忘却の唄・消えかけのアルタイル   作:ツナ缶マン

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おはよーございます
GW終了ですね…
多くの人は明日から始まる嫌な労働・学校と現実から逃げ出したくなるなりますが、投稿です


30話-深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ

 

「中島さんに松原さん?こんな公衆の面前で何をしてるんですか?」

 

「げっ……紗夜さん!?」

 

 

「ふえぇ~!?」

 

悪ふざけをしているところを2人の共通の知り合いである紗夜に見られてしまい思わず彼の口から言葉が漏れるが、その言葉を聞いた紗夜は完全に呆れていた。

 

「何が”げっ”ですか。ここは私も通っているんですよ?」

 

「いや、それはそうなんですけどね…?それより、紗夜さんはなんで午後から学校に…?」

 

「たまたま午前中の授業が休講でしたので」

 

「そうなんですね。それじゃ、俺はこの辺で…」

 

紗夜に詰められたユウは咄嗟に話をすり替えてからこの場から逃げようとしたのだが―――

 

「逃がしません」

 

「紗夜さん、腕を離してもらえますか…?それにこんなことしてたら授業に遅れるんじゃ…?」

 

「問題ありません。授業開始までは30分以上は余裕がありますから……それでどうして松原さんになんてことをしてるんですか?」

 

「いや~…何と言いますか……。すれ違いコントのストレス発散と言うか…。悪戯心からの来たノリと言いますか…」

 

「すれ違い…?悪戯…?すれ違いと言うのは分かりませんが、悪戯にしては随分と手慣れているようでしたが?」

 

ユウは紗夜に腕を掴まれてしまった。

彼は授業の開始を言い訳にして紗夜を振り切って逃げようと考えたものの、紗夜は満面の笑みを浮かべながらユウの提案を拒否すると徐々に笑みが消え、怪訝そうな表情を浮かべながらユウに尋問を始めていた。

 

だが、先ほどの出来事を説明しても納得してもらえないと考えたユウは詳細をボカシながら説明するも、紗夜は説明以上に彼が手慣れた動きをしていたことの方に不信感を感じて詰めていた。

 

「いや~…その…それは…」

 

「言えない理由でも?」

 

 

 

 

 

 

「…小さい頃からそう言うのが得意な知り合いがいて…その…それをマネしたと言うか…」

 

「それが信じられるとでも?」

 

「…ですよねぇ~」

 

「話になりませんね…。松原さん」

 

 

「ふえぇ~!?」

 

ユウは知り合いの正体を伏せながらも真実を口にしたが、紗夜はユウの言葉が信用できないという態度を見せると彼もそれを納得してしまい言葉を漏らしていた。

紗夜はそんなユウに完全に見切りをつけて横にいた花音に標的を変えていた。

 

「何があったんですか?」

 

「えっと…その…」

 

「大丈夫です。私は怒っていませんから…」

 

「ふえぇ~…」

 

紗夜は花音に事情を聴こうとしたが、表情はユウに向けたものと全く同じだったため花音はその姿に恐怖を覚えてしまい、紗夜が掴んでいない方の腕を掴んでいた。

 

「ちょっと松原さん…?紗夜さんの前で何で腕を…」

 

「えっ…ふえぇ~!?」

 

 

 

「中島さん?何を…」

 

「いや、これ俺何もしてなくない?」

 

「それはそうですが…あの松原さんが腕を掴むなんて…」

 

「松原さんに俺と一緒の表情を向けたからでは…?」

 

「私が怖いとでも?」

 

「いや~…女の子にとっては怖かったのかな?」

 

この状況にユウは嫌なモノを感じてしまったが、花音は完全に無意識で行っており、それをユウに指摘されて目をグルグルと回し始めて混乱し始めてしまった。

そんなやり取りを見た紗夜は花音の反応に不満そうな表情を浮かべるが、ユウが理由を何気なく口にすると紗夜の表情はより一層険しいものに変わっていた。

 

流石にこれは不味いと思ったユウは紗夜へと話を振っていた

 

「えっと…紗夜さんはどこから見てました?」

 

「最初からです。高そうな車から降りてきたのを……高そう?」

 

「その車なんですけど、松原さんの知り合いの弦巻さん?って家の物らしくて…」

 

「待ってください。何故弦巻さんの名前が?」

 

「とりあえずここからは順番に…松原さんとの件から話しますね?」

 

こうなった経緯をしっかり説明することにした。

 

迷子になっていた花音に声を掛け―――

何度かすれ違いを経てから公園の男子トイレに迷い込みそうになった彼女を止め―――

道案内として花音の目的地であった喫茶店へと一緒に向かい―――

目的地の近くの羽丘で尾行され続けた弦巻の黒服に襲撃され―――

最後の1人になるまで制圧したタイミングで花音に止められて――――

羽丘の生徒会長のつぐみに説教されてから時間に余裕が無くなってしまい、車でここまで送ってもらった事―――

 

