不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計 作:何処にでもある
神の力を得て敵無しですね。元から禁忌の力が有ったので誤差ですが。
「最初は『
初手はサーシャの手に回った。
2つの魔力弾…と言うよりも砲撃が時計塔に撃ち込まれ、根本が抉れた時計塔はあっという間に倒れてしまった。
「──あ"あ"あ"ああぁぁあ!!!」
当然それだけで終わる様な物理攻撃ではない。砲撃が通り過ぎた弾痕から真っ黒な影が伸びると、纏まって一つの影を形作った。
『
そうなれば痛みは走るし、力の精彩さを欠きもする。特に普段は一方的に殺してるならば効果覿面だろう。
狼狽えている今がチャンスだ。少し早い気もするがトドメの一撃としよう。
「リーロ、リート、魔法装填。思い浮かぶ言葉を言葉にして」
『…これだ!
『…これね、
「その調子。"調和を表し融和の力を宿す故に 混沌は此処にありき"『混沌水生成』」
(混沌水生成開始、冷却路を循環、属性調律、魔法の物質化完了…発射用意ヨシ)
砲身の熱を冷却水が取り除き、蒸気となって排出される。異音と共に二つの銃口の前に黄金と透明な水が混ざり始めた。
触れたものを逆行させ、新たな運命を歩ませる力と、世界を上書きしてやり直す力を一つに纏める。
神秘によって増えた水、その中でも無秩序に力を混ぜ合わせる水を再現した。
配分を適切に。失敗すれば全て水の泡になるなら…大胆かつ慎重に。
「『『──"
dead back…デッドバックを省略しデバックの弾丸が轟音と共に放たれて狩人に向かう。
その二つの力を纏めた事で作られた効果は「
死に戻りのトンデモ補正効果と、周回の範囲と種族すら変えられる任意選択能力を組み合わせた事で実現した"人生の書き換え"。
撃ち込まれたが最後、自身の過ちや行動は全て過去から現在まで世界に負荷をかけない形で再編され、"生誕から相手の積み重ねを否定する"のだ。
自身が産まれた時からやった事も、経験した事も全て"無かった事にする"。
それも今に至る迄の"死んだ原因を取り除く形"で。
…当たりさえすれば、相手に死に戻りの結果を押し付けられる切り札である。
『grr……』
そう、当たりさえすれば。
「まぁ、そう上手くは行かないか。二人共、もう一回やるよ」
『…待ってあげなさいよ。明らかに見守る所じゃない』
「…分かった、待っていようか」
カチッと音と共にリーロの魔杖から薬莢が排出され、弾倉が回り次の弾が装填される。
残り四発、許容範囲内だ。
相手に防がれた訳ではない。身代わりになった者が居た。真っ黒で大きな獣、この前狩人を動かす要因としてダルクに呼び出させた狩人の半身だ。
『…gaaa……』
「何故、前に出た…?血に酔い、その身が癒えるまで待てば…」
「そんな事も分からないなら、貴方は夫として落第だろうね」
「…なに?」
容赦なく行こうとした所、リートに止められたので煽る方に切り替えた。
既に狩人と真っ黒な獣がどういう関係なのは深淵で見た時に知っていた。
狩人の夫と獣の妻、種族の垣根を超えた愛の話。その10年越しの再会なのを、知っていた。
サーシャとしてもそこで終わるなら勝手に幸せにでもなってて貰いたい所だったが…無駄に強いし、「黒い血」という魔法の性質を持った病持ちなのが問題だった。
異世界の病気なんて厄介な物、どうせなら後腐れなく纏めて殺したい所だったのだが…直ぐに殺せないなら仕方ない。煽るしかないだろう。
「愛する者の為に命を張る理由なんて、愛してるの一言で事足りる。それを問う程愚かとは…10年間、病を余計に広めまいと人に関わらなくて鈍ったね」
