お気に入りが50件突破!わーい。
ようやく10話目とかいう亀更新なのに、ありがたい限りです。
六年生の終わりには、勿論テストが待っている。
一ヶ月後に控えた試験を乗り越えるため、エマは死人同然の状態で机に向かっていた。
「うっ⋯⋯うっ⋯⋯もう無理⋯⋯」
「頑張りましょ。ほら、あのバレンタインを思い出して」
脳内でリーマス×シリウスを思い浮かべたエマは、にひゃらにひゃらと不気味な笑顔になった。
そして、唐突に唱える。
「エクスペクト・パトローナム!」
杖先に灯った光は、やがてユニコーンを形作った。
神々しさすら感じさせる守護霊に、私は──。
「エマは腐女子で処女厨なんだぁ⋯⋯」
「何言ってんの?」
当然のツッコミが入った。
エマも守護霊を出せたことを聞いて、ジェームズは白目をむいた。
「エマって⋯⋯すごいね。自分の好きなことに対しては優秀、というか」
リーマス×シリウスを見たいがために作った腹下し薬。
リーマス×シリウスを見て成功させた守護霊。
勉強は嫌いだと言うが、謎に才能があるのがうちのエマさんなのだった。
「そういえば、リリーも守護霊の魔法使えるんだよね?何を思い浮かべたの?」
エマに話を振られて、私は曖昧に笑ってみせた。
「まぁ⋯⋯初めてこの世界に来た日のことを思い出して、ね」
「ああ〜、確かにね!感動するよね」
同じくマグル生まれのエマがうんうんと頷くが、真の意味での理解は得られないだろう。私が指すのは、『私』が目覚めたあの日のことだ。
『私』が『リリー』になって、魔法を使えた幸福は、誰にも分からない。
「ここはまさに夢物語。私が夢見た世界。⋯⋯まぁ、予想外のこともあったけど」
私はじろりとジェームズを見た。何を勘違いしたのか、彼はえへえへと頭を掻いた。
「こんなイケメンがいるなんて思わなかった⋯⋯ってコト!?」
「違うわアホ。こんな変態がいるなんて思わなかったの!」
エマは笑い出した。
「あはは。言われてやんのジェームズ」
「いや、きっとエマにも同じこと思ってるよ」
「え!?私は変態じゃないけど⋯⋯」
「バレンタインの悲劇をお忘れ?」
二人の会話をBGMに、私は『ハリー・ポッター』の登場人物を見た。
物語でしか存在し得ぬ彼ら。
原作に書かれていないところでは、こんな日常もあったのだろう。
「面白いなぁ」
「リリーが⋯⋯笑った⋯⋯!?」
「そんな、初めて笑った赤ちゃんを見るような反応しないで??」
やっぱりジェームズはやかましかった。
*****
さて、守護霊の話が出てきたのでついでに考えよう。
私の守護霊はフクロウだった。原作のリリーとは全く違いますね。まあ、中身が違うし当たり前か⋯⋯。
そして当然のように疑問がでてきますよねー?
『あれ?じゃあスネイプ先生の守護霊って何になるの?』
私の予想は、こうだ。
「ま、そりゃフクロウやな!」
エセ関西弁とともに舌で音を鳴らすと、セブルスはビクついた。なんかごめん。
「唐突に何⋯⋯?フクロウ?」
「いやほら、私の守護霊ってフクロウでしょ?だからセブルスもフクロウになるのかなって」
「なんで僕と君の守護霊が同じになるって思うの?」
「そりゃあ、セブルスって、」
「セブルスってリリーのこと好きだし?」と言いかけた私は、慌てて言葉を飲み込んだ。流石にデリカシーがなさすぎるか。いやぁ、失敬失敬。
さりげなく話を逸らして魔法薬学の課題について喋っていると、シリウスが来た。珍しく1人だ。セブルスに噛みつくのをいなし、無理やり座らせる。
「リリーもなんでこんなやつと仲良くしてんだよ。こいつがマグル生まれの生徒に何やってんのか、知らねぇわけじゃないだろ」
「⋯⋯まぁ⋯⋯」
一応「やめてくれ」と遠回しに伝えたら、以前よりは自重してくれた。しかし、それでも私の知らないところではやってるんだろうなというのは察する。
でも、強く止めても、ねぇ⋯⋯。
「⋯⋯思想なんて、そう簡単に変えられないでしょ」
スネイプ先生がヴォルデモートを見限ったのは、リリーが死んだから。
愛する人の死で、彼はようやく自らの間違いを悟ったのだ。逆説的に言えば、リリーが生きている限り過ちに気付けない。
⋯⋯あれ?
これじゃあセブルス、ダンブルドアの仲間になってくれないのでは?
