不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

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 恐ろしい話ですが、ここまでやっても王国の被害は軽微です。
 帝国に一番近いサイーシャ村すら無事です。若き頃のサーシャが練習で出した水対策に排水だけはしっかりしているのが効きました。
 白鯨被害 氾濫から56時間46分経過時点。
 ・死亡者数 7,016,554名
 ・帝国「オズマ雷平原」、「神秘讃頌館」、「オーロラ交易路」、完全消滅
 ・神国「オラクル一族領土の9割」、「ダイヤモンド鉱山」、「ドラキュラ城」、完全消滅
 ・宝石山脈一部欠損の為『宝石大結界』破綻、煌々竜覚醒
 ・商国の各地が濁流に呑まれる事態発生。商国が雨季がブーストになっていることを認知。
 ・合計1094の村町街都市の消滅
 ・神帝合同作戦「二八号作戦」、敗走
 ・王国と学園が白鯨を観測。討伐隊出動まで後7日
 ・商国の富豪と商隊達が支援開始。討伐時に兵站を無制限で利用可能に。
 ・合計17645個のMMが捕食され17000個の帝国量産型MMを白鯨が吸収。
 ・時魔法『回顧』獲得率170%、時属性獲得。
 ・「人魚」大量発生中、被害拡大中。「適合者」や「龍魚」を頭目に連携を取る集団を確認。被害拡大中。
 ・狂わしの三日月が昇り、狂気山脈が背中に生える。
 ・世界規模で平均風速54m/s到達。爆速で建築物が崩壊中。
 ・世界規模で大嵐や大雪や大雨の異常気象発生中。世界規模で常時嵐の異常気象発生中、世界中の貧民、農村の家と共に死亡者増大。水没地帯発生中。世界人口の約10%が死亡。
 ・現在「白鯨」は北上途中、進路上の帝都まで後2日(方向感覚消失)




題・治・五三

 

 

 location:「神国 宝石山脈 ダイヤモンド鉱山」

 time:6/24 8:33a.m.

 

「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい……」

 

 宝石山脈、其処は全ての欲望に応えられる極楽浄土と名高き土地。

 かつて封じられた煌々竜の宝石化能力を利用し作られた、人工の天然宝石鉱山によって莫大な利益を産み出す山。

 

「すぐ其処まで来てるし坑道水没したし庶民共大体死んだしどうしようどうしようどうしよう…」

 

 嵐と雷から守られた宮廷内に、雷鳴が響く。

 

「ヒィッ!」

 

 布団の中に潜り込み、殆どが猪の支配者が震えて怯える。

 

「グルル…誰も居ない…みんな逃がした…俺は死ぬ…」

 

 照明となる蝋燭は持ち出され、慰める使用人も居ない。

 既に可能な限りの民達は家財を纏めて最も高い場所にあって頑丈な「処罰塔」に避難させた。

 普段なら気味悪がって誰も近づかない牢獄塔も、今この場においては頑丈なシェルターになる。

 猪のオラクル一族、その当代となったこの男は、肥え太り下手くそな政治をしても、いざとなれば民を守るだけの優しさと武力は持ち合わせていた。

 

「グルル…どうしようもない。息子達と俺の資産は出来る限り塔に移した…暗いし怖いが、やるだけはやった。後は俺がどれだけ太刀打ち出来るか…か」

 

 のそのそと男は布団から出る。そして弓と鎧を持ち、着替え始めた。

 死ぬ前にやりたいこと、感じたいことをしようとして、その末に出した結論が惰眠とひたすら子供のように弱音を吐く事だった。

 男は欲望の解放のさせ方が下手くそだった。

 愛する妻達と最後を過ごすでもなく、暴食の限りを尽くすこともなく、寝て怖がるだけ。

 最後にやりたいことにしては、随分とちっちゃい欲望だった。

 

「しかし、急に言われてもそれしか思い付かないものだな。宮廷にいれば俺は確実に助かっただろうが、だからと言ってそれ以外を見捨てるわけにもいかない」

 

 男がここに居る理由は単純だ。

 鯨の行き先に己の領土があると分かり、何もせず生きるよりは何かして死んだ方がマジだと判断したから。

 たったそれだけだった。

 

「だが、コレが一番俺()の為だ。俺が支配者として務めを果たし、この地は龍のような完全消滅を免れる。聖女様もそれが正しいと言った。ならば間違っている筈もない」

 

 聖女が男に齎した叡智はこうだ。

 どの道土地に刻まれた結界も何もかも無くすくらいならば、全て有効活用して死ねば良いんじゃないかの?…と。

 

「では…MMにする魔法のスクロールを取り出して…」

 

 着替え終え、大雨の中懐から一枚の紙を出す。領土に戻ると聞いて他の支配者が授けてくれた物だ。使えば最後、何者でも杖に変化して支配出来ると言う。

 

「"竜よ、目覚めよ"」

 

 なので男は自分の知ってる物を使う事にした。

 300年前の先祖が成し遂げた煌々竜の封印を解いて宝石に宿る全ての魔力を、宝石山脈の全てを己に注ぎ、煌々竜を支配し、共に「白鯨」に立ち向かう。

 魔法なんぞ男は知らない。だが、MMならば杖になった者の力を引き出せると聞く。

 

 なら竜の力を引き出せば最強だろう。

 

 男は単純だが、割と正しい結論に辿り着いていた。

 ダイヤモンドが多く宿る山の要石を壊し、竜の封印を解く。

 これでこの山脈に宝石が宿ることは無くなったが、どうせ喰われて消えるのだから構いやしない。

 男は宝石が売れて裕福な生活が送れてる自覚はあったが、宝石の良さはイマイチ理解してなかった。そんなことよりボールを蹴って遊ぶ方が好きであった。

 だから要石も、解除の呪文も共に蹴り飛ばして壊してみせた。

 

 ズン…。

 

 途端、宝石山脈の頂きの影が崩れ、竜がその姿を顕す。

 七色に輝く鱗、光沢のある白い牙、何処までも透き通った龍眼、300年の眠りを感じさせない美しい身姿。

 大雨で薄暗い中、爛然と輝く様はまさしく煌々竜と呼ばれるに足るものだった。

 

「おお…コレが先祖代々の…」

 

 この時ばかりは、宝石の価値を知らぬ男も呆然と見惚れる。

 歩けばルビーの大地に変わり、その身に降り注ぐ雨はサファイアとなって流れ落ちた。

 息が当たればエメラルドに変わり、眼光が降り注げばダイヤに変わる。

 

 ピシッ。

 

「ぬぅ…うおっ!俺は今まで何を…!」

 

 自分の片腕がダイヤに変わった辺りで、男は正気を取り戻した。

 慌てて物陰に隠れれば、先ほどまで自分の居た場所が一面のダイヤに変わっている。

 間一髪だと冷や汗を流し、男は寧ろいい事だと喜んだ。

 

「遊泳層の氾濫で出た竜、かつてはこれが50もの数を揃えて這い出たという…半信半疑ではあったが、この力は間違いなく使えるぞ…!」

 

 勇み足で竜に近づき、スクロールを構える。

 予め山頂に最も近いダイヤモンド鉱山の要石を狙ったおかげで走れば直ぐに着く。しかし軽々と近付けば宝石の像が一つ出来ておしまいだろう。

 それはいけない。男はズンズンと進みながらも、竜が見据える方向には細心の注意を払った。

 

 ズッ…ゴオオォォォ!!

