忘却の唄・消えかけのアルタイル   作:ツナ缶マン

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おはよーございます。
うーん!!カオスなのは楽しいぞい!!
紗夜日菜の地獄に出くわした主人公どうするんだろ……
そんな負担を感じながらも投稿です


139-上げて落ちる。彼女は怒る

首にリードを付けていた日菜とそのリードを持っている紗夜がユウの前に現れた。

 

「紗夜さん……?一体何を……」

 

「死にたい……」

 

「氷川……」

 

「えへへ~いいでしょ~」

 

「死にたい………」

 

「………」

 

この状況だけでも十分におかしいのだが、更におかしくさせているのはリードで繋がれている日菜の方が生き生きとしていて、それを持っている紗夜の方が死んだ目で同じ言葉を繰り返していた。

この光景にユウは完全に絶句してしまったが、このまま放置すると紗夜のメンタルが完全に死んでしまうのが分かってしまったユウは――――――

 

「精神科は専門外なんだけどな……紗夜さん、失礼」

 

「死にた―――――――えっ……?」

 

 

 

「あんっ///ユウ君、強引なんだから///」

 

紗夜が持っていたリードを強引に奪い取る。

そのまさかの行動に壊れたラジオの様に同じ言葉を繰り返していた紗夜の言葉が止まった。

その横で日菜は歓喜の声を挙げていたのをユウは完全に無視してそのままリードを近くの電柱に結び付けていた。

 

「えっ?いや……えっ……?」

 

「放置プレイ…?めっちゃテンション上がる///」

 

 

 

「紗夜さん、ポテト食べに行きましょう!!」

 

「えっ?」

 

「いいから逃げるんですよ!!氷川、お前はそこでしばらく反省してから勝手に帰れ!!」

 

「あんっ///扱い酷い///」

 

ユウは電柱に結び付けた日菜を完全に放置することを決めて、ユウは紗夜の体を脇に抱えるとそのまま日菜の元から加減なしの全速力で逃げ出した。

 

「えっ…?えぇ…?」

 

だが、加減を無くしたユウが出す人間場慣れした速度に紗夜が困惑の声を漏らすが、このユウには日菜から逃げることに一切の迷いがなく、紗夜の困惑を無視してそのまま走り去っていく。

 

「とりあえず、あそこのハンバーガーショップで買ってくるので待っててください!!」

 

「えっ……?」

 

そして、少しユウが全力で走ってから彼は一度停まって紗夜を下ろすと、そのままハンバーガーショップに消えていく。

突然の出来事に困惑しっぱなしの紗夜だったが、そんな彼女が復活する前にユウがハンバーガーショップから飛び出してきた。

 

「えっ……?」

 

「買ってきました!!紗夜さん。これポテトです!!ジュースもあります!!」

 

「……」

 

 

 

「どうです?」

 

「…………お見苦しい所をお見せしました」

 

「いや、アレを見られてああなるのは仕方ないですよ」

 

「少し前からああなってしまって……。痛いのが気持ちいいと言い始めて……」

 

「そうですか……大変でしたね……」

 

ユウの行動に困惑してしまった紗夜だったが、その勢いに負けて彼から差し出された袋を受け取ると、その中からポテトを取り出して口にくわえて咀嚼し始める。

 

それを何度か繰り返したことで多少は落ち着き始めたのかようやくマトモな言葉が返ってきた事にユウは安堵していたが、そんな所に紗夜がいきなり日菜の事を話始めると心当たりしかないユウは苦い表情を浮かべながらそれに答えるたのだが―――

 

 

 

 

 

「うぅ……」

 

「紗夜さん……。落ち着いてください」

 

「うぅ……!!」

 

突然、紗夜は顔を覆って泣き出してしまった。

流石にこれにはユウも驚いたものの、優しく彼女に声をかけて宥めると、彼女はその言葉のせいでさらに泣き出してしまい、ユウの言葉が完全に火に油を注ぐ結果になってしまったことで彼は紗夜が落ち着くまで黙っていると、落ち着いた彼女はようやく言葉を零し始めた。

 

「私も人の趣味嗜好にとやかく言いたくはありませんでした………」

 

