不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

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 神国なんですから神と話すのは道理ですね。
 カーリー達を放置することになりますが自力で帰ってくるので問題ありません。




六・厄・六七

 

 

「ここなら良さそうかな…では話し合いましょう」

「話し合うって…なあもう夜だから寝ようぜ?」

「断ります。あなたに話すこと、了承させることが幾つかありますから」

「なんだよもー!矛盾も世界の融合も上位者と話し合う余地作ったならもういーじゃーん!」

「先ずは王族に関してです」

 

 神国の宮廷、満明かりに満たされた屋根の上に二柱の神格が相対していた。

 方や白いこの世界の最初の神、方や黒いこの世界で産まれたばかりの神。

 どちらも平等に民宿出来ず、屋根の下で過ごせないので仕方なく屋根の上に来た者共である。

 

「先日王様を殺し、その神性は私の力として取り組みました。その為今の私はあなたの孫でもあることをご理解ください」

「あ、遂にくたばったんだあいつ。まあいいやあんな奴、刹那で忘れちゃった」

 

 …一番許されなさそうなことを初手に持ってきたが、案外にも赦された。

 この様子を見るに…王様に宿っていた「カミヒナ」が変な方向で悪さをしていたか。それとも素で嫌いだったのか…どこか他人事みたいな顔をしている。どちらにしろサーシャに都合の良い話なので蒸し返さないで置くことにした。

 

「次に、この世界の言語の概念を調律する許可を下さい。このままだと上の方々と話せそうにないので」

「ま、多少はね?世界の強度とか良くやってると思うし、あげてやるよおらぁん!」

 

 そう言うと神様は神性の一部を切り離し、サーシャに投げ渡した。白く輝くそれは、確かに取り込めばサーシャのものとなるだろう。

 言葉の概念の管理権をあっさり手渡す辺り、実績を見て判断してくれたようだ。

 もしくは、そこに拘りを持って居ないか。

 

「ありがとうございます。次は月の高度を上げてください。今のままでは衝突することになりそうなので」

「ははーんさては君凄く真面目ちゃんだなぁ?面倒だからこの権利も渡す芸もみせてやるよほらほら」

「ありがとうございます。最後に世界の外郭に歓談用の世界を作ることの許可と知識を。安定の為に空間を作ってるのは分かりますが、矛盾が消えた今なら可能な筈です」

「良いぜ受け取れー!アンアン喘ぎ女ー!」

「ありがとうございます。…ですが意外ですね、かなり渋るか恨みを買う話だと思ってたんですけど」

 

 最後に卑猥な渾名で世界の調律方法の知識を渡されたが、此処までスムーズに事が進むのは想定外だった。

 ちょっとした命の張り合いの一つや二つはあると考えていたのだが…サーシャの想像以上にこの神様はいい加減なようだ。

 いや…恐らく人との付き合い方が分かってないのだろう。「カミヒナ」の影響で人に嫌われ無視され近付かれず、「キシモジン」の影響で純朴で優しい性格になり…その結果、千年生きているにも関わらず世間知らずで人を簡単に信じるクソチョロ神を作っているのだ。

 いい加減ではなく、悪の神と堂々と言っても任せてしまう程、隣に立つ者を求める寂しがり屋が彼女なのだろう。

 口調は…孤独を慰めるのが世界の外から見える光景だけだったからか。

 

「モー・マンタイ!悪神でもこの世界が消えて困るのは変わらないし、それならチャチャっと渡した方が平和だからね!しゃあでも後で返してくれると助かるわ!」

「ふむ…」

 

 嫌われる性質は神性同士なら通じない。人の身体では意図的に無視したサーシャも、こうして神の身体にしてしまえば普通に相対する事が出来ている。

 それなら今後の為にも幾つか布石を置いた方がいい。

 

「そうですか…なら言うことはありません。感謝の印として一緒に寝ましょう。可愛がってあげます」

「可愛い子ちゃんとの添い寝だわーい!」

 

 

……というのが、昨晩の話である。

 

 

「すげぇ…すげぇし」

「快楽は最も分かりやすい返礼ですから。…顔真っ赤にして、その言葉遣いで案外ウブですね?」

「なんだとー?私は結構清純派とお墨…あの、そんなに顔を近付けられると恥ずかしいと言うか……んっ」

 

 目を瞑った神の額にデコピンし、正気に戻す。

 

