うわっ……出たよ………
別の世界に行くとユウが口にした次の日、彼らは湊家のリビングに集まっていたのだが――――
「後はリサだけね……」
「待ち合わせの時間ですよね……?」
「燈ちゃんはともかく、ゆきちゃんは自分の家で待ち合わせにしてるんだから文句言わないの。2人とも、朝ごはんにクロックムッシュ……ホットサンド作ったから食べて待ってよ?」
「ありがとうございます…」
「えぇ…いただくわ……。ユウ、どうやって食べるの?」
「直接手に持ってかぶりつくのが基本だけど、今回のは上のチーズが熱いからナイフとフォークで食べて」
「分かったわ」
未だにリサが姿を見せない。
だが、それを気にすることなく友希那達はユウが用意した朝食を取り始める。
「ごめん!!寝坊した!!」
そうして食事を勧めていると、湊家の玄関を開けながら謝罪の言葉と共にリサがやってきた。
だが、3人はとりあえずは目の前の食事をとろうと、そのまま目の前の食事に意識を向けていく。
「ごめん!!準備に手間取っちゃって!!」
「「「えっ……?」」」
そうしてリビングに入ってきたリサだったが、彼女の姿を見たユウ達は完全に固まってしまい、友希那は驚きの余り加えていたパンを床に落としてしまい、ユウも同じ様にフォークに刺したパンが皿へと落ちていたことにすら気が付かないほどの衝撃を受けていた。
それもそのはず、今のリサは―――――――
「リサさん……。十字架にニンニク……?それにおまもりとかお札がビッシリ………」
「幽霊が出るって言ってたでしょ!!昨日の夜にりみと七深に頼んで持ってるもの借りてきた!!」
彼女の体は古今東西の様々な魔除けのグッズで身を固めていた。
「頭のはオニキス*1で出来た髪飾りに、耳にも同じイヤリングでしょ?
首にはニンニク*2と十字架*3と勾玉*4のネックレスに、服のシルク*5だよ!!
それにほら!!腕と足には数珠*6と赤い紐*7に腰とはお守り袋に色んな護符?ってのを入れてもらったから――――――」
「全部返してこいバカ姉」
「なんで!?」
リサは全身に固めた魔除けグッズを嬉々として説明し始めていたのだが、幽霊が出ると聞いただけでここまでガチガチの装備を用意してくる姉に溜まらずユウはツッコんでしまった。
ツッコまれたリサはここまで幽霊対策をしたのにも関わらず全て返してこいと言われて納得出来ない様子だったが、流石にコレと一緒に行きたくはないとユウはたまらずネタバラシをする羽目になってしまった。
「確定で会うのは守護霊とかそう言ったものだから、とっとと全部外してこい」
「えっ……?うん……。家で外してくる……」
「「………」」
「あんな魔除けなんて、眼魔にそんなもんは意味ないっての……。それと2人とも?俺の言葉を聞いてポケットからお守り出したのバレてるからね?」
「「………」」
ここでネタバラシをされたリサは安心したのか身に着けた魔除けグッズを外すためにリビングを出て自分の家まで戻っていったのだが、友希那達もリサ程に露骨ではなかったもののちゃっかりとお守りを準備していたのを置いて行こうとしたのはユウに見抜かれて2人して彼から目線を逸らして誤魔化すように食事に戻っていく。
そして、食事終えて食器の片付けまで終わったタイミングで全ての魔除けを外し終えたリサが湊家のリビングへと戻ってきた。
「ごめん!!」
「うん。もう何も言わない」
「ユウ、行きましょう」
「そうだね。とりあえず挨拶周りって感じだから特に何も起こらないと思うし、特に変わったところはないから期待しすぎないようにね?」
戻ってきたリサに何も言うことなく、ユウはさっさとカーテンを出してから自身を含めた4人をそのままカーテンを動かして湊家のリビング―――もとい、この世界から文字通りに消えた。
そして、世界から消えた次の瞬間には彼らは別の世界に足を着けていた。
「着いた……」
「一瞬ね……」
「うん。着いた感じは分かるけど、世界移動したからか場所が狙った場所からズレてるな……」
「………こんなアッサリなの…?それに周りももっとオドロオドロしいのを考えてたのにアタシ達の街とそんな変わんなのが拍子抜けなんだけど……」
「……そんなのそうそうないよ」
この一瞬で自分達の世界から移動したが、周囲の風景は自分達の街とさほど変わらない。
4度目で慣れたのか、事故ではなくちゃんと意図した移動だからかは分からないが、友希那と燈は普段と特段変わった様子もなかったが、初めてのリサはイメージとだいぶ違ったらしく拍子抜けだと言って肩を落とす。
