【完結】リリー・ポッターの存在否定   作:夜風ミシェル

6 / 30
06.手段を選ばない者ども

 

 今日はハロウィンだ。

 そして、私の決闘の日でもある。対戦相手はスリザリン生のエイブリーとかいう人だ。

 そう、グリフィンドール対スリザリン。

 何も起きないはずがなく⋯⋯。

 

「やっちまえエイブリィィー!」

「グリフィンドールの魂を見せろぉぉぉ!!」

 

 既に戦いは始まっていた!

 観客席が騒がしい。

 ジェームズたちが赤色の光を打ち上げた。対抗するようにスリザリン生は緑色の光を放つ。君たち、ある意味仲が良いね。

 ジェームズが教えてくれた通り、闇祓いが3名ほど観戦に来ていた。ちらちら見ていたら、エイブリーが前に出て私に話しかけてきた。

 

「やぁやぁ汚いマグル生まれ。今日は棄権しなくて良かったのかい?」

「危険だという判断なし、棄権はないので中断なし」

 

 チェケラポーズを返したら、ゴミを見るような目で見られた。え?リリック下手くそ?⋯⋯貶したらアバダしてやる。

 中身のない会話を繰り広げたところで、試合開始のホイッスルが鳴った。

 エイブリーは地面から岩を生やした。遮蔽物のつもりだろう。そして岩陰から失神呪文を放った。

 

「殺れぇぇ!!」

 

 盛り上がるスリザリン。

 私は光線を避けると、「インセンディオ!」と叫んだ。相手の退路を狭めるためだ。すかさず次の呪文を放つ。

 

「エクスペリアームス!」

 

 エイブリーは、不敵に笑った。

 

 

 

「アクシオ・レイブンクロー生!」

 

 

 

「え」

「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 選ばれたのはロックハートでした。

 音速呼び寄せ呪文による風圧で、ロックハートの前髪が死ぬ!顔が歪む!服が裂ける!女子の悲鳴が上がる!

 そして直撃した武装解除呪文。

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!⋯⋯⋯⋯」

 

 ロックハートは壁にめり込んで死にました。

 知り合いの後輩があんなことになって、流石の私も気を取られてしまった。

 その隙を、敵は見逃さない。

 

「ボンバーダ・マキシマ!」

 

 爆ぜる地面。

 咄嗟に右手に飛び退くと、待ち構えていたかのようにエイブリーの魔法が左肩を貫いた。

 

「痛ってぇぇ⋯⋯。エピスキー」

 

 だが、傷は全く塞がらない。血がドクドクと流れるばかりだ。おいおい、なんかやべー魔法使ったんじゃなかろうか。

 私は即座に土壁を召喚した。何重にも重ねて、その裏でしっかり観察する。かなり深い切り傷だった。

 否。

 これはもしや⋯⋯。

 

 

 セクタムセンプラ!?

 

 

「はははっ、無様だなぁ!でも俺は優しいから、10秒だけ待ってあげ、」

「うおおおおぉぉぉぉ!!」

「」

 

 エイブリーの声は掻き消されました。しかし、それも当然。

 

 

 この魔法は!!

 

 

 

 

 スネイプ先生が開発した闇の魔術うぅぅぅーー!!

 

 

 

 

「ありがとう、ありがとう⋯⋯生身で体感できて感動⋯⋯!」

「おかしい⋯⋯何故かコイツ、元気になってやがる⋯⋯」

 

 興奮したら血が吹き出た。流石にこれ以上は死ぬ。でも反対呪文があるから問題はな⋯⋯し⋯⋯。

 ⋯⋯⋯⋯。

 

 

 あれ、反対呪文って何でしたっけ??

 

 

 ここに来てド忘れした。終わった、私の命もここまでか⋯⋯。

 

「どうした、血の気が引いてるけど。(ここで閃いたような顔をして)肉体的にも、精神的にもか笑」

「うるせ。あとあんまり上手くないぞそれ」

「お前に言われたかねぇーよ、穢れた血がよぉ」

 

 閃いた顔してるのが一番ださい。

 とクソダサエイブリーを罵倒したところで、私の中に天才的閃きが舞い降りた。

 

「そうだ、私って穢れた血なんだった」

 

 事はとっても単純だ!

 私は杖を突き出した。

 まず「アセンディオ」で天井付近まで体を上昇させる。

 土壁で死角になっていたので、エイブリーの反応が一瞬遅れる。

 そこに、躊躇なく魔法をぶっ放す!