 

 だが、その心配は無用だろう。

 

「…ぐるる、竜が白鯨の方を…しめた!俺より、警戒すべき奴に注意が向くのは道理で有ったか!」

 

 竜は白鯨の影を見つめ、その姿を阻む嵐を宝石に変えて行く。

 直ぐに大嵐は宝石の瀑布となり、地上に降り注いだ。

 轟音、破裂音、爆発音。

 瀑布となった宝石がぶつかる音、風に乗って泳いでいた魔物達に衝突しその身を破裂させる音、地上に降り注ぎ、爆発して周囲一帯を破壊して行く音。

 

「おお…!MMにせずとも立ち向かっている。逃げても無駄であると本能で理解しておるのだ!」

 

 ギリギリギリ…!

 

 ……竜が歯切りと共にエメラルドの息を吐いた。何故こうなったのだと己を顧みる。

 

 ギリ…

 

 ある種、これは悲痛な覚悟の元行われた反撃だ。

 封印から目覚めた途端、自身より深い階層の魔物が無数の配下を引き連れて来たのだから。

 率直に言って絶望である。

 その進路に居たと言うだけで死ぬ。竜は強い存在である自負を持っていたが、同時に相手の実力を見て諦めたいと若干心が折れていた。

 

‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬・‭─‬‭─‬・・・‭─‬‭─‬‭─‬ォォォ

(コロス…絶対………ソノスガタォォォ!!!)

 

 竜に聴こえる叫び声を聞き、泣きそうになりながら宝石化で抵抗する。

 自分よりも賢くあれる筈の存在が、狂気に堕ちてこっちに来る。

 竜という存在は少数になり易い魔物だが、その分仲間意識が高い。

 独りぼっちで復活し、その結末がコレなのは嘆いても仕方ない事だろう。

 

「うおお!頑張るのだ竜よ!既に俺はスクロールをお前の足に当てがった!逃げれば即刻お前を武器に突撃するぞ!グルル、殺そうとしても俺の方が速いからな!」

 

 ギリ…!

 

 そして、コレである。

 白鯨に気を取られている内に足元に来た猪が、自分の首に死の鎌を構えて来た。

 最早逃げられない。立ち向かう他ない。

 魔力をよく感じてみれば昔封印して来た奴と似てるのもその判断に拍車をかけた。

 

 嵐を宝石にする。それ以上の質量が創られる。

 一点に振り絞って宝石にする。僅かに姿を見るだけに留まり、対して宝石に変えられない。

 力を貯めて、竜の息吹で吹き飛ばす。先ほどより近づいているので届きはしたが、周囲を飛ぶ魚共が身を挺して鯨を守った。

 

 万策尽きる。竜の持つ攻撃手段ではかすり傷が精々だと判明した。

 

「ぐるる、それでは有効な手立てにならんぞ!潰されるとなれば攻撃の強度が足りん!」

 

 ではどうしろと言うのだ。300年の眠りで身体は鈍り切った。

 唯一使い続け錬磨した宝石化もこの通り。

 竜にはどうすることも出来なかった。

 

「…ええい、先祖と血肉争っておいてその体たらくが!もうよい、俺の力となれ!"『魔法の杖』"!」

 

 ぞろりと視界が崩れる。

 慌てて確認すれば、猪の持つ弓に吸い込まれて行く。

 抗う暇もなく行われ、竜の全てが弓の中に収まった。

 

「感じて学べ!俺の弓の腕は支配者の中でも1番手。この程度の小魚、貫いてくれよう!」

 

 男はそういうと、宝石の鏃の矢を番え、ギギギッ…と睨まれて毛が宝石となった腕で振り絞る。

 2mを超える大男である猪の3倍の巨大な弓は、只人なら90人分の力でやっと引けるものだ。

 

「"故に竜よ この矢に力を込めよ"」

 

 振り絞るだけで異音が鳴り、構えるだけで凄まじい力を感じるそれで狙い、更にMMで煌々竜の力を載せる。

 

 嵐も呼吸も忘れ、影の向こうを感じて狙い……。

 

 ヒュッ!!!

 

 嵐に負けない音が鳴り、全てを撃ち抜いて突き進む。

 身を挺して守ろうとする「龍魚」と「人魚」の集団を撃ち抜き、嵐を撃ち抜き、忘却の霧を払い、呪いと称すべき血肉に辿り着く。

 

‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬・‭─‬‭─‬・‭─‬‭─‬‭─‬・・・‭─‬‭─‬‭─‬ォォォオ

 

「…次だ!」

 

 そして、そこで止まった。

 確かに皮を裂き肉を抉った。

 深く潜り、血を流すに足る一撃だった。

 

 しかし、足りないのだ。

 致命的なまでに、規模が足りない。

 山を幾つも超え、将軍の首を千切り飛ばせる威力でも、山そのものに撃てば擦り傷だ。

 根本的に、攻撃の規模が足りない。山脈に大穴を開ける程ではない。

 精々がクレーターの跡を宝石化するだけ。傷口が塞がらないようにするだけである。

 

「‭─‬‭─‬ッ疾!」

 

 多少ささくれが出来る程度の物、矢が尽きればそれでおしまいだ。

 竜だけが、猪だけが抗った所で結局何も変わらない。

 

「…"宝石の矢を作れ!兎に角デカく、俺の限界すら超えた物"を!」

 

‭─‬‭─‬‭─‬だが、今の猪は一匹ではない。竜と合わせて2頭の支配者だ。

 馬鹿は馬鹿なりに考える。猪もまた、猪なりに猪突猛進の答えを出した。

 即ち、メッチャ大きい奴で貫く作戦。

 

「‭─‬‭─‬ォォォオオオオオオ!!!!」

 

 宝石で弓を継ぎ足し、大きくする。それに比例し、矢も巨大化していく。

 ミシミシと腕の筋肉が千切れ、バキバキと骨が砕ける。

 弓は発射するまでの威力を全てその身に受ける物。

 白鯨を穿つ矢を構えると言うことは、白鯨以上の頑丈さを備えた腕力がなければならない。

 当然猪にそんな物はなく、無理して待てば身が崩れる。

 

 それでも尚、男は構え続けた。

 

「"もっとだ!宝石で骨を再構築しろ!足りない分は山の物をかき集めろ!いっそこの山そのものをぶつかるぞ!!"」

 

 支配した竜の力で砕けた骨を宝石で繋ぎ直し、また壊れれば再度継ぎ足し、また壊れれば……何度も何度も繰り返し、山を巨大化させて行く。

 肉は早々に千切れて消えた。それでも宝石の骨は弓を構え続ける事が出来ている。

 

 本来ならとっくに破綻する作戦が、何故か上手くいっている。

 

「‭─‬‭─‬‭─‬聖女様…」

 

 脳が限界を訴え続ける中、脳裏に走馬灯が流れた。

 

 

 

「なに?死に行く代金に施術を受けたい?」

「ぐるる…はい。このままだと死ぬのは流石の俺でも分かります」

「うーん、完成したものを変えるのは趣味じゃないのだが…ま、どうせ壊れるなら変えても変えなくても同じか。いいぞ?特別に加護とかてんこ盛りにしてやる。五体投地で感謝するのじゃぞ?」

