忘却の唄・消えかけのアルタイル   作:ツナ缶マン

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おはよーございます!!
前回は主人公が”私からさきちゃん取らないで!!”された場面で終わりましたね……
でも、この主人公この程度でどうにかなるとは思えないのは……どうなんでしょうね……
と不安も憶えながらも投稿です



155-he was close to her breaking point.

「えっ……?あっ………あれ…………?」

 

 

「………」

 

「ユ……ウ……?」

 

「おにー……さん……?」

 

階段から突き落とされたユウはピクリとも動く気配がない。

 

この状況を作り出した張本人であるリサは目の前の光景を前に手を突きだした状態のまま言葉を漏らし、いきなりの出来事に彼の隣にいた友希那と燈も呆然としてしまっていた。

 

「おにーさん!!」

 

「リサ………」

 

「ぇ……………」

 

しかし、今までの経験が活きたのか呆然としていた燈がすぐに我に返って地面に転がるユウの所まで急いで階段を駆け下りていくと、友希那はこの状況を引き起こしたリサを一瞥してから何も声をかけずにユウの元へと駆け寄っていく。

 

「おにーさん……!!」

 

「ユウ!!起きなさい!!」

 

 

 

 

 

「…………痛ってぇ………」

 

「ユウ…!!起きたのね…!!」

 

「煩い……。少し意識飛んでたけど、揺すらなくても2人のデカい声で起きるよ……」

 

「おにーさん……。大丈夫…ですか?」

 

「燈ちゃん。普通の人間だったら、これで大丈夫って言える訳がないよ………」

 

2人はユウの元へ駆け寄ると心配の余りその身体を揺すりながら声をかけ始めていたが、ユウは2人への返事ではなく、身体中に感じる痛みに思わず言葉を漏らしていた。

普通ならば返事を返すこともなく痛みを訴える譫言を口にしている時点で問題しかないのだが、彼女達は言葉が返ってきた事に喜んで声を挙げている姿にユウは小言を漏らしてその身体を起こしていた。

 

 

「ユウ…起きたらダメよ……。今すぐ救急車を……」

 

「おにーさん……その血が……沢山……」

 

「大丈夫……。それにこの体の状態を見せる訳には行かないし、これも頭と治った肩の傷が開いちゃっただけだよ」

 

「「……」」

 

「なんで俺が階段から落ちたの?そんな間抜けになったつもりはないんだけど……」

 

いきなり身体を起こしたユウを見た友希那はその場で寝かせようとするも、彼の身体の異常性を無関係の人間に診せることが出来ないと言われた2人は完全に沈黙してしまうと、ユウはそんな2人を他所に自分が落ちたであろう階段の上へと視線を向けていた。

 

「………」

 

「ぁ………ぇ………」

 

「ゆきちゃん。あれ、どういう――――――」

 

「リサ………」

 

ユウは階段の上にいたリサと目が合うと、彼女は声にならない言葉を漏らしながらその場に力なく座り込む。

状況がイマイチ呑み込めないユウは説明を友希那に求めようとしたのだが、友希那がリサに視線を向けていた複雑な表情で、その姿を見たユウはこの状況になった経緯を察すると、ユウはゆっくりとその場で立ち上がった。

 

「おにーさん…何を…!?」

 

「すぐ終わるから……ちっ…流石に出血が多くてふらつくな……」

 

「ユウ……!!」

 

いきなり立ち上がった事に驚く友希那を宥めてそのまま階段を上がろうとしたユウ。

しかし、血を出しすぎていたせいで足元がおぼつかない状態だったがそれをすぐに駆け寄ってきた友希那に支えられると、彼はそのままリサが地面に座り込んでいる前まで階段を上がる。

 

「リサ……あなた………っ!!」

 

「ゆき……な……」

 

「……っ!!」

 

そして、2人でリサの前で立ち止まると友希那は冷たい視線がリサに突き刺さる。

リサはその視線に委縮してしまい、それに怒ったのか友希那は彼女らしくもなく拳を握りしめて慣れない動きでリサにそれを振るおうと腕を上げようとしたが、それ腕を振り上げる前にユウがその拳を握って止められていた。

 

「ユウ………!!」

 

「………」

 

拳を止められた友希那はユウを睨むも、彼は彼女の睨みを全く気にする素振りを見せるどころか柔らかい笑みを返していた。

その笑みに友希那は握っていた拳を解くと、それを見たユウはその手を軽く握ってからリサへと視線を戻し――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません。目の前で俺の体勢が崩れたのを助けようとしてくれたんですよね?」

 

「「えっ……?」」

 

「俺達はこれで――――――ちっ……誰かが警察と救急呼んだな……。警察だけはさっさと言い包めて帰らせるか……」

 

あろうことか、このタイミングでユウがとんでもない嘘を口にしていた。

その嘘に友希那はおろかリサまでもが彼の真意が理解出来ずに放心して声を漏らしてしまったが、そのタイミングで友希那達ではない第三者が呼んでいた警察と救急がやって来てしまった。

