【完結】リリー・ポッターの存在否定   作:夜風ミシェル

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08.二人は純血

 

 来たるクリスマス休暇。

 私はペチュニアと一緒に、クリスマスケーキを買いに来ていた。

 ペチュニアは上機嫌である。何だかんだ、リリーのこと好きだもんねー。私は微笑んだ。

 

「ケーキどれにする?」

「そうねぇ⋯⋯」

 

 ふと、お菓子の詰め合わせセットが目に入った。

 ⋯⋯よし、セブルスに渡してあげよう。

 

 

 

 

 夜。

 家を抜け出した私は、いつもリリーとセブルスが話していた集合場所に向かった。

 すでにセブルスはいて、私を見つけると嬉しそうに手を振った。

 

「リリー!」

 

 う、眩しい⋯⋯!これが恋の力か。

 セブリリやっぱり良いよなぁとかなんとか思いつつ、私はお菓子を渡した。

 

「はい、これ。ケーキは長持ちしないけど、これなら少しずつ食べられるでしょ」

 

 スネイプ先生の親が、クリスマスにスイーツを買ってくれるような人ではないと知っている。ここはリリーさんが祝ってあげよう。

 

「メリークリスマス、セブルス」

「ああ、メリークリスマス」

 

 顔を綻ばせるセブルス。

 暫くは適当に喋っていたが、そろそろ私は帰らねばならない。話を切り上げようとしたとき、セブルスに腕を掴まれた。

 酷く真面目な顔つきだ。

 

「またホグワーツに戻るとき、一緒に列車に乗ろう」

「え?それはいつものことでは」

「そうなんだが⋯⋯絶対だぞ。あの柱を超えた先で待ってるから」

「はい」

 

 私は首を傾げつつも了承した。

 

 

 

*****

 

 朧げに、誰かの姿を見た。

 

 それは何か話しているけれど、声は上手く聞き取れない。ただ、私はなぜか驚いたような気がする。

 

 取り出される杖。

 

 最後の言葉だけは、はっきり聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

『オブリビエイト』

 

 

 

 

 

*****

 

「⋯⋯おあ?」

 

 私は覚醒した。

 何か夢を見たような気がするが、綺麗さっぱり忘れた。とりあえず、ぬくぬくした布団に潜るか⋯⋯と惰眠を貪ろうとしたところで、はっとした。

 

「ああ、今日で冬休み終わりだ⋯⋯」

 

 私はぐぐぐっと伸びをして、それから服を着替えた。

 駅までは、父が車で送ってくれる。付き添いのペチュニアはすでに起きていて、まだぼんやりしている私を見て笑った。

 

「休みボケしないでよね」

「うーん⋯⋯何か変な夢を見たのよねぇ」

 

 なんだったかなぁ、うーむ⋯⋯。妙に引っかかる。

 そんな感じでぼやっとしていたからだろう、駅に向かう途中で、私は杖を忘れてきたことに気付いた。

 さぁっ、と血の気が引く。

 

「おおおお父さん!今すぐ家に戻って!忘れ物した!!」

「え!?」

「何やってんのよリリー!」

「ファァァァァァァァァ⤴︎」

「リリーが壊れた!!」

 

 一家揃って慌て出す。冷静に考えてみれば、後からフクロウ便で杖を送ってもらうのが良かったのだろう。しかし、そんなこと思い付かないのがこの私なんですよねー。

 杖を取りに戻って、法定速度ギリギリで車をかっ飛ばす。

 駅に着いた頃には、列車の出発時刻ジャストだった。

 うわわわわわわ〜と叫びつつ、荷物を列車に載せて私も飛び込む。その真後ろで、列車のドアが閉まった。

 

「あ、危なかった⋯⋯」

 

 ぜえぜえと肩で息をし、落ち着いた頃にようやくセブルスのことを思い出した。待ち合わせ場所にはいなかったし、先に列車に乗ったのだろう。申し訳ないことをした。

 セブルスを探そうと思ってコンパートメントを見て回っていたら、エマたちに出会った。人数が多いので、二つのコンパートメントに分かれている。

 

「あ、リリー!良かった、乗ってたんだね」

「危ないところだったけど、何とかね」

「さあハニー、僕の膝の上においで⋯⋯!」

 

 相変わらずきしょいジェームズは無視して、私はリーマスとピーターがいる方のコンパートメントに座った。セブルスを探さないといけないのは分かっているけど、流石に足が死にそう。休憩したい。

 

