今日はハロウィンだ。
そして、私の決闘の日でもある。対戦相手はスリザリン生のエイブリーとかいう人だ。
そう、グリフィンドール対スリザリン。
何も起きないはずがなく⋯⋯。
「やっちまえエイブリィィー!」
「グリフィンドールの魂を見せろぉぉぉ!!」
既に戦いは始まっていた!
観客席が騒がしい。
ジェームズたちが赤色の光を打ち上げた。対抗するようにスリザリン生は緑色の光を放つ。君たち、ある意味仲が良いね。
ジェームズが教えてくれた通り、闇祓いが3名ほど観戦に来ていた。ちらちら見ていたら、エイブリーが前に出て私に話しかけてきた。
「やぁやぁ汚いマグル生まれ。今日は棄権しなくて良かったのかい?」
「危険だという判断なし、棄権はないので中断なし」
チェケラポーズを返したら、ゴミを見るような目で見られた。え?リリック下手くそ?⋯⋯貶したらアバダしてやる。
中身のない会話を繰り広げたところで、試合開始のホイッスルが鳴った。
エイブリーは地面から岩を生やした。遮蔽物のつもりだろう。そして岩陰から失神呪文を放った。
「殺れぇぇ!!」
盛り上がるスリザリン。
私は光線を避けると、「インセンディオ!」と叫んだ。相手の退路を狭めるためだ。すかさず次の呪文を放つ。
「エクスペリアームス!」
エイブリーは、不敵に笑った。
「アクシオ・レイブンクロー生!」
「え」
「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
選ばれたのはロックハートでした。
音速呼び寄せ呪文による風圧で、ロックハートの前髪が死ぬ!顔が歪む!服が裂ける!女子の悲鳴が上がる!
そして直撃した武装解除呪文。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!⋯⋯⋯⋯」
ロックハートは壁にめり込んで死にました。
知り合いの後輩があんなことになって、流石の私も気を取られてしまった。
その隙を、敵は見逃さない。
「ボンバーダ・マキシマ!」
爆ぜる地面。
咄嗟に右手に飛び退くと、待ち構えていたかのようにエイブリーの魔法が左肩を貫いた。
「痛ってぇぇ⋯⋯。エピスキー」
だが、傷は全く塞がらない。血がドクドクと流れるばかりだ。おいおい、なんかやべー魔法使ったんじゃなかろうか。
私は即座に土壁を召喚した。何重にも重ねて、その裏でしっかり観察する。かなり深い切り傷だった。
否。
これはもしや⋯⋯。
セクタムセンプラ!?
「はははっ、無様だなぁ!でも俺は優しいから、10秒だけ待ってあげ、」
「うおおおおぉぉぉぉ!!」
「」
エイブリーの声は掻き消されました。しかし、それも当然。
この魔法は!!
スネイプ先生が開発した闇の魔術うぅぅぅーー!!
「ありがとう、ありがとう⋯⋯生身で体感できて感動⋯⋯!」
「おかしい⋯⋯何故かコイツ、元気になってやがる⋯⋯」
興奮したら血が吹き出た。流石にこれ以上は死ぬ。でも反対呪文があるから問題はな⋯⋯し⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯。
あれ、反対呪文って何でしたっけ??
ここに来てド忘れした。終わった、私の命もここまでか⋯⋯。
「どうした、血の気が引いてるけど。(ここで閃いたような顔をして)肉体的にも、精神的にもか笑」
「うるせ。あとあんまり上手くないぞそれ」
「お前に言われたかねぇーよ、穢れた血がよぉ」
閃いた顔してるのが一番ださい。
とクソダサエイブリーを罵倒したところで、私の中に天才的閃きが舞い降りた。
「そうだ、私って穢れた血なんだった」
事はとっても単純だ!
私は杖を突き出した。
まず「アセンディオ」で天井付近まで体を上昇させる。
土壁で死角になっていたので、エイブリーの反応が一瞬遅れる。
そこに、躊躇なく魔法をぶっ放す!