その光景を見たユウは悪態をついたが、すぐにユウは警察と救急隊に囲まれるも平然と嘘を塗り固めて今までの事情を説明し始めていた。

 

 

 

 

 

「いやー、俺が階段でバランス崩しちゃったんですけど。

初対面のこの方が危険を承知で腕を伸ばしたんですけど、間に合わなくて―――

 

この出血も前に出来た傷口が開いただけですし、処置はかかりつけ(自分自身)で行いますので――――」

 

本当は”リサが腕をユウに伸ばして突き飛ばした事でバランスを崩した”と言うのが真実だが、ユウは話の順序を入れ替えて”自分が階段でバランスを崩し、リサが助けようと腕を伸ばした”と言う説明に変えていた。

 

犯人が責任転嫁や否認することはあれど、被害者が犯人を庇うことなど普通はあり得ない。

それも相手が初対面という状況では庇う理由など皆無であり、その話を聞いた警察は碌に現場を調べることもなく単純な事故として処理を済ませて、救急隊もユウに対して止血帯で止血をする程度の処理を済ませるとその場で開放してこの場から離れていく。

 

それを見届けたユウ達は――――――

 

「ゆきちゃん、紗夜さんを呼んで。この人を任せて俺達はここを離れよう」

 

「ユウ……私は聞きたいことが……」

 

「後で話す」

 

「……えぇ」

 

「ぇ……ゆき………な………?」

 

「……」

 

ユウはこの場を離れることを伝えながら友希那の腕を引くと、友希那は冷たい目で再びリサを一瞥してから彼女の言葉に答えずにユウと共にそのまま階段を降りていく。

そして、燈の横まで歩いたユウは彼女に聞こえる様な小さな声で声をかけていた。

 

「燈ちゃん。悪いけど紗夜さんが来るまで姉さんと一緒にいてくれる?」

 

「えっ……?」

 

 

 

「今の姉さんは1人にすると何をしでかすか分からないからね……自責が行き過ぎて自傷とか自殺とかされても困るし」

 

「でも、私がいても…何も出来ないかも……。だったらおにーさん達の方が……」

 

「俺やゆきちゃんと一緒にいる方が今の姉さんにとっては良くないと思うから……。俺達はゼロライナーに戻ってるよ」

 

「分かりました……頑張ります……」

 

「よろしくね?」

 

ユウはリサの事を燈に任せると友希那の共にこの場を離れ、人通りの少ない扉をゼロライナーへと繫げてすぐにその中へと飛び込んでいた。

 

 

 

 

 

 

「ユウ、お帰り。早かったな。晩御飯は食べて来るって言ってたのに―――」

 

そして、ゼロライナーに飛び込んだユウ達を待っていたのは彼らに背を向けてゼロライナーの掃除をしていたデネブの姿。

だが、彼は今のユウの姿を見ておらず呑気な言葉を返していたが、それは友希那の怒りに触れていた。

 

「デネブ、そんな事してる場合じゃないわよ!!」

 

「なっ!?なんだ友希那!?何を慌てて―――なっ!?ユウ!!どうしたんだその怪我!!なんでデートでそんな血まみれになってるんだ!?」

 

「とりあえず、燈ちゃんも来てから全部話すから……」

 

 

「デネブまずはユウの方よ!!」

 

呑気な言葉を返したデネブに対して声を挙げる友希那。

その声に驚いたデネブは思わず掃除の手を止めて振り返ると友希那の横には血まみれのユウ。

デネブはユウと友希那がデートをすると聞いていたのに、デートで何がどうなれば全身が血だらけで戻ってくる様な状況になるのか理解が追い付かないが、友希那の言葉を聞いてまずはユウのことを何とかすることに決めたのだが――――

 

「そうだな…!!まずは手当てを…!!」

 

「でもどうするのよ!!あんな血だらけで何を――――――」

 

 

 

「あの~……2人とも落ち着いて―――」

 

「何を言ってるんだ!!」

「何を言ってるのよ!!」

 

しかし、ユウのケガは素人がどうにかするレベルを遥かに越えており、デネブと友希那の2人がユウをどうしようかと慌て始めてしまっていた。

そんな2人にケガ人であるユウが落ち着くように宥めるも、2人は全く一緒のタイミングで同じ言葉でツッコんでいた。

 

そもそもとしてケガの処置をすると言った2人がケガ人であるユウがツッコまざるを得ないほどに慌てていたことにユウは困った表情を浮かべると、自身のケガを確認し始めた。

 

「縫う必要はないな……とりあえず消毒してカーゼで抑えておくか……見える範囲は自分でやるから、背中の方はゆきちゃんお願いしてもいい?」

 

「えぇ!!」

 

「ユウ!!俺は……!!」

 

「肉とか卵を食えばある程度は治るから―――」

 

「分かった!!かつ丼か親子丼だな!!」

 

「……普通に焼くだけでいいよ」

 

「頭に包帯巻くのめんどくさいな……」

 

「私がやるわよ」

 

自身のケガを確認したユウは治すための料理をデネブに、手が届かない部分の処置をあろうことか友希那に任せて、自身は手の届く範囲でケガの処置を始めていくのだった。

 




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