忘却の唄・消えかけのアルタイル   作:ツナ缶マン

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皆さん。
おはようございます。


Kapitel-1
01話-再会のプロローグ


―――夢を見た。

それは幼い頃にが体験した思い出で――――

 


 

 

 

 

「ゆきなちゃんはおうたがじょうずだね~」

 

「ありがとう。りさちゃんも上手だったよ!!」

 

「えへへ~ありがとー!!」

 

幼い頃に公園で演奏ごっこをしていた頃―――

私とリサ、そしてお父さんの3人が演奏ごっこをしていた。

ごっこ遊びが楽しくて笑う2人の少女の姿に微笑みを浮かべながら見守る父親。

そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆきちゃんもおねーちゃんもじょうずだね~」

 

そして、そこにはいつも1人(・・)の小さな観客がいた――――

 

ゆうくんもいっしょにやろう?」

 

「こんどはおねえちゃんたちといっしょにおうたうたお?」

 

「でも、ぼくはみてるほうがたのしいから、もっと2人のおうたをききたいな…?」

 

「「うん!!」」

 

2人の少女はたった一人の小さな観客の要望に応えるようにその少年の前で歌を歌う―――

 

今から見れば技術も何もない拙い歌でもその少年はそれを聞いて嬉しそうに笑い、それを見た私達も釣られて嬉しくなって笑いながら歌い続けていた。

 

「ゆきなちゃん!!たのしかったね~!!」

 

「りさちゃん!!またやりましょう!!」

 

「わかった!!そのときはゆうくんもいっしょだよ!!」

 

「うーん…2人みたいにじょうずじゃないけどいいの…?」

 

「うん!!みんなでいっしょのほうがたのしいわよ!!」

 

「やくそくだよ!!あっ!!シロツメクサがいっぱい咲いてるよ。いちばんおうたが上手だったおうさまのゆきなちゃんにかんむり、つくってあげるー!!」

 

ゆきちゃんはおんなの子だからじょうおうさまじゃない?」

 

「わたしが女王さまだったら、男の子のゆうくんがおう様ね!!」

 

そんな他愛のない日常を過ごし、それは何時までも続くと思っていたそれは―――

 

「ゆきなちゃん!おはよー!」

 

「あれ…?ゆうくんは…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆうくん…?それ…だれ?」

 

「えっ…?」

 

その言葉に聞いた私は視界が歪みだし、そして地面にそのまま崩れ落ちて――――

 


 

 

 

 

 

「朝……。また…あの夢…」

 

気が付けば部屋に差し込まれた朝の陽ざしを感じながら私は目を覚ますと、何気なく呟きながら気怠さを感じる身体を起こしてから見ていた夢のことを思い出していた。

 

 

 

 

私が幼い頃に父さんとリサの3人で演奏ごっこをしていたこと。

リサも父さんも3人で演奏ごっこをしていたことを話していたことも覚えている。

 

でも、私達の演奏ごっこを見ていた観客の”あの少年”は誰の記憶にも、どこの記録にも一切残っておらず、私の記憶を除いてこの世界から消えてしまった。

 

 

 

気が付けば一緒に過ごしていた何倍もの時間が流れていた。

時折、あの思い出は私の記憶違いだと思ったことがあったが、あの記憶の全てが実際に体験していた現実のものだったと私の中のナニカが訴えかけてくるかの様にあの頃の記憶が夢に出てきていた。

 

 

 

 

 

ユウユウ…。大丈夫…忘れてない…」

 

他の皆の様にあの少年の事を忘れないように、額に手を当てながら夢に出てきた少年の名を何度も繰り返し呟いて自身の記憶に刻み込み続けていく。

 

「私以外の誰もあの子のことは誰も覚えていない…。でも、私は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私”だけ”はちゃんと覚えているから…」

 

そう自分に言い聞かせて私、湊友希那はベッドから降りると、そのまま身支度を整えた私は久方ぶりにCiRCLEで行うライブのために家を出て歩き出す。

 

 

 

 

 

 

そして、その目的地には見慣れた面々が顔を揃えていた。

 

「友希那~!!おはよ~!!」

 

「湊さん…おはようございます…」

 

「えぇ…おはよう。あこは?」

 

「湊さん。宇田川さんは羽沢さんと一緒にコンビニにお菓子を買物に行きましたよ。すぐに戻ってくると思いますが…」

 

「そう…。遅刻じゃないのね…。あこが来るまで待ってましょうか」

 

「いや、一番最後に来た友希那が言えることじゃないでしょ…」

 

