【完結】リリー・ポッターの存在否定   作:夜風ミシェル

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02.セブリリはあると言ったな⋯⋯あれは嘘だ

 

 

「セブリリなんてねぇーよ!!」

 

 私はジョッキを机に叩きつけた。ソファに座っていたペチュニアが、「何事!?」と勢いよく振り向くのを横目にゴクゴク飲み干す。あ、ちなみにこれはノンアルコールですよ?

 今、私がいるのはリリーの御実家。夏休みだから帰省したのだ。初めて来たのに初めてじゃないとかいう状態で、体が馴染む。リリーさんはさぞや良い家庭で育ったのでしょうね。

 話を戻そう。

 セブリリは存在しません。私が否定します。

 見ちゃったんですよねー。

 セブルス含むスリザリン集団が、ハッフルパフの下級生に難癖をつけているところを。

 「穢れた血め、ホグワーツにいることが恥ずかしくないのか」うんぬんかんぬん。

 子世代より親世代の方が色々厳しいことは知っている。が、目の前で見ると結構きつかった。

 日本でぬくぬく育ってきた私は単純で、スネイプ先生の株がみるみる下がった。

 くそ⋯⋯!映画では主人公並みの活躍をして、『愛に生きた男』として名高いのに⋯⋯!私は小説より映画の方の印象が強いから、なんかこう⋯⋯解釈不一致!!!

 

「ペチュニア!!」

「!?な、何よ」

 

 大声で呼びつけたら、ペチュニアの肩がビクッとした。言わずもがな、ハリーに虐待まがいのことをしていたリリーの姉である。複雑な思いがあるのは分かるけど、あの態度は流石にどうかと思いますよ、姉君?

 ⋯⋯というのを今のペチュニアに言っても仕方がないが。

 リリーとペチュニアの関係は、原作通り。同じ家にいるのにめっちゃ気まずい。が、そんなことを気にする私ではなかった。

 

「ペチュニア、私ようやく気づいたの。⋯⋯セブルスの思想は終わってる!あんなの、セブカス・スネイプよ!もう関わるのやめる!」

 

 愚痴を吐いたら、ペチュニアも乗っかってくれた。

 

「ほんと気づくのおっそ!元から性格悪そうな顔してたじゃない。あれはもう、ゴミカス・スネイプよ!」

「ペチュニアさん???」

 

 なんかとんでもない罵倒が飛び出した。あと、容姿について触れるのはやめた方が⋯⋯。

 以降、ピー音必須の暴言が続いたので、ここで語るのはやめておく。

 確かなのは、リリーとペチュニアの仲が改善したことだけである。

 

 

 

 

 

 

 素敵な夏休みを終えたら、新学期だ。

 新入生の組分けを涙を流しながら見ていたらジェームズに心配されたが、私は元気です。

 組分けっていいな!私も組分け帽子被りたいんですけど!!ダンブルドアに頼んだらもう一回やらせてくれたりしないかな?

 未練がましく帽子を見ていたら、チラチラと私の様子を伺うセブルスに気付いた。

 セブルスには、汽車で会ったときにこう言ってある。

 

「少し距離を置きたい。私が何でこんなことを言ったのか、よく考えてね?」

 

 前までのリリーと同じように、ただガミガミ言っても効果はない。だったら自分で考えてもらいましょ、というわけだ。リリーに惚れているなら、リリーが嫌う闇の魔法から足を洗ってくれ!

 まぁ、リリーではない私が言って何か変わるのかという疑問はあるが。

 うむむと考え込んでいたら、控えめに袖を引っ張られた。見れば、エマだ。

 

「今日、夜更かししない?」

「え?是非」

 

 そんなの断るわけないじゃない。頷くと、エマは安心したように表情を綻ばせた。

 

 

 

 

 

 

 夜の談話室は、物音一つしない。

 暖炉近くのソファに腰掛けた私たちは、暫くの間持ち寄ったクッキーを咀嚼していた。

 

「それで、何か言いたいことがあるの?」

 

 私はエマに話を振った。すると、エマは酷く真剣な顔つきになる。

 そして、口を開いた。

 

「リリーが重度のカプ厨と見込んで、話したいことがある」

「⋯⋯はい?」

「リーマス×ジェームズ、リーマス×シリウス、リーマス×ピーター」

「???」

 

 とんでもなく早口で、聞き取り不可能だった。それなのにエマは何故か満足げに、「どれがいいと思う?」と聞いてきた。

 