「あうっ」

「なにキス待ちしてるんですか。指でイかせただけで恋人面しないで下さい」

「じゃあ私らの関係ってなになーに?」

「友達」

「えっ…爛れ過ぎやろがえーーっ!?」

「ふふっ友達の裏側にナニを聞いたの?まさかセフレなんてムッツリな解答をするつもりじゃないでしょう?それじゃあデートに行くよ」

「………!…………!!」

 

 やがて真っ赤な顔で金魚のようにパクパクとするだけになった神様を連れ、サーシャは都市をぶらりと歩くことにした。

 神に会ってやりたいことをしたからには、後はお礼代わりの観光地巡りである。

 リーロとリートは…昨晩から一向に銃から戻らないし喋ってもくれないがまぁ良いだろう。防音対策はしたが、近くに置いていたせいで聞こえてたと思うから多分それだ。

 後で詳しい理由を聞けば良いし、今は出来立ての友人と遊ぶとしよう。昨晩の件は…徹底的に指だけに留めてキスもしてないし、サーシャ的にはお遊びの範疇である。

 コレが一番神様を大人しく出来そうな方法ぽかったのだから仕方ないだろう。あくまでもコミュニケーションの一環だと主張しておこう。

 

「デート…デート…うわへへ」

「カワイイ反応するね。でも上の空だと私が少し寂しいから意識は戻そうね。おーい、道案内しろー?私は君が居ないと困るんだぞー?」

「居ないと…困る…!……頼られてる!…まっかせんしゃーい!」

 

 ふんふんしている神様を眺めつつ、余りにもチョロい様子に心配になってきた。

 だがサーシャがそう考えるのは筋違いだろう。今のサーシャは不当に嫌われて世間知らずなお嬢様を騙す悪いチャラ男であるのだから。

 …この場合はギャルと称するべきだろうか?どの道身包み剥がそうとする詐欺師に違いはないだろう。

 既に夜で遊んでいる時に仕込みをしたのだ。遅かれ早かれこの神は手中に収まる。

 

「私が案内するよーハハハ!着いて来るがいいわ!」

「そんなに焦らなくても私は逃げないよ。その証拠に…ね?」

「はわわ」

 

 腕を組んだだけでこの慌てようである。一児の母の癖して生娘の様な反応を返す辺り、星の輩にやられても心は渡さなかったらしい。

 尚更好都合だ。人の心というものは、無地を染める時ほど楽なものはないのだから。

 

 

「神は消えろ!」「どっか行け!」「たちされー!」「ッチ…」

「うわっ…嫌なもの見た」「…行きましょ」「消えろクソゴミ」

 

「うげぇ…デートなのにごめんね…あっちの方に行こっか」

 

 これはサーシャも実感が足りないことだったのだが、その後は酷いものだった。

 無視や舌打ちならまだマシで、大通りを歩けば中々お目にかかれない罵詈雑言の嵐が襲い掛かってきたのだ。

 お陰で神様の顔もしょんもりとしているし、選択を間違えたかなとサーシャの思考に過った。

 今の姿で過ごす最後の機会がこれとは、ままならないものだ。

 

「普段からこうなの?」

「ふふふ…YES!でも普段は気にせずに進んでるよ。だって私の方が強いモンニ!」

「…"会う回数が増えるほど会った時の嫌悪感が増える"って所かな。普段から此処を中心に活動してる分すごく嫌われてるんだ」

「ご明察だよ探偵くん。付け加えるなら、好かれたい人には出来るだけ近付かないのが最も好かれやねぇ、ムスッコの王国と勇者くんの帝国にある教会はそうして成り立ったんや!どや、すごいでしょ?」

「うん、本当にすごい。会いたいのによく頑張ったね」

「ぶへへ…」

 

 知っていても実感出来るか、経験として身に染みているのは違う。

 サーシャは想像以上に神様の体質が難儀なのを経験として理解し始めていた。

 会いたい人ほど、好いて言葉を重ねたい人ほど、相手を思うなら側にいられない。

 それがどれだけ辛いことなのか、サーシャは想像も出来ない。

 だが、そんな状態で…嫌われてもいい相手の傍に居続けて、世界の為にできる事を頑張ろうとする彼女の精神性は、確かに神様なのはサーシャも理解した。

 ひたむきで献身的な、優しい神様……人物像を理解して、これまでの評価を聞いて…幾つか不自然な点があるとサーシャは気付いた。

 ゲーム知識にあってもおかしくないのに、欠けているものが、嫌に目に付いた。

 

