不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

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 その頃のリーロ達は、調査を重ねて"2の世界にサーシャは居ない"ことを確定させました。




柳・夜・五九

 

 

 学園から出された大量の課題を解いている最中のことである。

 

「なぁサーシャ」

「どうしたのダルク」

「俺って影薄い気がしないか?」

「そうかな。いつもこうして勉強や研究とか一緒にやってるし、白鯨の時なんて運転とかやってたじゃん」

 

 ダルクが妙なことを言い出した。

 はて、薄いだろうか。普段から女子にモテてるし、友達もサーシャより多い。

 勉強も研究も出来て、偶に鋭い意見で周囲に一目を置かれている。

 属性学で攫われない為に門前払いされる珍しい光属性、旗という大きなMM、ワイルドな髪型と格好。特徴なら文句なしに目立っていると思うのだが。

 

「普段ならそれでいいんだろう。だが…いざという時俺は影に徹することになるじゃないか」

「まぁ…言われてみればそうだね」

 

 特別ですごい物はないが、やってくれるとありがたい仕事を任せられるのは有り難いのだが…その辺り、どうやらダルクは不服なようだ。

 

「実はな…」

 

 何やら自分語りを始めた。

 まぁ、研究の時間に先にやっておこうと黙々とこなしてるのも限界がある。

 休みを入れるのも大事だろうとサーシャは書きながら、こうも思った。

 自分の過去を語ろうとする場面が今この状況なのがもう普通だなぁ…と。

 

「俺は、割と目立ちたいし誰かに認められたいんだ」

「あぁうん。知ってた」

「…バレてたのか」

「バレてたよ。見た目とか派手だし、服も豪華だしね。なのに振る舞いは常識的。…一歩後ろで腕組んでいたけど、その集団の中心に居たいタイプなのは匂いで分かった」

「…匂い?」

「体臭気にしてるのと振る舞いから考察した」

「…やめてくれ。自分をそうやって考察していると言われるのは心に来る」

 

 サーシャは薔薇族の果実を食べ続けた影響で常に薔薇の香りがして取れないが、ダルクは別だ。

 毎日お日様の香りがするし、仄かに柑橘類の匂いもする。

 清潔感のあるタイプなのは普段から近くにいるサーシャが一番理解していた。

 

「まぁ、そう言うわけだ。何か唯一無二のものが欲しいんだ」

「私を彼女にしたら一発だよ?」

「…冗談でもそういうのはやめておけ。…美人なんだからな」

「ふふっかわいい」

 

(あ"あ"あ"〜〜^心が浮き立つぅー!)

 

 若干照れの混ざった言葉に到底リーロに見せられない思考でノックアウトされつつ、真面目に考えてみる。

 ダルクが今持っている特徴は、どれも珍しくても他にいるタイプが多い。

 優秀さでは補正のあるサーシャが勝り、属性は固有のグリムやダンテ先生が勝り、性格は割と丸い。少なくとも、カーリーのような脳筋やヘルシングのようなノリの良さはないだろう。

 それでもコツコツと頑張り、成長する秀才さは貴重だとサーシャは思った。

 

「でもねー…唯一無二ってそんなに良いものでもないよ?共有できる仲間が居ないし、悪い意味で目立つこともある」

「…そういえばサーシャは学園唯一の水属性だったな。普段から破茶滅茶してるから忘れていた」

「今日の朝ウッドさんも言ってたじゃん。水は捨てろって。…あれ、正論だから言い返せなくて困るんだよね」

「そうか?結界や船にしたり出来てたじゃないか」

「ぶっちゃけアレ土属性や火属性で同じことした方が強いから私需要ないよ?」

 

 壊れやすいし、治すにも一手間いる。必ず水球を作る過程は挟まるし、此処まで実力を高めてようやく防御や妨害で普通の魔法使いと同じ振る舞いが許される。

 "一万以上の補正が乗って尚、サーシャが水魔法を改善出来てないのが答えだ"。

 

「回復は祈りで終わるし、防御は土で終わるし、攻撃は火で終わるし、移動は風に負ける。妨害も…幻覚を作れる火の方が強い。……私にはお手上げかな。今も頑張って研究してるけど…限界を感じてる」