「えーと⋯⋯まずさ、どうして私に聞くの?しかも腐カプ」

 

 あと何故かリーマス攻めなのがジワる。エマ、こだわりがあるんだ。

 

「えー、だってリリーが呟いてたから。『これじゃただのカプ厨だ』って。自覚あるタイプのカプ厨だし、これは信頼できるなと」

「あー⋯⋯」

 

 確かに言ったな。「セブリリが有るのか!?」と一人盛り上がっていた時に。

 

「今更だけど、リリーとはちゃんと話したくなったんだよね〜。友達だし」

 

 その言葉は嬉しいけど、話す内容がBLカプって⋯⋯まぁいいですけどね??

 

「で、リリーはどのカップリングが好き?」

 

 残念ながら、どれも考えたことはない。リーマス攻めっていうのも想像できなかった。原作では、トンクスが積極的だから夫婦になれたからなぁ。

 私は腕を組んだ。

 

「何でリーマス攻めなの?」

「そっちの方が唆るじゃん。いつもは大人しそうだけど、夜になると狼⋯⋯最高でしょ?」

「へぇ、いつもそんなこと考えてたんだぁ⋯⋯」

「ちなみに私の推しカプはリーマス×シリウス。陽キャが受けっていうのが良いよね〜」

「えー、でも⋯⋯リーマスは受け身体質じゃない?」

 

 控えめに意見を述べると、エマは「分かってないなぁ」と口を尖らせた。

 

「カップリングは無限大!リーマスには攻めてほしい」

「お、おう⋯⋯」

「チャラ男シリウスも、リーマスと二人きりの時は大人しくなるってもんよ!!分かるでしょ!?」

「エマ落ち着いて。人が起きる」

「絶対リーマス攻め!夜は狼!!」

「エマさん、話聞いてます?」

「夜は狼!」

「エマさん???」

「とにかく!!」

 

 エマは台パンした。

 

「リーマスは狼なんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯え?」

 

 談話室で、私たち以外の声が響いた。

 私とエマは、バッと寮の入り口を見た。

 そこには、リーマスとピーターがいた。妙に震えている。それがうつったのか、エマの体も震え始めた。

 

「え⋯⋯リーマスさん⋯⋯?い、いつからいらっしゃったんですかね⋯⋯?」

「いや⋯⋯え⋯⋯な、なんで⋯⋯知ってるの⋯⋯」

 

 リーマスの顔は、僅かな蝋燭の灯りだけでも分かるくらいに真っ青だった。立っているのもやっとな状態で、隣のピーターが酷く心配そうな顔をしていた。

 私は全てを理解した。

 

 『自分の性癖暴露を聞かれた』と思っているエマ。

 『自分が人狼であることがバレた』と思っているリーマス。

 

 両者は全く違う意味で、動揺しているのだった。

 

 

 

 

 

 

 次の日。

 授業が終わってから私たちは空き教室に入った。

 ここに来るよう、リーマスからお願いされたからだ。

 扉を開けると、そこにはシリウス、リーマス、ピーターがいた。ジェームズは先生に呼ばれたらしく、不在だった。

 完全に死んだ魚の目をしたエマは、恐る恐る椅子に座る。

 すると、シリウスが口火を切った。

 

「⋯⋯リーマスが狼だってこと、いつから知ってた?」

 

 エマは、驚いたような顔をした。

 

「『知ってた』?え、じゃあ本当だったんだ⋯⋯」

「⋯⋯ああ、まだ確信してたわけじゃねぇのか」

「う、うん⋯⋯ただの妄想だったの」

「っぎ」

 

 笑いを堪えようとしたら、変な音が出た。何で妙に噛み合った会話が成立してるんだよ!!不味い、大笑いしてもいい?

 この場において全てを理解しているのは私だけだ。

 私は、「少し窓を開けるわね」と言ってさりげなく席を立った。シリアスな表情を保つのが難しすぎる。顔を隠そう。

 皆んなに背を向けながら、この茶番に耳を傾けるとしましょうか。

 以下、実況はこの私、リリー・エバンズが担当いたします。

 

 

 

 

「何で気付いた?」

 

 おおっと、シリウスさん。これは直球の質問ですね。回答次第で会話は即終了ですが、果たしてエマはなんと返すでしょうか!?

