【完結】リリー・ポッターの存在否定   作:夜風ミシェル

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04.マ?─魔法の限界について─

 

 決闘クラブの試合は、学年ごとに分かれて行う。

 たまたま出会ったドモブに誘われて、私たちはロックハートの試合を観戦することになった。

 ロックハートは防御もなしに呪文を連続して放つ。

 圧勝だった。

 

「魔法(はや)⋯⋯。格好いいわね」

 

 思わず呟くと、隣のジェームズが、「僕だって速いよ!」と対抗意識を見せてきた。確かにジェームズの魔法のセンスには光るものがあるけど、自分で言うと台無しだなぁ⋯⋯。

 ロックハートはお辞儀をしてから、投げキッスのファンサをした。女子の黄色い歓声が響き渡る。何これ、ライブ会場?

 

「いやぁ、疲れましたね」

 

 決闘場を出て、ドモブが確保しておいた観客席にロックハートが座る。それからこちらを見て、「あ、先輩方も来ていたんですね!」と顔を明るくした。

 

「お疲れ、ロックハート。すごい人気ね」

「そうでしょう、何せこの私ですから。ホグワーツ中を魅了してしまいました」

「⋯⋯」

 

 反応に困っていると、シリウスがチッチッチと指をふった。

 

「いいや無駄だぜ?後日俺が魅了し返しちまうからな」

「自信満々ですね⋯⋯大丈夫ですか?」

「おい舐めんな」

 

 シリウスとロックハートの間に、火花が散る。

 ロックハートが髪をかき上げた。

 

「付き合った女の子のことも満足させられないのに?聞いてますよ、あなたの元カノ、リサから」

「んなっ!?あいつ、お前のとこに行ったのかよ⋯⋯」

「リサだけじゃありませんよ。ラベンダーやシャーロットも」 

 

 衝撃の事実。シリウスの元カノはロックハートに流れ着いていた。面食いすぎるだろ。

 ここでシリウスが攻撃に回る。

 

「お前の短いホグワーツ生活の中で、すでに三人とも付き合ってんのか?それって一人当たりの時間は短い⋯⋯つまり、すぐに別れてる。だったら、俺にとやかく言う権利はないだろ!」

「ぐはっ!」

 

 ロックハートは吐血した。事実らしい。が、すぐに立ち直る。

 

「逆に考えてください。三人⋯⋯いえ、リサとはまだ付き合っているので、元カノは二人だけです。あなたは何人ですか?」

「今までに付き合った彼女の数を覚えてるわけないだろ。お前は今まで食ったパンの枚数を覚えているのか?」

 

 誰かコイツを刺してくれ!!

 流石のリーマスも、これには憤慨。

 

「シリウス最低。もっと彼女を大事にしないと」

「違うぞリーマス。付き合ってる時はちゃんとしてた。そう、俺だけの姫のように。夢も見せてあげたし」

 

 ホストか?

 シリウスがにやっと笑った。

 

「よし決めた。ロックハート、お前からリサを奪ってやんよ。そしてお前の元カノカウントを増やしてやる」

「倫理観ゼロの遊びやめて」

 

 私の言葉には、聞く耳を持たなかった。

 後日、シリウスとリサは熱いキスを交わした。ロックハートはショックを受け、それから彼女を作ることは無くなった。

 

「まぁ、なんというか⋯⋯元気出して?」

 

 気遣いの塊・リーマスに背中を撫でられるも、ロックハートはめちゃくちゃ沈んでいる。

 

「なんでですか⋯⋯。顔の良さなら負けてないのに⋯⋯。むしろ美しすぎるまであるのに⋯⋯」

「コイツうぜぇ」

「リリー、シレンシオだよ」

 

 ぽろっと本音が漏れて、リーマスに咎められた。すんません。

 しょうがないので、先輩であるこの私が人肌脱ごうじゃないの。

 

「ちょっとナイフを持ってシリウスのところに行ってくる」

「え」

「そんで『私とは遊びだったのね!』とか叫ぶわ」

「本当にやめて」

 

 まともな倫理観を持ったリーマスは顔を顰めた。だが私は止まらない!あいつは女の敵!成敗してくれよう!

