忘却の唄・消えかけのアルタイル   作:ツナ缶マン

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おはよーございます
前回は酷いことになりましたね…
えっ?これ以上に酷いことになるんですか!?
という事で投稿です


113-静かに彼女は狂いだす

「あっ………気絶しちゃった………」

 

「ユウ、髪を掴んだ必要あったかしら?」

 

「うん。まぁ、多少だけど痛覚に訴えた方が恐怖心煽るからね」

 

「はぁ……それでも、やり過ぎだぞ………」

 

 

 

「怖かった…!!」

 

「あかん。うちもめっちゃ怖かったわ……」

 

「あはは……私も…ちょっと怖かった…かな……」

 

「私はおたえに凄んだ直後にすんなりキャラが元に戻ってることの方が怖えよ…」

 

ユウの手によってたえが気絶してした。

その光景を見た友希那、燈、デネブの3人は平常運転で彼を注意するような軽い扱いをしていたのだが、ポピパの面々はそんなユウの変わり様に恐怖を感じて蔵の中はなんとも重苦しい空気になっていくのだが――――

 

 

 

 

 

 

「そうだ。差し入れにクッキー用意したんですけど食べます?」

 

「俺のキャンディもあるぞ~!!」

 

「「食べます!!」」

 

「ユウ、私も食べるわ」

 

「ユウさん!!お皿用意しました!!」

 

「沙綾ちゃん、ありがとね。お店じゃないし普通に開けるだけでいいか…」

 

 

 

 

 

「えっ…?これは……」

 

「燈ちゃん……色々思うとこはあっても口にしないでくれ…てか、私が言うのもアレだけど、こいつらチョロ過ぎるだろ……」

 

香澄達は重苦しい空気になっていたことなどすっかり忘れ、ユウとデネブの2人が用意していたお菓子の存在に釣られてしまっていた。

お菓子に釣られる先輩達の姿に燈が困惑するも、彼女の横で有咲がそんな香澄達の姿に頭を抑えて呆れていた。

そんな空気の中でユウは作ってきたクッキーを取り出して、沙綾から受け取った皿へと雑に盛り付けてそれをテーブルの上に置いた

 

「はい。今日のクッキーは―――」

 

「「いただきまーす!!」」

「いただきます」

 

 

 

 

「おい…少しは我慢しろよ……」

 

「「おいし~!!」」

 

ユウはテーブルの上に置いたクッキーについて簡単に説明しようとしたのだが、その説明をする前に香澄とりみに友希那の3人が置かれたクッキーに最速で手を伸ばしていく姿に流石のユウもそんな3人にツッコみを入れるも、お構いなしにクッキーに舌鼓を打っていた。

 

「ユウさん、チョコチップクッキーですか?」

 

「流石にプレーンなのだと味気ないかな?って思ったからね。

それにしても……ゆきちゃんはお世話しないとダメなのは知ってるけど、これが高校生の姿か…?」

 

「あはは……それは……すいません……」

 

そんな中で沙綾はユウが作ったクッキーについて話を振る。

ユウがそれについて答えると、目の前でクッキーに頬張り始める香澄達の姿に呆れていると、そんな香澄達とユウの姿を見た沙綾は苦笑いを浮かべることしか出来なかった。

 

「有咲!!これすっごい美味しいよ!!」

 

「そうだよ!!このチョコめっちゃおいしいよ!!」

 

 

「分かったから、お前もりみも少し落ち着いて食えよ。リスみたいに頬っぺたパンパンにして呆れられてるだろ」

 

「そうだよ。香澄もりみも私達の分も残しておいてよ?」

 

「「はーい!!」」

 

香澄とりみが勢いよくクッキーを食べていたそんな2人に沙綾と有咲が釘を刺すと、それに子供の様な返事を返す。

彼女達からしたらよくある光景なのだろうが、その光景を見たユウは先ほどの有咲と同じ様に頭を押さえ始めていた。

 

「子供かよ……。いや、高校生は子供か…?」

 

「ユウ、どうしたんだ?」

 