CiRCLEに着いて早々にあこがいないと思ったが、どうやら羽沢さんと買い物に出かけているらしい。

リサが私に何か言っているが、待ち合わせの時間には間に合っているから問題はないと聞き流してあこが来るのを待っていた。

 

「あっ!!あこ達だ…ってあれ?」

 

 

 

 

 

 

「見たことありませんが、知り合い…でしょうか?」

 

「私も見たことありませんね…」

 

そして、少し経ってから買い物袋を持ったあこ達が戻ってくる姿を見つけたリサが声を挙げる。

だがあこはリサ達が見たこともない人も一緒にいるらしいが、私はあこ達がいる方向に背を向けているために顔が見ることが出来ずにそのままあこの方へと振り返ると――――

 

 

 

 

「すいません。わざわざ…ぶつかったのはこっちなのに荷物まで持ってもらって…」

 

「いえ、大丈夫ですよ。こっちも帰ってきた街がだいぶ変わって迷ってしまってたので…」

 

「帰ってきた…?」

 

「小さい頃に住んでたんですけど…」

 

「へぇ~!!そうなんですね!!」

 

 

 

 

 

 

 

「荷物を持ってもらってるみたいですが…?どういう関係なんでしょうか?」

 

「…っ!!」

 

あこと羽沢さんの2人と一緒にいたのは荷物を抱えた1人の少年―――いや、もう青年とも言えそうな男。

皆が不思議そうに視線を向けていたが、私の中にあったのは不思議ではなく驚きの感情に埋め尽くされていた。

 

だってあの男は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの男性…今井さんと雰囲気が似ていませんか…?」

 

「えっ?アタシ?」

 

「そう言えば…髪とか目元がそっくりですね。兄弟と言われても納得してしまいそうです」

 

「紗夜~アタシは一人っ子だよ?」

 

「っ…!!」

 

「友希那?どうしたの…?」

 

紗夜や燐子が言うように彼は軽くウェーブのかかった茶髪に金にもオリーブ色にも見える不思議な瞳は正しくリサの持つ物と同じで――――それは私の夢に出てきた少年と全く同じものだった。

 

リサは紗夜に兄弟みたいだと言われて否定したことに言葉が詰まってしまったが、リサは私が驚いているのだと誤解していたが、余りにも驚きすぎて全く言葉が出てこない。

 

 

 

「あっ!!友希那さん!!」

 

「えっ…」

 

「どうかしましたか?」

 

そんな一方であこも私達の存在に気が付いたようで手を振りながら声をかけてきたが、あこの言葉を聞いて男の方も驚いた表情を浮かべていた。

羽沢さんが男が驚いていることに気が付いたらしく心配そうに男の顔を覗くのと同時に―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆき…ちゃん…?」

 

「えっ?なんて言いました?」

 

 

 

 

「…っ!!」

 

近くにいた羽沢さんは男が何を言ったのか全く聞き取れていないようだったが、私は彼の言った言葉に驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

彼は間違いなく私の顔を見て、私の名前を呼んだのだ。

そして、その呼び方をしたのは居なくなってしまったあの少年だけ――――

 

「ごめん。予定を思い出した…。悪いけど荷物はここまででいいかな?」

 

「えっ?はい。ありがとうございました…?」

 

彼は不味いと思ったのか、持っていた荷物を全て羽沢さんに押し付けるとそのまますぐに背を向けて足早にこの場を離れようとしていた。

 

「間違いない…」

 

 

 

「友希那?」

 

「湊さん?どうかしましたか?」

 

間違いない。

あの男は夢に出てきたあの少年で――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの日か皆の中から消えてしまったリサの弟だ。

そのことを理解した私はじっとしていることなど出来なかった。

 

「っ…!!待ちなさい…!!」

 

 

 

 

「湊さん!?」

 

「ちょっと友希那!?」

 

「「えっ…!?」」

 

逃げようとしたリサの弟の背中をすぐに私は追いかけ始めていた。

 

余りにも突然な私の行動にリサや紗夜ですら理解できず、その場で驚いたまま固まってしまったが、そんなことは気にしている場合じゃない。

 

彼には聞かなければならないことが山のようにある。

 

―――何故、居なくなってしまったのか?

―――何故、皆が忘れてしまったのか?

―――そして、何故このタイミングになって私の前に現れたのか?

 

 

 

その想いを胸に私は今までの人生の中で一番とも思える必死さでその背中を追いかけたが、この時の私は知る由も無かった。

 

この再会が悲劇の始まりになるということを――――





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