「アグアメンティ、インカーセラス、レダクト」
その猛攻の間に、ひっそり唱える。
『確実に殺る』という気合を込めて。
「──セクタムセンプラ」
その光線は、綺麗にエイブリーの太ももに吸い込まれた。
「Foooooooooo!!」
「カッコいいぃぃぃー!リリー!!」
「付き合ってくれぇぇぇぇぇ!!」
グリフィンドールの席が盛り上がる。約1名、アホなことをほざいていたが。
エイブリーは、自分の傷があの魔法によるものだとすぐに理解したようで、驚愕しながら岩陰に身を潜めた。恐らく、反対呪文を使って治癒するつもりだろう。
全て私の期待通りだった。
「ディセンディオオオオオ!!」
急下降による生身の突撃に、エイブリーは腰を抜かした。
死なば諸共。
「ププププロテg」
「シレンシオ!」
プロテゴできなかったエイブリーは、見事に私の下敷きとなった。ガチ恋距離キタコレ。嬉しくない。
ボキッ、というエイブリーの骨が折れる音が聞こえた。
かくいう私も、無理やり動いたせいで出血が夥しい。
私は左肩を見た。釣られてエイブリーの視線も、そちらに向く。
「じゃ、今からこの血液を擦り付けます」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」
「はい、一回目ぇぇぇ!」
私はにっこり笑って、エイブリーのローブに血をなすり付けた。
固まるエイブリー。
そして、
「う、う、う、う、うわあああああああああ!血が、血があああああぁぁぁ!?」
絶叫した。
そう、こいつは典型的純血主義者!
そして私は穢れた血!
ならば為すべきことは一つ!
『惜しげもなく穢れた血と接触させる』のだ!!!
「なんということでしょう!マグル生まれの血がこんなにも付いちゃって!!」
「ああああああああああやめろおおおおぉ!!」
エイブリーは逃げようとする!しかし、骨が折れているため動けない!
結果、白目を剥いて気絶した。
スリザリンの座席は、阿鼻叫喚に包まれた。
そして。
『えー⋯⋯⋯⋯勝者、リリー・エバンズ⋯⋯?』
ジャッジメントが下された。
*****
というような感じで勝ったけど、あれから私は医務室にいる。
エイブリーから食らった魔法。
その傷が塞がらないからだ。
「全く!なんて魔法なの!類似の魔法もないし!」
ぷりぷりと怒るマダムポンフリー。色々な薬品を使って、ようやく傷が薄くなった。
あーあ、反対呪文が分かればすぐに退院できたのになぁ⋯⋯と遠い目をしながらも、無事退院日を迎えることができた。
傷はまだ多少痛む。
「マイハニー!怪我は大丈夫かい?」
「鬱陶しいなぁ」
目をウルウルさせるジェームズ。だが、酷く心配していただろうし、あまり邪険にするのも良くないか?私は反省した。
「ん、あれ?」
授業が終わり部屋に戻る途中で、私は忘れ物に気付いた。教室に本を置いてきてしまったようだ。適当に会話を切り上げて引き返すことにした。
そして、こういう一人のときに限って絡まれるんだよなぁ⋯⋯。
私はばったりエイブリーに出くわしてしまった。「うげっ」とあからさまに顔を歪ませるエイブリー。
「お前のせいで俺のローブがダメになったんだぞ!弁償しろ」
「えぇー、ローブの一枚くらい自腹でいけるでしょ?純血なんだし」
「お前マジでいい加減に⋯⋯!」
ブチ切れエイブリーは杖を取り出した。が、視界の端に教師が映り込んだ瞬間、目にも留まらぬ速さで鞄に滑り込ませた。ほれぼれする杖捌きですね。
「ま。こんな暴力を使うなど下賤がやること。俺はすでに毒を蒔いた」
エイブリーは黒い笑みを浮かべた。
「──お前の血液が付着したローブを、ポッターに送りつけてやったぜ」
私はあんぐりと口を開けた。
私の血液付きローブが、あの変態の元にある、だと?
ワンテンポ遅れて、理解した。
「ほあああああああぁぁぁぁ!?ちょあんた、何やってくれてんの!?」
「俺はただ渡しただけだろ?ま、あいつが『ナニ』やってるかは分からないがな⋯⋯」
「ナニを強調するな!!」
こ、こいつ⋯⋯!
私が嫌がるであろうことを的確に見抜きやがって⋯⋯!!負けた腹いせか?手段を選ばないのは流石だな、スリザリン生。
そんな話を聞いて、慌てて寮に戻った私。談話室ではいつものように、あの四人組が駄弁っていた。
私はずかずかとジェームズに近寄った。
「エイブリーからローブ、貰ったんですってね?」
「え、何のことかな⋯⋯?」
「おいプロン
「貰いました」
両手を上げるジェームズ。無防備な腹部に、私は容赦なく拳を突き刺した。が、あまり痛くなかった模様。ジェームズが恍惚とした表情になっただけだった。ガチできしょい。
「選べ変態。アバダorクルーシオ」
「どっちも違法だよぉ⋯⋯」
「あとローブどこやった?渡して」
「え?いやぁ〜⋯⋯」
「俺知ってる。トランクに仕舞ってある」
「パッドフットおおお!?」
告げ口したシリウスは、ペロッと舌を出した。
「さらに言うと。プロングズは一人のときにローブを着て『今、僕はリリーの体液(意味深)でベトベトになってる⋯⋯!』って興奮してた」
「何で知ってんだよおおおお!!」
何もかもを知リウスから聞かされた、衝撃の事実。
私は真面目に、こいつをしょっぴいてやろうかと考えた。
「え⋯⋯やばいよ⋯⋯?」
「すごい、あのワームテールでさえも生ゴミを見るような目をしている」
「これもうなんかの法に触れてるだろ」
ピーター、リーマス、シリウスからそれぞれ刺され、ジェームズは「う、うわあああああ!!」と発狂した。そのままどっかに逃げようとしたので、すかさずインカーセラス。
「再起不能にしてやる!!