それはユウが花音に会ってから起こった全てを端的に話していたのだが、紗夜からの疑いの眼差しは止まらなかった。

 

「信じられませんね」

 

「あぁ~…そうですよね…。男子トイレに迷い込みそうになってたなんて…」

 

 

 

「あの弦巻さんの家の人達を1人で制圧するなんて…」

 

「えっ?そっち?あの…信じられないようだったら、羽丘の羽沢さんか…校舎で見てた燈ちゃんに確認してもらえると…」

 

「そうですね…」

 

紗夜から疑いをかけられたのは弦巻の黒服を単独で制圧したということで、完全に予想していない部分で疑われたことにユウは呆気に取られてしまっていた。

 

ユウからしたら生身の人間相手に加減した事が大変だった程度でそれ以外には特に問題はなかったのだが、紗夜からしたらそれ事体が信じられずにいた。

しかし、ユウからの言葉を聞いて紗夜は自身のスマホを取り出して即座に電話をかけていた。

 

「もしもし羽沢さん。少し聞きたいことがありまして、先ほど学校前で男性が乱闘を―――」

 

紗夜が電話をかけた相手はつぐみ。

彼女から真相を聞き出そうとしたがユウに言われたことを告げた紗夜は疑いの表情をユウに向けていたが、電話を続けていくうちにその表情は変わっていき―――

 

「――――分かりました。ありがとうございます。午後の授業も頑張ってください。それでは」

 

 

「紗夜さん?どうでした?」

 

「…えぇ。羽沢さんに確認しましたが…。真実でした…」

 

紗夜はつぐみとの通話を終えてスマホをしまおうとしたが、彼女の手はユウの目から見てもハッキリと分かるほどに震えており、その震えの理由がユウに対する恐怖であるということも彼には分かってはいなかった。

 

「紗夜さん…?大丈夫ですか?」

 

「えっ…いや…その…大丈夫です…」

 

「いや、そう見えませんけど…」

 

「えっ…いや…その…」

 

それが分かったユウは諭すような優しい口調で紗夜に語りかけるも、その優しい口調が紗夜の恐怖を更に加速させていき、身体が固まって上手く動かせなくなっていく。

頭が真っ白になりかけていたその瞬間――――

 

 

 

 

 

 

「おねーーーーちゃーーーーーーーん!!」

 

「日菜っ!?」

 

「おねーちゃん!!何やってるの!?花音ちゃんと2人で男の人の腕掴んで…!!」

 

「日菜…その…それは…」

 

紗夜の元へと日菜が駆け寄ってきた。

思わぬ人物の登場に紗夜が戸惑ってユウの腕から手を放してしまうが、日菜も紗夜と花音が2人でユウの腕を掴んでいた状況に驚きと戸惑いに頭が支配されていた。

 

「まさか…花音ちゃんと…男を取り合って…!?」

 

「違います!!」

 

「じゃあなんでこんなことしてるの!?」

 

「それは…その…」

 

突然の日菜の乱入に紗夜は恐怖よりも混乱が勝り、日菜相手にしどろもどろな言葉しか返せなくなってしまっていた。

花音は今の紗夜ではこれ以上の追及はされないと考えて、掴んでいたユウの腕を離して彼の顔を覗き込んだがその顔は何とも形容しがたい表情を浮かべていた。

 

「………」

 

「どういう表情なの……?」

 

「松原さん、ごめんなさい。俺、あの人の事が嫌い…いや、苦手なんですよね…」

 

「そうなんですね…」

 

「それと松原さん。あの2人がやり取りしてる間に今のうちに授業に向かったほうが良いと思いますよ?俺もこの隙に逃げますから」

 

「えっと…そうですね…」

 

「それでは今度、お詫びに喫茶店に行きましょう」

 

「分かりました。それでは…また」

 

ユウの表情の原因は紗夜と一緒にいた日菜。

彼女は自分と友希那との関係を知るという、余りにも短絡的で自分勝手すぎる動機でイマジンと契約していた。

そして、その事件で友希那が襲われて、彼と近かったという理由で沙綾と燈の2人も巻き込まれ、後から知ったがその内の1人である燈は分岐点と言う特大の爆弾だったのだ。

 

後から知った燈の事や時間が修復された今では日菜の中にその記憶は消え去っている事を含めても、彼からしたらそんな人物に好意的に対応することなど出来る訳もない。

しかし、その理由を語ることは出来ないユウは理由を語らずに自身の思いだけを口にすると花音はそれを汲んでそれ以上の追及はしなかった。

 

ユウと花音目の前で盛大にヒートアップしている双子を横目に、それぞれ買い物と授業の為にこの場所から離れていくのだった。

 

そして、次の日――――

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが花音のお友達ね!!」

 

「どうしてこうなった…?」

 

ユウは先日倒した黒服に連れられて、その主の前まで連れてこられてしまうのだった。

 





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