忘却の唄・消えかけのアルタイル   作:ツナ缶マン

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お待たせしました
最新話ですが……

ちょいちょいおいしい思いはしてるはずなのに羨ましさが皆無なのはなぜなんだ……
可哀そうな主人公を憐れみつつも投稿です


137-絡みつく―――

RiNGのスタジオで祥子に今までの経緯を全て説明し直したユウは、燈と祥子と共にそよと初華の2人を病院へ連れて行き、そこでの検査を終えて着替えている2人を待合室で待っていたのだが―――

 

 

 

 

 

 

「あぁぁあああ………!!」

 

「祥子ちゃん……」

 

「RiNGでは完全に失言だったね」

 

「やってしまいましたわ……!!」

 

祥子はRiNGでの失言を思い出して、待合室のソファーに座りながら唸り声を上げていた。

それは祥子の実家にとってはバレてはならない秘密であり、いくら焦っていたとは言えどもそれを口走ってしまった彼女は自責の念に駆られてしまっていた。

 

「2人の関係について聞こえてたのは俺と燈ちゃんの2人だけで俺達が内緒にしてれば大丈夫だから……ね?燈ちゃん」

 

「そう……ですね……。祥子ちゃん大丈夫だよ……」

 

「燈……申し訳ありません。取り乱しました」

 

「ううん……大丈夫だから………」

 

だが、あの場面で本当に彼女の呟きが聞こえていたのはユウ1人だけであったが、その呟いた内容については燈も以前の事件の時に聞かされていたことでそこまでの驚いておらず、むしろ祥子を落ち着かせようと声をかけると彼女はそれで再起動に成功していた。

 

「後は2人の状態だけど、検査中に撮ったレントゲンとかCTを覗き見えた範囲では異常は見られなかったから良かったか………まぁ、要安静で経過観察は必須だけど……」

 

「……随分と詳しいですのね」

 

「まぁ、それなりには……」

 

ユウは覗き見た結果自体は悪くない物だと安堵していたが、そんな彼に祥子の視線が突き刺さるも彼はそれを意にも返さずに平然と受け流していると、検査を終えたそよと初華が待合室まで戻ってくると彼らを見つけた2人は満面の笑みで走ってきた。

 

「パパ、終わったよ!!」

 

「おにーちゃん……!!待たせてごめんなさい……」

 

「そこまで待ってないけど、安静にしなきゃいけないのに走っちゃだめだよ。とりあえずは問題なさそうだから安心したけど……待合室は静かにしなさい」

 

「「は~い……」」

 

「それといきなりくっ付くのは止めてくれる?」

 

「「それは嫌…」」

 

 

 

「このやり取りは慣れそうにありませんわ……」

 

「大丈夫だよ……」

 

子供に優しく叱るような口調で話すユウ。

それに答えながら彼にベッタリとくっつくそよと初華の姿を見た祥子は頭を抱えてしまうが、そんな彼女を燈が宥めるという知る人が見れば珍妙な状況に陥ってから少し経った頃、2人は診察室に通されて医師からの安静の指示を受けるとそのまま皆で病院を後にした。

 

そこまでは良かったのだが、ここから更なる問題へと発展していく。

 

「さてと後はそよちゃんと初華ちゃんを家に帰すだけだけど……」

 

 

 

 

 

「パパ!!家に帰ろ?」

 

「おにーちゃん……一緒に帰ろ……?」

 

「えっ……?」

 

 

「おにーさん……」

 

「うん」

 

「やっぱり分かってたんだ………」

 

このタイミングで互いが互いの家にユウを連れ帰ろうと互いに腕を引っ張り出す。

その状況を予想していなかった祥子は困惑の声を漏らすも、この状況を燈とユウの2人は完全に予想しておりどうしようかと完全に諦めの表情を浮かべていた。

 

そんな中で2人は互いにユウの腕を引いて自身の方へと引き寄せようと力を入れていく。

 

「パパ?私と一緒に来てくれるよね?お母さんがいつ帰って来るか分からないから」

 

「長崎さんの家には大人がいるでしょ…?私は祥ちゃんと2人だけで大人がいないから……」

 

「それ関係ある?」

 

「うぅ……!!あるよ……何かあった時に大人がいないと怖いから……」

 

「こっちも一緒だよ」

 

「「うぅ……!!」」

 

 

 

「さっきはそよちゃんの睨みで怯んでたのに今回は耐えてるね」

 

「おにーさん……?そんな暢気な……」

 

「おにーちゃん……一緒にいよ?ね?」

 

「パパ?私を1人にしないよね……?」

 

そよと初華は互いに自身の言い分をぶつけてユウを取ろうとしていたが、両者の言い分はそれぞれ大人がいないという同じ理由だったが、ここでそよが初華を睨みつけていく。

 

