おたえ救済()始まります
いや、これ救われてるか……?
よく分からんなってきた…
まぁ、えやろ…ってことで投稿です。
「あ~!!早く練習した~い!!」
「香澄、落ち着けてっての…」
「さーやとおたえ、まだかな~」
「ふふっ……」
有咲の家の蔵では練習を心待ちにしてソワソワし始める香澄に呆れる有咲と微笑ましい笑みを浮かべるりみと蔵の中は何ともゆるい空気に包まれていた。
「ここです!!」
「ユウが開けなさい」
「了解…」
「この声!!さーや!!」
「おい、なんか友希那先輩みたいな声が聞こえたぞ…?」
「有咲ちゃんも聞こえた…?」
そんな中で彼女達の頭上から沙綾達の声が聞こえてきた事に香澄が反応を示していたのだが、その声と一緒に聞こえてきた友希那の声に有咲とりみの2人は完全に予想外の声に驚いていた所に沙綾を先頭に蔵の中へと入ってきたのだが―――
「そしたらソファーのとこに…」
「むっ……入口が狭い……」
「「えっ……?」」
「沙綾!?なんだその後ろの黒いのは!?って、なんでおたえが背負われてんだよ!?」
「市ヶ谷さん、こんにちは……」
「えっと…お邪魔します……」
「燈ちゃん!?てかマジで友希那先輩もいんのかよ!?って後ろの男も誰だよ!?」
沙綾の後ろの続いて蔵の地下に降りてきたデネブと彼に背負われているたえ。
その後ろからやってきた燈や友希那とユウの姿を見て怒涛のツッコミを入れてしまったのだが、そのツッコミで事態がどうこうなるものではなかった。
「うっ………さっ………ぁぁ……!!」
「おたえちゃん!?どうしたの!?」
「なんかすっごい震えてるよ!!」
「沙綾!!どうなってんだよ!?」
「おたえ、ジビエ」
「多分、ラパン」
「沙綾!!その男と一緒に韻を踏んでんじゃねぇ!?」
デネブにソファーに降ろされたたえはソファーの上で置かれた毛布に包まって震えだす。
その光景に驚く香澄達に沙綾とユウの2人が答えるとすかさず有咲のツッコミを入れるが、ツッコんだことと自分以上に香澄達が驚いているせいで冷静になった有咲は2人が言った言葉の意味をすぐに理解してしまった。
「周りくどい言い方を……って待て!!ジビエ!?それにラパンってウサギだろ!?まさかおたえがウサギ食ったのか!?」
「「えっ!?」」
「ぁぁああああああああ!?」
「この反応…マジっぽいな…てか、どうしてそうなったんだよ!?」
「さぁ?」
「連れてきたのに分かんないのんかよ!!」
有咲は沙綾達の周りくどい説明を改めて口にすると、その言葉を聞いた香澄達が驚くのを他所にたえが今まで以上に震えながら絶叫し始めるのを見て有咲は事の重大さを理解したが、ウサギの形をしたパンですら”可哀そう”と言う彼女がウサギを食べたと言う事に疑問が残っていた。
しかし、残念なことにその理由は沙綾達にも分からず、理由が分かるたえは喋れる状況ですらない。
「おたえ~!!しっかりして~!!」
「おたえちゃん~!!」
「ほら、落ち着いて…俺の作ったキャンディ食べるか?」
「ユウ、花園さんを治しなさい」
「ゆきちゃんは無茶ぶり過ぎるよ?」
「おにーさん…どうすれば………」
「これは精神科の領分だね。昔にある程度は修めたけど、どれも時間が掛かるからすぐには無理……あ~……いや…でもな~……」
そんな彼女をデネブが宥めている横では、この状況を放置することが出来なかった友希那はユウにとんでもない無茶ぶりをし始めるも、どれもこれもすぐに出来るようなものはないと思っていたのだが、ユウは何か含みのある反応を見せ始めたのを友希那は見逃さなかった。
「ユウ、何かあるのね?」
「あるって言うか……なんて言うか……」
「おにーさん…それって……いったい……?」
「このバカがウサギ食べた事が霞むレベルのトラウマを叩きつける」
「それ下手したらトラウマが1個増えるだけじゃねぇか!!」
「でも、このままよりはマシかも……」
「沙綾!?何言ってんだ!?」