「………ある程度覚えてるつもりだけど……。歩いていくにしても道を確認しておきたいな……」
「スマホは?」
「リサ。世界が違うのにスマホが使えると思わない事ね」
「……友希那に正論言われるとなんか来るものがある………」
「おにーさん………誰かに……聞いた方がいいんじゃ……」
「ユウ、あそこに女の人の背中が見えるから行ってきなさい」
「あっ…俺が行くの?」
だが、そんな事をユウは一切気にすることもなく目的地へ向かおうと考え始めていた所にリサはスマホを使えと言うも、友希那の冷静な指摘に一撃で撃沈してしまった。
そんな彼女を放置して燈の提案でとりあえず人に場所を尋ねるという原始的な解決策を取ることになり、友希那に言われるがままに前にいた女性の背を追いかけていた。
「すいません。ちょっといいですか?」
「はい……?」
「大天空寺って寺を探してるんです…………が…………」
「あの……?どうかしました?」
そうして追いついてすぐにユウは躊躇うことなく声をかけると、声をかけられた女性はユウの方へと振り返ったのだが、ユウはその女性を見た途端に言葉を詰まらせてしまっていた。
そんな彼に女性は思わず様子を尋ねていたが、ユウは尋ねずにはいられなかった。
「違ってたら失礼ですが………深海カノン……さん?」
「えっ……?なんで……私のこと知って……」
「俺、ユウ」
「えっ!?」
ユウが声をかけたのは知り合いに似ていて思わず確認してしまったが、彼の思った通り声をかけた人物の正体はこの世界にいた時に知り合った人物の一人である”深海カノン”その人。
最初はカノンはユウのことを警戒したが、正体を明かされると驚きと共に彼の手を取っていた。
「本当にユウ君!?いつ帰ってきたの……!?どうやって…!!」
「来たのは今さっき。方法とか色々話したいことがあるのは分かるけど、立ち話じゃアレだからタケルさんの家に行ってからの方が―――あだっ!?」
「ユウ君!?」
彼らは再会した事に喜んでいたがユウが背後から思いっきり背中を叩かれた事でそれも止まってしまった。
カノンもいきなり叩かれたユウのことを心配し、ユウが後ろを振り返るとそこには友希那がいた。
「ユウ……?道を聞きに行ったはずよね?なんでそんなに仲良さそうにしてるのかしら……?」
「ゆきちゃん、怒ってる?」
「怒ってないわ」
「ちょっと友希那さん……」
「えっと……ユウ君?この人は……?」
だが、友希那は目に見えて分かるほどには怒っていた。
彼女からすれば道を聞きに行っただけなのに気が付けばいきなり親し気になって盛り上がっていたのが不満だったのだが、それを指摘するものも気が付くものもいない。
カノンからすれば知り合いがいきなり人の背中を叩かれている光景に困惑するも、すぐに我に返って友希那達の事を尋ねていた。
「俺が生まれた世界にいた人達。叩いたのは俺の幼馴染で、あっちで落ち込んでるのが実姉」
「えっ!?」
「ユウ?私の質問に答えてないのだけれど……?」
「この人は深海カノンちゃん。この世界での知り合い」
「はじめまして」
「はじめまして……」
「ど……どうも……」
「初めまして…」
ユウは友希那にカノンの事を紹介すると、燈は素直に挨拶を返すが友希那はカノンの事を警戒していたのだが、それも一瞬で吹き飛んだ。
「あれ?その人指輪してる?」
「姉さん?あっ…ホントだ…どうしたのそんなの?」
「あっ?これ?私、結婚してるから」
「えっ!?マジで!?あの兄がよく許したね!?」
カノンの手に光る指輪に気が付いたリサ。
そして、その事を指摘されたカノンはあっけからんとした態度で答えたが、ユウにとってこの言葉は正に青天の霹靂だったが、それである程度相手の検討が付いていた。
「もしかして……相手はアランさん?」
「そう。これもこっちの世界の風習に合わせてくれてもらったの」
「めでてぇ……」
相手を聞いて素直に納得したユウはしみじみとしながらカノンの結婚について喜んでいた。
この世界に来て、ゴーストにに会うよりも先に知り合いに出会えたことも嬉しかったのだが――――――
「カノン………っ!!貴様ぁぁああああああああ!!」
「うわっ……出たよ………」
「お兄ちゃん…!?」
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