「ははーっ!!!感謝の極み!」

 

 言うだけタダとはこの事だと男は思った。

 聖女様は気前がいい。猪頭に刻んだ記憶だった。

 

「ではどうするかや?戦い終わったら死ぬけど強いのと、まあまあ強くて生き残ればまあまあ生き残れるの。妾はどちらでも良いぞ?」

「前者でお願いします。半端は好きません」

「そうかえ、そうかえ。妾好みの答えじゃ、特別に先程送られて来た「適合者」とやらの血肉も混ぜてやろう。囚われれば最後四苦の不死なれど、不完全に使えばしぶといままに済むだろうよ。感謝せい」

「ははーっ!!!とっても感謝の極み!」

「はっはっは。苦しゅうない。後聞く事あるかや?」

「…実は、俺は行って何かすべき実感が有っても、具体的に何をすれば良いか、とんと思い付かないのです」

「むむぅ…どの道土地に刻まれた結界も何もかも無くすくらいならば、全て有効活用して死ねば良いんじゃないかの?助けたい奴は高くて頑丈な所にでも放り込めば良いしな」

 

 

 

「‭─‬‭─‬そうだった、俺は今!!なんかしぶといのだ!!!」

 

 猪、なんで自分がこの状況で生き延びてるかを思い出す。

 そう言う事なら遠慮なく行こう。猪は竜に指示してダイヤモンド鉱山を全て矢に集めた。

 集め、蒐め、圧め、しぶとくてもコレが最後の一撃だと理解した。

 

「放てば即座に砕けるとしても、俺はお前を殺す!我が人生、一片の悔いなし!」

 

 圧縮、収縮、異様な密度と質量。

 それを放てる、異端の腕。

 暴れる。定まらない。外しかねない。

 

「…!!」

 

 だが、よく見れば狙い易いバッテン印が頭部にある。

 猪は知らない話だが、帝国大隊の残した傷跡だ。

‭─‬‭─‬これならイケる。

 

 ヒュッ‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬!!!

 

 竜の全霊の力で山一つを纏めた矢を解き放ち、男は死んだ。

 MMもそれに耐えきれず崩壊し、竜も死ぬ。

 二匹の力を合わせた、宇宙に届く一矢が放たれた。

 宝石の輝きを残しながら進む様は、正に流星、地上から放たれる流れ星。

 

─‬‭─‬‭─‬‭─ゴォォン‬!

 

 『亥・竜星矢(ボア・ドラゴンスター)

 

 仮に生きていればそう名付けただろう一撃は、白鯨の頭部から背骨を抉りながら致命的な風穴を開け…。

 

─‬‭─‬‭─・‬‭──‬‭─‬‭─‬‭─・・‭─‬ォォオ!!!

 

 真っ白な霧が、白鯨を覆う。

 真っ白な血管が傷口を塞ぎ、抉れた背中から巨峰が生える。氷の山が連なっていた。

 それでも垂れる白い血からは小さな白鯨が生まれ、周囲を喰らって大きくなっていく。

 

 言うなれば、第二形態。

 ゲームの大ボスなら当然持って然るべき物。

 白鯨は逢瀬を望む男の為に、鯨なりにそういう浪漫を再現していた。

 

 嵐の勢いは増し、雨は海すらも創り上げんと大瀑布と言っていい勢いまで増した。

 そして‭─‬‭─‬雲が消え去り、朝であるにも関わらず太陽は沈み、真っ白な三日月が浮かんだ。

 神の住処の一部を千切り取った月、世界中に降らし続けた水の重力で支配した3割の月。

 世界中に「恋の狂気」を振り撒く月が、鯨が操る潮の満ち引きに引き摺られて浮かぶ。

 狂い続ける白鯨は進路をズラし、この地を離れ帝国に向かった。

 

─‬‭─‬‭─・‬‭──‬‭─‬‭─‬‭─・・‭─‬ォォオ!!!

 

 白鯨、未だ健在。

 

 


 

 

 location:「帝都 王室」

 time:6/24 15:40p.m.

 

 ギッ…ギッ…。

 

 大雪が積もって軋む屋根の下、悩む男女が居た。

 

「…国難ですか」

「そうだな。ともすれば国が滅ぶようだ。なんにせよ、共同作戦の結果次第だろう」

「大隊の絆と勇気が有っても乗り越えられず、敵の勢いは増すばかり…民と兵が共に敵のものに作り変えられる…果たして私達に勝ち目はあるのでしょうか…」

「それでもと言い続けていれば何とかなる。勇者ならそう言うだろう」

 

 帝都の王城。

 帝が住まう部屋で、生来の白髪赤目を持って着飾った男女は他でもない。

 

 皇帝とその妻である。

 

 そして、兄と元弟でも有った。

 事情は白鯨討伐に関係ないので省くが、弟は諸事情で妹となり兄の妻として赤子を孕んでいた。

 実に帝国の王室は複雑怪奇である。

 

「それにしても成長速度が凄まじい。最初の伝令が伝えて僅か3日で第二形態とは。命懸けで殺した神国の英雄も凄まじいが、まるで伝承に聞く魔王だな」

「そうですね。魔王は第七形態まで有ったと聞きますが、白鯨はそうでない事を祈るしか有りません」

「…我が出れば話は早かったのだがな。立場とは全く気難しいものよ」

 

 パチパチと暖炉の薪が燃え、静かな王室に自然の音楽を鳴らす。

 それも暗い顔で話し合う二人を前にすれば、自然と緊張感のある音に変化した。

 

「…暖かく穏やかだな。外では全兵が戦い、城の半分が大雪で埋まっているとは到底思えん」

「そうですね…この安全こそが帝の特権だとしても慣れないものです。勇者の子孫をさっさと前線に出せば良いのに…」

「面子か何かあるのだろう?ふん、時に任せる勇気も必要だと言うわけだ。…はぁ、もう良いだろう。我が出ても」

 

 そのため息は憂鬱さとは別種のものと妻が感じ取った。

 よくある事だ。帝国の血の気の多さを最も担っている皇帝が、武者震いでため息に似たことをするのは。

 

「妻よ、そういう訳だから良い建前を考えてくれ。我は命のシノギを削り合いたいぞ」

 

 妻に出来るのはそれを出来る限り抑える事。可能な限り人の手に委ねるように説得することだけである。

 

「既に兵士も領土も出した直後ですし、一人で何が出来るんですか。…もう共同作戦が上手くいかなければ王国に任せる段階です。私達は出来る限りの事を……してないか。…ですが、神国に対してそう主張するだけの血は流れるでしょう。此処からは交渉のお時間です」

「…良い加減、この爪の鋭さを知りたいのだ。隠してたのが大した事ない方が致命的だと、何故理解せん」

「隠すことに意味が宿っているからです。今明かした所で良い結果にはなりません。何事も順番通りにするべきものですよ()()

「…弟としての立場を出したか。…仕方ない、その立場に免じて出陣はやめとしよう」

 

 ほっと一息つき、妻は説得が上手くいったことに安堵する。

 兄であり夫である帝は、この前のめりさえ無ければ名君と成れる王だ。

 内縁の妻としても、同等の権威を持つ弟としても、今は耐えてもらわないと困る。

 なにせ彼が死ねば次は自分なのだから。

 