「限界を超えるって評価されたサーシャが限界か…白鯨のように量を…出すなら土や火や風の方が被害が多いか」

「うん…量はね、誰がやっても強いから水でも強いだけなんだよ。実際、白鯨が水じゃなく火を出せば七回は全生命体殺せてた」

 

 白鯨は水属性の中で一番強かった。

 その白鯨が3日間大暴れしても、地上の7割を海にして1割の人類を殺せるだけ。

 コレが他属性なら…と考えれば、結局一番弱く誰も殺せない魔法だと言える。

 

「だからまぁ、唯一無二はそこまで良くないよ。どうしてもって言うなら、とことん王道を歩いて誰も辿り着けない場所まで歩き切るしかない」

 

 結局これが一番だろう。

 道に終わりがないなら、王道を並んで抜き出る者が居ない場所まで走れば良い。

 そうすれば自然と唯一無二の存在として在れるだろう。

 

「…一番難しい道じゃないか?どう歩けば良いかも不明瞭だぞ?」

「そこは先人に倣えば良い。その背中を超える前提なんだからドンドン学ぼう。例えば……」

 

 書いている文にピリオドを打ち、呪符を使って手元に魔法陣を描く。

 あっという間に陣は描き終わり、真っ白な球体となった。

 

「なんだそれは?」

「とても賢くなる魔法。もとい、リーロの協力の下『憑依』から発展させた『大霊逆憑依』って魔法かな。細かい説明を省くと人の心以外の全てを得る魔法と言えるね」

「それは…実力や知識や技術と言えるものか?幽霊に生きている人を憑依させると?」

「いえーす」

 

 ダルクの考える通りである。

 魂だけの存在が問答無用で憑依出来るなら、逆に生きてる人が魂だけの存在に憑依出来るようにすれば良い。ついでに生きてる人から人に入れると尚良いのでそうした。

 要は入る入り口が有れば良いのだ。勿論魂だけの存在に肉体を入れる体積はないので、肉体は別途『精肉』で加工する。すごい人の魂も無い時用に人工的に作る機能もあった。

 倫理観が消し飛んだ発明だが、一回入れば得られる物は沢山ある。重ね着すれば尚更だ。

 コレが王道かと言われたら疑問だが、実力は手に入る。学ぶ力は磨かれなくても、実力が手に入れば自然と後から付いてくるだろう。

 

「……よくない。よくないぞコレは。人の努力を奪う物じゃないか」

「失礼だな、見本だよ。正規利用は何回も入って自分の力になるまで高みの力を覚えるんだ。実際に自分で振るえば感覚とか分かりやすいでしょ?ダンテ先生はこの説明で納得したよ」

「先生…魂を着た切りで脱がないやつは?」

「王国にそんな人は居ない!コレは先生のお墨付きである!」

「先生ェ…」

 

 ダンテ先生の将来に不安を覚えつつ、まぁものは試しだとやってみる事にした。

 相手はサーシャ、憑依して誤作動を起こしても解除できる人が選出された。

 仮にダルクの精神だけになったら?その質問に対しては、『精肉』の自動発動魔道具のネックレスをダルクの身体に付けろと言われた。

 明らかに書き換えるつもりの発言だが、その後戻るなら良いかとダルクは許容した。

 なんだかんだでダルクも王国民特有の楽観視を持っていた。

 

「…なんだなんだ?」「サーシャの実験?」「マジ?研究員的に見守りしとこ」

「サボる口実出来たぜ!」「教室でやるのか…」「なにやるの?」

 

 教室でやることにしたからかギャラリーが多いが、まぁ良いだろう。

 根本的に目立ちたいのと変わりたい気持ちが発祥の実験だ。それなら目立つほど良い。

 

「じゃあ、いっきまーす」

「よし…ドンと来い!」

「"魂は流転するが故に 一時として被さり混ざると言えるだろう"『大霊逆憑依』」

 

 そんな訳で休憩がてら緩く始まった実験により、サーシャの肉体は服を残して皮だけとなり、ダルクの方によって覆い被さった。

 想定より物理的に着る方向だったので驚いたものの、ダルクも研究員だ。直ぐに慣れて来る皮を受け入れる。

 サーシャが服の中に入り込み、自身の皮に張り付き、髪を覆い、神経が通り、視界が被さって…。

 

「おー、俺がサーシャになってる」

『おー、予定通り魂だけでも割と意識がある』

 