「…聞きたいことがあるんだけど、良いかな?」

「おう、なんでも言って!私めっちゃタフだし」

「"タイム家に…タイム家の関係者に神を増やす様に任せた"りした?」

「…えー?……うーん?……"身に覚えはない"けど?」

「嘘…正確ではないね」

 

 人の少ない路地裏に転がっていた樽に座っていた神々が対話する。

 矛盾があるなら崩し追求するべきだと、サーシャは好奇心と探究心のまま問い出した。

 

「出会った時、あなたは私を第12席(ツヴォルフ)ちゃんと言いましたよね。終わりの時計塔のコードネームで呼んだ。…終わりの時計塔は神様の戯言が始まりだと聴きました。…再度問います。身に覚えはありませんか?」

「たはー…"本当の本当にない"よ。汝は神を試すのですかー?だめだぞー?」

「…旧約聖書に於いて」

 

 此処にいるのは、どちらも世界の外郭から或る世界を観測した者同士だ。

 なら、遠慮なく引用していいだろう。

 

「預言者モーセが言った言葉だね。約束の地に行くまでに神から沢山の恩恵を得た民に向けた言葉。散々言いがかり付けて恩恵を得たのだから自重しなさいというニュアンスを込めた言葉……それを知る事が私の、人類の利益になると、そう言いたいの?」

「…………」

「違うなら、自分の言葉を積み重ねてね。それが会話というものだから」

 

 困った様に神様は微笑み、サーシャはその真意を探る為にじっと見つめた。

 その上で分かったことは、思ったよりレベルの高い返答が来ちゃったな…と悩んでいる神様の冷や汗だった。

 なるほど、少し難解な言い回しをしてしまったらしい。サーシャは反省することにした。

 

「…えっとねー、私は本当に身に覚えがないよ。確かに終わりの時計塔は知ってるけど、それは「神雛」としての知識…全てが変わった後の私は知らない。寧ろ歩いてるのを見て居たんだって思ったくらいで…だから聞かれても困るんだぞって…はい」

「2を由来に知ってるけど、3になってからどうなったかはよく分からないと。…なるほど、"神は世界が変わると知識は受け継がれ、自我は断ち切れる"のか」

「あ、そうそう。そんな感じ。なんだか他の人の人生を見てる気分なんだぜ?」

 

 そうだとすると神様にとって大半の出来事は他人事ばかりになるだろう。

 何せ知識だけ受け継いで生まれ変わるのだ。前世のことを聞かれても、実感がなければ身に覚えも薄い。

 …昨日王様を殺したのを赦した原因はこれだ。例え血が繋がっていても、産んだ記憶が前世の様に感じるならどうでも良い。

 初心な反応も、悪い神をヤケに簡単に信じるのも、男性要素が影も形もないのも…全ての原因はこっちの方だったようだ。

 違う世界に住む二柱の神の娘。今の彼女はそういう存在だった。

 

「うん、教えてくれてありがとう。‭─‬‭─‬お礼として一つ、神として恩恵を与えよう」

「えーなになに?「アンリマユ」の恩恵って嫌な予感を感じるけど大丈夫?」

「そうだね…悪いものだけど、同時に大切なものにもなる贈り物だよ」

 

 そろそろ頃合いだろう。

 ゆるりと指先を神様のおでこに当てて、事前に仕込んでおいた術式を起動させる。

 「アンリマユ」になってから研究した祈りや権能、神の身体の知識から創り出したものだ。

 

「どうする?逃げるなら今のうちだよ」

「………信じる。初めての友達のプレゼントを受け取らないって、イヤだもん」

「そっか。そう言ってくれると私も嬉しいよ」

 

 成否は…こうして受け入れてくれたのだから成功するだろう。

 

「‭─‬‭─‬"元来 神は四節の側面を持ち 全てを合わせ神の格に成るが故に"」

 

 唱えるのは消えた神秘に語りかける魔法の一文。

 新たな法則は作れなくても、既存のものを切り分けて定義すれば扱い易くなる。

 「猿渡噺(再定義)」ではなく「猿展開(観測強化)」。

 より詳細を詰めることによる無茶を通す隙の糸を探る方法。この世界の完成を早める、神から世界を調律する力を貰ったからこそ出来る手法。

 世界を騙す言語学の発展系、最後に得られる「真理鍵」。ぶっつけ本番だが、なんとかなれば問題ない。

 

「"混ざるならば混沌とせよ 陰陽に分け 四属性の理に沿って差配せよ"」

「"戻るならば秩序を擁せよ 善悪に訣け 唯一性の理に従って統括せよ"」

「"再誕せし原初の神に問う 第三の人格 慈悲を司る鬼と厄の娘に問う"」

 

