不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

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 吹雪の中を歩いていたら、勇者とバッタリ会いました。




郷・勇・六九

 

 

 ゴオオオオオ……!

 

 起きてみれば吹雪はますます強くなり、猛吹雪と言うべき状況になっていた。

 思えばサイーシャ村と帝都と白鯨の死体は、サーシャの魔法や禁忌を使った本気も本気の速度なら半日で到着できる距離にある。これは馬車の6倍の速度であり、休みなく進んだ場合という条件だ。

 それだけの距離でも白鯨の遺体の大きさを考えれば、仮に猛吹雪さえ無ければ雄大な死体が見えていただろう。

 そんな感じで折角だから一見してみようと白鯨の方に寄れば、グリムが話していた童話とかで聞いた事のある姿の人形が佇んで居たのでそっと逃げて来た次第だ。

 黄金の髪を赤くて大きなリボンで纏めた美丈夫な青年の血濡れ人形…破損した後ろ姿だけ見て逃げたのだが、勇者が人形化した奴だとサーシャは確信した。

 実際に合ってるかは…良い感じの案山子が前からやって来たので押し付けるとしよう。

 

「…あれの実力を試す丁度良い相手が来たね」

 

 そして今、どうしてこんな事を考えて逡巡しているのかと言えば…。

 

「どうもお嬢さん。私はスターバック、この師団を纏める者である。なに、呼び止めたことは大した事ではない。コレから魔物狩りをしようとしててね。見覚えがあるなら教えて欲しいという、至って普通の頼み事をしたいだけなんだ」

『胡散臭いおっさんだー!』『なんか嘘いってそうな雰囲気あるわね』

「私で良ければ良いですよ。…と言っても、ここまで一体しか見かけてませんが…」

 

 目の前で整列している五千人の新兵の行軍演習に出会したからである。

 どうも減った分の人材を補う為、そして職と住処を無くした者達の為に兵士に仕立て上げるつもりらしい。

 特に詳しい説明はされていないが、後ろで死にそうな顔をした情けない者達をみれば察せられるというものだ。

 

「此処から白鯨の方にめっちゃ強そうな人形の魔物が居たんですよ。この吹雪な物ですから結構近付いてから気付いたんですけど、幸い襲っては来なかったので…あれくらい大人しいなら、そっちの情けない顔してる新兵でも勝てるでしょう。なんか半壊してましたし」

「なるほど…ご協力ありがとうございました、お嬢さん。どうか旅路にお気を付けて」

「ええ。其方も雪の中で迷子にならないように。…なにせ我々の白い肌と見分けが付かないほど、全部真っ白にしてしまいますから」

 

 普通ならこんな時期に一人旅なんて怪しいことこの上無いだろうが、幸い帝国のこの辺りは旅人の隠れ道として探窟家や旅人には界隈には有名な道だ。

 王国からサイーシャ村を通り、帝都まで深淵や名所が点在しているので、今のサーシャみたいな奴が稀に現れるのだ。

 例えそれが剣呑な時期であったとしても、旅人には関係ない。おかげで大して怪しまれもせずに通り過ぎ、後を付ける事に成功した。

 

『サーシャ、態々着いていく必要ある?』

『一緒に行くなら案内とか、手伝うくらいはしたらどうなの?』

「まあまあ、偶然とはいえ良い機会だから。実際に五千人が戦闘する機会はそうそうないからね」

『それはそうだけど…』

「それに、手伝うのもあんまり良くないよ。これは演習だし、此処がぬるいと本番で命を落としちゃうから。いざという時助けられそうなら…が丁度良いと思う」

『むー…一々難しいこと考えるわね…』

『サーシャだからね』

 

 猛吹雪とはいえ五千人だ。足跡を付ければ問題ないし、途中で転移して離れても目的地を知っているから問題ない。

 

(…偶然ってことにしないと、リートからの好意は手に入らないからね。……事実半分は偶然だし間違ってないでしょ)

 