楽観主義者の私、ようやく気づく!
「詰んだ⋯⋯」
「なんか勝手に詰んでる奴がいる」
「リリー⋯⋯?大丈夫?」
心配そうに私を見つめるセブルス。その態度には、確かにリリーへの愛が感じられる。⋯⋯まあ、この人リリーにはちょろいし、何とかなるか。
「純血主義とかクソ食らえだぜ。あーあ⋯⋯またアイツらから吠えメール来るかも。あるいはレギュラスを介して、とか」
「レギュラス?」
アイツら、というのはシリウスの両親のことだろう。しかし、レギュラスとやらは誰のことを指しているのか。
シリウスは瞬きを繰り返した。
「あん?言ってなかったけ。俺の弟だよ」
「⋯⋯あー、思い出したわ。スリザリンよね」
『リリー』としての記憶を辿って、レギュラスの情報をインプットする。そうだ、破天荒シリウスとは対照的に真っ当な純血主義者で、確かセブルスと仲が良かったはずだ。
レギュラス。
レギュラス・ブラック、か。
「そういえば、あなたとレギュラスが話してるとこ見たことないわねぇ。仲悪いの?」
「仲悪い⋯⋯以前の問題だな。あいつは親に従いすぎだ。自分で考えることもせず、純血万歳を掲げてる」
語気荒くシリウスが吐き捨てたところで、見知らぬ声が耳に鋭く刺さった。
「まるで僕が操り人形みたいな言い方ですね」
声の主は、木の影から立ち現れた。
シリウスによく似た、けれど少し幼い顔立ち。
気品を感じさせる仕草で、レギュラスは自分の髪に触れた。
「反抗できる自分は偉い、とか思ってるんじゃないですか?シリウス」
「はっ。図星だからって健気に言い返してくんなよ」
静かに火花を散らす二人を見て、私は震えながらセブルスに身を寄せた。
「何これ。久しぶりの会話にしては殺伐すぎじゃない?」
「まぁ⋯⋯レギュラスはブラックのことを嫌っているし」
「でも、嫌ってたらわざわざ声かけないんじゃないかしら」
すると、レギュラスがじろっと私を見た。
瞬間、悟る。
あ、これ余計なことを言ったなぁ。
「リリー・エバンズでしたっけ。あなたの脳内はお花畑なんですか?」
「いいえ、私はリアリスト。⋯⋯あ待って。ひょっとして『
「⋯⋯何を言っているんです?」
本気で分からない顔をされた。関係なかったようだ。
コホン、と咳払いをしてレギュラスは話を戻した。
「血を裏切る者ですが、これも一応兄です。余計なことをしないよう見張らなくてはいけないんですよ。穢れた血のあなたでも、分かりますよね?」
なんかディスってきたぁぁー!
シリウスは激おこ。
「おいレギュラス。俺の友達に何言ってんだ⋯⋯?」
「ああ、失礼しました。では、同級生二人を誑かす魔性の女、とでも呼びましょうか」
私はうんうん頷いた。
「魔性の女⋯⋯略して、『魔女』!なるほど、確かに私は魔女だわ。だって魔法使うし」
「リリー、さっきからレギュラスと話噛み合ってないんだが」
「⋯⋯この人阿保なんですか、スネイプ先輩」
レギュラスの目が冷たさを増すので、私は真面目に考えることにした。
三秒後。
「同級生二人を誑かす⋯⋯?ごめん、誰のこと?」
「今考えたのでは??」
「考えても分からなかったです」
「⋯⋯ジェームズ・ポッターとスネイプ先輩のことですよ。いい加減どちらか選んでください。それともあれですか、取り合いになっている今の状態が好きなんですか?」
「ちょ、レギュラス⋯⋯!」
セブルスは顔を真っ赤にした。なるほどね、レギュラスはセブルスの気持ちを知っているのね。ふーん⋯⋯。
怠いな、と思った。
大体、レギュラスの目は節穴か?何をどう見たら、私がジェームズとセブルスを弄んでいると勘違いできるのか。⋯⋯いや、でもセブルスは微妙かも。セブルスの想いに気付かないフリしてるしなぁ。
ここで振った側、振られた側という関係を作ってしまうと、セブルスが死喰い人になる可能性が高くなる気がしてなぁなぁにしていたんだけど⋯⋯確かにこれは魔性の女かも。
だが解せぬ。
私はピシリと指を突き出した。
「下世話な勘ぐりはやめなさい。私が二人を⋯⋯特にジェームズを弄ぶわけないでしょーが!」
「まあ、あなたはそう言うほかないでしょうね」
「あらあら、ひょっとして男女が一緒にいたらすーぐ色恋に紐付けちゃう考えの持ち主?おやじみたいね」