 

「アグアメンティ、インカーセラス、レダクト」

 

 その猛攻の間に、ひっそり唱える。

 『確実に殺る』という気合を込めて。

 

「──セクタムセンプラ」

 

 その光線は、綺麗にエイブリーの太ももに吸い込まれた。

 

「Foooooooooo!!」

「カッコいいぃぃぃー!リリー!!」

「付き合ってくれぇぇぇぇぇ!!」

 

 グリフィンドールの席が盛り上がる。約1名、アホなことをほざいていたが。

 エイブリーは、自分の傷があの魔法によるものだとすぐに理解したようで、驚愕しながら岩陰に身を潜めた。恐らく、反対呪文を使って治癒するつもりだろう。

 全て私の期待通りだった。

 

「ディセンディオオオオオ!!」

 

 急下降による生身の突撃に、エイブリーは腰を抜かした。

 死なば諸共。

 

「ププププロテg」

「シレンシオ!」

 

 プロテゴできなかったエイブリーは、見事に私の下敷きとなった。ガチ恋距離キタコレ。嬉しくない。

 ボキッ、というエイブリーの骨が折れる音が聞こえた。

 かくいう私も、無理やり動いたせいで出血が夥しい。

 私は左肩を見た。釣られてエイブリーの視線も、そちらに向く。

 

「じゃ、今からこの血液を擦り付けます」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」

「はい、一回目ぇぇぇ!」

 

 私はにっこり笑って、エイブリーのローブに血をなすり付けた。

 固まるエイブリー。

 そして、

 

「う、う、う、う、うわあああああああああ!血が、血があああああぁぁぁ!?」

 

 絶叫した。

 

 

 そう、こいつは典型的純血主義者!

 

 

 そして私は穢れた血!

 

 

 ならば為すべきことは一つ!

 

 

 『惜しげもなく穢れた血と接触させる』のだ!!!

 

 

「なんということでしょう!マグル生まれの血がこんなにも付いちゃって!!」

「ああああああああああやめろおおおおぉ!!」

 

 エイブリーは逃げようとする!しかし、骨が折れているため動けない!

 結果、白目を剥いて気絶した。

 スリザリンの座席は、阿鼻叫喚に包まれた。

 そして。

 

『えー⋯⋯⋯⋯勝者、リリー・エバンズ⋯⋯?』

 

 ジャッジメントが下された。

 

 

 

 

*****

 

 というような感じで勝ったけど、あれから私は医務室にいる。

 エイブリーから食らった魔法。

 その傷が塞がらないからだ。

 

「全く!なんて魔法なの!類似の魔法もないし!」

 

 ぷりぷりと怒るマダムポンフリー。色々な薬品を使って、ようやく傷が薄くなった。

 あーあ、反対呪文が分かればすぐに退院できたのになぁ⋯⋯と遠い目をしながらも、無事退院日を迎えることができた。

 傷はまだ多少痛む。

 

「マイハニー!怪我は大丈夫かい?」

「鬱陶しいなぁ」

 

 目をウルウルさせるジェームズ。だが、酷く心配していただろうし、あまり邪険にするのも良くないか?私は反省した。

 

「ん、あれ?」

 

 授業が終わり部屋に戻る途中で、私は忘れ物に気付いた。教室に本を置いてきてしまったようだ。適当に会話を切り上げて引き返すことにした。

 そして、こういう一人のときに限って絡まれるんだよなぁ⋯⋯。

 私はばったりエイブリーに出くわしてしまった。「うげっ」とあからさまに顔を歪ませるエイブリー。

 

「お前のせいで俺のローブがダメになったんだぞ!弁償しろ」

「えぇー、ローブの一枚くらい自腹でいけるでしょ?純血なんだし」

「お前マジでいい加減に⋯⋯!」

 

 ブチ切れエイブリーは杖を取り出した。が、視界の端に教師が映り込んだ瞬間、目にも留まらぬ速さで鞄に滑り込ませた。ほれぼれする杖捌きですね。

 

「ま。こんな暴力を使うなど下賤がやること。俺はすでに毒を蒔いた」

 

 エイブリーは黒い笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「──お前の血液が付着したローブを、ポッターに送りつけてやったぜ」

 

 

 

 

 私はあんぐりと口を開けた。

 私の血液付きローブが、あの変態の元にある、だと?

 ワンテンポ遅れて、理解した。

 

「ほあああああああぁぁぁぁ!?ちょあんた、何やってくれてんの!?」

「俺はただ渡しただけだろ?ま、あいつが『ナニ』やってるかは分からないがな⋯⋯」

「ナニを強調するな!!」

 

 こ、こいつ⋯⋯!

 私が嫌がるであろうことを的確に見抜きやがって⋯⋯!!負けた腹いせか?手段を選ばないのは流石だな、スリザリン生。

 そんな話を聞いて、慌てて寮に戻った私。談話室ではいつものように、あの四人組が駄弁っていた。

 私はずかずかとジェームズに近寄った。

 

「エイブリーからローブ、貰ったんですってね?」

「え、何のことかな⋯⋯?」

「おいプロンクズ(、、)

「貰いました」

 

 両手を上げるジェームズ。無防備な腹部に、私は容赦なく拳を突き刺した。が、あまり痛くなかった模様。ジェームズが恍惚とした表情になっただけだった。ガチできしょい。

 

「選べ変態。アバダorクルーシオ」

「どっちも違法だよぉ⋯⋯」

「あとローブどこやった?渡して」

「え?いやぁ〜⋯⋯」

「俺知ってる。トランクに仕舞ってある」

「パッドフットおおお!?」

 