先ほどはこの睨みに怯んでユウの影に隠れてしまっていた初華だったが、今回はそれで引くことなく頬を膨らませてそよに可愛らしい睨みを返すと、ユウはその初華の行動に呑気な感想を口にして燈に呆れられてしまったが、そんな状況でユウの腕を引っ張る力は徐々に強くなり――――――

 

「おにーちゃん………おにーちゃん……おにーちゃん…」

 

「パパ………パパ……パパ…」

 

 

 

 

 

 

 

「おにーちゃん、おにーちゃん、おにーちゃん、おにーちゃん、おにーちゃん、おにーちゃん、おにーちゃん―――!!」

 

「 パパ 、パパ 、パパ 、パパ、パパ、パパ、パパ、パパ ―――!!」

 

 

「「ひっ……!!」」

 

「これ、どう転んでも地獄では?」

 

2人の目から光が消え、呪詛でも唱えるが如くユウのことを呼び始める。

その余りの迫力に燈と祥子の2人は小さな悲鳴を零しながらその恐怖を紛らわせるかのように互いに抱き合い始めるが、ユウからしたらどんな選択をしようとも待っているのは地獄以外の何物でもないことを悟ってしまい天を仰いてしまったのだが――――

 

 

 

 

 

 

「あなた達何してるのよ……」

 

「友希那さん……どうして……」

 

「俺が連絡したからだと思うけど、ゆきちゃんかぁ………望み薄かな……」

 

 

 

「燈も中島さんも失礼ではありません?」

 

「その通りよ」

 

このタイミングでユウ達の前に友希那が現れた。

 

が、普段の彼女は頼りになる時とならない時の落差が激しく、肝心な時にしか役に立たない。

 

そして、今は肝心な時ではないと考えていたユウは友希那に期待できない事を吐露してしまい、それを聞いた祥子は困惑の声を漏らし、友希那もムッとした表情を浮かべてしまった。

 

だが、ここまで来てくれた彼女にとりあえず意見を求めることにしたのだが――――――

 

「それでゆきちゃん、どうするの?」

 

 

 

 

 

 

「簡単じゃない。どっちかの家に集まればいいのよ」

 

「「あっ……」」

 

「それですわ…!!」

 

「「思いつかなかった……!!」」

 

 

「あなた達……」

 

あろうことか友希那からこの状況を万事解決できる妙案が飛び出したことにこの場にいた面々が驚きの声を挙げていたが、友希那としてはこんな単純なことに気が付いていなかったのかとこの場にいた5人にジト目を向け始めていた。

 

「とりあえず、どっちの家にする?」

 

「おにーちゃん、ごめんね…私の部屋だと6人で泊まるのは無理かな……」

 

「パパ、うちなら大丈夫だよ!!」

 

「……とりあえずそよちゃんのお母さんに話をつけないとかな。晩御飯の用意もしなきゃ…」

 

「ユウ、私も食べたいわ」

 

「では、私と初華は着替えを持ってまいります。燈も準備してらっしゃいな」

 

「私も……?」

 

「おにーちゃん、行こ!!」

 

「あ~……とりあえず一緒に初華ちゃんの家で荷物持ってから行こうか……道中で急変しても困るし……」

 

「パパ、私も一緒に行く…!!」

 

ユウは現実から目を背けようと遠い所に視線を向けると、初華の先導でそのまま彼女の家に荷物を取りに行く。

ここからも波乱が続くが、

 

 

「おにーちゃん、明日の下着なんだけど……こっちとこっち……どっちが好き?」

 

「初華ちゃんの好きな方にしなさい」

 

「……?これは祥ちゃんのだよ?私のも後で選んでもらうけど……恥ずかしいけど、おにーちゃんが好きなのがいいから……///」

 

「祥子ちゃん、そう言うのが……」

 

「初華!?何してますの!?止めなさい!!燈もそんな見ないでください!!」

 

 

「パパ!!私のも選んで!!」

 

「そよちゃんも自分で選びなさい!!」

 

着替えの準備するだけになのにユウの好みを聞いてきたり―――――――

 

 

「さてと、晩御飯の準備を―――――」

 

「パパ、お手伝いするね!!」

 

「おにーちゃん、一緒にやろ……?祥ちゃんも…」

 

「そうですわね…。手伝えることがあれば……」

 

「おにーさん、私も手伝ったほうが………」

 

「高松さん達は2人が安静にしているか見張ってなさい。ユウ、今の私は和食…角煮とか煮物の気分よ」

 

「煮物は時間かかるけど、圧力鍋なら時間そこまでかからないか…燈ちゃん達もそれでいい?」

 

 

 

「リクエストだけして手伝う素振りすらありませんの……!?」

 

年下組の夕食の手伝いを申し出る中で、年長の友希那はリクエストするだけで一切手伝う素振りすら見せない事に祥子がツッコんだり――――

 

「本当に食べただけで帰ってしまいましたわ……」

 

「さてと、お風呂だけど。医者にも言われたけど、頭を怪我した直後だから今日は体を拭く程度にして欲しいけど……」

 

 

