗人が見つけられなかった時計はまだ瓦礫の下だ。そのままにするのは偲びない。だから探してたんだ。ほら、これだよ」

 

 グリムが背中に背負っていた袋を開けると、カラフルな砂や水、変な構造の時計?の残骸が詰まっていた。

 

『…そっか、死んでも消えないんだ』

 

 全部、見たことがあった。

 砂時計にしてはガラスの球が四つ有った装飾品、水時計にしてただのコップ、影時計にしては四角い箱、カラクリ仕掛けをメインにしたせいでただの玩具と化したガラクタ、撮影日の日付が変わる写真…そして、複雑な立体迷路?(『時纏』)穴の空いた布([時球])

 どれも時計にしてはヘンテコで、それでも偉大な人達だった。

 

 遺したものに記憶は宿る。

 だからこそ、死んでもここにいると思うことが出来る。

 

『…そうだよね。その為にみんな頑張ってたもんね…覚えてるよ、私。みんな、ちゃんと()()に居る』

 

 ほろほろと涙が出てきた。

 全員ではない。当主として認知された訳でもない。

 先祖が健在であると思わせる為にその名を隠し、影として生き抜いた人達だった。

 

「…オレ、もう少しここに居れば良かったな。そうすればリーロの気持ち、分かったかもしれないのに」

 

 グリムが今更な事を言う。確かに居ないのはすっごく困ったし、捕まった時なんかは苦労した。

 だからと言って、一緒に居ればこの気持ちになれたかと言えば…それはないだろう。

 

『…ううん。これは私にしか分からないよ。自分が今に至るまでどれだけの積み重ねがあったのか、どれだけの希望と祝福があったのか。これは私にしか分からない重みで、私にしか伝わらない言葉だよ』

 

 ガシャ、ピピッ!、コロコロ、ビリっ、ザラ…、コポポロロ…、

 

 耳を傾ける。袋に入った残骸の擦れる音、不意に動く音、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

泣くなよ悪い事ばかりでもないさ!行ってらっしゃいヤンケ見守ってますね〜お昼寝しよーよ頑張りはいつか報われてるもんさァ

 

 ポロポロと涙が出る。

 あったかくて、嬉しく感じたからこその涙だった。

 それ以上に言いたい事は沢山あったけれど…私にはこれが精一杯の言葉だった。

 

「…ハンカチいるかい?そんな顔じゃあお別れもしっかり出来ないよ」

『うん…ズビっ…洗って返すね』

「はは、オレは気にしないよ。君の涙はいずれ宙に溶ける魔力の結晶、鼻水だって放っておけば消え去るさ」

 

 その言葉に思わず涙が止まる。渡すのは予想できても、俺の出す物は汚くないと取り返すのは想像しても居なかった。

 嬉しさと寂しさと色々で涙を流してるのに、その上で思わず笑ってしまう言葉だった。

 

『あはは…グリムって面白いね!』

「オレは子供の涙を放って置けないからね!…うん、やっぱり君は笑顔が似合う」

 

 夕暮れ、彼誰時のぼんやりとした橙色の光に照らされたグリムは、とても満足そうに見えた。

 

『…ありがとう』

 

 こうして、俺達の期末テストは終わった。

 

『ただいまー…』

「オレがもう一度帰ってきた!」

「お疲れ様。思った以上に大変だったし、後はゆっくり休んでて」

「複数回やって最適化するのでは?」

「歴史が浅ければそのつもりだったけど、600年は流石に重かった。リーロも疲れてるし、なにより…」

 

 そこまで言うと、反映箱を持ってみんなが集まっている場所に向かう。

 

「終わりの時計塔が集めた箱は、私達の箱以外を全て集めていた。そしてくっ付けた箱の分離は学園長以外には難しくてさ、最終日にやる筈だった事が初日になった」

「そういう訳です。幸い私達は守りきったので最後までやりましたが…これでは今回のテストの結果はアテにならないですね」

『はえー…大変だなー』

 

 サーシャは手に持った反映箱をくっ付けると、随分と大きくなった反映箱が変形し、凸凹の多い箱から綺麗な正方形に変形した。これが本来の姿なのだろうな。

 