 コッコッ。

 

「共同作戦の報告に参りました」

「入りなさい」

 

 そして待ちかねた報告が来た。

 最初の伝令からして不安しかない相手で、その凄まじい力は姿が見えなくても世界中が被害に遭っている。

 何せ一月に一度降る雨が連日で、しかも此処まで凄まじい勢いで落ちているのだ。

 深淵の氾濫はこれまでも何度も有った。

 大半は同じ深淵の魔物の争いの中で収まり、外に出ても精々が浜辺か有光の層。近くの街で討伐出来る範疇だ。

 分かり易いのはサーシャが中間テストで行った森林の深淵で遭遇した、鳥の大群。アレが普通の氾濫だろう。

 

「して、どうだ。殺せたか?」

 

 例外は遊泳層のドラゴンの魔物、ただ一種。ずっとそうだった。

 だが、今回は全てが異常だ。

 たった一体の氾濫で、昏闇層の鯨の魔物で、そこに居るだけで世界中に災害を齎す。

 実の所学園に居る「シーシャ」が共通点の多い先例としてあるのだが、それは預かり知らぬ話だろう。

 兎に角、未知の相手であり今までの戦法が通じない。底が知れないのだ。

 神国と帝国の残った表の戦力を全て掻き集めても通じるか、この報告が結論を言い渡した。

 

「‭─‬‭─‬作戦は失敗です。各隊の魔法使いを除き全滅、戦場は土地と共に完全消滅。"我々では、その肌にも触れる事が出来ません"でした」

「続けよ」

「現在は救助されたスターバック総大将の下生き残りを再編中です。およそ5,000人の魔法部隊となるでしょう……しかし、忘却の霧で魔法を忘れた者も多く、戦力として期待は出来ません」

「それで、相手はどうだ。傷一つ付けられなかった…だけで終わらない相手だろう?」

 

 帝は慌てず、少し上擦った声で続きを催促する。

 絶望的な情報だが、それだけで終わらない相手なのは初めから重々承知していた。

 

「はい。捕食した土地の分だけその肉体は巨大化し、人の分だけ「人魚」は増え、吹雪も嵐も勢いを増すばかりです。転移や魔法で移動しなければ移動もままならないでしょう」

「そうか…そうかそうか。()()()()()()()()()()()()()

 

 その質問は、帝ではなく勇者としてのものだ。

 どうする事も出来ないから、助けてほしい。

 その一言さえあれば、帝はどんな相手でも出撃する。

 いや、正直な所そんな事言われなくても出撃する。最初から気配からして、ますます力を増しているのは知っていた。

 あの白鯨とやらが出てからずっと血が騒ぎ、肉が湧き上がるのだ。

 

「……王よ」

「………なんだ?妻よ」

 

 飢えていた所に出されたフルコース。

 オーロラを浮かべるスープ、天上の甘露より瑞々しい野菜、地中の圧で濃縮された魚肉、油で輝く赤身、脳を震わせるワイン………今の帝にとって、白鯨とはそれだ。

 腹を空かせたなら食いたくて仕方ないだろう。今すぐ喰らい尽くしてしまいたいだろう。

 匂いが鼻腔をくすぐり、腹の虫が鳴って仕方ないのだ。身の毛がよだつ気配に、無差別に振り撒かれる気配に惹かれて仕方がない。

 

()()()()()()()()()()()()()()

「……………知っているとも」

 

 だが、ダメ。

 どれだけ欲しても、帝の立場では毒味役が死ねば極上の料理は食べられない。

 皿を取り替えられ、飢え死んででも毒が完全にないものになるまで待たなければならない。

 それが帝であり、皇帝であると言う事だ。

 そして毒が完全にない食事はいつだって味がない。兎も狐も鹿も、狩猟の範疇ではつまらない。

 

「…………下がれ。軍は撤退させよ。後は王国の範疇だ」

「はっ。ではそう伝えて参ります」

 

 頭を下げ、帝の顔を見ずに退いた近衛兵は知らなかったが、この時の帝の顔は落胆一色であった。

 つまらない、煮えくらない、物足りない、言いたくない、ヤリたい、殺し尽くしたい。

 考えることはそれだけ。民の死も兵士の死も最早どうでも良い。ただ、強敵と死合いたい。

 ついでにそれで感謝する奴も居れば自分好みだが、この際それは妥協出来る。

 なまじ過去に全てを忘れて満足行くまで食べ干したことがある分、飢えが辛かった。

 

「……なあ」

「ええ、代わりなら努めますよ。私は2日潰れるでしょうけど、帝として立派な昇華です」

「御託はいい。股を開け」

「おや、恥じらいの一つも付け合わせない。…これは相当参ってますね。良いですよ、受け入れてあげます」

 

 寝床に妻を投げ入れ、帝が覆い被さる。

 どちらも20代の年頃で、欲望の膨れ上がり時。何かあれば直ぐに繋がる思考回路の年代だ。

 謀殺された先帝の三兄弟妹。

 かつての魔法学園の主席と次席も、今では戦闘狂と機械的な元男の二人だけ。

 毒で死んだ父と、産まれてすぐ死んだと聞いた妹の分だけ慎重生きようとする二人は、今日も燃え残った灰のように日々を消化した。

 

 


 

 

 location:「白鯨・第三胃壁の静脈付近」

 time:6/24 19:17p.m.

 

『サーシャァァ"…!!ごわがったよぉ"…!』

「よぉしよしよし、お帰りリーロ。もう大丈夫だからねー」

「ではどうしますか?早速討伐に?」

「勿論。そろそろ世界中の被害が酷い事になってそうだしね」

「中に居ると分かりませんが、今も嵐が吹き続けているらしいですよ。」

「それが24時間か…末恐ろしいな。王国が無事だと良いんだが…」

「僕もシープお嬢様が心配ですね…そろそろ心が折れてそうで心配です」

 

 ここは「白鯨・ブッ殺ボート」。特攻野郎Sチームの船。

 ひたすら飛び続けて早2日チョット。私はカーリーの捜索網に引っ掛かって帰還を成し遂げていた。

 船の先にドデカい槍を付けたサーシャの船には度肝を抜かれそうになったものの、ゲームでも似たようなのは出てたからノーダメだ。

 サーシャの胸に飛び込んで泣き喚いていてもノーダメだ。コレは寂しかっただけだからな!誰だって怖かったり寂しかったりしたから思わず抱き付くだろ?少なくとも私はそうするタイプだ。

 

「…ですが、今は気にしても仕方ないですね。サーシャお嬢様、定例会議3日目といきますか?」

「それなんだけど、みんなの頑張りのお陰で討伐の準備が終わったからね。飛ばして心臓に行こう。まとめたら船を改造して心臓に辿り着く準備をした…って感じに纏められるし」

 

 サーシャは私を片手で抱え、みんなに指示を出し始めた。

 

「ダルク、舵取りお願い」

「船の操縦なんて初めてなんだが…やるだけやってみよう」

「うん、お願い。こんな大きな船みんな初めてだから気にせず挑戦しよう。私も演算ついでにフォローするからさ」

 

 ブォーーン‭─‬‭─‬!!