 何より…リーロ達には秘匿するが、人形や五千人の新兵師団に会ったのはサーシャが意図した必然だ。目の前で魔法関係や武術関係の技術を使うとバレるので事前に探査系の魔法を使い、ルートを予測して態と遭遇した。

 

 いつ計画したか。村で寝るならと周囲の魔物警戒で探査系の魔法を使った時である。

 何故したか。あわよくばの漁夫の利狙いである。

 いつしたか。リートに禁忌の怪物が幻影を見せてる辺りの暇な時間である。

 

 例えその過程で村人達の死を知って先に涙を流し、いざリートの目の前では覚悟ができていたから涙を流さなかったりしたのは事故だろう。

 悲しいが、サーシャは利用できることは折角だから利用するタイプなのだ。

 そんな訳でライブ感に身を任せて鉢合わせ作戦を講じている訳だが…サーシャはこの戦いは人形が勝つと踏んでいた。

 

 なにせ、実力差が龍と蟻レベルで違う。

 

「いたぞおおおーー!!総員走りながら切り払え!失敗しても足を決して止めるなあ!!」

「「「「「おおおうわああああ!!!?」」」」」

 

「おー始まうわ危な…おーもう終わった」

『…手伝う以前に強すぎて手出しする暇も無かったわね。逃げた方が良くない?』

『すげぇ!3秒で5千人が荼毘に付した!!でも総隊長だけ生き残ってるのは流石だよね!』

 

 コントみたいなことになっているが、帝国軍にとっては最悪な状況である。

 よぼよぼ歩いている人形に剣を向けた途端、全ての兵士が無音の一振りで上下泣き別れで宙を舞ったのだから。

 サーシャも咄嗟にしゃがまなかったらどうなっていたか。ハラリと落ちた毛先が答えである。

 

『……………』

 

「何も言わないし敵意を向けなければ動かない…もう自我は擦り消えて…どうしようか。一応『獲得(劣)』は持ってるんだけど」

『…あ、そういえばそれなら人形相手なら無敵だし、イケる!やっちまいましょう!』

『確か本物より劣化してて…「人形化」されてる人を操作するだけなんだっけ』

「そうだね…総隊長はもう逃げてるし、ここで見捨てるのは偲びないかな」

 

 流石魔王を倒したと言われる勇者である。例え『獲得』で「人形化」しその上半壊しても、その実力は健在と言えよう。

 『獲得(劣)』のあるサーシャなら理論上操作出来る相手だが…果たして本当に使うだけで従えられるのか…あまり使ってない魔法な物だから確証がない。

 なにより勇者を人形化した筈の推定時計塔所属の誰かさんが放置しているのが不穏だった。

 

 やるならもっと弱らせてからが懸命だろう。

 しかし肝心の軍隊は新兵ばかり。思ったより役に立たなかったのが現実だ。

 

 なので当たって砕ける事にした。

 

「リーロ、死に戻る心構え。復活時間は最長の10分前固定で」

『りょー』『…あ、これどの道助けるなら死ぬ事になるわね』

 

カチカチッ

 

「さて、二回の死に戻りで『獲得(劣)』は案の定無効化されると判明し、想定外にも死に戻っても変わらず殺しに来ると判明した所で対策を考えよう」

『後7秒で勇者Lv.100は辿り着くね着いたね』『今まさに避けてる最中になったわね』

 

 ヒュヒュカカカギリギリギリリリッッパンパンキキンドッ…

 

 盾にした氷の壁と共に音速を超えて空を舞う。着地地点は予測上山脈の絶壁で……追い越して着地狩りをしてくる様子はない。現状そこまでの能力はないと踏むべきだろう。

 

‭─‬‭─‬………ギュルルッ!!

 

 音速で飛ばされた人間の衝撃を流され絶壁がひび割れる。普通に剣を振るっただけでこれとはどういう筋肉をしているのだろうか。

 

「『渦巻(落下衝撃流し)』っと…幸い空中を蹴って加速したりはしないか。出来るだけ跳んでるのが正解。最善は飛行かな」

‭─‬‭─‬…ッギィイイン!!