「大丈夫だよデネブさん。俺のイメージしてる高校生の像が壊れていく音がするだけだから…」

 

「おにーさん……」

 

「ううん。燈ちゃんが子供って言ってる訳じゃなくてね…いや、年齢的には高校1年生は子供か…?でも、前に見た北沢さんとかあこちゃんの言葉遣いを考えるとやっぱり…うごごご…」

 

「あ~…あの辺と一緒にされたら子供だろ……。ってマジで美味いなこれ…えっと……」

 

「あっ、自己紹介してなかったですね。中島です。市ヶ谷さん」

 

香澄達の言動を見たユウはその余りにも子供染みた反応に自身の中で持っていた高校生イメージが崩れていくのを感じていた。

それを見たデネブと燈が心配そうにするも、ユウは燈よりも年上のあこやはぐみの言動を思い出して自分で更にイメージを崩してしまい唸りだす。

 

そんなユウの姿を見た有咲は何度目か分からないツッコミを入れてからクッキーの味に驚いてユウに話を聞こうとしたのだが、有咲は今の今までユウのことを話を聞いていなかった事を思い出して、なんて呼べばいいか悩み始めていた所でユウは有咲に始めて名乗った。

 

「どうも…それで中島さんは友希那先輩と燈ちゃんとはどういう…?」

 

「まぁ…遠縁の親戚です。世間一般で見たら他人レベルですけど、んで、あの黒いのは俺の同居人のデネブさん」

 

「へぇ~……世の中狭いですね」

 

 

 

「ふふっ……」

 

「沙綾ちゃん?どうしたの?」

 

「なんでもないよ。ユウさん、これ美味しいですね」

 

「……??」

 

「…中島さん!!」

 

「はい。中島です。どうしました?戸山さん」

 

「これ!!どこのお店のやつですか?」

 

有咲はユウと友希那達の関係を聞いて驚いた様子を見せると、それを見た沙綾が笑いながらクッキーを食べ始める。

そんな様子を不思議に思ったりみは首を傾げたが、そんな事を気にすることなくクッキーを頬張り続けていた香澄が食べていたクッキーをどこで買ったのかと聞き始めていたが、その答えは香澄には予想外の所から返ってきた。

 

 

 

「ユウ、今日のも美味しいわね」

 

「おにーさん。殆ど時間かかってないのに…」

 

「「「えっ……?」」」

 

 

 

「どこの店って…俺の手作りだけど?」

 

「「えぇえええええええ!?」」

 

「これ、お店みたいにおいしいですよ!?」

 

「はいはい。とりあえず、バンドの練習じゃないんだから静かにしないとね?」

 

友希那と燈がクッキーの事を口にした。

その言葉を聞く限りではまるでユウが作っているようにも聞こえて戸惑ったのも束の間、本人が自分で作ったと言った事に沙綾以外の3人は驚きの表情を浮かべながら声を挙げると、ゆうはたえが未だに気絶している状況下で叫ぶのは良くないと一般論と叩きつけたことで蔵の中は静まり返ったのだが、別の問題が残されていた。

 

「でも、どうするのかしら?花園さんが起きないんじゃ練習が出来ないじゃない」

 

「ゆきちゃん、だったら別の事をするだけだよ?」

 

「別の事……?」

 

 

 

ここに集まったのはバンドの練習とそれを見物するためだったが、肝心のたえが目を覚まさなければ練習をすることも出来ない。

そうなるとここに居てもどうしようもないのではないかとの友希那の指摘を受けるも、練習が出来ないならば別の事をすると言う言葉に友希那は疑問を感じたのものの一瞬にして悪寒へと変わる。

 

「ユウさん、先に勉強を―――」

 

「…私はこれで失礼するわ」

 

 

「失礼しないの。唯一の大学生。

高校の勉強はもうやったでしょ?あ~………燈ちゃん、ゆきちゃんに教えてあげて」

 

 

「分かりました」

 

「待ってちょうだい?なんで私が勉強を教えてもらう側なのよ?高松さんもそれに納得しないで」

 

しかし、それに気が付いたところで彼女はもう逃げられなかった。

沙綾が勉強と言う単語を出した途端に蔵から逃げようとしたのだが、ユウから逃げることが出来ずそのまま捕まってしまいそのまま勉強会が始まっていた。

 

 

「ユウさん、この数学なんですけど……」

 

「x^4+y^4=z^4となる自然数の組(x,y,z)は存在しない事を証明しろ…?