「珍しいね、リリーがそんなに慌てるなんて」

「杖を忘れてきちゃってねー⋯⋯。もう疲れたわ」

 

 水を飲みつつ話す。

 まずい、一度座るともう立てないぞ。終わった⋯⋯と口から盛大なため息を吐き出した。それを見たピーターが言う。

 

「歳だね」

「え?」

「え?」

「⋯⋯え?」

 

 微妙な雰囲気になったあたりで、突然列車が止まった。つんのめって、鼻を強かに打つ。

 

「痛ぁーい。何よ!」

 

 鼻頭を押さえつつ、私はコンパートメントから頭だけ出して様子を窺った。同じように、キョロキョロする生徒が多い。

 向かいにいるジェームズも顔を覗かせた。

 

「何だろうね」

「ええ⋯⋯ってあれ?エマは?」

 

 先程までいたはずのエマがいない。

 ジェームズは苦笑いした。

 

「百味ビーンズを食べてトイレに駆け込んだ」

「ああ⋯⋯」

 

 何か良くない味のものを食べたのだろう。いい加減学習してほしいところだ。

 列車が動き出す気配はない。

 

「まずは先生に連絡しましょうか。エクスペクト・パトローナム」

 

 杖先から真っ白な光が放たれる。

 それは徐々にまとまり、フクロウの形をとった。

 私の守護霊だ。

 

「『メーデー、メーデー、メーデー。列車が急停止しました。原因は不明です』⋯⋯伝言よろしくね」

「⋯⋯いや⋯⋯え?何ぬるっと守護霊出してんの!?」

 

 「は?」と私は眉を吊り上げた。

 

「言ったじゃないジェームズ。『アズカバンの職員になるために練習する』って」

「覚えてるけども!」

 

 私はパンパン、と手を叩いて話を遮った。こんなこと話している場合ではない。

 列車の停止。

 そんなの、嫌な予感しかないわよね?

 私はちら、と未来のルーピン先生を見た。⋯⋯ま、ディメンターではないだろうけど。

 エマの席には、鞄と杖が放り出されている。つまり、エマは今魔法を使うことができない⋯⋯。

 危険すぎだ。

 

「行くわよ、トイレに」

 

 私は歩き出した。ジェームズたちも着いてこようとしたが、流石にこんな大人数でトイレに押しかけると邪魔だ。あとエマがビビる。

 結果、ジェームズと私でエマを迎えに行くことになった。

 トイレは最後尾にある。

 いくつかのコンパートメントを通り過ぎると、ジェームズが顎に手をやった。

 

「おかしい。スリザリンの奴らが一人もいない」

「言われてみれば」

 

 確かに、スリザリンがいない。見れども見れどもグリフィンドールやハッフルパフ、レイブンクローの生徒ばかりだ。偶々⋯⋯というよりは、作為的な何かを感じる。

 そんなことを思っていたら。

 

「リリー!」

「え、あ、セブルス?」

 

 セブルスが後方車両から走ってきた。安堵の表情で、私の腕を掴む。

 

「言っただろう!?どうして僕と一緒に乗らなかったんだ」

「ごめん⋯⋯。忘れ物して引き返したら、時間過ぎてた」

 

 真面目に謝ると、セブルスはふるふると首を振った。

 

「でも会えて良かった。さぁ、僕のコンパートメントに行こう」

 

 どこか焦った様子のセブルスに、ぴんときた。ジェームズと顔を見合わせてから問い詰める。

 

「セブルス、知っているんでしょう。──どうして列車が停まったのか」

「おい、話せよ」

「⋯⋯」

 

 セブルスは無言を貫いた。話す気はないらしい。

 くっ⋯⋯。やるしかないのか、あれを!

 私はセブルスの手を握った。そして、腰を屈めて上目遣いになるように調整する。

 

「お願い⋯⋯セブルス」

「なっ⋯⋯!」

 

 セブルスは一瞬で耳まで赤くなった。ふっ、リリーフェイスでこんな可愛い仕草をしたらイチコロさ!

