【完結】リリー・ポッターの存在否定   作:夜風ミシェル

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このまま完結まで駆け抜けていきたいですね。


21.go to 強盗

 

 爆睡かまして何とか元気を取り戻した私は、合法的銀行強盗に向けて準備していた。

 

「ていうか、よくよく考えてみればベラトリックスって死喰い人なのに、堂々と銀行に入っていいものなの?」

「駄目に決まってるんだぜ。だから、小鬼に服従の呪文を使うんだぜ」

「だったら違法やないかーい!!」

 

 誰だよ、合法的な銀行強盗だって言った奴は!ロックハートじゃん!全然違法だよ!

 全力でツッコむと、ベラトリックス(四歳)が怯えた。

 

「お姉さん、どうしたの⋯⋯?」

「何でもないですぅ⋯⋯」

 

 こっちはこっちで難しいんだよなぁ⋯⋯と遠い目になる。

 まず、この人は犯罪者。殺人、拷問何でもやってきた。その中には、モリソンさんの娘も含まれている。決して許せることではないけど、今のベラさんは四歳だしな⋯⋯どう対応すればいいってのよ、全く。

 ベラトリックスは記憶が戻る様子もなく、子どものようにニコニコしている。そんな彼女を怒鳴りつけるのは躊躇われる。

 大きな子ども。

 ベラトリックスはまさにそれだ。

 

「ベラトリックス・レストレンジ、××歳。配偶者、記憶にはなし。子供、なし。生活能力、なし。ベラ、生きていけないよおおおお⋯⋯⋯⋯なんつって」

「何呟いてるんです?」

「いや、ぴったりすぎるなぁって」

 

 ロックハートは微妙な顔をした。笑おうにも笑えないのだろう。

 ファントムが手招く。

 

「計画を確認するんだぜ。まず、エバンズ⋯⋯いや、ソノダユリは新規口座開設の申し込みに来た客。私はその付き添いという体だ。そして密かにインペリオを掛け、レストレンジ家の金庫に案内してもらう。鍵は私が持っておくんだぜ」

「そしてロックハートはベラトリックスの子守り、と」

 

 ロックハートは「解せぬ」という顔をしてベラトリックスを見た。

 にぱーと破顔するベラトリックス(四歳)。

 きつい。

 

「さぁ、行くのぜ」

「⋯⋯あのさぁ、その口調イライラしてきたからそろそろ変えてくれない?別にそれにこだわる必要ないでしょ?」

「分かった。早くしろ」

「えらく高圧的になった⋯⋯」

 

 

 

*****

 

 私とファントムは、グリンゴッツ銀行に足を踏み入れた。ファントムは仮面を外し、ポリジュース薬でそこらへんの人の姿を借りている。用意周到だな。

 いやあれか、ダンブルドアを介して原作のことも聞いているらしいし、強盗するにあたって渡されたのだろう。

 しっかしねぇ⋯⋯。

 銀行強盗してまでほしいアイテムってなんだ?

 闇の帝王を倒すのに必要なアイテム。

 思い返してみるが、やっぱり原作にはそんなのなかったような気が⋯⋯というか、ヴォルデモートを倒すのに、ハリーたちは何をしたんだっけ⋯⋯?

 なんかハッピーエンドで終わったことは覚えてるんだけど、その道中何があったのか⋯⋯。思い出そうとすると、頭がぼんやりしてままならない。

 あれ⋯⋯?