「知った様な口を…だが、正しい言葉だな。ならば、余計な心労を与えないよう早急に狩りを終えるとしよう」
その言葉に合わせ、ため息と見損なったと顔に出す。こうなったら話の流れを都合よく持っていく他ないだろう。正面衝突するなら、少しでも相手の手を鈍らせるのが有効だ。
「愚かだな。その為なら妻を連れてきた恩人も殺すのか。ただ思考を止めて考え無しに狩り尽くして…そうした果てに何が待っているか、知らない筈もないだろうに」
「何を言っているんだ…?…サーシャ、王国生まれ。依頼は「人と獣、どちらに成りたい?」と…まさか」
その気づきに合わせて「獲物の印」を氷魔法で器用に取り出して見せる、こういうのは相手が気付かせる方が信じて貰いやすい物だ。
「予想通りだよ、狩人。私は貴方が求めてやまなかった半身たる妻を連れて来た魔法使い。獣に落ちぶれていたお前があまりに哀れに思ったから、人に戻る機会を与えたのさ。──さて、その上で問いかけよう」
サーシャが銃口を相手に向け、狩人も弓を引いた。
『思ったより口数少なかったわね…
『普通殺し合いでそんな事する方が珍しいんだよ?…
(用意完了…後は放つだけだ)
互いに殺意は十分であり、これ以上待つ必要もないだろう。
狩人はまだ気付いてないが、既に妻の方はやり直しで"元々人に産まれた存在で、血は黒くなってない"ことになった。
後は狩人さえ撃てば事は全て丸く収まる。何せ、影の中にいる死んだ無数の人々も含めて一発でやり直すことができるのだから。
「妻と共に人になるならば、撃ち抜かれろ。人となる妻を置いて獣のままに在るならば、私を殺すといい。人となるならば、先ずは他者を信じなければ始まらないだろう?」
「…まだ死ぬ訳にはいかない。二人で生き残る」
「ぬかせ、妻はもう人になったのが見えないか?」
「!?」
そう言って振り返った狩人の背中に魔力弾を放つ。
真正面からの不意打ち。当然躱されるが、そこには既に氷魔法で罠を生成している。
それを避ければ次は支給した武器の爆発。続けて
「『『──"
受け流す為の武器は壊した。避けられない理由を作った。
守りの姿勢を完全には取らせない為に罠で足を引っ張った。
それを手刀で無理やり突破しようとして…当たった時点でサーシャの勝ちだった。
「ば…かな…幻は一切……
「幻覚ではなくミスリード。失敗を誘発させたんだ。…無抵抗な獣は狩れても人との戦いには慣れてなかったね。善い事ではあるけど…力不足で悪になってしまったね?」
そう言ってサーシャは銃の形態を解除すると、氷魔法で作ったベルトに差し込む。
別に人に戻しても良かったが…リートの言葉を借りるならばそういう雰囲気では無さそうだったから控えたのだ。
「これで君たちは死ぬけど、ただ終わるだけじゃない。そこの獣と同じく、過去からやり直して貰う。死んで戻って、生まれ変わって、ここで死なない様な成長と選択をなさい」
例えば獣ではなく人に産まれたり、獣だけを殺す狩人の道を選んだ。
例えば学園に入学しなかったり、破綻した学園に固執しなかった。
例えば既存の社会に不満を抱かなかったり、事件を起こそうとしなかった。
例えば、外なる神との交信術を取り憑かれた様に開発する運命を辿った…とか。
狩人だけに言っている訳じゃない。狩人の血に取り込まれた全ての死人にも向けて行っている。
「黒い血」とはそういう物だ。殺した物を取り込み、時間と共に真っ黒な血に染め上げる。
逆を言えば、その前ならまだ自意識があるという事だ。狩人や獣と共に貫かれた以上、此方も死に戻りの対象になる。
でなければ、態々狩人に殺した理由を読み聞かせる義理はないのだ。
「では善い旅を。また会えると良いですね。…もう会う事は無いでしょうけどね?」
天候 大雨
時刻:4:10.a.m.