 

 サーシャが腕を上げると、船が汽笛を鳴らす。鯨の体内にあるガスで得たエンジンが駆動を始めたようだった。

 

「では1000体のゴーレムへの指示は私がやりましょう。サーシャの負担を軽くするにはそれが一番良いと見ました。」

「ダンテ先生はそれでお願いします。血管の流れに沿って心臓に向かうのは慎重に行きたいですから」

 

 船に散らばっているゴーレムが動き回り、出航の準備を始めた。

 

「カーリーとグリムは甲板上で待機。昨日遭遇したらしいしぶとい白血の鯨…「白痴鯨」が居たら追い払って。外で活動する用の専用装備はゴーレムに持って来させるから着用は忘れずにね」

「……それが依頼だな。分かった」

「腕が鳴るね!ここ2日はジッとしてたから尚更気合いが入るってものさ!」

 

 白痴…ああ、あのクソ面倒なバグ魔物か。俺のゲーム知識にもある相手だな。バグだったのをちょっと手を加えて仕様として扱った奴だから対策が大変なんだよね。

 これはしっかり対処方法を伝えておこう。下手すれば終わるし。

 

『…ぐすん。私も会ったから知ってるよ。アレは白鯨に食べられた白鯨の同族達、魔力も魂も取られたけど、白鯨の種族特性で死ぬことが出来なくなった存在の殻だよ』

「え、リーロ知ってるの?」

『うん…知ってる。散々追いかけ回されたし、この2日私なりに観察したから…』

 

(…そこまでは確認してなかった…ただのゲームを面倒な構造にするな…所詮ゲームだと真面目に確認してなかったけど、結構参考になりそうだし…終わったらリーロの知ってる情報と私の知ってる情報をまとめようね)

 

 ここに来るまで本当に大変だった。ゲーム知識で知ってても面倒な相手だし、説明をこの世界のものに落とし込むのも考えさせられた。

 寂しさを紛らわすのには向いてたけど、捕まれば…おしまい…な相手から逃げるのはメンタルがすり減って仕方がなかった。

 

『えっとね、白鯨は元々「周囲の物と融合して傷を癒す(周囲オブジェクトを消費してHP回復)」特性が有るんだけど、多分其処に氾濫の「深淵が魔物が願った力を与える(ランダムで強化/追加/変化)」が合わさって起きた現象みたいでね…?』

 

「……素体となる特性からして厄介な話になりそうだな?」

「うーん、魔改造のしがいがありそうな気配が…」

 

『氾濫した白鯨は新しい力「融合したものを維持する(オブジェクトのHPを1に固定)」を得たみたいで…その結果、捕食された白鯨の力と合わさって「捕食したものに生命を宿し、自分に追加する」力になった…んじゃないかな』

 

 俺が見た攻略サイトのうろ覚えだけどな、どうも能力が変に作用して倒した魔物や生き物が固定で死なないまま融合して「白鯨」の一部と認定され、ステータスが加算され続けてるらしい。ゲーム会社はそれで第二形態や第三形態、バグデータを検知して代替えるデータとして「人魚」を作ったみたいだけどね。

 その上でなんやかんやで融合した方は「融合で死んでるのに回復で死んでない」状態にされ、魔力も(ステータス)も無いのにそこに存在し続けているのだ。

 ゲーム会社は笑ったと思うよ。デバッグでこの組み合わせ見つけた時とか。

 その上で変化を固定し、それ以外ではそうならないようにして、イベント専用の「白鯨」が誕生するようにしたのは変な薬やってると思うけど。

 コレが現実になると大変だー!ってなるよね。ゲームでは禁忌の確定勝利で勝てるけど、真っ当に倒そうとすると厄介が過ぎる。

 

『そんな訳だから"倒せないのは固定されて変化しない"からで、触れたら血管に浸食されるのは融合の最中だから。完全に融合すると「人魚」になって白鯨の一部になり、同時に白鯨の眷属になるっぽいよ』

「面倒が過ぎますね。…本当に厄介ですね?」

『うん。大半の人は狩るのを諦めそうな力だよね』

 

 実際、ダンテ先生が言う通り絶望的な情報だ。

 でも、ここに居る人達はこの程度で折れるような人達ではない。

 

「……要は倒す程相手の分だけ強くなり、眷属にする訳か……良し、やりようはあるな」

「まあ本体が不死じゃないなら何とか出来るよね。そんな訳だからトドメはカーリー、お願いね。ヘルは私の護衛や連絡役をお願い」

「かしこまりました、サーシャお嬢様。白鯨狩り、力不足ながら付き添わせて頂きましょう」

「…頼もしい生徒達ですね。有難いことです。」

「先生、俺たちにとって白鯨はそんなものだ。厄介な力を持っていても、体内なら大半が使えないし、最高の腕利き達が居る。明日に魔法大会があるからさっさと倒しに行こう。面舵いっぱーい!」

 

 サーシャ達は何か大きなリアクションを取ることもなく、船先の槍で胃壁を貫いて血管に侵入した。

 いやー、今までは大体サーシャ一人だけだったから死に戻ってたけど、フルメンバーならそんなことなさそうだな。これなら俺は其処まで頑張らなくて良さそうだ。

 

「ほら、帰って来て早々だけどリーロも準備して。血の流れを読む時間だよ」

『分かった!サーシャ、頑張ってね!』

「うん。…やれる事はやった。その成果を見せようか」

 

 結界で覆われた船が先端に着いている大きな槍で血管に侵入する中、サーシャは最後に俺の頭を撫でて秒針に変えた。

 死に戻り回数は5回、フルチャージである。

 

「ふぅ…『通信』…[それじゃあ準備はいい?]」

[ゴーレムは全機問題有りません。]

[船の調子も問題ないな。順調に航海中だ]

[……甲板上と側面も問題ない。浸食が始まる前に通り過ぎてるからな]

[暇なくらいだね!一回予行練習で魔物を入れてみない?]

『グリム、それは許されないよ。…これが終わったら私から話があるから覚悟してね』

[ははっ殴られる覚悟は出来ているさ!]

「うん、[その為にもみんなで帰ろう。ダルク、加速を始めて。グリムとカーリーは対ショック体勢ね]」

[分かった。…このボタンだな?]

 

 サーシャの指示と共に船の中にある海が()()()

 加速する勢いで小物が幾つか落ち、座っているサーシャを揺らす。

 俺も押し寄せる魔法の使用指示から演算を行い、サーシャの負担を軽くしていく。

 

「進路良し、案内の思考リソース良し、船員良し。管制機への接続良し。じゃあ…行こうか」

 

 肉の壁をぶち破り、船が血管の中に侵入した。一面が真っ白になり、抜けた船が激流に呑まれる。

 白い血が船を包んで融合しようとする…が、加速していくと結界の侵食は止まり、逆に剥がれ始めた。

 目標は心臓、貫いて行くぞー!

 

「…ふう、案外脳に余裕があるね。おかげで会話くらいは出来そうだ」

(████████████████████‭─‬‭─‬‭─‬しゃあっMMとの会話用思考スペース確保。予算勝負は私の勝ちってことで。…リーロ、着くまで暇だしお話しよっか)

 

 なに?自分同士で会議でもしてたの?取り繕ってるし前半は聞かなかったことにしよう。

 しかし…いつの間にかサーシャがMMである俺以上の思考能力を持つようになったが、それでもまだ俺より1.1倍結果を出してる程度の差だ。手伝える範疇だから気合いをいれないとな!