 

「⋯⋯ぼーっとしてないで、気を引き締めろ」

 

 ファントムに睨まれ、慌てて背筋を伸ばした。流石にここでぼんやりするのはよくないわ、すみません。

 私は小鬼に話しかけた。なお、サムライイングリッシュである。

 

「すみません、口座開設の手続きに来た者なのですが」

「あー、少々お待ちください」

 

 小鬼は顔を上げ、別の小鬼に何か指示を飛ばした。

 そして私たちは、個室に誘われた。

 小鬼の後を着いていく道中、ファントムが袖から杖を出した。

 

「インペリオ」

 

 呪文は、無防備な小鬼の背中に吸い込まれた。

 とろん、とした目で振り返る小鬼。

 

「⋯⋯分かりました、レストレンジ家の口座に案内します」

 

 ああ、どんどん罪が増えていく⋯⋯。

 

 

 

 

 

 

 レストレンジ家の金庫は、ドラゴンによって守られていた。だが、服従している小鬼がいればそんなの関係なし。

 小鬼は大人しく金庫の扉を開けた。

 

「わーお、金持ちぃ〜」

 

 私は感嘆した。

 流石純血、金貨がゴロゴロあった。⋯⋯これ、ちょっとくらい盗ってもバレないよね?慰謝料としてもらっていくか?

 割と真剣に考えていたら、ファントムが金庫の最奥に向かって指を指した。

 

「あれだ」

 

 それは、金色に輝くカップだった。

 周りに散らばっている物には触れないように指示し、ファントムはずんずん近づいていく。

 手袋をした右手で掴むと、麻袋に入れてその口を強く縛った。

 

「任務完了。帰るぞ」

 

 えらくあっさり終わったな。まぁ良いことだけど。

 私は麻袋を見た。

 この中のカップはどんな効力を発揮するのかな。まさかエクスカリバーに変身したりする?⋯⋯なんてね。

 ファントムは小鬼を先頭に、金庫の出入り口に向かう。私も慌てて着いていった。

 

「──おい、お前ら。レストレンジの金庫で何してる」

「「!?」」

 

 出口には、人がいた。

 男である。

 どうみても性格の悪そうな顔をしている。

 エイブリーだった。

 学生時代、決闘クラブで私に負け、卒業の日には暴行を働いたカスである。

 

「答えろ。何をしていた?」

 

 エイブリーは私たちを睨みながら、手をローブの中に突っ込んだ。私たちが怪しい動きをしたら、いつでも殺れるように準備している。

 私は何でもないように応えた。

 

「ベラトリックス様の指示でね。金を降ろしてこいと」

「⋯⋯お前、東洋人か?見ない顔だな」

「ああ。そういえば君とは会ったことなかったかな。⋯⋯ほら、仲間だ」

 

 私は自ら左腕の印を見せた。そこそこ距離がある状態で見せれば、このタトゥーが偽物だということに気付かれないのではと思ったからだ。

 その作戦はどうやらうまくいったようで、エイブリーは手を下ろした。そして馴れ馴れしく話しかけてくる。ええい、近付くな。あんたが私にしてきたこと、忘れたわけじゃないからな!!

 

「隣の奴は?」

「こいつは私のしもべだ」

「ふーん⋯⋯」

 

 エイブリーはちら、とファントムを見た。恭しく頭を下げるファントム。私の話に合わせてくれて感謝。

 

「そういえば、昨日の集会でベラトリックスが来なかったんだが、何か理由を知ってるか?」

「さぁね」

「⋯⋯そうか。まぁ、ここで立ち話もなんだし、まずは銀行出るか。お前も、小鬼を服従して入ったんだろ?とっとと立ち去ろう」

 

 そう言ってエイブリーは私に背を向けた。かなり信用してくれたようだ。騙し通せたことに安心しつつ、私も金庫の外に出た。

 瞬間、エイブリーが振り向きざまに魔法を放った。

 

「おわっ!?」

 

 目の前で光が霧散し、私は声を上げた。ファントムが守ってくれたようだ。危な。

 

「そのしもべ、何者だ?お前なんかよりよっぽど熟練の魔法使いじゃないか」

 

 エイブリーは警戒を見せつつ、魔法を連発していく。私も杖を出すと、武装解除呪文で抵抗した。

 

「おいおい、私たちは仲間!ナカーマ、ナカーマ!!」

「嘘つけぇ!ベラトリックスが集会に来なかった理由も知らねぇくせに、仲間ってほざいてんじゃねーよ!」

 

 エイブリーは叫んだ。

 

「ベラトリックスは昨日、エバンズとロックハートの殺害に向かって行方知れず!その意味が分かんねぇ奴がいるかよ!?──なぁ、エバンズ?」

 

 バレてるぅぅぅ!

