やっとシャベッタ!!
最初に出てきたときは……うん!!
色々と思う所はありますが、最新話投稿です
「ごめんね。手間かけさせちゃて」
「いえいえこの位大したことないですよ~。こっちが手伝ってもらってる側なので!!でも、荷物運んでも私と一緒にいてもらうって…」
「普通は部外者立ち入り禁止でしょ?それににゃむちゃん以外の人は知らないし…」
「あ~…それもそうですね~。私達はみんな高校1年生ですから緊張しないでいいですよ~」
にゃむの先導によってユウは彼女達の事務所に到着すると、彼女ががユウを中に入れる事の許可をもらってから荷物を事務所内に運び込みながら他愛ない会話をある一室の扉を開けて中へと入っていく。
「……」
「祐天寺さんお疲れ様です。おや?そちらの方?」
「ムーコとウミコおつかれ~。この人はお手伝いさんだよ」
「お手伝い…ですか?」
「………正確に言うならにゃむちゃんの隣に住んでる人の家政夫ですかね?」
にゃむが入った部屋の中には既に先客が2人が入口に反応を示した。
その内の1人がにゃむに挨拶をするとすぐに荷物を持ったユウの存在に気が付いて素性を聞かれるもユウは反応が少しだけ遅れてしまった。
その僅かな遅れに海鈴は不信感を強めていた。
「家政夫……?本当ですか?」
「そうなんだよ。掃除も料理もなんでも出来るんだよ~。このプリンも作ったものでさっき貰ったんだ~」
「……スプーンまでついてます…。ですが、買ったにしては箱にも器にもロゴが無いのは不自然ですね」
「だから作ったんだって!!ほら、1個食べてみなよ!!ムーコも!!」
「……うん」
ユウの存在を不審がる海鈴に対してにゃむは先ほど受け取ったお菓子を見せると、海鈴はそれをマジマジと見つめ始めて呟く。
そんな姿に思う所があったのかにゃむは入っていたプリンを海鈴ともう1人―――睦に突き出すと、素直に睦はそれを受け取って黙々と口に運び始める一方で海鈴はそれを受け取る素振りを見せなかった。
「……これ…何キロカロリーですか?」
「一応だけど、低カロリーの品を使ってるから100~130かな?少なくとも市販品よりはカロリー低いはずだよ」
「……では折角の好意ですから。いただきます」
「ウミコ気にするところそこ!?てか、ユウさんも普通に答えてる!?」
海鈴はプリンのカロリーを聞かれたユウはすんなりと答えると、納得したような表情をにゃむが突きつけたプリンを手に取っておもむろに口に運ぶとその口から思わず言葉が漏れてしまった。
「美味しいですね……」
「でしょ~?」
「祐天寺さんが威張るところではないと思いますが………えっと、名前を聞いていませんでしたね」
「そうですね。中島ユウと言います」
「中島さんですか…プリン美味しいです」
「ありがとね」
ユウが作ったプリンの味に驚いた表情を浮かべた海鈴に対して、自信満々に胸を張ったにゃむが彼女にツッコまれると海鈴はユウに視線を向けるが、名前をちゃんと聞いていなかった事を思い出すと、ユウは空気を読んで自己紹介をすると海鈴も一度スプーンを置いて自分達の紹介をすることにした。
「八幡海鈴です。Ave Mujicaではティモリスと言うステージネームでベースをやらせてもらっています。
そちらは若葉睦。ステージネームはモーティス。バンドのギターです」
「ステージネーム…?芸名みたいなのだったっけ?それにバンド名も初めて聞いたな……
にゃむちゃんにもステージネームってあるの?」
「私はアモーリスって言いま~す」
「ラテン語で月の海からだね。
恐怖の湖に死の湖、にゃむちゃんが愛の入り江かぁ……」
「「「…っ!?」」」
海鈴が自身と睦を紹介を終え、にゃむも自身のステージネームをユウに語る。
その言葉を聞いたユウは少しだけ考える様な素振りを見せるとその名前に思い当たる節を口にすると3人は名前を聞いただけで名前の由来を言い当てたユウに目を見開いて驚きを露にしていた。
ステージネームを今までAve Mujicaの名前を聞いたことすらない人物がそれを言い当てればそうなるのは至極普通の反応ではあったのだが、ユウはその反応に疑問を憶えていた。
「あれ?どうしたの?