「おやっ⋯⋯」
レギュラスの目が、かっと見開かれる。言い返す隙を与えず、私は喋りまくることにした。
「嫌ですねー。かの高貴で穢れなき純血であるあなたが、まさか男女の友情は成立しない⋯⋯などと言い出すはずないわよねー?尊い血筋の者は寛容だものー。あははー」
私は高笑いした。
「煽りよる」
「おいブラック。君の弟ピキってないか?」
「あほんとだ。澄まし顔が痙攣しててウケる」
私には分からなかったが、どうやらレギュラスはピキっているらしい。効果覿面である。
「大体、どうして私の選択肢がその二人だけなのよ!勝手に私の将来を狭めてんじゃないわよ」
レギュラスが口を挟む。
「二人だけでは飽き足らず、さらに増やそうとしているんですね。とんだ尻軽女ですよ」
本当に失礼だなこいつ。
ま、私の方が人生経験は長い。上手く反撃してやろう。
「あなたの浅い人生じゃ、そういう見方しかできないのも分かるわ。あなた恋人できたことないでしょ。そういう人ほど、すぐ恋愛の話に持ち込むのよねぇ」
「⋯⋯恋人くらい、います」
「親が決めた婚約者とかはナシよ」
「⋯⋯」
レギュラスの口撃が止んだ。
これは、勝ち確。
私は髪をかき上げた。
「その固定観念を捨ててから出直してきなさい!レギュラス・ア、ア、ア⋯⋯アクトリ、いや違うな⋯⋯アー⋯⋯アレクサンダー・ブラック!!」
そう言い放った途端、シリウスが爆笑した。
「レ、レギュラス・アレクサンダー・ブラックゥゥゥゥ!?ぶはははははwwwwソイツ誰だよww」
「やっぱり違う?いや、自分もこれじゃないなぁとは感じてたんだけど」
「ダセェェェェ!!」
外国人に多そうなアレクサンダーにしてみたけど、当然違ったようだ。
名前を間違えられたレギュラスは、ぷいっと顔を背けた。
「ミドルネーム適当に言うのやめてください」
「ああごめん。でも惜しかったでしょ?」
「頭文字しか合ってませんが???」
「すみません」
やれやれ、とでも言いたげな仕草をして、レギュラス・アレクサンダー(ではない)・ブラックは歩き出した。もう私に付き合い切れないのだろう。ま、こっちも願い下げである。
気づけば次の授業の時間が迫っていた。
セブルスとも別れ、私とシリウスは占い学の教室に向かうことにした。
その道中、ふとシリウスが首を傾げた。
「そういや、なんで『アレクサンダー』って言ったんだ?お前、レギュラスのミドルネーム知らないのに」
「ああ⋯⋯それはね⋯⋯」
私はうーん、と唸って難しい顔をした。
「朧げながら、浮かんできたんです。『R•A•B』という文字が」
「スピリチュアルリリー把握。頭文字は合ってんだよ」
「そうなの?」
「おうよ。アイツのフルネームは⋯⋯」
シリウスはニカっと破顔した。
「レギュラス・アークタルス・ブラック」
ハッフルパフ生が私たちの横を駆け抜けていく。
あとには風だけが残って、私の長い髪を靡かせた。
「リリー?黙りこくってどうした?」
シリウスが問うけれど、何も答えられない。
私は確かに、その名前を知っていた。
知っていた、はずだ。
なぜかダンブルドアの顔が思い浮かんで、そして消えた。
「⋯⋯どこかで聞いたのかもしれない。聞き覚えがあるわ」
「あ、そっか。じゃあ適当に言ったわけじゃねぇんだ」
「ええ⋯⋯多分」
ぼんやり聞いて、無意識のうちに覚えていたのだろう。人間、こういうことはよくある。私は思考を切り替えると、ふと思い付いたことを言ってみた。
「なんかあれね、屋敷しもべ妖精を大事にしてそうな人の名前ね」
「どういうこと?どこら辺からそう思った???」
占い学の先生は、トレローニー⋯⋯ではなくミスティアという先生だ。おばちゃん先生で、みんなから好かれている。
ミスティア先生は声を張り上げた。
「はいはーい。今日の授業は水晶玉を使いまーす。そして、卒業後の未来を視てみましょう」
卒業後か。今までは明日の天気だとかそのレベルだったのに、急に飛ばしてきた。
先生は二人一組を作るよう指示を出した。自分の未来を視ようとすると、どうしても願望が入って客観性が失われるからだという。