 とはいえこれは好都合だ。

 エイブリーへの恨みを晴らすチャンス!!

 「私怨に構ってる暇ないだろ」という声は聞こえないふりをします。

 

「セクタムセンプラ!」

 

 エイブリーは余裕そうに避けた。それから、「クルーシオ!」と叫ぶ。

 が、磔の呪文が何だって言うんだ!

 

「セクタムセンプラ!」

「アバダ──」

「セクタムセンプラ!」

「えー、セクタムセンプラも闇の魔術なんだよということを教えたいエイブリーです」

「黙れカス!」

「カスぅぅぅぅ!?」

 

 エイブリーはかつて、抵抗できない私にセクタムセンプラを使った。

 だったら、やり返すまでだ!

 例えそれが闇魔法で、不死鳥の騎士団に所属している私が使うのはアウトだとしても!

 倫理とか知らねーからぁぁぁ!!

 私、魂の叫び。

 

「セクタムセンプラァァァァァァ!」

「アバダケダブラァァァァァァァ!」

 

 二つの光線は一点で交わる。

 勝利の女神は、私に微笑んだ。

 

「なっ⋯⋯嘘だろ⋯⋯アバダが負けるなんて──!」

 

 エイブリーの杖腕が、魔力で切り刻まれていく。転がる杖をすかさず拾い上げ、エイブリーの急所に蹴りを放った。

 にょむ、という感触が伝わり、エイブリーはその場に崩れ落ちた。

 

「おい⋯⋯そ⋯⋯こは⋯⋯なし、だろーが⋯⋯」

「口答えしないでくれるー?てめぇを不能にするわよー?」

「⋯⋯あのー、そろそろいいですか?」

 

 若干引いてるファントムが声を掛けた。敬語になっててウケる。

 

「うん、すっきりしたから満足よ。んで、こいつどうする?」

「そ、そうですね⋯⋯。ちょっと気になることがあるので連れて帰ります」

「了解」

 

 そして私たちは、レストレンジ家の金庫とエイブリー家の金庫を漁って帰った。え、それ泥棒だよって?あっはー、ゲームの勇者だって壺割ってるしおっけーおっけー!

 

 

 

*****

 

 場所は変わって、ホテルの一室。

 私、ロックハート、ファントムはベッドに腰掛け、ベラトリックス(四歳)とエイブリーは床に転がしている。なんか⋯⋯すごい大所帯になったな。

 包帯ぐるぐる巻きにされたエイブリーは、必死に鼻を鳴らす。

 

「ふん、お、俺を捕まえたってあのお方の勢いは止まらないぞ!」

「知ってるわ。多分あなた、我が君に苗字しか認知されてないでしょ」

 

 どうやら事実らしく、エイブリーは黙った。かくいう私も、こいつの名前知らないけど。

 私はファントムを見た。

 

「で?この人に何したいの?拷問?」

「⋯⋯確認なんですけど、あなた一応ダンブルドア派ですよね?何で躊躇いがないんですか?ひょっとして死喰い人でした?」

「落ち着いてください、キャラがブレてますよ」

 

 ロックハートに宥められ、ファントムは咳払いした。

 そして強気モードに入る。

 

「例のあの人を倒すアイテムは、複数ある。すでに保持しているものもあるが、次に手に入れたいのは──あの人の日記帳だ」

「「日記帳?」」

 

 私とロックハートの声が揃った。いや分かるよ、疑問でしかないもの。

 たかが日記を奪って何になるって言うんだ⋯⋯?