 リリーの可愛さに、セブルスの思考は停止。

 セブルス・チョロイプは口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「──この列車に、死喰い人が乗り込んだ」

 

 言い終わるのと同時に、列車が大きく揺れた。

 

「おわっ!?」

 

 足元が覚束ない。倒れ込みそうになったのをジェームズが引っ張って助けてくれた。

 

「大丈夫!?」

「ありがとう⋯⋯。今の揺れは?」

「⋯⋯多分、死喰い人が魔法を放ったんだろう」

 

 淡々と告げるセブルス。その胸倉を、ジェームズが掴む。

 

「おい!お前知ってたなら何で止めなかった!」

「⋯⋯別に殺しはしない。それがあのお方の意向だ」

「死ななきゃいいって問題じゃないだろ!」

 

 それはそう。

 私ははっとした。

 

「そっか、スリザリン生を見なかったのはこの襲撃を知っていたからね?被害を受けないように、どこかの車両で固まっているんだ」

「そうだよ。だからリリー、早くここから離れた方がいい。ここは危険だ!」

「⋯⋯私だけ無事なら、それでいいの?」

「ああ」

 

 セブルスは即答した。

 こ、こいつ⋯⋯私にも友達がいるってこと、忘れてないか?

 

「これはまごうことなきセブカス・スネイプ!」

「セブカ⋯⋯え?」

「そういうとこだぞスネイプ先生ェェ!」

 

 私は腕を振り回した。セブルスの手が離れる。

 私はセブルスを睨んだ。

 

「私はエマを迎えに行く。セブカスさんは自分のテリトリーに戻ればいいんじゃない?」

 

 セブルスはかなりショックを受けていた。だがもう知らん。

 私は振り返ることなくエマのいるトイレに向かった。

 セブルスが着いてくる気配は、なかった。

 

 

 

*****

 

「エマー、いる?」

 

 私は個室トイレのドアを強く叩いた。程なくして、エマの弱々しい声が聞こえてくる。

 

「いるよー、リリー⋯⋯。どうしたの?」

「死喰い人が襲撃に来たっぽい。早く出てくれ」

 

 ジェームズが急かすと、エマは「え無理そう」と即答した。

 デリカシーのないジェームズ、それでも急かす。

 

「早くしてくれ!杖も持ってないんだろう?」

「急かさんといて!余計落ち着かないから!だって────大、だよ!?」

「恥じらいを持てエマ!」

 

 私は叫んだ。何だ、この恥じらいのない返しは!?流石のジェームズも、これには気まずそうだ。

 あーもう!こんなアホな会話してる場合じゃないのにーーー!!

 とか思ったら、どこかで悲鳴が上がった。続けて、何かを唱える声。⋯⋯なるほど、もう死喰い人は進撃してるわけね。

 私はドアに手を当てた。

 

「よし分かった。あなたの安寧のトイレは、私たちが守るわ!」

「え、う、うん⋯⋯?」

 

 戸惑うエマを他所に、私とジェームズはトイレの車両から出た。

 遠くで、真っ黒のローブに身を包んだ集団が見える。

 杖を構える。

 

「「エクスペリアームス!」」

 

 二人分の魔力で、死喰い人は派手に吹っ飛んでいった。よし、とガッツポーズする。

 

「この調子で、死喰い人をトイレから引き離すわよ!」

「合点承知!」

 

 私たちはジャンジャン進む。だが、死喰い人の数は段々増していくばかりだ。魔法が追いつかない。幸いなのは、ベラトリックス姉貴がいないことかな?流石にこんなところで戦力は使わない模様。

 

「インカーセラス!」

 

 私たちとは反対側⋯⋯つまり、死喰い人を挟んで向こうにいる人が、魔法を放った。

 私は名前を呼んだ。

 

「シリウス!」

「おう!来たぜ」

 

 リーマスとピーターもいた。二人とも息が荒く、いくつかの戦闘をこなしてきたことが分かる。

 シリウスは拘束した死喰い人を窓から放り投げると、近くにいた下級生に優しく微笑む。

 

「もう大丈夫だ」

「は、はい⋯⋯!」

 

 女の子は顔を真っ赤にした。こういうのがナチュラルにできるから、シリウスはモテるんだろうな⋯⋯。

 助けはいつ来るんだろう。ゴキブリのように湧く死喰い人を見ながら、私は内心焦っていた。

 率先して戦うジェームズとシリウス。だが、段々と疲れを感じてきたのだろう、しんどそうだった。まだ学生だし、当然だ。

 死喰い人の一人が、手近のコンパートメントを開けた。そして杖を振るう。

 

「クルーシ」

「プロテゴぉ!!」

 

 私は力の限り叫んだ。おーい、何禁じられた呪文を使おうとしてんだ。すぐさま無言で石化魔法を放ち、無力化する。

 手が痺れる。先ほどの「クルーシオ」、威力が半端じゃない。

 