ユウが考えた手段はウサギを食べた事を吹き飛ばすような恐怖を植え付けるというとんでもなく荒っぽい手法。
その方法を聞いた有咲は何度目か分からないツッコミを入れていたが、沙綾はあろうことかユウが言ったその手段に賛成し始めていた事にさらにツッコんで混沌とした空気になり始めていく。
「どうしよっか?」
「ちょっとユウ……私に振らないでほしいわ……」
「おにーさん……」
そして、このとんでもない案を出したユウは友希那と燈に案を求めるが、視線を向けられた2人は戸惑っていた。
ユウの案は確率自体は低くても成功すれば問題ない。
仮に大失敗してユウに対してトラウマで以前の紗夜の様に彼に恐怖することになったとしてもゼロノスの変身の代償でいつかは忘れ去られてなかったことになる。
それだけを考えれば完全なローリスクハイリターンの案ではあるが、それはユウの精神衛生と言う一番大事なものが欠落した方法だった。
そして、この事を理解している友希那達は素直にその案に乗ることは出来ないが、却下しようにも納得させられる理由が浮かばず――――――
「ユウの好きにしたらいいわ…」
「えっと……私も……」
「分かったよ。ごめんね2人とも」
積極的に賛成できない友希那達は苦々しい表情でユウに全てを委ねることにした。
そんな2人を見ながらユウは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべて彼女達に謝罪の言葉を入れると、荒療治の為の準備を始めることにした。
「沙綾ちゃん、悪いんだけどあのバカのことについて軽く教えてくれる?」
「おたえのことですか?えっと…12月4日生まれで…私達のバンドのリードギターで…」
「あ~………。うん。市ヶ谷さん、お願いできます?」
「なんで私の名前を知って…って友希那先輩が呼んでたな…一応聞きますけどどう言ったことが知りたいんですか?」
「プロフィール情報がいいですね。ウサギを飼ってるってのは聞いたけど、それ以外はジャージ着てる所から運動が好きなって推測が出来るくらいしかなくてですね……」
「あ~…そう言う事ですね……」
たえの情報を聞き出そうとしたユウだったが、最初に答えた沙綾はたえの事を話してはくれたが誕生日やバンドの立ち位置など聞いても今の状況では全く役に立たない。
しかし、それを沙綾に直接言う事を憚ったユウは聞く対象を有咲にシフトすると、名前を呼ばれた有咲はちゃんと欲しい情報について確認をとってから自身の中で簡単に纏めてからそれをユウに伝え始めていく。
「おたえの性格はマイペースでかなり天然入ってます」
「それは分かります。趣味嗜好については?」
「そうですか……趣味はランニングと風呂で、食べることが好きで汁粉と肉…特にハンバーグが好物ですね」
「……了解です。それで充分です」
たえのプロフィール情報を聞き出したユウは情報はこれで充分だと告げてから、素早くスマホを操作する。
そして、ユウはその指を止めてから軽く肩を回す仕草をみせながら、有咲に最後の確認を行っていた。
「最後に確認しますけど、ケガさせない程度に荒っぽくやりますけどいいですか?」
「先に聞いておきますけど、おたえにどんなことをするんですか?」
「話を聞くなら何もしないですけど、最悪の場合は逃げられないように髪を掴んでから壁に抑えつけてからちょっとお話します」
「ユウ!!暴力はいけない!!」
「デネブさん、髪の毛が数本抜けるのは見逃して欲しいけど 絶対にケガはさせないから」
「……分かりました」
「……怪我しそうになったら全力で止めるからな」
「了解。悪いけど、戸山さん達をあのバカから離してもらってもいいですか?」
「沙綾…」
「うん……」
ユウがやろうとしていることを聞いたデネブがたえの元から離れて彼を問い詰めるが、ユウはそんなデネブにケガをさせないと言っていると有咲がユウの行動に許可を出して香澄達の元へと歩き出すと2人で香澄の脇を抱えて後ろへ引き摺り始めていく。