 

「えー、あの人の恥ずかしい日記帳を読み上げて、精神攻撃⋯⋯とか?」

「馬鹿か?」

「どストレート暴言んんんん!」

 

 胸を押さえる私を見て、ベラトリックス(四歳)が楽しそうに笑った。人の苦しんでる様子を見て笑うなんて⋯⋯すでに仕上がってますな、ネキ。

 

「とある情報源によると、件のノートはマルフォイ邸にあるらしいのだが、現段階では見つからなかった。恐らく、別の場所にあるのだろう。だから、死喰い人の記憶を見てヒントがないか探したい」

「ほえ〜⋯⋯ん?それってもしかして」

 

 探してる日記帳って、第二巻でジニーが乗っ取られた奴じゃね?

 

「あなたの予想通りだ」

 

 何も言っていないのに、ファントムは深く頷いた。

 なるほど、あれは例のあの人を倒すアイテムだったのか。ということは、今日強奪したカップも日記帳みたく壊さないといけないのか。まぁ、分霊箱だしな⋯⋯。

 ⋯⋯。

 ⋯⋯⋯⋯。

 

 

 

 え?

 

 

 

 今、私⋯⋯何を、考えた?

 分霊箱って⋯⋯何?

 知らないはずの単語に、私はゆっくり瞬きを繰り返した。

 

 この知識は、どこから湧いてきた?

 

 戸惑う私に構わず、ファントムはエイブリーの前髪を掴んで目を合わせた。

 

「レジリメンス」

 

 そして、ファントムの目が大きく見開かれた。

 

「⋯⋯行幸だ、エバンズ。エイブリーの記憶を見るに、どうやら例の品はエイブリー家の本邸にあるらしい」

「つまり、こいつの実家?」

「いや、彼は妾の子だから本邸には入ったことがないらしい」

 

 なかなか複雑そうな家庭環境らしかった。

 ファントムはぶつぶつ呟いて、一人の世界に入った。

 息も絶え絶えなエイブリーに、私は笑いかけた。

 

「全て暴かれた気分はどうよ?キモチイイ?」

「卑猥な言い方やめろ」

「口では嫌がってても、体は素直だね⋯⋯」

 

 はぁはぁ言ってるエイブリーにそう言ったら本気で嫌がられた。

 健気に言い返してくるエイブリー。

 

「お前、スネイプと仲違いしたのは俺のせいだって思ってんだろ。こうやってやり返せて満足か?」

「⋯⋯別に、セブルスのことであなたを恨んでるわけじゃないし」

 

 セブルスのことを話題に出されると、私の口はうまく回らなくなる。

 エイブリーは嬉々としてそこをつついてきた。

 

「俺にやり返したって、別に仲直りできるわけでもねぇのに!可哀想な奴⋯⋯」

 

 私は、キレた。

 

「だーかーら、セブルスのことで怒ってるんじゃないわよ!私に暴力を振るったことが許せないの!」

 

 そう、これは決して不合理な怒りをぶつけているのではない。

 私は理解している。

 後悔している。

 

「セブルスと喧嘩したのは、自業自得だし⋯⋯」

 

 何も見ていなかった、私のせい。

 エイブリーがいてもいなくても、結果は変わらなかった。

 

「⋯⋯ねぇ、セブルスは元気?」

「な、何だよ。急に真面目になるなよ」

「私はいつだって真面目ですけどぉ?」

 

 エイブリーは面倒くさそうにため息をついた。

 

「楽しそうに穢れた血を迫害してるぞ」

「⋯⋯そう」

 

 分霊箱を集めて、無事に平和を取り戻せたら。

 私はセブルスと、また話せるようになるんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

「冷静に考えたら無理じゃないですか?」

「(余計なこと言うなよロックハート⋯⋯)」

 

 ファントムは思いっきりロックハートのつま先を踏んづけた。

 

 

 

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