 サーシャの心以外がダルクの手に渡った。

 様々な配慮をして大魔法の規模になった分、使ったら全裸になるなどのアクシデントもない。

 全て完璧に発動していた。

 

「あー、あー…よっほっはっ…身体重っ」

『今はリーロ…MMとの契約が切れて身体強化が切れてるからね。普通の体だよ』

「なら仕方ないか…傷付けないように気をつけないと…」

 

 謎の武術の知識や経験のお陰で動き自体にキレはあるものの、傷が付きやすいのは間違いない。

 紳士的に注意しつつ、試しに知識を覗いてみた。

 

███████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████████

 

「…何か…多過ぎて読めん」

『試しだからね。知識を特殊な感じに扱ってみた。その辺りが見えないなら実験成功だ』

「…まぁ、乙女のプライベートって奴だな」

 

 深淵が有った…と表現するべきか。

 思考の一部が真っ黒に塗り潰され、検閲されたように見えない。

 …いや、正確には思考が重なり過ぎて読めなくなっているらしい。サーシャの知識がそう教えてくれた。

 思考が早い上に同時だとこうなるんだなぁ…ダルクは気が遠くなる気持ちになる。

 なにせ、脳の1%も自分の意思で使えている感覚がないのに、普通に思考が出来るのだ。

 中身がダルクに変わっても続いてるということは、サーシャ自身でも手を付けられない完全自動の思考、処理である。どんな脳の構造なのかと疑問に思うが…今は良いだろう。

 

「皮になった…?」「グロ!」「キモっ!」

「なんか悍ましさを感じる…」「考えると確かにそうなるんだけど…」「どうしたらこんな魔法が…」

 

「…あー、普通に戻れるしちょっとした試験に近い実験だから見てて面白くはないぞー?」

『言うの遅れた気もするね。思ったより評判悪いや』

「何処かで感覚が麻痺してたのかも知れんな…」

 

 あくまでも実験、それも周りの目がある中の実験なのだから。

 なんだか気まずいし、サッサと終わらせるとしよう。

 

『じゃあ先ずは知識獲得から。そろそろ一部の知識が解放されるから、それを受け取って書いてみてね』

「人の思考回路か…?これが…?…むむっ知識が沸いてくる!コレは…集団を率いる方法?演説?」

『後々使いそうな知識だよ。テストとか上の立場にいる事が多いし丁度良いでしょ?』

「確かにそうだが…いや卒業後に使うか?パン屋とかで使うか?」

『テストで使うかもじゃん?』

 

 ぐだぐだ言いつつ書いてみる。丁度歴史の課題で答えられそうな問題があったので併せて解答した。

 

『次は肉体操作。一回踊ってみて』

「スケートってなんなんだ…?…よ、ほ、フッ!」

『良いねぇ、考えた通りに動けてる。動き難いとかはなさそうだ』

 

 教室なので控えめにジャンプやI字の姿勢を取ったりしつつ、オマケに重なって読めない思考の中で辛うじて読めた"幻惑踊"なる技を混ぜてみる。

 

「あれ、なんだかサーシャが魅力的に…」「二人に増えた…?」「スケベ!」

「幻覚を見せる踊りってなに?」「面白くなってきましたね」「魔力の流れが狂気的だ」

 

 やってる側には分からないが、効果はありそうだ。

 そしてサーシャの深い思考を読むコツも分かってきた。初見は出来ないと思ったが案外そうでもなさそうだ。少しばかり「思考の流れ」に沿い、同調し、捉えて仕舞えば…。

 

(複数の無詠唱と詠唱を重ねて威力を上げる「多重無詠唱の輪郭付与」理論の新しい………呪文に抑揚を織り交ぜてより効率的な発音を調べる思考要員を……リーロの方の現在状況演算結果出ましたー、確認誰かお願いしまーす……やっぱ爆速で交配実験重ねて未来の人間の生態調べる方が……)

 

 読み解き、分析し、取り込み、理解し……ふと、魅力的な魔法と技術が、思考の隅に沈んでいる物に強く惹かれた。

 

 思わず口ずさんで仕舞うほどに、世界にその産声を上げさせてやりたいと願ってしまうほどに魅力的な『招来の歌(構想段階の魔法)』が、それを行使する為の「芸術魔法論‭─‬呪歌(技術ツリーの一番奥の奴)」が。

 

