最終章、始めました。
163-動き出したHourGlass
ユウが倒れてから1週間が過ぎた。
「おにーさん……どこ行っちゃったんだろ……?」
燈は毎日ゼロライナーに通っていたのだが、彼の姿はおろか一緒にいるはずのデネブの姿すら見ていない事を心配していた。
「それに……楽奈ちゃんも……」
「ちょっと~ともり~ん」
そして、ユウのことを色々と考えたが、それ以上に分からないのは楽奈の存在。
ユウ達を除いて友希那と燈しか入れないはずのゼロライナーに彼女が現れた理由は?
彼女が言っていた別の電車とは何なのか?
そもそもとして、彼女が時間を移動するあの空間に入ることが出来ていたのか?
今の燈には分からないことだらけで、分からないなりに考え続けていたが考えが迷子になってしまい全く答えが出ずにどこか遠くを眺めていた。
「燈?」
「もう!!ともりん!!聞いてるの!!」
「ぇ……?ぁ……あのちゃんに……祥ちゃん……?祥ちゃんは隣のクラスなのに……?」
そんな彼女の元に愛音と祥子の2人が声をかけてくるが、燈は声をかけられるとは微塵も思っていなかったのか声をかけられただけで驚いたような表情へと変わっていくが、愛音はそんな反応が返ってきたことに対して不満そうに頬を膨らませていた。
「それはこっちのセリフだよ!!ともりん、さっきから声かけてるのにボーっとしてたから!!」
「ぇ…………?」
「私は愛音さんに連れてこられたから来たのですが……これは確かに……」
不満を率直に口にした愛音に燈は本当に気が付いておらず、声をかけられたことを全く認識していない彼女は首を傾げ、そんな姿を見た祥子も燈に何かがあったという事を察するには十分すぎた。
「燈、何かありましたの?」
「えっ……?どうして……?」
「愛音さんがあれほど喧しく呼んでたのにも気が付かないなんで普通ではあり得ませんわ」
「あれ~?私、さりげなく馬鹿にされてる?」
「愛音さんに話しにくいなら私が話を聞きますわ」
「ぇっと……特には……」
祥子は燈に正面切って様子を伺うが、燈は誤魔化そうと言い訳を考え始めていた。
しかし、この2人相手に誤魔化せるような言い訳がすぐに考えられずに燈は言葉を詰まらせてしまったが――――――
「もしかして楽奈ちゃんと何かあった?」
「っ!?」
「……確か、もう1人のギターでしたわよね?その方がどうかしたんですの?」
「そう!!りっきーの学校の中等部なんだけど。学校に来てるのに家の用事って言ってバンドの練習に来ないんだよ。ここ1週間で5人全員で集まれてないんだよね~」
「家の用事なら仕方ないのでは?」
愛音は何気ない一言でいきなり確信に迫ると、その言葉を聞いた燈は驚いた表情を浮かべ、祥子は話を聞いても不自然な所はなさそうだと考えていたのだが、その後に続いた言葉でその考えが一変した。
「でもさ~。ともりんが用事があるから来ないって言った日は練習に来てたし、ともりんが遅れるって言ったら入れ替わりで帰っちゃうし」
「……それは……燈がそのメンバーに避けられてる……と思われても仕方ないですわね」
「でしょ?楽奈ちゃんは猫みたいにフラフラしてることがあるけど、ともりんを避けるみたいで変でしょ?」
「何かその方にとって嫌なことをしてしまったのかもしれませんわね…考えにくいですが」
「だよね~。逆に楽奈ちゃんがともりんに下のかな?ともりんが探してきた石を何かの拍子に持って行って失くしちゃったとか?」
燈と楽奈が入れ替わるようにバンド練習に参加している。
そう聞いて2人の間に何かがあることは推測したが、どちらがということで燈を置いて愛音と祥子で検討し始めると、またしても愛音が確信に近い所を口にしていた。
最も今回の場合は石ではなく人なのだが、それでも今の発言が状況的に一番近いと燈は言葉には出さずとも顔に出てしまった。
そして、その変化は愛音達に気が付かれてしまい、更なる追及が始まろうとしたのだが―――――
「燈」
「えっ……?」
「ちょ!?楽奈ちゃん!?ここ羽丘だよ!?学校はどうしたの!?」
このタイミングで彼女達の目の前に本来いるはずのない楽奈が現れたことで事体は動き始めるのだった。
「ユウ、どこに行ったの……。それに要さん…彼女は……」
友希那も毎日ゼロライナーに通っていたのだが、燈と同じようにユウ達の姿を見ていない。
そして燈と全く同じことを考えていた。
「もしかして……また何も言わずに……」
そして、彼女はユウがまた何も言わずに消えてしまったのか?と悪い方向に思考が向いてしまい、目の前の出来事に全く集中できない状況になってしまっていた。
「ちょっと友希那!!」
「友希那さん…」
「……リサ。燐子も……どうかしたの?」
「いや、どうしたってこっちのセリフ!!最近ずっと変だよ?」
「………そんなことないわ」
「友希那さん、今も授業終わったのに動く様子が無かったですし……」
「……昨日、少しだけ夜更かししてしまっただけよ。お昼を食べた直後の授業で眠くなってしまったのよ」
そんな友希那は横からリサと燐子に声をかけられると、ワンテンポ遅れてから彼女に言葉を返したものの、その答えに納得しないリサと燐子の2人がかりで詰められる。