「そうですか……あれは…流石にないですね」

 

「それはそうですが……問題なのは……その……私と日菜を勘違いして、私にそう言った趣味があると勘違いされてしまって………」

 

「そう……だったんですね……」

 

「そんな事があって、人にここまで優しくされて涙が……!!」

 

「被害が甚大すぎる……」

 

紗夜が口を開けばそこから出てくるのは何とも悲しすぎる告白とその被害の甚大さにユウですら慄いたのだが、被害はそれだけではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「日菜と間違われるのもそうですが、勘違いのせいで…もう恥ずかしくて街を歩けなくなりそうで……!!」

 

その告白を皮切りに完全に紗夜の自己肯定感が下がっていき、このままではダークサイドへと落ちてしまう。

流石に不味いと悟ったユウは―――

 

「そんなことないですよ!!紗夜さんは素晴らしい人です!!」

 

「えっ?」

 

「ゆきちゃ―――じゃなかった。俺は湊友希那と知り合いなんですけど、あなたのことを凄い人だって言ってましたよ」

 

「湊さんと…?」

 

ユウは全力で紗夜を持ち上げることにした。

紗夜はいきなりの言動に困惑したものの、友希那との知り合いと言われたことですんなりとユウの言葉を信じ始めると、ここでユウが畳み掛けた。

 

「そうですよ。

目標に対して一切の妥協を許さず、日々地道な努力を積み重ねることができて、バンドにもいい影響を与えてくれている人だって」

 

「……人から厳しい。だの、空気が読めない。と言われてしまいますが……」

 

ユウはまるで彼女を口説くかのような優しい言葉を投げかけ始めていたが、今の紗夜は捻くれた捉え方をしてしまい、ネガティブな言葉が返ってくる。

しかし、この程度のネガティブな発言程度で止まるような亀仕込みの会話術の前ではなんの障害にすらならなかった。

 

「人に厳しいと言われてるかもしれませんが、その厳しさの根底は人への深い思いやりと優しさからで、空気が読めないというのも自分が周りに流されない芯の強い人という事でしょう?」

 

「えっ……?」

 

「自分でも他人にも分かりにくい部分かもしれませんが、それが紗夜さんの魅力ですよ」

 

ユウはネガティブな発言を返り討ちにするように耳心地のいい言葉を並べ立てて、紗夜の事を褒めちぎってみせる。

紗夜を多少知る人物ならばユウの言葉は正に彼女の事を言っているのは分かる。

しかし、普段の紗夜ならばユウの言葉に対して、上っ面を整えたような言葉だと断じて、決してその言葉に靡くような女性では決してないのだが――――

 

 

 

 

 

「あっ……あっ……あぁ~……」

 

「紗夜さんはそんな素敵な女性なんですよ。ですから、あんなアホな妹と比べるまでもないですよ」

 

日菜によって精神のダメージが激しかった紗夜はユウの言葉を文字通りに捉えており、その言葉によって日菜によって削られていた自己肯定感とメンタルがみるみる回復していく。

その際に彼女らしからぬ呻き声を挙げていたが、彼女が回復するにあたっては些事であるとユウは完全にそれを聞かぬふりをした。

 

それはまるで女がホストの沼に嵌まっていくように、ユウの優しくて甘い言葉に溺れて底なし沼に嵌まりそうになる紗夜だったが―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おにーちゃん……?」

 

「えっ?」

 

「初華ちゃん……?」

 

紗夜が沼に完全に落ちる直前に、ユウ達の前に初華が現れたことで事態は一変した。

 

「おにーちゃん?お仕事って言ってたよね?」

 

「これから仕事だよ?」

 

「女の人を口説くのが?」

 

「口説いてないけど……」

 

彼としては紗夜の精神安定をさせるように優しく諭していただけなのだが、そこは亀仕込みの会話術というナンパ目的の会話術と言うのが災いして周囲から見たら完全にユウが紗夜をホストの様に口説いているようにしか見えず、それを見てしまった初華がユウを詰めていた。

 

「嘘だ!!絶対にその人口説いてたよ…!!」

 

 

「口説かれてた………?こんな私が……?口説かれてた……?」

 