 自分なら完成させられる確信が有った。

 

『じゃあ後は水魔法を使って終わりに…』

「"狂気の月よ 黒の血を持つ獣達よ"」

『ダルクなんでそれをタンマタンマそれは本当にダメな奴』

「"汝の嘆きを我は見た 汝の悲劇を我は聞いた 光と音が流転する程遠くより 我が観測した"」

 

 狂わしの三日月の狂気汚染の波に共鳴して深淵に到達し、そこから更に他の世界からの情報を観測し、その繋がりを歌と賛美で強化して、科学的に転移を再現してこの場に招待する魔法。

 歌と呪文を織り交ぜた技巧。芸術こそが最上の魔法となる程に共通点を見つけて流用し、魔法を根本から構造を作り変えてしまう様な「神秘を利用した第三世界でのみ成立する魔法理論」による、絶対的な技術。

 

「"どうかその生に救いを与え 我が下で安楽と苦難を振るえと 我が心が突き動かされたのだ"」

 

 王道の、その先にどんなものがあるかを理解して、ダルクはサーシャのアドバイスが相違なかったと喜びを口遊む。

 

「"血に酔い 肉を震わせ 骨を断つ その力を携え訪れると良い"」

 

 神への感謝に似た祈り、生命賛美に似た祝福、呪いのような度し難き試練。

 辿る筈だった道のりを、水の魔法使いの思考を一巡だけ取り入れただけで全て得た。

 

「"我が手を取るならば願いたまえ 否定するならば笑いたまえ その選択の自由を尊重しよう"」

 

 それほどまでの知恵の宝庫を、ダルクは今まさに得たのだと確信した。

 

‭─‬─‬『外なる賛美への召喚』

 

 身の毛がよだつ感覚に手応えを感じた。

 何かが来ると、その存在を予感した。

 

『‬"されど 来るならばその身は水の使徒 生命を産み出す生誕の使徒なり"』

 

 ……"変質した"。

 完璧が崩れた。何かが変わった。神秘の噺に追加された一節で崩れてしまった。

 ……来たる獣は崩れたまま、この場からズレた土地に落ちたのだと理解した。

 

『大霊憑依‭─遡‬』

 

 強制的に皮が剥がれ追い出される。

 ダルクは地面に転がり、サーシャは『精肉』によって実験前の姿へと戻った。

 

「ふぅ…やっぱり『憑依』から続く万能感は変わらないか。結構メンタルが強い方のダルクでこうだと使っちゃダメだね。対抗策を研究するだけに留めるのが賢明かな」

「サーシャが戻った!…大丈夫?」

「ダルク〜今のはないわ〜ぁ」

 

 研究室の一員であるモモとリンゴが駆け寄って二人の身体を検診する。

 そこそこ一緒に研究し、様々な体験をしただけはあって検診はサクサクと終わり、サーシャは特に問題ないと結果が出た。こういう時、抗魔(レジスト)が高いと何かとお得である。

 対してダルクは一目で分かりやすい変化をしていた。

 

「ダルクは大分変なことになってんねー。なんか女の子になってるよ」

「…すまない。本当にどうかしていたらしい。……女?」

「はい、鏡どぞー」

 

 言われてから気付いたのだろう。改めてダルクがモモの持って来た姿見で身体を確認する。

 

「…誰なんだ?」

「ダルク〜」

「俺とサーシャ、どっちの要素も無い…だが俺の思った通りに動く以上、この身体は俺の……ううんおお?」

「まだ現実飲み込めてなさそう。明日辺りにテンパる奴だわ」

 

 紫の髪と眼は光を浴びた水晶の様に輝く透明度のある白髪に。

 筋肉のある身体は柔らかに、綺麗な曲線を胸から尻まで続いている。

 日焼けした肌も真っ白になり、サーシャと比べると随分と童顔で似ても似つかなかった。

 

「…どこから来た見た目だ?」

「知らないねー。でも属性も光と水の二つになってるし…サーシャ?」

「…私が汚染物質みたいな扱いなのは納得出来ない。…けど、この魔法はダメそうなのは確定したかな」

 

 普段なら死に戻りでなかったことにする結果だが、今は出来ない以上仕方ない。地道に戻していくしかないだろう。出来るのは『難題(劣)』で確認したので絶望する必要はない。

 明日からの研究内容が決定した瞬間であった。

 