だが、ユウのことを憶えていない彼女達の彼の事を話しても面倒が増えるだけだというのを実体験として記憶している友希那は咄嗟に嘘で誤魔化そうとしたのだが―――
「嘘だね。アタシが寝るずっと前から部屋の電気消えてたの知ってるからね?」
「それに授業中は眠そうというよりは別の事を考えていたみたいでしたが……」
「……」
「それに様子が変なのは今日だけじゃなくて最近ずっとだよ?」
「練習の時も様子が変でしたが……何かあったんですか……?」
「それは……」
友希那のついた嘘はリサによって一瞬で嘘だと見抜かれ、燐子から心配するような視線を向けられる。
だが、真実を話す訳にもいかない友希那は何を話せばいいか分からずに困っていたのだが、そんな彼女に思わぬところから助け船が出された。
「ごめんなさい……電話が……」
「ちょっと友希那!?」
このタイミングで友希那のスマホに1本の電話が掛かる。
友希那はこの電話を言い訳にしてリサ達の元からすぐに離れると、彼女達に聞こえないような位置でその電話をとった。
「高松さん……?もしもし」
『もしもし…友希那さん』
「電話してきたという事は、要さんは?前は練習にも出てないって言ってたけれど会えたの?」
『ぁ……その……。練習では会えてなくて……』
電話の相手は燈。
彼女も友希那と同じくユウのことを気にかけていて、彼女は自身の同じバンドで活動している楽奈に話を聞こうとしていたが、彼女は自身のバンド練習すら参加しないで燈から距離を取っていた。
そして、今も練習に顔を出さないと言われた友希那は燈が何のために連絡してきたのか疑問を抱かずにはいられなかった。
「……ならどうして電話を……?」
『あの……今日の放課後って……空いてますか…?』
「……大学の授業が17時くらいに終わって、その後にRoseliaの練習があるけれど……どうしたの?」
友希那は燈から予定を聞かれると素直にその質問に答えていた。
学校が終わればRoseliaの練習と言ういつも通りのパターンだと伝えると、ここで燈から衝撃的な言葉が飛び出した。
『その……さっき楽奈ちゃんが羽丘に来て……放課後に友希那さんと私に話があるって……言われて……。おにーさんもいないし……』
今まで燈を避ける様にしていた楽奈がいきなり燈の通う羽丘に姿を現してコンタクトをとってきた。
この行動には明らかにナニカがあるのは分かるが、冷静に考えれば楽奈からの誘いに無策で乗るのは普通に考えれば明らかに怪しすぎる。
ユウもどこにいるか分からない彼女達からすればその提案に乗ることはリスクにすらなり得る状況だというのは気が付いていたが―――
「……っ!?……大丈夫。そっちを優先するわ。今から羽丘まで行くからそこで合流しましょう。今から出れば、高松さん達の授業が終わるくらいには着くから」
『ちょっと……友希那さ―――』
今の彼女はそれに気が付いていてもそのリスクを冒す覚悟は決まっていた。
友希那は燈の言葉を最後まで聞くことなく了承してすぐに電話を切り、すぐに荷物を置きっぱなしにしていた教室の中まで戻っていく。
そこには電話を終えるのを待っていたリサと燐子が待っていたが、友希那は2人には目もくれずに出しっぱなしになっていた荷物を乱雑にカバンの中へと押し込み始める。
「あの……友希那さん……?」
「それで話を戻すけど……最近何かあったの?」
その光景を2人は不自然そうに見つめていたが、彼女が戻ってきたこともあって電話が来る直前の事に話題を戻したのだが、彼女はそれも無視して荷物を纏め終えるとカバンを手に取って彼女達と向き合った。
「リサ、燐子」
「友希那?どうしたの?」
「外せない用事が出来たからこの後の授業と練習は休ませてもらうわ」
「えっ……?」
「友希那が授業をサボるの!?」
「それじゃ…」
2人は目の前の友希那から飛び出してきた言葉に完全に固まってしまった。
授業をサボると言い始めたこともだが、あの音楽が第一の友希那がバンドの練習すら休むと言い出したことが彼女達には信じられないほどの衝撃を与えてしまっていた。
そんな2人を他所に友希那は彼女達の横を抜けると、校内であるにも関わらず走っていくという、彼女らしからぬ行動に呆気に取られてしまった。
「ちょっと!?友希那!?どういうこと~!!」
そして、なんとか再起動したリサが教室を飛び出して声を挙げたのだが、その時には既に友希那がこの場を去り姿はどこにも見えなくなっていたのだった。
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この主人公の結末は―――?(期限:14章の最終話投稿日まで)
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救い?そんなの無いよ?
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ご都合主義(弱)のGoodEnd
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超ご都合主義からのハッピーエンド