「パパ!!拭いて!!」

「おにーちゃん、拭いて欲しいな…」

 

 

「2人とも……それは駄目だと……」

 

「燈の言うとおりですわ!!私と燈で手伝いますわ!!背中は私達でやりますから!!」

 

祥子が2人のトンデモ発言にツッコミを入れながら、入浴代わりに身体を拭き――――――

 

 

 

 

 

「どうしてこんなに私が色々と言わなければいけませんの!?」

 

「ツッコミが居て助かるけど、市ヶ谷さんのツッコミの方がキレがあるな…」

 

「中島さん!!あなたも変なことを言わないでください!!」

 

 

 

「パパ~、膝枕して~」

 

「おにーちゃん……膝枕して欲しいな……」

 

「はいはい……眠くなったら自分のベットとか布団にはいるんだよ?」

 

 

「はぁ…私は紅茶を……誰ですの!?この紅茶に砂糖を入れたのは!!甘すぎですわ…!!」

 

「祥子ちゃん、誰もいれてないよ……」

 

「あの3人が甘いのにやられてしまいましたわ…!!」

 

余りのツッコミに祥子が声を挙げてしまい、ユウからの手な返しに更にツッコミを入れる。

そして、祥子もツッコみに疲れて完全に壊れてしまったが、流石のユウも流石にこれ以上は持て余すと察して完全にそれを無視して自分の膝を枕にし始めた2人に視線を向けるとすぐに彼女達は眠気に襲われてそれぞれの寝床に入ってそのまま眠りについてしまったのを見守った燈達も同じ様に眠りにつくのだった。

 


 

 

 

 

「ん……?あれ……?」

 

膝枕で眠ってしまったはずの私だったが、目を冷めてしまった。

 

「枕?膝枕されてたはずなのに……」

 

そこで頭の後ろの感覚が先ほどまでと違うことに気が付くと、私は寝床を抜け出してリビングにフラフラと歩いていくと、街の薄い明りを浴びて外を眺めていた。

そして、相手も私の存在に気が付いて外から私に視線を変えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?起きちゃったの?」

 

「おにーちゃん……」

 

私は寝ぼけているのかフラフラとした足取りでおにーちゃんの方へと歩いていくが、それを見たおにーちゃんが私の方まで来てくれて体を支えてくれていた。

 

寝ぼけている私に対して、おにーちゃんは眠そうな感じは全くなかった。

 

「おにーちゃん、まだ起きてたの?」

 

「まだ…って言うか今日は寝れないかな。2人に何かあった時に対応しないといけないから…」

 

今日は寝れない。

おにーちゃんのその言葉に泣きそうになってしまった。

 

おにーちゃんが寝れない原因は私のせいなのに、その私は安心しきって膝枕で眠ってしまい申し訳なさでいっぱいになってしまった。

 

でも、この気持ちの理由はそれだけじゃない。

おにーちゃんは私のことを初華って呼んでいたが、それは私の本当の名前じゃない。

その事を隠していることもこの気持ちの原因なのは分かっていたから、ちゃんと言わないと―――

 

「おにーちゃん、あの……私…私ね……実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?初音ちゃん」

 

「えっ……?」

 

「そよちゃんが事情を知らないでしょ?だからそれに合わせてたんだよ」

 

「そう……だったんだ……」

 

「2人だけで居る時の秘密だよ。初音ちゃん、夜も遅いから寝た方が良い。寝ぼけてるだけだと思うけど、そこまで連れて行くから…」

 

「うん……」

 

おにーちゃんは私の事を初華じゃなく”初音”と言う本当の名前で呼んでくれた。

ただそれだけで胸が温かくなるような感覚になっていく。

それに、おにーちゃんは知らなかったわけじゃなくて、事情を知らない長崎さんにバレないように合わせてくれていた。

 

そんな気まで使ってくれていたことを教えられて、祥ちゃんと一緒にいる時と同じ―――いや、それとはまた違った心地よさを感じながらおにーちゃんに連れられて私は布団の中へと戻っていく。

 

「それじゃお休み…」

 

「待って……」

 

そういっておにいちゃんはすぐに部屋を出て行こうとするが、今はおにーちゃんから離れたくなかったと言うだけの気持ちで私は御にーちゃんを呼び止めていた。

 

「どうしたの?」

 

 

 

 

「ちょっとだけ……、ちょっとだけでいいから…手、繫いで欲しいな……」

 

「まぁ…その位ならいいよ」

 

恥ずかしがりながら私は布団から片手をおにーちゃんに伸ばすと、おにーちゃんは私の手を握ってそれに応えてくれた。

そこからは私が寝るためにおにーちゃんはずっと黙っていた。

でも、それでも私は嬉しかった。

 

温かい手の感覚に私の意識は次第に解けていき――――――

 

 

 

 

―――おにーちゃんに私の全部をあげたいな

 

 

 

そうして、私は温かさを感じながら眠りにつくいた。




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