 …MM(計算機)使ってる俺と暗算が同等?ゲームだと絶対無理だったことだな。現実化による成長ってスゲェや。

 

「ふぅ…目標は心臓、ただ…懸念点があるから出来れば脳も行きたいかな。何処かでガッツのある魔物か人を食べてる可能性もある訳だし」

(リーロ、時間はあるしゲーム関係の知識を先に言っておいて。ここからはそっち方面もしっかり聞くことにしたから)

 

 おお、サーシャが遂に俺のゲーム知識を参考にし始めた!

 今までは半端な知識だし役に立つのかずっと自信が無かったから自分からは言いずらかったけど、向こうから求め来たぞ!

 俺がサーシャのMMになったり知らないタイミングでローンに襲われたりMRCとか全くだから積極的に言うのは控えていたけど、それなら言わない訳にもいかないな。

 

『えっと…分かった。それなら言うね?白鯨狩り、一年の5〜7の期間でランダムに発生するメインイベント。発生時に海に関係する深淵に居ると即死するよ。…サーシャは生き残ったけど』

「内容は?」

『時間経過による各国の弱体化。世界の戦力を集めた総力戦(レイド戦)。何もしなくても殺せるけど、一月は潰れるし世界の90%の土地と人が死ぬ。その場合第二章の戦争は残ったリソースの争奪戦になるよ』

「私、リーロの持ってるゲームへの認識を改めるよ。そのゲームを開発した世界の並行世界観測技術もね。さては私の想像の10倍はこの世界の顛末に忠実で具体的な中身だね?」

『プレイヤー…サーシャが普通に介入した場合は1周目で14日、2周目なら7日で殺せるのが平均かな。その時出来てる技術やリソース次第になる。白鯨は早期討伐になる程被害も使うリソースも指数関数的に少なく済むからね』

 

 主に形態変化とかな。倒さなくても時間経過で()()んだよ。無制限にさ。

 

「3日なら?」

『3周目か、このゲームが上手な人の1周目。普通じゃないなら3秒で倒せるよ。…こっちを選ぶプレイヤーが大半だけど』

「その方法は?」

『禁忌術式で確定勝利による1ターンキルして戦闘スキップ』

「…どの道ダメだね。禁忌の怪物は制御出来るようになったけど、リーロの死に戻りは殺した相手にも有効。確殺の禁忌術式とは相性が悪い」

『…ごめん。でも、私じゃなければ…とは言わないよ!』

 

(制御には私とリーロ、呪符の総動員だ。リーロが欠けると制御出来ずに皆殺しになる。…演算は兎も角、MMの持つ"精神的な生贄"の代理機能が欲しくなるね。罪人の方は身体に組み込んで正式に使ってたけど、あそこまで落ちぶれたくはない)

 

 そこはね、私は譲らないからね、うん。

 挙句の行動だけど後悔はしてないからね!

 

「そこは気にしてない。実験で研究員を殺した時は発動してなかったし、"リーロを使わずに殺せば死に戻らない"仮説もある。話を続けて」

『サーシャ…うん!…そんな白鯨だけど、倒す方法は結構あるよ!呼吸孔を塞ぐ、心臓を貫く、脳を破壊する…方法もゲームの進行具合で無限大にあるかな』

 

 倒し方、ここはどうしても曖昧になる。

 このゲーム、研究システムや普通ならフレーバーで済ませる各地の設定のデータ化に力を入れてるから、ゼルダのブレワイ伝説くらいには色んな力や人を収集出来る。

 挙げればキリがないのだ。サクサクと進められるのも相まって本当に色々出来る。

 

「例えば?」

『手っ取り早いのだと…聖剣墓地で「エクスカリバーン」を見つけてカーリーに持たせて突撃、

 呪符を千枚用意してカーリーの補助に回して突撃、

 今やってるみたいにゴーレムの船で弱点破壊にカーリーを突撃、

 丸腰のカーリークローン11体と共に突撃、

 カーリーをレベリングしてムキムキカーリーにして突撃、

 バグったヘルシング脊髄剣をカーリーに持たせて突撃…』

「なんか私がカーリーを使いこなせてないみたいで腹が立つね」

『だって…頼むと確定で受け入れてくれる上に最強なんだもん』

 

 チョロくて強いの典型みたいな人だし…敵対したら最強の敵になる人だし…マッスルだし…強いもん。

 頼み事次第で断られるのってゲームでも有ったからな。その分頼りになるのだ。

 

「はぁ…他は?」

「正式な方法に限定すると…ダルクは『聖旗の庇護』の魔法を作って大隊を任せると倒せる。

 ダンテ先生は「巨人兵」の兵種を作るか『神罰』の証属性に覚醒させれば倒せる。

 ヘルシングは「吸血鬼の夜」イベで最低階級の第九眷属(ゾンビ)を引いても倒せる。

 カーリーはスーパームキムキカーリーにして突撃させる。

 グリムは「狂わしの三日月」で闇堕ちさせて『残酷童話譚』の魔法に目覚めさせると倒せるよ』

「おー、見事なまでにやるには出来事も好感度も足りてなさそうだね」

『だって…サーシャってばいつも研究か私に構ってるから…嬉しいけど、みんなみたいに力になれなくて悔しい!』

 

 私は構ってくれて嬉しいけどね!その分攻略してればそのくらいは出来てたの!

 ゲームのお姉ちゃんは素っ気ないしメタ説明しか登場しないから攻略もなかったけど、これは由々しき事態ですよ。恋愛ゲームで恋愛をしないのはベリーでハードだと相場は決まってるのだ!

 

「私単独のやり方はないの?」

『禁忌術式1ターンキル』

「出来るけど白鯨が死に戻るんだよねぇ…」

 

 うーん…あ、そうだ!

 

『折角5回の制限があるんだし、使い切ったら?そしたら出来るよ!禁忌術式!』

「それはダメ。絶対ダメ。諸事情で話せないけど私もリーロも終わる」

『えーそっかぁ…良い案だと思ったんだけどなー…』

 

 サーシャがそう言うならダメなんだろう。俺の把握していない仕様で致命的な不利益が出てくるに違いない。何だかとっても焦ってるけど、そのくらい危険行為な訳だ。この件はここでおしまいにしよう。

 

「でも、今のでだいぶ知らない話が出てきたね?神罰やら吸血鬼やら聖旗やら闇堕ちやら。この日までにやらないと不味そうなのってあるの?」

『うーん…サーシャが気にしないならどれもやらなくて良いけど、サーシャが気になるなら何もかもやった方が良いものだよ?…基準は?どのくらいの命を取りこぼしても良い?』

「無くすのは確定なんだね?」

『だってもう白鯨3日目だよ?世界中の人口の10%も滅んだんだから、悲劇は防げてないよね?単純計算だけど、学園生徒の1割が天涯孤独になった訳だし』

「…それはそうだけど、イヤミな言い方だね」

『え、あ、ごめん。ただの事実だけど、変な言い方になっちゃったよね。ごめんね、サーシャの力不足みたいに言っちゃった』

 

 事実とは言え、防げなかったサーシャが悪いみたいな言い方になっちゃったかも知れない。

 原因は私がMMになった事だとはいえ、変な言い方になったのは反省すべきだろう。

 悪いのはこれから起きる戦争と災害だ。言い方には気を付けよう。

 