「リリー、痛むのか?」

「大丈夫よ、シリウス」

 

 言いながら、唇を噛む。これではジリ貧だ。何か手はないのか──そう思いながら、シリウスの顔を見たときだった。

 私の中に、天才的発想が舞い降りた。

 

 

 そうやん、シリウス、純血やん。

 

 

「ちょっと体借りますね」

「は?」

「あ、ジェームズもほぼ純血か。よし来なさい」

「え」

「なんだろう、碌でもない作戦の気がする」

 

 失礼だなシリウス。

 私は二人の背中を押しながら、列車の中を進んだ。

 ソノーラスで声を響かせる。

 

「ここにいるのはマグル生まれよ!私は逃げも隠れもしない。かかってきなさい」

 

 堂々と宣言すると、他の生徒に手を出そうとしていた死喰い人が、一斉に私の方を見た。

 

「死にたい馬鹿がいるな」

 

 死喰い人の一人が、杖を向ける。

 シリウスを突き出して、私はにやりと笑った。

 

「私の前にいるのはまごうことなき純血、ブラック家の長男、シリウス・ブラックよ!いいかてめぇら、純血に傷をつける覚悟のある奴だけ私に魔法を撃ちなさい!」

 

 

 

 この作戦は。

 

 

 名付けて。

 

 

 

「『プロテゴ(物理)』!!!」

 

 勝手に盾にされたシリウスはブチ切れた。

 

「うおおおおおい!リリーは俺を殺したいのか!?あいつらに遠慮なんてないぞ!?」

「大丈夫よ!曲がりなりにもあなたは純血。万が一を危惧しないわけがない。⋯⋯あ、死喰い人の皆さーん!ついでにポッター家の息子もいますよー!!」

「あ、僕は添え物なんだ」

 

 

 

 一方、死喰い人。

 

「シリウス・ブラックは純血主義者じゃない。だったら多少傷をつけてもいいのでは?」

「何言ってんだ貴様!それはあのお方の意向に合わないだろーが!」

「あのお方の意向ってなんですか!」

「純血万歳!」

「でもシリウスは裏切り者だ!つまり敵、死ね!!」

「待て待て早まるなぁぁぁ!お前の首が飛ぶかもしれないぞ!」

「じゃあポッターはどうなんです?クルーシオしてもいいですか?」

「あいつは⋯⋯どうなんだ?聖28一族では⋯⋯ない⋯⋯し」

「いや!でもポッター家は限りなく純血だと言う学説も」

 

 

 混沌を極めていた!

 

 

 ヴォルデモートのアバウトすぎる思想のせいで、彼らはシリウスに手を出せない!ジェームズの方も諸説あるらしく、意見が割れる!

 そこに私とリーマスは、躊躇なくステューピファイした。何これ、最強戦術すぎる。

 いつの間にかホグワーツの生徒たちがワラワラ出現し、杖先に光を灯した。

 

「「「「「せんぱーい、頑張れ!!」」」」」

 

 注目されていることに気分が良くなったらしく、ジェームズとシリウスは見るからに機嫌がいい。魔法を撃つたびに格好つけて髪をファサッ⋯⋯とかしてた。みんなの応援が、力になるってか。⋯⋯プリ○ュア?

 狭い通路で、二人は器用にポーズを決めた。

 

「「二人は純血!」」

 

 何でその前口上を知ってんだ、という疑問はさておいて。

 私は高らかに述べた。

 

「ご唱和ください、死喰い人の皆さん。純血万歳!」

「じゅ、純血万歳⋯⋯?」

「声が小さい!純血万歳!」

「純血万歳!!(ヤケクソ)」

「純血バンザー──インカーセラス!!」

「うわああああああ油断したぁぁぁぁ!!」

 

 死喰い人、拘束。

 あとは助けが来るまで、この状態をキープしておけばいい。

 

 

 

 

 

 

 数秒後、ダンブルドア含む教師陣が到着。

 

 

 賞賛を受けるジェームズ&シリウス。

 ルーモスしまくる生徒たち。

 その影響で失明し、呻く死喰い人。

 念の為に死喰い人の杖をポキポキ折る私、リーマス、ピーター。

 

「⋯⋯死喰い人相手に、何やったんです」

 

 マクゴナガルは、深くため息をついた。

 

 

 




Q.死喰い人弱すぎじゃない?舐めとんのか?
A.たかだかホグワーツ特急を襲うのに、優秀な人材は派遣しません。
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