私はリーマスと組むことになった。私はリーマスの未来を視て、リーマスが私の未来を視る、というわけだ。
揶揄うように、隣のシリウスが顔を寄せた。シリウスのペアはあまり関わりのないグリフィンドール生だ。選択授業なので、ジェームズやピーターはいないのである。
「どうですかスピリチュアルリリーさん。悩める子羊の行く道を照らしてあげてください」
「任せてください。何もかもを知リウスさんも頑張ってくださいね」
私たちは顔を見合わせた。そして、同時に吹き出す。
「「ふっ⋯⋯」」
先生の目がこちらを向く。私たちは慌てて水晶玉に向き直った。
まぁ、ご覧の通り占い学はテキトーに受けている。内なる目とかないし、ただ先生が優しいから選んだだけなのだ。
私はコホン、と咳払いをした。
「さて、いっちょ見てやりますか。リーマスの将来を」
「うん、よろしく」
真面目なリーマスは苦笑いした。
ただ黙って水晶玉を見つめるというのも暇だ。だって何も映らないし。むむむ⋯⋯とそれらしい言葉を紡ぐ。
「父と子と聖霊の御名によって、アーメン。南無阿弥陀。アッサラーム アライクム」
「他宗教に喧嘩売るのやめようか」
「ナマステ⋯⋯」
「すんごい関係ないね」
「⋯⋯キエエエエエエ!!」
私はかっ、と目を開いた。
「見える、見えるわ!あなたの運命の人が!」
「ああ⋯⋯そう⋯⋯」
リーマスは力なく相槌を打った。テキトーなこと言ってると思ってるわね、これは。
だがしかし!
これは正史なのだ!
「あなたの将来のパートナーは歳下よ。それと、七変化の能力を持ってるわ」
「七変化?なんだか具体的だね」
「その人は、守護霊が変わるくらいにあなたのことを愛するわよ」
「⋯⋯へぇ⋯⋯」
「子供もできるみたいね」
リーマスは曖昧に笑うだけだった。信じていないようだ。人狼の自分を愛してくれる人などいないと思っているのだろう。自己肯定感が低い。
「いや本当だから!信じて?」
「でも⋯⋯最近のリリーを見てると、ね⋯⋯」
遠回しに日頃の行いが悪いって言われた。おかしいなぁ、私は優秀なリリー・エバンズのはずなのに。
私は祈るように指を絡ませた。
「今回ばかりは真実よ。⋯⋯ていうか、流石の私もこんな微妙な嘘はつかないわ」
人狼という偏見で苦しめられてきたリーマスに、救いのない嘘をつくほど私は人でなしじゃない。真摯な態度に、リーマスも徐々に絆されていくのが分かった。
小さく頷くリーマス。
「⋯⋯うん、リリーを信じるよ」
「へっへっへっ。リーマスの結婚楽しみね〜」
早くトンクスにも会ってみたいものだ。
そういや、トンクスってシリウスの親戚だったよなぁ⋯⋯。
「天啓が来たわ。リーマスはシリウスの親戚になるって」
「⋯⋯今、水晶玉を覗きすらしなかったよね?」
「う、内なる目で」
やべ、水晶玉の存在すっかり忘れてた。ああ、リーマスが胡散臭いものを見る目になっちゃった⋯⋯。
とここで、再びシリウスが混ざってきた。
「なんだよ、ムーニーが俺の親戚になるって?」
「そうらしいよ。⋯⋯あのさ、パッドフットの親戚で、七変化の能力を持ってる歳下いる?」
「急になんだよ?」
「それが僕の運命の人らしいんだけど」
「ええええ!?」
シリウスは驚愕した。それから、必死に唸って考える。
「⋯⋯思い出した!いるぞムーニー、その条件に合致する女の子が!!」
「え、適当に言ってたんじゃないんだ⋯⋯」
「当たり前でしょ」
私はふふん、と鼻を鳴らした。
「これは、占い学の成績も良いに違いないわ⋯⋯!」
「それは分からんだろ。⋯⋯リリーの将来も気になるな」
シリウスがそう言うと、今度はリーマスが水晶玉を覗き込んだ。
「うーん⋯⋯?誰かに追われてる?」
「どうせジェームズ」
「いや、厳しい顔つきの人たちが見える」
「え集団で?リリー、とうとう罪を犯したか⋯⋯」
どうやら私の将来は犯罪者のようだ。⋯⋯いやまぁ、追われてるだけで犯罪者というのは些か短絡的ではあるが。
うっうっうっ⋯⋯とシリウスが泣き真似を始めた。
「いつかやると思ってました⋯⋯!」
「今やってやろうかしら」
兄弟揃って失礼である。
リリーさんはレギュラスの存在を忘れています。分霊箱に関連する人物だからですね。