 羽ペンをナイフに変える。

 

「やめるんだリリー!犯罪に手を染めちゃダメだ!」

「止めないで。これは正義のため(?)なのよ!」

 

 リーマスと揉み合っていたら、通り過ぎる人々が「痴情のもつれ?」とかなんとか呟いてた。私がナイフを握っているからだろう。

 リーマスがナイフを奪おうともがく。それに抵抗した私の手から、ナイフがすっぽ抜けた。

 

「え」

「あ」

 

 綺麗に直進するナイフ。

 それは、吸い込まれるように騎士の絵画に突き刺さった。

 

「ああああぁぁぁぁ⋯⋯」

 

 断末魔を上げ、絵の中の騎士は死んだ。

 あいつは⋯⋯いい奴だったよ⋯⋯(遠い目)。

 

 

 尚この後、普通に罰則を食らったし絵画は元に戻りました。

 

 

*****

 

 六年生の試合も、もうじき始まる。

 私たちは必要の部屋で、呪文の練習をしていた(尚、シリウスはデート中)。

 色々試してみた結果、私の得意呪文は全身金縛り術と粉砕ということが分かった。

 ジェームズが首を傾げる。

 

「おかしいな⋯⋯前までは『エイビス』が得意だったのに。鳥と戯れる君も最高にキュートだった」

「きも⋯⋯」

 

 何でリリーの得意な魔法まで把握しているんだ。

 エマが、私とジェームズを交互に見て言う。

 

「リリーの攻撃的な面が強くなったからじゃない?」

「つまりリリーはドSになった⋯⋯ってコト!?」

 

 もうやだこの変態。アズカバンにぶち込も。

 私はそそくさと、ピーターの後ろに隠れた。貴重な癒やし枠ですからね。

 

「え⋯⋯あ⋯⋯」

 

 おろおろと私を見るピーター。こんな小動物みたいな子が、将来あんな薄汚れたおっさんになるなんて信じられなかった。

 うん、守ろ。

 

「ピーター、私があなたを守るわ」

「え⋯⋯ありがと⋯⋯?」

「は??ピーターずるい」

「黙れ変態。ピーターは可愛いけど、あなたは違うでしょ」

「かわいくないとだめですか?」

 

 歌のタイトルみたいなことを言ったジェームズは、はっとしたように手を叩いた。

 

「そうだ、僕だって可愛くなれるよ♡」

「え?」

 

 瞬間、ジェームズの体が歪んだ。

 

「え、何してるのこれは」

「あー⋯⋯」

 

 何かを知ってそうなリーマスが、ため息をついた。

 

 

 瞬きした瞬間、ジェームズは馬鹿(、、)になっていた。

 

 

 あ間違えた。

 

 鹿になっていた。

 

「ええええええ〜〜〜!?」

 

 いきなり現れた鹿に困惑するエマ。対照的に、私は合点がいった。そういえば、動物もどきだったわね。

 ジェームズ鹿は、「どう、可愛いでしょ?」とでも言うように鼻を鳴らした。それから、私にすりすりと身を寄せてくる。

 ぞわぞわする。

 私は無詠唱で、全身金縛り術を放った。

 

「あ成功したわ」

「え、無言呪文!?」

 

 ピーターが大声を上げた。どうやら命の危機(笑)を感じると、私でも無言呪文ができるらしい。

 修学旅行で行った奈良で、ガイドに注意されたことを思い出した。

 

「鹿に不用意に触っては危険よ。ノミやダニがいるから。⋯⋯フィニート」

「え!」

 

 不安そうに自分の体を確認するリーマス。そんな彼に、「いやそこまで再現しないよ!?」と、魔法が解けたジェームズが叫んだ。多分、狼状態のリーマスと鹿のジェームズは触れ合うこともあったのだろう。「触れ合う⋯⋯なんだか意味深だね。捗る」と真顔でほざくカプ厨エマは無視した。

 

「全く失礼しちゃう」

 

 ジェームズはプリプリ怒った。微塵も可愛くなかった。

 