「…まぁ、戻せそうだからその間は楽しめば良いんじゃない?」

「よし、今日から俺はダルクからジャンヌとする。この姿の間はそう呼んでくれ」

 

 顎にチェックの形にした指を当ててキメ顔でダルク…改めジャンヌが宣言した。

 戻れると分かった途端ノリノリになる王国民仕草である。特別感のある見た目が特に気に入ったらしい。

 

「よろしくジャンヌ。短い付き合いになりそうだけどそれまでは一緒に頑張ろう」

「なんか似た様なの前にあったよね。小さくなったシープと中年のヘルちゃん」

「あー分かるー。今回はこう来たかって感じだわー」

「…………特別感、ないのか」

 

 ジャンヌがしょんぼりすると、頭上に雨が降り始めた。

 感情に反応して魔法が漏れている所を見るに、水属性の方は使い熟せてる訳ではなさそうだ。

 それにしても…半透明な肉体から考えるに、半分が精霊になっている。失敗も有ったが目立つという条件は達成されたと見て良いだろう。

 

「元気出してダル…ジャンヌ。ほら、多分先祖返りでちょっと精霊になってるみたいだし、結構特別だよ」

「だが先祖返りなんて学園で探せばいるじゃないか…3年の属性学で学べる範疇…くすん…」

「三年でも一クラス三人程度だから珍しいのは間違いないよ。ほら、深呼吸、心を落ち着けてー、吸ってー、吐いてー……」

 

 性別が変わっても自分より背の高いジャンヌに抱きついて、背中をさすりつつ気を落ち着かせる。

 そうしているとだんだん落ち着いて来たのだろう。

 …頭上の雨も止んで涙も止まった。性別が変わって感情的にもなってそうだ。

 

「はいはい、一個良い?」

「んーどしたの?」

「ダルクがこうなってるのにサーシャに変化がないとは思えませーん!徹底的な調査が必要だと思いまーす!」

「百理ある。サーシャ、検診した範疇外で何かない?」

 

 二人が行ったのは…血液採取、身体能力測定くらいか。尿や内臓などは後でやるとして、実感できる範疇で変な感覚は存在しない。

 いつも通りの『精肉』で維持した身体である。

 

「今すぐはわからないかな。そもそも休憩の合間にやっただけだし…何をするにも課題終わらせてからにしよう。どうなるにしろ、その内何か分かるだろうしね」

「リーダー方針は「経過観察」ね、りょー。ならみんなで課題終わらせよ?時間欲しっしょ」

「なら、わからない場所は俺が教えよう。兎に角量が量だからな、強度のある魔法学以外をやって、残りで改めて再検査。当面の問題がなければ研究。流れはそんな感じでいいな?」

「おけー。学習より課題処理優先でGOー!」

 

 そんな感じで野次馬も「終わりかー」と言いながら解散し始めた。

 中には「…あそこに入るのは思い直しましょうか」とか「パトロンの条件で頷く範囲ね」…などなど言っていたが、それはご愛嬌だろう。

 思惑其々、課題大量、呼び出した何かは何処へやら。

 いつの間にか"思考の外へと逃げだした"ように話題にされず、ダルクの性転換に関心を全て持っていかれる事となった。

 

 

 

 Gruuuu……

 

「漸く辿り着き目覚めたな 黒き獣にして‭─‬‭─‬」

 

 或る森で電鋸と銃を持った男が獣の影に語りかける。

 久しい友人に声を掛ける様に気軽に、怨敵と相対した様な眼で。

 

「我が半身よ」

 

 「貴族狩り」で王国の貴族を終焉に導いた「狩人」が。

 影を持たない男が、外なる獣に襲い掛かる。

 

‭─‬‭─‬時間の秒針が止まる中、明けない夜が始まった。

 

 






「狩人」
 各国の依頼を受けて貴族狩りを行った人物、または集団。
 その成果は凄まじく、貴族制度の崩壊と複数の固有魔法の族滅を成し遂げた。
 他にも宝物館からありったけの宝を盗み出したり、全ての追跡者に対して一切の足取りを今まで掴ませてないなど、潜入行為に対して驚異的な実力を持つ。
 "認識に関する魔法のプロ"でもあり、ゲームでは依頼すると対象となったキャラが死ぬ舞台装置として最後までプレイヤーの前には現れなかった。

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