 目的は明瞭だ。他者に嫌悪される性質を取り払い、その自我を深く刻んで精神的に成長させる。

 神性汚染によって到達するだろう精神の変質を遠ざけ、その間に汚染に負けない屈強な精神を作り上げるのだ。

 

「"汝の夢を語れ それこそが門をこじ開ける鍵である"」

 

 その詠唱を最後に、サーシャは脳に仕込んだ『自己定義』の魔法を起動した。

 狩人から奪った六種類の認識系列の魔法の中でも段違いに使い辛い魔法。

 その効果は暗示の強化版。事前の準備が必要な代わりに神にも効果を発揮する、精神を支配する魔法だ。

 

『…ほわー』

「…成功」

 

 制限時間、一名専用、先に陣を相手の体内に入れて用意する手間の多さ………本来は自己専用だからか他者に使おうとすると欠点は多いが、神にも効くほど効果的なものだ。

 使用者につきたった一人にしか使えない魔法、神様ならば不足はない。

 

「さぁ、自分がやりたいことを正直に言ってみて。私はその手助けをしよう」

『………私の…やりたいこと…仲良くなりたい、子供が欲しい、水浴びしたい…』

「やっぱり神と個人の欲求が混じってるね…さぁて、切り分け作業は長くなりそうだぞぉ?」

 

 ぼーっとした神に向けて語りかけ、心を解体する。

 好きなこと、嫌いなこと、苦手なこと、得意なこと。

 単純な問いかけから、世界をどうしたいかまで根掘り葉掘りと聞き出していく。

 その中から神性から汚染されたもの、共感し混ざったもの、彼女本人のものを抽出し、分けていく。

 

「ふむふむ…精神年齢4歳児ってところか。流石神に産まれただけはある」

 

 そもそも、世界と共に産まれた神とはなんだろうか。

 神格を宿し、共に生まれた世界を調律し、魔力とも無の力とも付かない力で構成された存在。

 神の身体を構成する力というのも定義されておらず、その性質は闇に包まれている。

 分かることは人と同じ見た目、真っ白、不老、神格を保持してもバキバキせずに安定している、星の旅人や王様と交わると半神半人を産める事だけだ。

 未だサーシャでも未知数なことが多く、気になることの多い相手ではある。相手の種族に関係なく産めるなら是非とも参考にしたい所だ。

 

「‭─‬‭─‬……アンリマユに対してどう考えている?」

『友達』

「では神ではなく人として…サーシャに対しては?」

『…だれ?』

「ずっとあなたなのは不便だから名前を付けることにした人です。そうですね…これからあなたはイーシャと名乗りなさい。私の村で最も多い女性の名前ですし、意味も癒す者と…悪くはないでしょう?」

『不服』

「正直な神様だぁ…撤廃は出来ないからこれからずっとその名前に付き合っててくださーい」

『イーシャ…イーシャ…イーシャ…悪くは…ないのかー…?』

 

 最後にサイーシャ村に因んだ名前を付けつつ、切り分け作業は無事に終了した。

 やはり脈略なく実行するのは効果的である。急にやると何処にも察知されず邪魔が入らないし、建前を作ると騙されてくれる人もいて便利なものだ。

 

「では次に手を叩いた時、イーシャは生まれ変わるでしょう。切り分けた通りに余計なものを分離させ、三身一体の神となるのです。では3…2…1…0!」

「はっ!」

 

 パンっ!

 と手を叩き、神様が正気を取り戻す。

 

『うきーっ!』

「ほいっと『氷水結界』…拘束完了」

 

 その直後、神の身体から真っ黒に淀んだ影が飛び出した所をサーシャは結界を纏わせた身体で寝技を決めて捕まえた。

 捕まえた所から真っ白な煙が立ち上り、影は苦しそうにもがき暴れるが…サーシャはびくともしない。

 

『神は消えろ! どっか行け! たちされー! ッチ うわっ 嫌なもの見た 行きましょ 消えろクソゴミ………』

「えっなにっ…がどうなったんだあ?」

「世界が変わる時に「神雛」の神性に閉じ込められた厄そのものだよ。取り込むとみんなに嫌われたり死んだりする。今は悪意ある言葉を繰り返すことしか出来てないけどねー」

 