「目が、目がああああああああぁぁぁ!!」
ジェームズは目を押さえてのたうち回った。
*****
「正当な理由による魔法の行使なのに、なぜか私が減点されたんだけど」
「ははは⋯⋯しょうがないよ。ジェームズを医務室送りにしちゃったし」
「最早あれは医務室ではなくアズカバンに送るべきでしょ」
「それはそう。⋯⋯てか見たかった!話聞くだけでもおもろいのに」
エマは大笑いしていた。他人事だと思って⋯⋯。
ジェームズの変態っぷりは、児童書には書けないレベルに達している。ガチで頭おかしいよ。自首しろ。
「リリー」
「あ、セブルス」
声を掛けられて振り向くと、挙動不審のセブルスがいた。何かを話したそうに、こちらを見ている!気を利かせたエマがそそくさと退散するのを待ってから、セブルスは気まずそうに私の肩を見た。
「その⋯⋯傷、残ってるだろう?」
どうやらセブルスは、私の傷が気になって来たっぽい。確かに、好きな女の子を(間接的にとは言え)痛めつけてしまったわけだしなぁ。
純情ボーイセブさんは杖を取り出した。
「ヴァルネラ・サネントゥール」
歌うような魔法だった。
「そうそう、反対呪文はこんな奴だったわねぇ」とふんふん頷いていたら、いつの間にか肩の痛みはすっかり消えていた。
「エイブリーがごめん⋯⋯まさか君に使うとは思ってなくて」
そういうつもりで教えたわけじゃないと。まあそうでしょうね。
私はすっとぼけて訊いてみた。
「この魔法、セブルスも知っていたの?」
「う⋯⋯うん。えぇっと⋯⋯切り裂き呪文を発展させた魔法⋯⋯らしい。スリザリンの先輩が言ってた」
「へぇぇぇ、そーなのねー」
めためた嘘ついてて草。リリーは悲しいよ。
とか思ってたら、矛先は私に向いた。
「ところで、リリーもこの魔法知ってたのか?」
「え?」
「いや、試合で使ってただろう?」
⋯⋯ほえほえ、ついに訊かれてしまったかぁ。
リリーがその魔法を知っているのはおかしいのよね、確かに。
適当に誤魔化そう。セブルスも嘘ついたし、おあいこだな。
「知らなかったけど、エイブリーが使ったのを見て真似しただけよ」
「そんな一瞬で覚えたの⋯⋯?」
「ワタシ、テンサイダカラネ」
頼む、もうツッコまないでくれぇ!
そう願ったお陰か、セブルスはくすっと笑った。
「知ってる。リリーには魔法の才能がある。それに頭もいい。まさかの方法でエイブリーを気絶させたし。正直、笑った」
「笑いを提供できて何より」
「⋯⋯実を言うと、エイブリーは偶に魘されているんだ。心に深い傷を負ったみたいで」
ざまぁ。ジェームズを使って復讐なんてするからだぞ。
余程悪どい笑みを浮かべていたらしく、セブルスは若干引いていた。
「⋯⋯リリー、変わったね」
「そうかしら」
とぼけつつ、脳内を駆け巡るあれこれ。
あれ⋯⋯?これ、私も児童書に相応しくないキャラなのでは?
リリーは、真実に気付いてしまった!!
「やっぱり、ポッターのせいだよな」
「ん?あー⋯⋯」
謎にジェームズのせいにされてて草。だが、この流れに乗るっきゃない!
私は力強く頷いた。
「そうなの!私のキャラがブレてるのは全部あの変態のせいよ!」
決して、私が元から奇人だったわけじゃないのだ。そう、そういうことにしよう。
セブルスはスクッと立ち上がった。
「ちょっとポッターを殺ってくる」
「いきなりスギィィ!?でもいいわよ!それいけスネイプ」
変態死すべし慈悲はない。