 

 人形勇者の持つ剣のMMと銃を鍔迫り合って戦闘を再開し…さて、困った事になった。

 幸い『推理(劣)』の思考加速1万倍に千人分の人格による並列処理と膨大な魔力でなんとかなっているが、これも向こうが対策を構築し終わるまでの時間稼ぎにしかならない。

 

『…………』

「クッ!その実力なら戦闘で喋る余裕たっぷりだろうに…!」

 

 『渦巻』の応用。上からの攻撃を落下と見做して渦に流し、蹴り返すが大した傷にならない。後二回に見切られるだろう。

 

 禁忌の即死も、魔力弾の速度も、水や氷を大量生成しての環境変化窒息死も、全て無力化されるのはどうすれば良いか。

 禁忌は殺す前に斬り殺され、弾は回避され、水や氷は蹴り破られる。単純に強い相手にどう対処すれば良いか、サーシャでも悩むところだった。

 

 パキパキパキッ…!

「水だと思ったでしょ。知ってる?氷は瞬間冷凍って現象があるんだ」

 

 『氷変水』。強い衝撃を加えることで氷に化ける条件を満たした水を出す魔法。

 

 パキン!!

「人形だから触れても無条件で氷が壊れたりしないけど、意表をつく以外では普通に力不足だね」

 

 確かゲームでは勇者戦として戦っていたが…生憎此処には頼もしいダルク達や勇敢な傭兵や探窟家達、絆を結んだ学園生も頼もしい帝国軍も居ない。接近されたら終わりなので超超超距離から一方的に倒す事も出来ない。

 幸い転属性の呪符で転移自体は出来るが、使う暇を与えてくれない。だが、向こうが来る前に使っても発動しなかったので、勇者に封じられたようで魔力の流れが阻害されている。

 

『……………』

 

 『白鯨水』。白鯨の胃酸水を作る魔法。胃に長い間居た杵柄である。

 『水の槍』。水を槍の形にして発射するだけの魔法。勢いは水浴びレベル。

 それも併せれば、表面を焼く程度にはなる。

 

「酸性0以下の水の槍だよ。ちょっとは痛いでしょ。本当いい友達を持ったよね私は」

 

 出来る事と言えば、今こうしてやっている派手かつ地道な殴り合いだけである。

 友人達が贈ってくれたあらゆる水を作る法則が無ければ、為す全てもなく死んでいる程度にはキワキワで均衡していた。

 

「うーん困ったな。勇者が最強無敵過ぎて対策が講じられない。白鯨に半壊させられた癖にそれでも勝てそうにないのは何故だ」

『サーシャって相手が強過ぎると変な感じになるのね。戦闘速度と比べて思考がまったりしてるわ』

『お姉ちゃん、多分それは違うんだよ。戦闘に大半の思考を回したせいで、自由な思考が少なくなっちゃったんだ』

「おーイェース。だから代わりに対策考えてー。私は目の前のことで手一杯だー」

 

 分身して3方向から同時に切り掛かって来たのを氷魔法で発射される事で、相手を一列にして順次対処していく。

 最初の本体は急遽『渦巻』と格闘技を合体させた『"水面の型"』で上空に流し、

 分身の攻撃を魔力弾で逸らして鍔迫り合い中に原理を解析して消し去り、

 最後の分身は地面に滞空し遅延させてから発射した、魔法妨害効果付き魔力弾の不意打ちで消し去る。…分身の方はやけに弱く…人並み程度にサーシャは感じた。

 

「勇者本体が落下するまでに……」

 