うん。高校生がこんなの出来る訳ないだろ…」

 

「そんなに難しい奴だったんですか…?」

 

「沙綾ちゃん、フェルマーの論文を読めって書いておけばいいよ?それとこんな問題を宿題にしてくる教師はぶん殴っても許されるから」

 

「えっ!?」

 

 

 

「ユウ、この問題、私も高松さんも分からないのだけれど?このsin(シン)?ってなんなのよ?」

 

「ゆきちゃん?それは三角関数のsin(サイン)だよ…」

 

 

 

「お菓子の作れて勉強も教えられるってどんだけスペック高いんだよ…」

 

「きっと凄い大学とか行ってたんだよ!!」

 

すらすらと沙綾と燈に勉強を教え始めるユウ。

そんな姿を見た有咲は思わずユウのことにツッコむと香澄が答える。

それなりに納得できる理由だったのだが、ユウはその香澄の言葉に苦笑いを浮かべて―――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん。学者に勉強ならったことはあるけど、大学どころか学校とか碌に通ったことないから」

 

「「「「えっ……」」」」

 

その衝撃的過ぎる言葉にポピパの4人は言葉を失ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、数時間の勉強会をした後ユウ達が蔵を後にした。

そんな状況でたえは―――

 

 

 

 

 

「んっ………」

 

「あっ!!おたえ!!起きた~!!」

 

「友希那先輩達が帰って30分も寝てたのか…」

 

「みんな?どうしたの?」

 

ユウ達が帰ってから少し時間が経ってから目を覚ますと、皆が心配そうにたえに視線を向ける。

しかし、視線を向けられている本人はその意味が分からずに首を傾げていた。

 

「おたえ?起きる前の事…憶えてるか…?」

 

「沙綾?……ウサギのお肉食べてショックで気絶したんだよね?」

 

「おたえちゃん、その…大丈夫?ウサギ飼ってるのに…」

 

彼女は沙綾から目を覚ます前の事を聞かれるとすんなりとそれに答えていた。

傍から見たらなんともない様に見えるが、ウサギを飼っている人間がウサギの肉を食べたと言う状況でこうなっているのはおかしい。

りみがあえてその事を尋ねるとたえは少しだけ落ち込んだ表情を見せてすぐに元の表情に戻っていた。

 

「うん。ウサギも好きだし、お肉も好きだよ。

可哀そうだったけど、お肉になっちゃったらちゃんと食べてあげない方がもっと可哀そうだもんね」

 

「……無理しないでよ?」

 

「沙綾、ありがと。練習は?」

 

「バカ。あんなのの後で出来る訳ないだろ」

 

たえの答えを聞いて沙綾が少し彼女の事を不審に思ったが、それを口にすることなく心配の言葉をかけると、たえは練習だと言い始めたが流石にそれは有咲に止められた。

 

「おたえ~。クッキー食べよ!!友希那先輩の知り合いの人が作って来てくれたの!!」

 

「おい、香澄落ち着け…おたえも涎出てるから」

 

「ティッシュ持ってくるね?」

 

「りみりん、ありがとね」

 

「おたえ、ちょっとじっとしてろ。髪の毛に砂がついてる」

 

こんな状況で空気を読まずに香澄がクッキーを一枚摘まんで彼女の口元へと差し出すとたえの口から涎が溢れ出し――――

 

「美味しそう……」

 

そう呟きながらたえの視線はクッキーに―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おたえ?クッキー見つめてどうしたの?」

 

「香澄ちゃんの指を見てた様な気がしたけど…」

 

「……なんでもないよ」

 

ではなく、それを持った香澄の()へと吸い寄せられていたのだった。




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