「ステージネームを聞いただけでそこまで言い当てるとは……中島さんは博識ですね」
「ユウさん!!どうして知ってたんですか!?普通はラテン語まで知らないと思いますけど!?」
「あ~……宇宙が好きな人が居てね……。散歩しながらいつもとんでもない量の宇宙の話をされてたから」
ユウは自身が名前の由来を言い当てられた理由を聞かれると、言葉を濁しながらその疑問に答えた。
この答え自体は間違っていないのだが、そこには少しだけ情報が足りていなかった。
彼は実際の月を歩きながら教わっていたのだが、ユウはその言葉を飲み込んで誤魔化していた。
「後2人のはドロリスとオブリビオニスって言うんですよ~」
「悲しみの湖と忘却の湖ね…。にゃむちゃんの以外は日本語名はちょっと重たいね……」
「すっご…そこまで分かるの…?」
「私は月とかに詳しくないのですが、他にはどんなものがあるんですか?」
「湖って日本語名だと、幸福・喜び・善良・柔軟・贅沢とかあるよ。
にゃむちゃんの入江だと、熱・調和・信頼・栄光・虹とかかな?」
「へぇ~…」
「……」
「ムーコ?どうしたの?」
ステージネームの由来など他愛ない話をしていたが、このタイミングで睦が不意に立ち上がる。
その事に何かを感じたのかにゃむが彼女に声をかけると、睦は自身の荷物の中から何かを取り出すとそのままユウの方へと向かいだしていく。
「えっと…睦ちゃんだっけ?どうしたの?」
「これ……」
「…きゅうり?」
そして、おもむろに睦はきゅうりをユウに突き出した。
完全に予想していなかったその行動に流石のユウも困惑したが、この動きと今までの流れを思い出そうとした海鈴はその行動の意味を理解した。
「おそらくですが、きゅうりで何かを作って欲しいのでは?」
「うん……」
「いや、ムーコも言わないと分かんないし……」
「きゅうりね……流石に他の材料も道具も何もないから料理は厳しいかな…。包丁1本あれば飾り包丁くらいは出来るけど、部外者にそんなものを持たせるとかあり得ないし」
「……そう」
「今度機会があったらね?」
どうやら睦はきゅうりで何かを作ってほしかったらしいのだが、流石のユウもきゅうり以外に何もないここで料理することは出来ない。
それを伝えると睦は酷く落ち込んでしまったが、ユウがまたの機会にと伝えるとそれに納得したのか分からないものの無表情で頷いたのを確認して話を切り替えた。
「話を切って申し訳ないけど…仕事の準備はいいの?移動とかは…?」
「今日は雑誌の取材ですが、この事務所で行いますので」
「私はその後に、投稿動画の撮影がしますけどね~」
「雑誌の取材かぁ~…大変だね~」
ユウはこの後のにゃむ達の仕事を気にしていたのだが、どうやらこの場所で行う事になっているらしく何ら問題はないらしく、それを聞いて安心したユウは何とも気の抜けた言葉を返していた。
何事もなく終わればいいのだが―――
「そう言えば後の2人はまだ来ないの?」
「いえ、三角さんと豊川さんの2人は一緒に取材を受ける方々の対応をされています。もうすぐこちらに来るとスマホに連絡がありまして―――」
「…それ俺が聞いてもいい奴?」
「内容を漏洩しなければ大丈夫です。
今日の取材内容は”プロバンドの学生達の対談”と言う内容になってまして―――」
「ん………?」
海鈴の言葉を聞いたユウからは何事も無く終わる予感が一切消え、その代わりに一気に嫌な予感が身体中を駆け抜けていく。
学生のプロバンド。
その言葉だけである人物達の姿が頭を過って一気に体温が一気に下がっていくような錯覚を覚えていく。
しかし、学生でプロのミュージシャンをしている人間は彼が思い描いている人物達以外にも少ないがいるはず。
そんな希望的な事を考えていたのだが―――
「今日の対談相手はPastel*PalettesとRoselia で―――」
「絶望した!!」
その儚くて淡い希望は一瞬にして打ち砕かれ、次第に大きくなっていく絶望の足音が部屋の中に響いていくのだった。
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