「動物もどきでノミまで付いてくるわけないでしょ」

「マ?それが魔法の限界か⋯⋯」

「変なこと言わないでよ⋯⋯あー、何だか体が痒くなってきた。リリー、背中掻いて♡」

「あなたの頭にエピスキーしたら治るかしら」

「これが平常ジェームズさ、キラーン」

 

 ジェームズのキモさが満ちている。何だろう、今なら最高速度で魔法を放てそう。

 

「よしジェームズ。私と模擬戦やりましょ」

「り、リリーに向かって魔法を⋯⋯?それは僕のポリシーに反する!」

「だったら練習にならないでしょーが!!」

 

 何だこいつ。何の為にここに来たんだ。

 仕方がないので、リーマスにお願いする。すぐに了承してくれた。やっぱり、ナイフを振り翳して争ったお陰かな。

 まずは一礼。それから三つ数えて。

 

「エクスペリアームス!」

「プロテゴ」

 

 リーマスは冷静に盾を展開した。が、すでに私は次の魔法を撃っている。

 ──ペトリフィカス・トタルス。

 相手をジェームズだと思えば、良い感じに魔力が乗って無言呪文が成功しやすい気がする。

 

「っ!」

 

 何とか避けるリーマス。それから、ステップを踏みながら「ステューピファイ!」と唱えた。リーマスのこの動き⋯⋯『レレレ撃ち』のステップだ。FPSでもやっていらっしゃる?

 

「レダクト!」

 

 リーマスの足元が、不安定になる。すかさず「エクスペリアームス」でトドメを刺した。

 リーマスの杖が、宙を舞った。

 

「いやぁ、強いね」

「練習の成果が出たわ」

 

 私はリーマスに杖を返した。それから、大きく伸びをした。

 いいですね、こういうのが魔法って感じですよ!!ここから、私が無双しまくる展開が始まるんですね⋯⋯!

 

「流石リリーだね!」

「ああ、ジェームズ⋯⋯そりゃどうも」

 

 適当に頭を下げると、ジェームズははぁ、と艶めいた吐息を漏らした。

 

「不思議だな。ずっと前と同じ君を見てるのに、少し前からまるで遠くに見える」

「オクジー?」

「誰よその男!」

 

 やかましいわ。

 だが、流石ジェームズ。リリーへの一途さは確かなものらしい。

 今の『私』は、純然たるリリーではない。あくまで転生者で、少し前に前世の記憶を取り戻した、不可思議な存在。

 人格にも少しばかり変化が訪れていること。彼はそれに気付いているのだ。これが『()』か。草。

 ジェームズは徐に杖を握りしめた。

 

「ちょっとピーター。一回さ、僕とエクスペリアームスを撃ち合って勝負しよ」

「え⋯⋯い、いいよ⋯⋯」

 

 二人は突如として模擬戦を始めた。結果は予想通り、ジェームズの勝ち。

 

「ね、リリー。今の僕の魔法、どうだった?」

「えぇ⋯⋯どうだったって⋯⋯曖昧な質問ね」

「じゃあ、速さで言ってくれる?」

「まぁ、速かったわね」

 

 対戦相手がピーターということもあって、相対的に速く見えた。ま、まさかその効果を狙ってピーターを踏み台にしたんじゃ⋯⋯。ジェームズ、サイテー。

 というのは置いておいて。

 光線の届く速さは、ロックハートよりも優れていたように思う。これは素直に凄い。

 しかし、ジェームズは一体何の目的でこんなことをし始めたのか。私は黙って彼を見た。

 ジェームズは真剣な顔付きだった。

 

 

「──今から、リリーの心を動かす」

 

 

 ⋯⋯ん?

 理解が追いつかない私に問いかけるジェームズ。

 

「リリーは、魔法の速度が速いと格好いいって思うよね?」

「ええ⋯⋯」

「そして僕の魔法は、速い方だよね?」

「そうね⋯⋯」

 

 何を言いたいのか、ようやく理解した。

 

「つまり僕は格好いいよね!!」

「ゴミみたいな三段論法やめろ」

 

 私はジェームズのつま先を思い切り踏み付けた。

 

 

 

 

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