学園死亡者 7,562名
7,561名と1匹の人生が変わる事による世界の変化予測…
狩りの終わりは、サーシャの黙祷によって締めくくられた。
「単純な話だよ。家と来たら次は言葉と服だ。でも言葉は世間に広まる時間が足りず、服に値する物を考えれば魂を着飾る他ない。なので両方とも解決できる策を講じる事にした」
「それがあんたの考えた最高の言い訳なら一発殴るのは止めないから」
「いけーお姉ちゃん!淫売の女を殴れー!」
「あはぁ、リーロも悪口を言うのに遠慮がなくなって来たなぁ」
長い永い時間の末に漸く訪れた夏休みの初日、123号室を共用で使っていたサーシャとタイム家姉妹がわちゃわちゃと騒いでいる時の話である。
「そもそも急なのよ。永遠の夜が来たと思えば世界が急に拡張されて、新要素に驚いていたらMMになるわ、タイム家が存続した事になるわ、時計塔所属じゃ無くなって人生変わってるわ…世界がサーシャの速度に追いつけてないってどう言う事なの?」
「はは、記憶が続いているんだから良いじゃんねぇ?そこら辺の調整大変だったのは理解して欲しいね」
「お姉ちゃん、サーシャはこういうものだから受け入れるのが一番早いよ」
無数の人々の人生が変わった事でサーシャにどんな変化が訪れたのかと聞かれれば特に何もなく…サーシャの周りだけは著しい変化を遂げていた。
本当に様々な事が変わったせいで混乱も多く、記憶が戻った死亡組と元々こうだった生存組の認知の違いで未だに学園は混乱中である。
何せ3時間前まで狩人が虐殺を行ってたのだ。然もありなんである。
「それで…何がどう変化したか、キッチリ教えなさい。もう変えるものは粗方変えたんでしょ?纏めて説明するなら今のうちよ」
「良いよ。二度手間が面倒で避けてた側面もあったしこの際徹底的に教えよう」
「お姉ちゃんすごいや、サーシャに説明をさせるだなんて」
そんな訳でサーシャの主目的であった学園関係が以下の通りである。
1、狩人関係で「貴族狩り」が無かったことに。
2、その影響でMMの発展に変化発生。殺して無理やり扱う方針から生きたまま任意で魔杖に成れる様に。
3、その影響で表面的な外交関係が大幅に改善。学園の運営に他国が干渉可能に。
4、その他無数の人々の変化により「源龍事件」を機に王都魔法学園を解体。王国が主導せず、権力が均衡した「魔法学院」として新生。本拠地も王都から月に移転。
5、本拠地が月の為「狂わしの月」に対処可能に。終わらない夜を機に破壊成功。
「まぁ、他にも色々いい事あるんだけどそれは置いておこう。大事なのは3つ、
私の時間や歩みに変化なく月やMMの問題を解決した。
貴族狩りが無くなったことで王国はゆとりを得て、白鯨の後でも余裕を持って難民を食べさせられる様になった。
王様が死んだ上に狩人のコネも出来、私の潜在的な知名度も上がった。
この3つさえあれば後は全て些事だよ」
「王様死ぬの必要だった?」
「知名度の潜在ってどういうこと?」
「王様が居るとグリムが王様になれないから必要。8月の発表会で私の論文を受け入れられる土壌が出来たから知名度が得易くなった」
そんな事をわちゃわちゃ言いつつ、一旦休んでから外を見て回る事にした。
あまりに変化が多いのだから、話していても永遠に終わらないと悟ったからだ。
「という訳で寮から出たけど…本当に月なんだね。地表が見えるよ」
「まあね、精々"雲と同じくらいの高度"だけど、流石に息苦しいかな」
「そう言えば水属性だったわね、サーシャは。空気が足りてないのね」
「身体はあくまで人のまま、生身だからね」