「ちょっと有咲~!!沙綾~!!」
「いいから…」
「お前はここでじっとしてろ!!りみも少し離れてろ」
「えっ……うん……」
「ふぅ……おい……」
「うさっ……うさぎが…うさぎを……っ!!」
「ちっ……やっぱりこうなるか……」
香澄が沙綾と有咲の2人がかりで引き剥がされ、りみも言われた通りにたえから離れていくのを見たユウはたえの元へと歩み寄り、深呼吸をしてからたえに話しかけた。
しかし、たえはユウの言葉に耳を貸す様子もなく、自分がやったことに恐怖して毛布の中で震えながら譫言を零すのみ。
これではどうしようも無いとユウはたえが包まっていた毛布を強引に剥ぎ取ると、宣言通りにたえの髪を根元から掴むとそのまま壁に彼女を押さえつけていた。
「ひっ……!!」
「……お前、好きな肉食っただけで何泣いてんだよ」
「うぅ……」
「ちょっと!!おたえ泣いてるよ!?」
「「……」」
たえは髪を掴まれる痛みに壁に押さえつけられた状態で無表情のユウに睨まれる。
自責の念に狩られていただけだった状態だったが、そこから更に痛みと拘束されてしまったことで感じる恐怖に悲鳴を上げながら号泣していく。
その状況に香澄が声を挙げるも他の面々は余りの迫力に完全に動きが止まると、そんな状況でユウは残酷な現実を叩きつけていく。
「生きるっての言うのは他の誰かの命を喰らうってことだ……」
「はぁ……!!はぁ………!!」
たえはユウから突き付けられたその言葉を聞いて呼吸が乱れていくが、そんな状況の彼女にユウはトドメの言葉を口にしていた。
「直接だろうと間接だろうとな……」
「っ……!?」
そう言いながらユウはスマホの画面を見せつける。
周囲からは何を見せているのかはまるで分からないが、画面を見たたえはみるみる顔が真っ青に染まっていき――――
「「おたえ!?」」
「おたえちゃん!?」
彼女はユウに押さえつけられた状態でそのまま意識を手放してしまった。
それを確認したユウはそのままソファーの上に彼女を寝かせると香澄を先頭にりみと沙綾がたえの元へと駆け寄っていくのと入れ替わるようにして彼女から離れていくと、無表情から苦笑いに変えていた。
「うん。荒っぽいけど仕方ないね…」
「話し方とか表情とかも怖すぎるわ!!…そういえば、おたえに何か見せてたけど…何見せたんですか?」
ユウはやったことに対して思ったことを口走ると、すかさず有咲がツッコんだが仕方ない。
あんな事をされたとなれば自分だって号泣する自信しかない。
それを仕方ないの一言で済まされれば、声の1つや2つを上げたくもなるが、頼んだ有咲としてはそれ以上追及することは出来ずにモヤモヤとした表情になっていくものの、ユウがたえに向けたスマホのことが気になってそこに話をすり替えると、彼は有咲にだけ聞こえる様な小さな声で見せたのモノの正体を伝えていた。
「生きた魚を捌く動画」
「おいっ!!メンタルにダメージある状態でみせるもんじゃねぇだろ!!」
「屠殺するシーンを見せなかっただけまだ温いし、和奏さんの部屋の惨状に比べたら温いよ」
「そう言う問題じゃねぇ!!」
「アマゾンを狩って食うのに比べたらマシだよ」
「アマゾン?南米で狩りでもしてたのかよ!?てかそんなのを基準にすんな!!」
「おにーさん?何を見せて―――」
「高松さん。絶対に聞かない方が良いわ。花園さんが起きるのを待った方が良いわね…」
ユウはたえに見せたのは魚を捌く動画。
流石にメンタルにダメージがある人間に見せるモノではないとそれを告げられた有咲は大声を上げてしまったが、周囲の面々には何を見せたのか全く聞き取れなかったものの聞いたら不味いと本能的な何かで察して誰も追及することもせず、たえが起きるのをずっと待つことにするのだった。
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