 告げ口したシリウスは、ペロッと舌を出した。

 

「さらに言うと。プロングズは一人のときにローブを着て『今、僕はリリーの体液(意味深)でベトベトになってる⋯⋯!』って興奮してた」

「何で知ってんだよおおおお!!」

 

 何もかもを知リウスから聞かされた、衝撃の事実。

 私は真面目に、こいつをしょっぴいてやろうかと考えた。

 

「え⋯⋯やばいよ⋯⋯?」

「すごい、あのワームテールでさえも生ゴミを見るような目をしている」

「これもうなんかの法に触れてるだろ」

 

 ピーター、リーマス、シリウスからそれぞれ刺され、ジェームズは「う、うわあああああ!!」と発狂した。そのままどっかに逃げようとしたので、すかさずインカーセラス。

 

「再起不能にしてやる!!ルーモス(バルス)!」

「目が、目がああああああああぁぁぁ!!」

 

 ジェームズは目を押さえてのたうち回った。

 

 

*****

 

「正当な理由による魔法の行使なのに、なぜか私が減点されたんだけど」

「ははは⋯⋯しょうがないよ。ジェームズを医務室送りにしちゃったし」

「最早あれは医務室ではなくアズカバンに送るべきでしょ」

「それはそう。⋯⋯てか見たかった!話聞くだけでもおもろいのに」

 

 エマは大笑いしていた。他人事だと思って⋯⋯。

 ジェームズの変態っぷりは、児童書には書けないレベルに達している。ガチで頭おかしいよ。自首しろ。

 

「リリー」

「あ、セブルス」

 

 声を掛けられて振り向くと、挙動不審のセブルスがいた。何かを話したそうに、こちらを見ている!気を利かせたエマがそそくさと退散するのを待ってから、セブルスは気まずそうに私の肩を見た。

 

「その⋯⋯傷、残ってるだろう?」

 

 どうやらセブルスは、私の傷が気になって来たっぽい。確かに、好きな女の子を(間接的にとは言え)痛めつけてしまったわけだしなぁ。

 純情ボーイセブさんは杖を取り出した。

 

「ヴァルネラ・サネントゥール」

 

 歌うような魔法だった。

 「そうそう、反対呪文はこんな奴だったわねぇ」とふんふん頷いていたら、いつの間にか肩の痛みはすっかり消えていた。

 

「エイブリーがごめん⋯⋯まさか君に使うとは思ってなくて」

 

 そういうつもりで教えたわけじゃないと。まあそうでしょうね。

 私はすっとぼけて訊いてみた。

 

「この魔法、セブルスも知っていたの?」

「う⋯⋯うん。えぇっと⋯⋯切り裂き呪文を発展させた魔法⋯⋯らしい。スリザリンの先輩が言ってた」

「へぇぇぇ、そーなのねー」

 

 めためた嘘ついてて草。リリーは悲しいよ。

 とか思ってたら、矛先は私に向いた。

 

「ところで、リリーもこの魔法知ってたのか?」

「え?」

「いや、試合で使ってただろう?」

 

 ⋯⋯ほえほえ、ついに訊かれてしまったかぁ。

 リリーがその魔法を知っているのはおかしいのよね、確かに。

 適当に誤魔化そう。セブルスも嘘ついたし、おあいこだな。

 

「知らなかったけど、エイブリーが使ったのを見て真似しただけよ」

「そんな一瞬で覚えたの⋯⋯?」

「ワタシ、テンサイダカラネ」

 

 頼む、もうツッコまないでくれぇ!

 そう願ったお陰か、セブルスはくすっと笑った。

 

「知ってる。リリーには魔法の才能がある。それに頭もいい。まさかの方法でエイブリーを気絶させたし。正直、笑った」

「笑いを提供できて何より」

「⋯⋯実を言うと、エイブリーは偶に魘されているんだ。心に深い傷を負ったみたいで」

 

 ざまぁ。ジェームズを使って復讐なんてするからだぞ。

 余程悪どい笑みを浮かべていたらしく、セブルスは若干引いていた。

 

「⋯⋯リリー、変わったね」

「そうかしら」

 

 とぼけつつ、脳内を駆け巡るあれこれ。

 あれ⋯⋯?これ、私も児童書に相応しくないキャラなのでは?

 リリーは、真実に気付いてしまった!!

 

「やっぱり、ポッターのせいだよな」

「ん?あー⋯⋯」

 

 謎にジェームズのせいにされてて草。だが、この流れに乗るっきゃない!

 私は力強く頷いた。

 

「そうなの!私のキャラがブレてるのは全部あの変態のせいよ!」

 

 決して、私が元から奇人だったわけじゃないのだ。そう、そういうことにしよう。

 セブルスはスクッと立ち上がった。

 

「ちょっとポッターを殺ってくる」

「いきなりスギィィ!?でもいいわよ!それいけスネイプ」

 

 変態死すべし慈悲はない。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。