 

「三年生の頃かな?リーマスの腕に細かな傷が付いてるのを見て⋯⋯引っかき傷みたいだったし、それで」

「ああ、そんなに前から気付いていたんだ」

 

 苦しそうなリーマス。エマの着眼点は合っているのがジワリティーを高めていますねぇ。

 エマがもぞもぞと動く気配がした。

 

「あの⋯⋯ごめんね。そういうプライベートな話を、リリーに話しちゃって。リリーも私と同じ側の人かもって思ったら、つい⋯⋯」

 

 この台詞を少々補うと、「プライベートなプレイの話をリリーに話してごめん。リリーもカプ厨だと思ったから、つい」ですかね。

 しかし、これをリーマスたちが聞くとどうなるでしょうか?

 「リーマスが人狼っていう秘密を、リリーに話してごめん。リリーもそれに気付いていたっぽいから、つい」となりますね。うーん、この噛み合わせはポイントが高いですね。

 

「リリーもだったのか!?」

 

 ここで実況者に飛び火!可及的速やかに答えなくてはなりません。が、ここでの応答はかなり重要。私のせいでこの勘違い劇場を終わらせてはいけませんからね!

 

「えぇ⋯⋯そうねぇ⋯⋯私としても、ほんの少し思うところはあったわね。エマから話を聞いて、あり得なくはないかもってなったわ」

 

 曖昧な言葉で誤魔化していくぅー。

 リーマスは、ひゅっ、と息を呑んだ。バレていないと思ったら、二人にもバレていたのだ。驚きだろう。

 エマは酸欠だった。同級生を勝手にBLカップリングしたことがバレた上に、その妄想を複数人の前で語っているも同然だからだ。これは黒歴史ですねー。

 

「本当にごめんなさい!リーマスが狼って。あれこれ考えて⋯⋯いや、これは自分の中だけにしておくべきだったよね、申し訳ないです!」

「いや、いいんだ⋯⋯むしろ隠しててごめん⋯⋯。怖いよね⋯⋯」

「いやいや、人に言うようなものじゃないから!あと全然怖くないから!むしろご褒⋯⋯」

 

 勢いのままに「ご褒美だよ!」と言いかけたエマさん。大丈夫ですか?幸いにも聞こえなかったらしく、シリウスたちがそこにツッコむことはなかった。

 

「あの、安心して!もう絶対人には言わないから!って、リリーに言っちゃった人の言葉なんか信じられないよね⋯⋯」

「っ、そんなことないよ!」

「えっ⋯⋯」

 

 私はちらっ、とエマたちを盗み見た。

 エマとリーマスは見つめ合っていた。

 

「今まで気付かないフリをしながら仲良くしてくれてありがとう。僕はそれだけで充分なんだ」

「リーマス⋯⋯」

 

 謎にキラキラしたエフェクトが見える。友情を深めたシーンで感動的なのに、話題が腐と人狼で食い違っているのがシュールだなぁ⋯⋯。

 

「これからも話してくれる?」

「うん、勿論!二人のこと、応援もするよ!」

「え?」

 

 ああっと、ここでエマさんの台詞チョイス失敗!これはバレるか⋯⋯?

 

「二人って、誰のこと?」

「え?」

「ん?」

「あ、あのー⋯⋯」

 

 とここで、ずっと黙っていたピーターが参戦!

 

「多分だけど⋯⋯エマとリーマスの話、違うんじゃないかな?さっきエマ、『ご褒美』とか言いかけてたし」

 

 バレてて草。

 リーマスが身じろいだ。

 

「え、でもエマ、僕のこと狼って言って⋯⋯」

「うん、夜は狼なんでしょ?」

「⋯⋯?」

 

 エマが声を張り上げた。

 

「だーかーらー、リーマスとシリウスはそういう関係なんでしょ!?ボーイズラブ!」

 

 教室内に、沈黙が舞い降りた。

 はーい、茶番劇は終了しました。

 私は実況を降ります。ちゃんちゃん。

 

 

 

 

「いやちげぇーよ!、お前、なっ、何言ってんだ!?」

 

 シリウスの、至極真っ当な絶叫が響き渡りましたとさ。

 セブリリも、ルシリも存在しません。

 めでたしめでたし。

 

 

 

 尚この後、エマは恥ずか死んだ。

 

 

 




オリキャラ解説

⚪︎エマ•アリエット
 リリーの友達。カプ厨。
 マグル生まれ。
 この後、リーマスが人狼ということを知るが、「そんなの大したことない」と気にしない。むしろ腐女子とバレたことの方が気になる。
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