 勝ち筋を探す為に思考を回す。

 勇者のMMはどうやらタイム家の遺体を使ったMMの様だ。

 事前に集めたゲーム情報が正しいなら『回顧』の固有魔法が使えるMM。

 王様の妻にしてグリムの母、リーロ姉妹の叔母に値する立ち位置。勇者の聖剣であり帝国式のMMの原材料、固有魔法が暴走し過去に落ちたMMである。

 話を聞いた限りでは本来なら帝本人が管理する代物であり、今も倉庫に眠っている筈。

 何故此処にあるのか…考えるより『回顧』の対策だ。

 その力は望んだ過去を"世界が思い出す"魔法。近いのは"現在を過去に書き換える"リートの『周回』だろう。

 "現在に過去を書き加える"魔法…文面の違いは少しだけ。しかし変化は絶大だ。範囲はリートより劣るが、使い勝手なら圧勝する。

 

「なにせ"自分の能力に過去のものを加え続けられる"!時間経過で能力倍率が二倍三倍と上がるから此処まで強くて、際限がないんだ」

『人形化した上に半壊して弱くなってる(パッシブ「回帰し続ける力」戦闘時全盛期のステータスとスキル熟練度を参照し上限を無視して毎ターン(3秒毎に)加算する)』

『蹴るものがないと普通に落下するしかないこと以外弱点がないわね』

『それを人形化した時点から続けてるから勝てる訳ないんだ確定勝利も無効化出来るんだ』

「計算したくないけど…つまり見た所最低750年以上蓄積してて…3秒経過毎だから…最低78億8400万倍。もう少し昔だろうしキリ良く80億と考ようか…80億?」

『うん。正直撃ち合えてるだけでもすごいし、MMと離しても能力は消えないから素手で殴り殺されるね』

「困ったなぁ、本当に困ったなぁ…幸い大地を壊さない程度に抑えられるんだろうけど、それでもだね?」

 

 これでリーロの『換装』による補正比較も『回顧』の圧勝だ。なんてことだ完全上位互換じゃないか?リーロとリートを合わせて10倍にしたくらい使い勝手が良い。

 現状意思が無いからか身に沁みた単純な使い方しかないのだけが救いだろうが…元来勇者が優しく、生前の戦闘スタイルだったのだろう。環境に配慮した戦闘をしている分も救いだと考えよう。

 サーシャが想定したものよりも楽なのは助かるが、それでもこの暴力の対処は困難だ。

 

「…あー落ちて来た。くそ、宇宙に放り出されなかったか」

『多分加算する分で分身出して、それを蹴ったんだろうね』

「この学習能力もなんとかならない?死体で作った人形なのに分身したり賢いんだけど」

『熟練度も加算…これ、勇者流の"影彫刻"じゃない?見た技を覚え、対抗技を自然と編み出す技、身体に刻まれた経験が編み出すのを強化した技術らしいわ』

「なにそれ強い。柳生神陰流にはなかったし私も欲しかった」

『…これ、撃ち合ってたらその内生前の技もどんどん使いそうね』

 

 そんなことを言っても相手は消えてくれない。段々技のキレが上がってくる以上、それを見取って上位互換をぶつけるしかないだろう。

 思えば相手は柳生神陰流の分流、勇者流の開祖だ。サーシャも一応一通りの技を見せてもらって覚えている身、一度は無力化されたから単体で使うのを諦めたが、今の勇者から見取れば何か道が開けるかもしれない。

 何より初見殺し出来る魔法のストックが尽きた。どうせ組み合わせても体力的にジリ貧なら、ここは余裕のある内に殴り合いに行った方がいいだろう。

 

‭─‬‭─‬技の冴えも、手本となる勇者の物を見た今が一番だ。

 

「それなら…遅ばせながら柳生神陰流後継者サーシャと」

 

 上空から剣を上段に構えた勇者が降る。

 伽藍堂の眼でサーシャを見つめ、淡々と支配しようとした相手を殺そうと刃を構える。

 

「兄弟子たる勇者を開祖とする勇者流の看板を賭けまして…」

 

 MMの形態を変化させる。通常のランタン、遠距離型の銃‭─‬‭─‬第三の形態、近距離用のガントレット、手甲タイプに変化させた。

 時計と髑髏のマークが描かれ、指先は覆われてないタイプ。

 服装もまた、それに合わせてタンクトップ一枚の薄着とズボンだけにした。冬の寒さよりこの一瞬の動き易さの方が優先という判断だ。

 

 なにより、()()()

 

「いざ尋常に‭─‬‭─‬勝負!!」

『……………』

 

 ドッ!!