「では予定よりも早くなりましたが、全て合わせた上で時間を進めてみましょう。一番良いパターンを選ぶ…のが正規の手順だったのですが、それは難しい話ですので、ある程度はこちらで調整させて貰いますね。」

 

「謎の襲撃め…」「不完全燃焼ね」「なんだかなー…」

「賞金どうなるんだろ」「ちょっとコレはないわー」「楽に金が手に入って嬉しいな」

 

 生徒達から多くの文句と不満が聞こえるが、中にはテストをしなくて済んでラッキーと考えている人もいるな。

 ダンテ先生としても不本意なんだろうけど、俺にとっても想定外の自体だから仕方ない。

 時計塔の襲撃、ちょっぴり成功させられたわ。

 

「では、大半はこちらで用意した時間記録を流用するとして…起動。」

 

 

 

 

 寮の一室、サーシャと俺は部屋に届いた3つの賞品に囲まれていた。

 大中小の箱に別れており、大きいのは天井に届き、小さいのは手紙が入るくらいになる。

 

「一位、シープ・スミス…分散してても数の暴力は強かったか」

『残念だったね』

「中断した点数は倍掛け。普通に終わらせたならそのまま。成績の一点においては、細やかに調整して進めていたシープのチームが有利なテストだった」

 

 学園から渡された成績表を見て、俺とサーシャはそう評価する

 そう言うサーシャは20位なので、一発勝負にしてはサーシャは良い方だった。

 

『代わりに、本物の歴史への反映はサーシャが選ばれた』

「そうだね。20位が反映されるのは初だし、特別賞品も貰った」

『元タイム家領からの贈呈品だっけ。楽しみだね!』

「うん。私の知識をどれだけ吸収したか楽しみだ」

 

 サーシャが部屋に置かれたプレゼントボックスの包装を剥がし、中身を取り出す。

 

『…これは?』

「タイム領管理長より…タイム家が作った政治組織の長からだね」

 

 そこには時間を刻む針がない懐中時計と、手紙が一通入っていた。

 …不良品か?

 

「…拝啓、この素晴らしき都市を導いたサーシャ様へ」

 

 結構装飾語で長ったらしい手紙だったので要約するとこんな感じだ。

 

 拝啓 サーシャへ

 タイム家と領地を導いてくれてありがとう。

 今、私は王様に監視されながらこの手紙と賞品を用意しています。

 あなたの事は王様から詳細を伺いましたが、悲しいことにこの手紙を書いた後に全て忘れるので、情報漏洩はご心配なさらずとも問題ありません。

 その針のない時計は魔導具です。貴方のMMの収納や時属性の魔法媒体になります。裏にはタイム領立学校の校章が刻まれています。いつでも遊びに来てください。

 他のプレゼントは魔法薬や行使の媒体になる物を集めました。研究が好きと聞いたのでお役に立ててください。

 それと現状反映箱で反映前と反映後の記憶を同時に持っていますが、その内忘れる事が分かりました。差異を見つけ出すなら一週間以内です。

 では機会が有れば遊びに来てくださいね。

 敬具 王国タイム領管理長 シンキングより

 

「シンキングより…リーロ、この人って確か時計塔1席(アイン)のシンキングだったよね?」

『そうだね。私が知ってる限りだと王国のゾーン(転属性)家を牛耳るマフィアだったよ』

「つまり、潜在的敵対者の贈り物かぁ…」

 

 サーシャは懐中時計を持って地下室に向かうと、中身を分解して検分を開始した。

 その間、私は暇なので他のプレゼントを開封していくことにした。

 

『これは…お洋服だ!ひらひらしててかわいい!…けどサイズが私だ…ホムンクルスは普通の服が着れないんだけど…』

 

 中くらいの箱を開けると、服が沢山掛けられていた。

 サイズはサーシャの身体と比べるとすごく小さいが、俺には丁度良いサイズだな。

 うん、なんでサイズを知っているんだ?確かに中間の俺が死ぬ事件が再現された時にエルフ(11席)のバックを見かけたが…もしや、今日がその見られた日だったのか?