「うん、それ以上は墓穴しか掘れないだろうしサッサと基準を言おうか。…身内かな。取り敢えず今関わってる人達が苦しんでるなら手助けたい」

『分かった!約8千万の大衆や友達の家族は見捨てるコースだね!それなら簡単だよ、みんなと仲良くなって、起きた出来事を一回ずつ対処すれば良いよ!そして卒業したら全力で耳と目を塞いで暗示でみんなを引き連れて片田舎にでも避難すれば良い。農民の見える世界はさぞかし平和だろうから!』

 

(ぐはっ)

 

 基本的に立場が高くなって見える世界が広がるほど苦しみは増えるものだからね。

 私はサーシャが幸せに生きてくれればそれで良いから、この選択はだいぶおすすめだよ。

 

「実はリーロって置換されてない(「俺」ではない)元々の人格と口は悪かったりする?すごく心を抉りに来るじゃん」

『…そうかな。言われた通りの条件で一番オススメな選択を提示しただけだよ?』

「良し、私が悪かった。私が苦労してでも出来る限り助けられる方法は?」

『先ずは今すぐ自殺して最大限過去に戻った後に最速で白鯨を殺し被害を軽減する』

「なるほど、出来る限りの成果を求めるとそんな感じになるんだ…危機管理的に出来ないかな」

 

 良かった、これは本当にオススメしない道だったから。RTAなんて本当にやろうとしたら大変だからね。結局今まで通りその場に必要な情報を渡すのが一番心が楽なんだよ。

 知ってると無知の免罪符が使えないもん。そうなったら考えるのが疲れてきちゃって何もしたくなくなるよ?

 

 私的にはそれでも良いけど。だって私だけ見てくれるってことじゃない?

 それってとってもステキだよね?私もシアワセでうぃんうぃんだ!

 

『うんうん、だからその場凌ぎで生きていこうよ!苦しくなくてシアワセだよ?きっと楽しいよ!』

「…思えばしっかり対話したのは久々かもね。うん、幾らかリーロへの新情報が有った。好きな相手には()()()()()()なんだね?」

『……? よく分かんないけどその通りだと思うよ。サーシャの言う通りだろうから!』

 

 どうしてかな。今の言葉に上手に受け取ることができなかった。

 …暗示かなー?そうだったら嫌だなー。でもサーシャならしないしだいじょうぶだ!

 私がどれだけ悪くても許してくれる、だからどれだけゆだんしてもあんしんだー!

 

「ふーん…うん、悪くないね。このくらいの()()は心地いい物だ。良いよ、飲み干してあげる。元から悪魔と相乗りする覚悟はあるし、今更だね」

『サーシャ…えへへぇ』

 

(…暗示が変な方向に行ってるね。性欲がそのまま好意になってる?…不自然なほど好意が膨れてるし、好意を抱くほど性欲も膨れて…これは、早めに解除しないとだ)

 

 なでなで〜、ん、どんどんておくれになる、ん、かんかくがする〜。

 でもしあわせー…ん、サーシャだいすき〜…。

 

「うん、溶けてるのもかわいいよ。‭─‬‭─‬要は後悔したくないならその分全力でやれってことだ。それなら気合いを入れ直せば十分。…そろそろ着くか。リーロ、シャキッとして!」

『ふぁ…?』

「…撫でるだけで溶け過ぎ。ほら、サッサとシャンとする!」

『あぅっあぅっ…ちょっと起きたぁよぉ』

「もっとしっかり起きて。ほい水球」

『ぼっ!』

 

 あ〜叩かれてるのになんか気持ちぼぼぼぼ…!

 プファ⁉︎はぁーっハァー⁉︎く、苦しかった!

 殆ど生きてる身体と感覚が変わらない分すごく苦しかった…!

 サーシャ、ひどい!でも許すよ、大好きだもん!

 

「ほら、もう一回やられたくないならボケてないで魔杖(MM)になる!4秒で支度しな!」

『分かった、分かったから…!全く、杖使いが荒いんだから』

「何を言ってる。私ほど大切にしてる人は早々居ないよ。さて、『通信』…[全員聞こえる?もう直ぐ心臓だ!各自用意はいいか!]」

[こちらダルク、問題ない]

[……今船舶に着いた最後の奴を片付けた。問題ない]

[カーリーってすごいね。オレ、転移するだけで終わったよ]

[ゴーレムが140体魔物に破壊されましたが問題有りません。侵入は防ぎ切りました。]

[すみません浸食された吸血鬼に咬まれた時の治療薬ってありせんか?丁度今不意打ちで噛まれたんですけど]

「うーわ[グリムはヘルを連れてこっちに転移!傷跡見せて!他は衝撃に備えて!]」

 

(神学や実技で言ってたなー、魔物の中には種族を変えさせる奴が居る。白鯨もそうだけど、吸血鬼も同じ物だ。その相乗効果は果たしてどうなるんだ…?)

 

 おっと一人だけイベントが進んでる奴がいるな。

 白鯨の人魚になった吸血鬼か…誰だろ。ヘルシングって対策無しだとランダムで「吸血鬼」の魔物に咬まれるんだよな。

 そして始祖から第九眷属の間でランダムに変化する。実力自体はできることが変わるだけで大した違いはないけど、初見では防げないイベントでもある。

 この時に友好度が一定以上だと頼ってくれるんだが…そうか、この2日間で頼り甲斐を見せたんだな。それなら友好度が高くなってもおかしくはないよな。頼りになるのがサーシャしか居なかったのもあるだろうけど、隠さなかったのが高い証拠だ。

 ゲームで白鯨に浸食された吸血鬼に咬まれたか?…あった気がするけどそんな細かいことは覚えてない。でも種族融合関係の技術解説で見た気がするから種族が混ざるのは起きると思う。

 

 ヒュッ!

 

「ヘルシングを連れてオレ参上だとも!」

「ありがとうグリム!ヘル、適当な物に捕まってから傷跡を!」

「コチラです…どうですか?」

 

 ゴッ!!

 

 周囲の物が荒れて、船に衝撃が走る。血管から辿り着いた心臓を打ち破ってる衝撃だ。

 向こうも死ぬ訳には行かないと気張っているのか、胃袋よりも時間がかかっている。

 

「…浸食が!」

「それ船ですか⁉︎僕の方ですか⁉︎」

「どっちも!」

 

 壊すのに時間が掛かると云うことは失速したと云うこと。

 速度を出して浸食を振り払ってたのに、掘り進める間に殆ど止まってるならそりゃあ浸食が再開される。

 

「じゃあどっちを優先するんだい?判断する時間は無いよ!」

「‭私は─‬‭─‬‭─‬」

 

 傷跡もそうだ。今は吸血鬼と白鯨で競合を起こして遅いが、本来ならどっちも3秒で完了するもの。その向きが合わさってしまえば、ヘルシングの人間部分は荼毘に伏して2度と戻れないだろう。オーバーキルも良いところである。

 

 二つに一つ、不運な事に一度に来たなら、優先順位(トリアージ)を決めなければならない。

 選択の時間だった。

 

「‭─‬‭─‬‭─‬みんなを信じる。

 [みんな、船と白鯨の心臓を突き破る方法は任せた。私は治療に集中する。終わるまで返事はないと思って!]