 

‭─‬‭─‬轟音、雷音、衝撃波。

 

 大地を忽ちカチ割る豪剣が女一人殺そうと振われ、摩訶不思議な事に剣を掴んだ女だけ無事なまま、大地には蜘蛛の巣の如く亀裂が走る。

 普通ならあり得ない光景。柳生神陰流では対処し切れない筈の力の嵐。まさか本当にこの一合で極めて超えたのか?

 

「‭─‬‭─‬上からの攻撃は効かないと言った」

 

‭─‬‭─‬‭─‬そうではない。

 

 "流し"の技術だけではなく、今に至るまで温存していた見切られる前の『渦巻』を併用して衝撃を流したのだ。

 勢いを渦に変換する『渦巻』は、その応用として落下衝撃も横に流して無効化する。そこに武術を加えれば、上からの攻撃すら無効化出来る。

 事前に見せた技を使った虚を突いたもの。知らない技を繰り出すと思わせた正々堂々とした不意打ち。

 

「そして‭─‬‭─‭─‬‭─‬‬MMを3秒間(1ターン)私に掴ませたな?」

 

 そしてこの一合で決着は付いた。

 

 パリン!!

『…ふぇ?』

 

 剣が砕け、魔素幽玄体(ホムンクルス)の少女が出現する。

 なんてことはない。手甲となるMMにはMRCが其々5炉心付随している。

 それを一つだけ接触時に切り離し、相手のMMをより良く(無力化)したのだ。

 単純なブービートラップで、ギミック(変形機能)とはこう使えという、サーシャの設計思想が現れていた。

 

『……………』

「残念だけど、素手喧嘩(ステゴロ)なら総合戦闘術の勇者流より完全特化した柳生神陰流の方が強い」

 

 ドッドッパンパン!!………。

 

 例え80億倍の熟練度だとしても、技術には限界値が存在する。研究には限界があるし、技術の枠というのは有限だ。確かに熟練度があれば新たな枠が現れ、或いは創れるのだろう。だが、今の知能の低い勇者が新たに創るのは不可能だ。例え"影彫刻"があったとしても、限度がある。

 

「その対抗策を作る技は見切った。その為に此処まで態々白兵戦をして…"影彫刻"より高度な技は創れないと、この身で覚えて理解した」

 

 万倍の思考速度と千の思考。馬鹿みたいにリーロを殺した分、馬鹿みたいな速度で覚えてみせた。

 これで技術は対等に並んだ。そうなると素手の専門性が高い方が有利になる。

 

「フッ!」

『………』

 

 距離を空かせず、尚且つ横払いの腕を腰を低くし回避する。

 例え力があっても、それは当たらなければ意味がない。確かに技術の未熟さによって今もサーシャは吐血や打撲や骨折をしているが、即死していない。

 

『………ッ』

「しゃあ!!」

 

 ローキック、"骨木槌"による硬化と"霞殺し"による鎧を始めとした防御能力に触れない直接攻撃。

 勝てるのだ。どれだけ痛もうと関係ない。死ななければ、どちらが先に死ぬか(ダメージレース)に勝ち続ければ後から幾らでも『精肉』で回復出来る。

 

 顎を抉り、右目を抉られ、左腕を取り、髪を鷲掴みで抜かれ、左脇腹を抉り、致命傷を回避し、左目を抉り、致命傷を回避し、左脚を取り、左足首を食いちぎられるかわりに‭─‬‭─‬頭部を破壊した。

 

「………足りないな」

『『『えっ』』』

 

 右手、胴体、腹、心臓、右脚、首、左目、関節、背骨。

 