 

『確かに過去に戻る魔法ではあるけど…脅されてどうなる訳でもないし…』

 

 よし、後でサーシャに聞けば良いか。

 

『それじゃあ天井に届くほど大きい方はー…おお、これが魔法素材だ!』

 

 中に有ったのは大小様々な引き出しのある大きなタンスだった。

 試しに一つ取り出してみれば「竜の鱗」が20枚ある。手紙にあった魔法素材はこれだな。

 

『これで全部かー。当たりは大きい奴かなー』

「いや、この小さいのが当たりだね」

『あ、サーシャ!終わったの?』

「うん。害のあるものは確認されなかった。この魔道具…「時の懐」も普通に便利なだけだね」

『普段から私を持ち運ぶの大変そうだったもんね。狭い廊下とか良く引っかかってたし』

「うん。人型になってれば問題ないけど、私に2m越えは長かった」

『…あ、もしかして』

「どうしたの?」

 

 この話題を話していて気が付いた事がある。

 時計の針の長さは秒>分>時、そして時計塔のような大きい時計は秒針は元から無い事が多い。

 そして中間テストで見た時計の針は2本だけ。俺を刺した2mくらいの針と7mはある針の2本だけである。その後見上げた時、時計塔には何もくっ付いて無かった。

 

 …俺は今まで自分を秒針だと思っていたが、もしかして時針だったりするのか?

 

 …え?嘘でしょ?

 

『い、いや、なんでもないよ!13年間自己認識を間違っていたかもしれない事実に打ち震えてるだけ!』

「確かにリーロの人格はそうだけど……?」

 

 いや、ないな!うん。そんな事ない!

 もしそれが本当だとすれば、俺はこれからどの面下げて歩けば良いんだ?俺、サーシャを始めに全員に向けてそう言ってきたんだぞ?…そういえば先端がハート型だし、これ秒針には向いてない形…いや、違う筈だ!

 とにかく理由はないけど反対だ!私は断固として自分の間違いを認めない!

 何故なら!大恥をかくのは嫌だからだ!私は断固として秒針は譲らない!これ以上私のアイデンティティを失ってたまるか!

 

「そしたらー…服に発信機や追跡魔法は無し、材料も…変なのが混ざってはなさそうかな…?ちょっと非合法の材料がある程度ならまぁ良いか」

『サーシャ、そっちはもう良いでしょ?ね、ね?』

 

 サーシャの手を引き、散歩に誘う。兎に角この場を一旦離れたい気持ちで私はいっぱいになっていた。怪訝な顔で見られるけど今は重要なことじゃあない。

 大事なのは適当な人に会って、この微妙な気持ちを落ち着かせることだ。

 

『さんぽ、そうだ散歩しよう!サーシャって賞金全然使わないし、せっかくだから買い物に行こうよ!』

「本当にどうしたの…?勿論行くけどさ」

 

 誤魔化しが下手くそだと自分でも思ったが、そんな訳でサーシャと買い物に出かける事になった。

 せっかくだからと「時の懐」の力で俺は小さくなって納められ、歯車の動きに従ってゆっくりと時間を刻み始める。しまった、マジで時針じゃないか。くっ嵌められた。

 

「…なんかずっと思い込んでたけどさ、もしかして秒針じゃなくて時…」

『あー!あー!言わないで!私の勘違いが共鳴でサーシャにまで影響を与えてたなんて認めたくない!末代の恥になるから!』

「…"共鳴は誤認の共有が起こりかねない"のか。ふむ…」

『あ〜!暗に間違ってたって言ったー!サーシャ酷いよ〜!』

「!?…え、ごめん。でも間違いは早めに認めた方が良いよ」

『うあ〜!サーシャのいじわる!』

「…ちょっと女の子っぽくなってるね。良い調子だ」

 

 最後辺りにサーシャがボソッと呟いていたが、それは顔を真っ赤にさせた私には大したことではなかった。

 

 ちくしょう…。

 

 






「オルガ」
 神国の傭兵であり、カーリーの弟子なのは知ってる。
 どうにも『憑依』を自力で見つけて身体を開け渡したみたいで、本当の彼の性格は知る事が出来てない。今の彼は肉肉しい剣だ。
 私の部屋にある地下室で寝泊まりしているが、中身が女性であるカーリーだからからかトラブルは起きてない。多少あった方が面白いのに…。
 恋愛とかよりも先に、この人は先ず自分の身体に戻すことから始めないとならない。カーリー曰く快晴のような男ではあるらしいので、それさえ出来れば嫁げそうな気配はする。

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