 サーシャは水球を影の周りに展開し、少し表面を削っては白い煙となって消える水球で厄を確実に殺していく。

 気分は部屋掃除。千年分の二つの世界とその他諸々の分が貯めたものを浄化処分する業者である。

 普段は身体の汚れを取るだけの水属性特性の清浄が武器になっている珍しい光景で…。

 

 30分経った。

 

「…え、長くない?」

「一年に一回行水すれば問題ないのを千年しなかったんだよ?相当な垢汚れで落ち難いに決まってるじゃん」

「そんな風呂に入らなかった人みたいな……えっうそ…もしかして…私が嫌われたのってそれが原因?」

「さあね。少なくとも神の身体になる前の私にはクソほど汚れた浮浪者にも見えてたのは事実だよ」

 

 神の目線に集中して白いのだけは分かったくらいである。会うたびに汚れがクリアに見えていく感覚は果たしてどんなものか…少なくとも、サーシャは自国に上がらせたくないなと考えていた。

 取り込むと変な言葉遣いになるものとか、勘弁である。絶句しているイーシャには…弄りのペナルティを渡すとしよう。

 

「……………」

「やーい、お風呂キャンセル千年世界記録保持者ー」

「その技はやめてー!」

 

 だがそれも2時間も経つと消えて……

 

「朝ごはん持ってきたよ……ねえ神国のみんなが気絶してたんだけどこれってその厄のせい?お陰で取ってくるのは簡単だったけど…」

「じゃあ食べさせて…くそっこの浄化魔法じゃ遅いか…」

 

 4時間も経つと…

 

「リーロ、リート!!起きろ!いい加減手伝え!気絶してるだけなのは専用の魔法作って確認済みなんだよ!!厄の圧がキツイからって甘えんな童どもが!!!」

「ま…まあまあ…神の身体だと分からないから…ところでアンリちゃんの人の名前はなに?」

「サーシャ。サイーシャ村のサーシャ。始まりの者とかそういう意味がある」

「へぇ…いい名前だね!私の初めての友達にぴったりだ!」

 

 16時間……

 

「眠い…」

「がんばれー!」

「寝技16時間は疲れた…」

「ここで逃すと本気で後悔するよー!」

 

 あまりの長さに神もといイーシャがご飯を届けて介護されるという珍事や、厄祓い特化の魔法を改めて厄への効き目から突貫で作るという珍事も過ぎ……。

 

「やったー!」

「ばんじゃあーい!」

「やったー!」

「ばんじゃあーい!」

「「うぇーい!」」

 

 2日目の朝から始まって神国3日目の夜、放置ゲームの放置される側の気分に成りつつも、遂にサーシャとイーシャは全ての厄を消滅しきる事に成功した。

 感無量の厄祓いである。千年の汚れは非常にしつこかった。

 

「じゃあ私は帰るから…今から帰らないと帝国行きの転移門の切符が間に合わないから…今度からはお風呂や川に入ってね。歯磨きも忘れちゃダメだよ。私は忙しいから遊びたいならそっちから来てね。学院の一年寮に居るからねー!」

「あなたは私のお母さんですか!?…うん!またね!本当にありがとー!」

 

 気絶している神国の住民を避けながら、サーシャは神国から学院に戻る。

 殆ど観光は出来なかったがそれはそれ。将来的な厄介事がなくなったのだからトータルプラスだろう。

 

「ま、それはそれとして…改造した『自己定義』を埋め込んだままにするのは成功だね。…今後、何があっても「イーシャ」は私を裏切れない」

 

 ポツリと、リーロ達が気絶しているからだろう。サーシャは心の内側から言葉を漏らした。

 

「8月の発表…それまでに全ての要素を集め切らないとね」

 

 計画に必要な協力者の条件は、裏切らないという保証書だ。

 手術痕に発信機を仕込むように魔法を仕込み、友情と魔法の両輪で雁字搦めにする。

 

‭─‬‭─‬最後の計画はもう直ぐだ。

 

 






「ゲームにおける国盗り独裁計画」
 数ある計画の内、サーシャが自ら国を運営するようになる計画。
 利点は任務の割り振りを自由に出来、あらゆる命令をプレイヤーの操作で行える点にある。また、攻略相手とのイベントや好感度も任意で弄れるようになる優れ物。別名ヤケクソ人形遊び。
 欠点は膨大な操作量。盗り方の都合上()()()()()()()()()()()()()()()()()()。当然律儀にやろうとすると処理落ちする。
 やるならば、終盤の真エンドに行くルートで最大2000万人分の並行処理能力を用意する必要がある。

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