「…そろそろか。じゃあね勇者。長い冒険お疲れ様でした」

 

 念入りに破壊し、破壊し、破壊して……そこで漸く人形は灰となり、植物の種を残して死んだ。

 加えに加わったHP(しぶとさ)は、それだけの死に体となって漸く死ぬ領域だったのだ。

 人形はあくまでも人形化しただけの人間。決して物ではないと、サーシャは『獲得(劣)』を覚えた日から知っていたからこその行動だった。

 

「……さまよう勇者…討伐完了。『精肉』…治療完了……ふぅ〜なんとかなるもんだねぇ」

 

 勇者戦、勝利。

 

『…えーと、私はどうすれば?』

「リーロ達、戻って良いよ。説明宜しく」

「え!?…えーと、なんて言えばいいか…」

「どうもご先祖様…叔母様?私はリーロと言います!」

『…うえーぇ?』

「やめなさい今それ言うとややこしいから!」

 

 「勇者の残骸」と「世界樹の種」と『回顧』のMM「縁刻」を手に入れた。

 経験値を10,000獲得。レベル上限の為経験値プールに入った。

 

「居た。先程魔物を教えてくれた旅人だな?…なんだその者たちは…王国貴族?…不審な点が多い為、拘束させて貰う!!」

「あー…ちょっと待ってくれませんかスターバックさん。今は色々あって疲れてますし、その子は現状を把握できてなくて…ほら、白鯨で死んだ魂です。なんだか記憶がこんがらがってるみたいなので、落ち着かせる時間をくれませんか?」

「ダメだ。招待状もなく王国貴族を連れている以上貴様らには即刻拘束と詰問をする必要がある。対抗は無駄だと思ってくれ」

「それなら着替える時間を…何せ水属性は生身が多くて…寒くて仕方ないんですよ」

「………最低限だけだ」

「お慈悲に感謝を……二人とも!先ずは名前とお互いの関係性を教えてあげて!」

「はーい!」「…! 分かったわ!」

 

 さて、折角勇者を倒してそれらしく考えている最中に助けた軍隊の総隊長、スターバックがやって来た。他に兵士がいない事から単独転移による追跡だろう。一応撒く事は可能だが、態々お尋ね者になるつもりはない。

 サーシャは服を着るどさくさで回収品を転属性の呪符で仕舞いつつ、水氷結界や"活力"の技で寒さ対策を終わらせた。

 

「準備出来ました」

「なら私に捕まってくれ。…それで転移の対象に出来る」

「よろしくー」「さ、貴女も行きましょ!」

『えーと、この子がサーシャで…て。わ、私も?』

 

 そんな訳で予定より早く、そして苦労してサーシャ達は帝都に遊びに行くことになったのだった。

 だだし…。

 

 

「‭─‬‭─‬……よって、死刑を言い渡す!!」

 

「…牢獄スタートは慣れたけど裁判所の死刑は想定外かな」

「不思議だなぁ、(勇者に慈悲の死を与え、世界樹枯らし、帝国式MMを勝手に改造する)人助けをしただけなのに死刑になった」

「国の象徴を殺したならこうもなるわ!!」

『どうしてこんな目に〜ぃ!』

 

 馬鹿四人、帝直々の死刑判決を何とかする必要が出て来たが。

 

 






「Q.職業がカンストしてるのに経験値が入っていて勿体無いです」
 A.そうして貯めた分は上級職を取った後に適用されます。経験値が入るたびに貯蓄分の100分の1が追加される為、何も勿体無いことはありません。
 それを利用してセーブ&ロードで能力値の上振れを狙うのが王道ですが、経験値はそれ以外にも使い道が有ります。
 「免罪符」の購入、サブ職業への投入、新職業の研究などです。勿体無いと感じるならリソースが余っている証拠です。忘れずに挑戦しましょう。
 しかし成長のし過ぎには注意しましょう!出る釘は打たれると相場が決まっていますから。

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