「ほら、本人だってそう思って無さそうでしょ?てか、また自己肯定感下がってる…!?」

 

「あんなの見た後だと信じられないよ…!!」

 

初華の言葉を聞いて紗夜も自分が口説かれていたのか?と疑問に感じて首を傾げたのだが、そんな状況でも初華の疑いの目は消えない。

だが、紗夜に説明してもらうことも考えはしたが、再び自己肯定感が低下し始めている彼女にそれを求めるのはあまりにも酷といえる。

そうなればユウに残されていたのは―――

 

 

 

 

「……仕方ない。すぐそこだから仕事の場所に連れてくしかないか……」

 

「えっ……。でも、それはダメなんじゃ……。それに本当に仕事があるの……?」

 

「あるよ。本当は連れて行きたくないけど、自分の潔白が一番大事だから」

 

ユウは初華をあの地獄へと道連れにすることを選ぶしかなかった。

その事を告げられた初華は朝に断られたことを思い出したが、ユウとしては自分の潔白を最優先にして彼女を地獄へと連れて行くことを選んだのだ。

 

 

「それじゃ、紗夜さん。失礼しますね。バンド頑張ってくださいね」

 

「えっ?はい……ありがとうございました」

 

そうしてユウはキョトンとした紗夜に見送られるような形で初華と共に地獄に向かって歩き出していく。

紗夜が完全に2人の視界から外れたのを感じた初華はすぐにユウの腕に飛びついていた。

 

「おにーちゃん、本当にお仕事なの?」

 

「うん。にゃむちゃんの所が近いからそこにいて欲しいけど……」

 

「やだ!!おにーちゃんといる…!!」

 

「絶対後悔するよ」

 

「しないよ…!!」

 

「なら、初華ちゃんはにゃむちゃんに連絡して?今からそっちの方に行くって…」

 

「…?よく分かんないけど分かった…」

 

彼の腕に抱きついてユウを疑う初華だったが、ユウはそんな彼女ににゃむといる様に言うも聞く耳を持たない。

それを見たユウは改めて念押ししても退かない初華を見て完全に諦めると、遂に地獄の入り口ことレイヤ達のマンションまでやってきた。

 

「あっ!!ウイコ!!本当にきちゃったの!?」

 

「あっ、中島さん。こんにちは」

 

「和奏さん。おはようございます」

 

「ちょっとレイヤ先輩、しっかり立ってください」

 

「お風呂入って疲れた……」

 

「私が入れましたよね!?」

 

マンションの入り口で待っていたのはレイヤとにゃむの2人。

だが、レイヤの方がにゃむが引っ張り出したようで彼女に寄り掛かるようにして立っていると、ユウの横にいた初華の存在にここで気が付いた。

 

「……こっちの子は?」

 

「始めまして…!!おにーちゃんがお世話になってます!!」

 

「えっ?…あ~そうなんだね。お世話してます?」

 

「あ~!!ツッコミたい!!」

 

「俺も色々ツッコミたいけどツッコまんぞ……!!」

 

初華とレイヤのファーストコンタクト。

その言葉に色々とツッコミを入れたくなった2人だったが、2人は完全にツッコミを放棄してそのままマンションの中へ入って、2人が住んでいるフロアへと上がっていく。

 

「……?何か変な臭いが……」

 

「ウイコ、今すぐ帰った方がいいよ?本当に」

 

「にゃむちゃん、大丈夫だよ。おにーちゃんと一緒にいるから」

 

「どうなってもしーらない」

 

初華がレイヤ達の部屋のあるフロアについた途端に異臭に気が付いたが、ユウと離れたくないというワガママを言い始めるのでにゃむが完全に初華の事を諦め、、ユウは意を決して地獄(レイヤの部屋)の扉を開いたのだが――――――

 

「うっ……」

 

「にゃむちゃん、悪いけど初華ちゃんを頼める?」

 

「うちで預かりまーす。ウイコ、部屋行こ」

 

「それじゃ、お願いします」

 

初華はレイヤの部屋から漂う異臭に顔を歪め始めると、ユウは初華をにゃむに預けてその地獄を浄化するために飛び込んでいくのだった。

 




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