 …グリム、みんなの方をお願い。こっちは私がなんとかする」

「それがサーシャの選択なら、オレは見守ろうじゃないか!ではさらば!」

 

 ヒュッ!

 

 グリムは転移して、この場にはサーシャとヘルシングが残った。

 俺やシープの両親もMMとして居るが、今回に関して自分から手助け出来る要素はない。

 サーシャの求めるもの次第だ。

 

「前提として、人間としては助けられない。一つなら別だけど、二つの種族に冒されてるなら私の腕ではもう無理だ。だからマシな方を選ぶ。優先するのは‬吸血鬼の方を許容し、人魚になるのは防ぐことだ。ヘル、目覚めたらそうなってると思ってね」

「…この際生き延びられるなら許容します」

 

(浸食に祈りは無意味…医療なら前の老化治療で肉体の構造は把握しているから切除は問題ない。問題は魔法薬…麻酔の後にどんな配合の████‭─‬‭─‬‭─‬……)

 

 船の制御を全て手放し、治療に全ての思考を傾けたのが分かった。

 補助がなくても皆なら船と問題を何とか出来ると信じ、目の前の問題に取り組む。

 美しい友情であり、友好度が上がる音が聞こえる感じがした。

 ピンチほど仲良くなる機会ってのは本当なんだなぁ…。友好度ならゲームでも戦闘後に上がったりしたし、これで今までの交流不足は解決しそう。それどころじゃないけどさ。

 

「‭─‬‭─‬‭─‬究明完了。ヘル、しばらくお休み。目覚めたらまた一緒にバカな事をしようね」

「ええ、その時はシープお嬢様も一緒に」

 

 ゴーレムが治療に使う道具や魔物の素材を持って来た。

 中身は無秩序で有りったけを持って来たのだと、持って来させたのだと察した。

 サーシャが手順を言いながら作業を進める。ミスは許されるものではなかった。

 

「麻酔薬投与…効果確認。呪符連結、錬金術起動、呼吸補助、脈拍観測の魔道具錬成、『精肉』追加起動、肉体の記録完了、正常な血の生成開始、異常な血の摘出開始、第一フェーズ、肉体治療を開始する」

 

 ゴーレムを操作して布で口元を塞ぎ、髪の毛を全て後ろに流して纏めて固定する。忙しく動く袖をまくり、布で落ちないように固定する。この程度の補佐は俺の知識から自ずとできた。

 ひっきりなしに魔道具が生成され、湯水のように素材が消費されオペが進む。

 浸食されないように予防は徹底したが、対処療法の方はあんまり進んでない分の負担があった。

 それだけ急いだと云う事なのだが、今咬まれるのは運が悪いと思う。

 

「……完了」

 

 やった!サーシャならやってくれると思ってたよ!

 

「第二フェーズ、99秒以内で魂の浸食要因の切除を開始する。リーロ、MRC起動、錬金で魔法薬生成工程省略、「魂認識拡張剤(ARC・ハイド)」を生成する」

『え、何の為に?』

 

 ギロリとサーシャが私を睨んだ。

 

やって。時間がない((干渉出来ないと治療出来ないから))

『わ、分かった!直ぐに準備する!』

 

 サーシャの思考が入ってくる。先に進もうとする膨大な意思が私に入り込んで来た。

 

 魔力炉を稼働させ、辺り一面にある魂の波から魔力を生成する。

 膨大な熱量が発生し、その大鉈で無理やり未来を切り拓く。

 手札がないなら作れば良い。

 0から1に出来なくても、小数点以下のヒントを掻き集めれば私にも出来る。

 そも、私の才能は1を2にする程度の物だ。1を10にするような天才ではない。

 

 だが、上限もない。進もうとするだけ先に進めるのだ。

 

 私は自分をそう定義した。そして、それは正しいだろう。

 出来るのは死に戻った分だけ蓄えた思考能力で殴り飛ばす事だけ。少しずつ進むのを無理やり行軍しているに過ぎない。

 だが、リーロの確かにあるゲームとやらの主人公になるだけの可能性はあるのだ。話を聞く限り、私とは到底思えない結果を出せる可能性が。だから合っているのだ。

 

 やる事は単純明快の快刀乱麻だ。

 治療出来る環境を整えて治す。それだけ。

 

 ただ、対象となる相手が厄介だ。

 肉体と魂を浸食し、どっちか片方が有ればもう片方が防げない。

 魂の治療なんて私には未開の分野過ぎる。タダでさえ治療は専門外なのに、あまつさえ魂とか…無茶振りだ。

 だがやれない事はない。

 魔法薬の研究はここ最近である程度進めていた。魔法の効果を持つ食事で、薬効のパターンはある程度判明している。

 人魚関係はあんまりだが白鯨に関しては調べていた。吸血鬼も神学である程度知識がある。完全な未知ではない。

 リーロが偶にこぼす知識も、想像よりマシなものだった。

 

‭─‬‭─‬なにより、失敗を恐れる必要はないのだ。5回までならセーフなんだから。

 

 その安心感は違う。緊張はしても致命的にはならない。パフォーマンスが下がらない。

 全力な上に実力を過不足なく発揮出来る。これでダメなのは嘘だろう。

 

「……生成、成功。私とヘルに接種……ヘル、ファーストキスだったらごめん…!」

 

 ちょっと想定外だったのは寝ているヘルは飲めなかったこと。

 血液に直はどうなるか未知数だから、どうにかして口から飲ませる必要があった。

 だが私は医療行為なら口淫も余裕だ。舌で筋肉を直接押して飲ませた。私はこれを初キスと認めないからノーカンだ。

 

カカチッ

 

「……ッ…成功!コレが魂の姿!波長!」

 

 結果は3度目で成功。二度失敗したが成功したのでノーカンだ。

 バッドトリップも死ぬかと思ったが、実際死んだので問題ない。

 後は簡単だ。深淵じゃないと触れられなかったのが問題だっただけで、触れるなら魂を創造し弄った経験を活かして浸食箇所を綺麗に排除し、補填に治療過程で確保した吸血鬼の魂で補う。

 浸食したならされる覚悟を持て。浸食という牙は抜いたから安全だ、問題ない。

 ダメだったらその時はその時だ。死に戻ってなんとかする。

 今の私を『精肉』で保存したから、いつでも魂を見て触れる状態に変更出来るようになった。いつでも受けて立つ。

 

「‭─‬‭─‬‭─‬治療完了」

 

 どうあれ、完了だ。私は私のやるべき事を成し遂げた。

 後は…みんながやり遂げられたか、それ次第だろう。

 

 






「吸血鬼」
 魔物には他の存在を取り込んで同族にする魔物が存在します。
 吸血鬼はその最もたる例でしょう。氾濫した吸血鬼を始祖とした吸血鬼の存在は、神国の地に根付いた一族として存在を確立しました。
 始祖を第一とする九つの降り続ける眷属関係を持ち、最下級のゾンビ(死者)以下は誕生する余地を持ちません。始祖になる程脅威であり、同時に元人間なら社会性を持てることから警戒されることは稀。
 ある意味人間を唯一の知性とした神様の調律を舐めた性質ですが、要は病の魔物だと考えれば理解は進むでしょう。病に冒された人間は人間ですからね。

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