今は神になっても苦しいまま…というのは言わないで置く。態々「アンリマユ」の身体が生身と同じくらい脆弱なのを言う意味が無かったからだ。
気にせずに周囲を見れば、一見王都魔法学園とは大差ない様に見える。
広い芝生、青い空、塔に転移門…しかし学院から離れれば月の乾いた大地や抉れた土地が見える以上、確かに此処は神の住まう月の大地なのだろう。
そうする様にしておいてなんだが、よくもまぁ許可を得られたものである。
「月の学び場…?忘却の印は何処に…?…きゅぅ…」「なんの話だよ…10年前からやって来たのか?」「うあー…全ての記憶がいつの間にかあるのが気持ち悪い…」
「きぞくがり…?知らない話ですね」「有ったのよ!源龍事件より前に騒がれてたものが!」「狩人怖い狩人怖い狩人怖い狩人怖い……ぴぎぃ…!」
「うーん、やっぱりみんな混乱してるね…」
「私達も似た様なものよ。ただ元凶が近くにいるから何とか冷静で居られるだけ」
「一つずつ噛み締めて受け入れれば良いんじゃないかな。今日から8月までは私の対策予定も休暇にしてるし、準備も程々に休む頃合いだよ」
サーシャがそう言うと二人から訝しむ目線を送られたのが解せないが、この休暇のために頑張ってたまである為コレは譲れない。
夏休みの宿題は早めに終わらせるに限るし、他人任せで手を抜けるならとことん任せるべきなのが複数の物事に関わるコツだ。
「そこで私は旅行計画も立てた。各国の首都や里帰り、王都も知らない場所が多いし…学園なんて教室と寮辺りしか知らないからね。色々巡ってみたいんだよ」
「おおぅ…」
「唐突ね…まぁ、時計塔がどうなってるか気になるしついて行っても良いわ」
天を仰ぐリーロは置いといて、折角賞金や力を得たのだ。夏休みは旅行三昧だと心に決めていた。
世界を守る、作り変えるというのなら知らなければならない。サイーシャ村と学園と深淵しか知らないままでは片手落ち、せめて大国の首都は知って然るべきだ。
近場でも副科目関係とか全く無知なのは置いておく。兎に角見識が足りないのは常々感じていたのだし、この夏休みは良い機会だろう。
「という訳で早速明日から誘える人は誘って行きます。ぶらり世界の旅、随伴者はその時々だよ」
「なら最初は?お土産いっぱいありそうな商国、地元の王国、夏には涼しい帝国…それとも珍しいものがある神国?」
「ふふ、それは着いてからのお楽しみ!」
ゲーム知識由来の嫌な想像でもしているのだろうが、その対策は済んでいる。
何かあったらリーロとリートの二丁拳銃でぶっ飛ばせば良い。なんてことだ、全ての問題が解決したぞ?あはぁ、私は天才だな!
今のサーシャは色々考え過ぎて阿呆に片足突っ込んでいた。
「うーん…大丈夫かなぁ…」
斯して災難や企みも終えて、サーシャ達は世界を旅行する事になった。
その中でもリーロは不安がっていたが…安心して欲しい。
世界が変わっても…寧ろ世界が変わったからこそ、火種はより多く点在し燃え盛ろうとしていると、初日で実感する事になるのだから。
「再調律/狩人殺戮」
終盤に選択可能となる3つの計画の内、この二つを選ぶコンボで勝利文明と交渉する余地が産まれる程急成長を遂げられます。
再調律で世界を整え、人材の性格や能力調整…運が良ければ放置しても勝手に解決するコンボ…確かに強力ですが、その代わりに恋愛の難易度やランダムイベントの発生率が上がるコンボです。
同じイベントでも状況次第で良くも悪くもなるこのゲームで、それは終盤まで油断できない運ゲーを強いられることを意味します。
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