完全に身体ぶち壊してダウンして遅くなりましたが、今回は元気0.3倍でお送りいたします。
(なお、作品内の状況はそんなこと言ってる場合ではない模様)
突如として目の前へと零れ落ちる砂。
「これは一体…」
「お前の望みを言え。どんな望みも叶えてやる。お前が払う代償はたった一つ…」
「望み…」
そして、突如として聞こえてきたその言葉を聞いた私は自身の望みを考えてしまった。
家族の事――――
今のバンドの事――――
壊れてしまった友人の事――――
色々と思い浮かぶことはあれど、私の中でそれよりも一番大きなものは――――
「またあの頃のようにみんなでいたい…またバンドがやりたい…」
今のバンドではなく、自身のせいで崩壊してしまったバンドの事を思い出し、あの頃のようにただ純粋に楽しむだけのバンドをやりたい。
ただそれだけだったはずなのに――――
そこに待っていたのは地獄だった―――
「あぁ…!!ここはさっき通った道だ…!!」
愛音の言葉を聞いて街中を全力疾走していたユウだったが、彼はまた街を迷っていた。
過去に住んでいた時の記憶を頼りに走り出したのは良かったのだが、それも1桁の頃の歳の話。
その歳の子供の行動範囲など街のほんの一部分でしかなく、街全体など覚えている訳もない上に長い年月でその記憶していた道も様変わりしていて殆ど記憶が役に立ってはいなかった。
「最初に着いたのは月ノ森?ってとこで、さっきは花咲川…これなら場所をちゃんと聞いておくんだった…!!」
軽率な行動にずつに覚えたユウだったが、後悔したところでどうしようもない。
だが、幸運の女神は彼を見捨ててはいなかった。
「ユウ…!!こんな所で何をやってるのよ」
「ゆきちゃん!?なんで…って今はいいか…ゆきちゃん!!羽丘って学校の場所!!分かる!?」
「えぇ…春まで通ってた学校だもの…」
このタイミングで羽丘に向かったユウを追いかけてきた友希那が
ユウはいきなり目の前に現れた友希那に驚いていたが、すぐに気持ちを切り替えて友希那に羽丘の場所を聞くが、その学校を卒業した彼女が場所を知らない訳がなく素直に答えていた。
そして、その答えを聞いたユウは即座に行動を起こしていた。
「ごめん!!」
「きゃ…!!何をっ!?」
ユウは即座に友希那の背中と膝裏に腕を通してそのまま一気に持ち上げ、横抱き―――所謂”お姫様抱っこ”と呼ばれる形で友希那を持ち上げていた。
当然だが、いきなりそんなことをされた友希那は困惑するが、ユウ自身はそんなことを一切気にする素振りを全く見せることはなく、真剣な表情を返されてしまった。
「道案内は任せたよ!!それで羽丘ってどこなの!?」
「…この先真っすぐで、途中で左に曲がるわ」
「分かった…!!捕まってて!!」
友希那はユウの圧に負けたのか素直に聞かれた質問に答えると、ユウは友希那を抱えたまま走り出し、彼の腕の中にいる友希那も言われた通りにユウの首に腕を回して身体を支えていた。
そして、数分走り続けて2人は羽丘が目前と言う位置までやってきていた。
「あそこよ」
「分かった…ゆきちゃんはそしたら外で待って―――」
「一緒に行くわユウ。羽丘は女子校だから、私が一緒に行かないと中にすら入れないわよ…」
目的地が近づいたユウは友希那と別れようとしたが、羽丘は女子校で男のユウは入れない。
そう言われたユウは一瞬だけ迷ったような表情を浮かべると彼はすぐに友希那に語りかけていた。
「……
危ないと思ったらすぐに逃げてね?」
「えぇ…。危ない…?」
「ごめん。ちょっとだけ静かにしてて」
友希那はユウが言った言葉の意味が理解する間もなく2人は羽丘の前まで到着すると、彼の腕の中から下ろされる。
だが、羽丘の正門までやってきたも攫われたという燈たちがいる訳でもなければ、彼女達を攫ったというクモのキグルミが居るわけでもない。
傍から見たら完全に手詰まりになってしまったと思った友希那の目の前でユウは目を閉じて集中し始める。
その行動の意味が分からないが言われた通りに友希那が静かにしてから十数秒で、ユウが目を開いてた。
「校舎の中か…」
「ユウ?」
「いくよ」
ユウは目を開くとそのまま友希那の手を引いて羽丘の校舎中へと入ってそのまま階段を上って階段から廊下を確認するが、友希那はそれまでユウに手を引かれたまま校舎内を歩いていた。
「ユウ、校舎内は土足厳禁よ」
「緊急事態だから…ここか…」
「音楽室…?」
「ゆきちゃん、すぐに逃げれるようにしてね……」
「えぇ…」
友希那から至極真っ当な指摘を受けたユウだったが、彼はそれを完全に無視すると突然音楽室の前で立ち止まると、扉を掛ける前に友希那の方へと向き直って再び注意を促す。
注意を受けた友希那はその言葉の意味が全く分からないが、その言葉に応えるとユウは意を決して音楽室の扉を開け放った。
その中に広がっていたのは地獄のような光景だった――――
「っ…!?うっ…」
「あの子は…ゆきちゃん。見ちゃダメだ」
中にいたユウがこの街に来て最初に話した少女―――燈が意識なく床に横たわっており、クモの意匠をもった異形の存在とそれに怯えている1人の少女がいた。
それだけなら良かったのだが――――
―――首だけで天井から吊られた状態のそよ。
―――糸を強い力で締められて胴体部で上下に両断された状態の立希。
―――壊れた人形のようにあり得ない方向に両手足が折れている睦。
ユウが見たことすらない3人は目の前に異形によって完全にその命を奪いとられていた。
そして、その地獄の中で唯一意識があった少女―――祥子は目の前の現実が受け入れられないのか砂にまみれた床の上にへたり込んでいた。
余りにも現実離れした状況が現実のものと思えず思考が止まってしまったが、そんな状況でもユウは友希那の目を手で隠していた。
そんなことをしている間に音楽室の中では状況が動き出していた。
「こんな…こんなことは…」
「”みんなでいたい”ってのが望みだろ?」
「違う…私はこんなことを望んで…」
「これで契約成立だ…」
クモの異形は砂の上にへたり込む祥子へと歩み寄ってくる姿を見た祥子は自身も3人の様にされると思い、恐怖に震えあがり服の一部が急速に湿り気を帯びて独特の臭気が充満していく。
そんな地獄でも―――
「おらっ!!」
「ぐっ…!!」
「そこまでだ。
1人だけは地獄のような”今”に抗おうとしていた。
いきなり音楽室に飛び込むと同時にイマジンと呼んだクモの異形を蹴り飛ばして睨みつけていた。
イマジンも蹴り飛ばされた状態から復帰するとユウの事を睨み返していた。
「貴様…!!」
「あの子を攫っただけじゃなく…こんなことまでしやがって…」
「ユウ…」
「ただの人間が来たところで…!!」
先ほどまで友希那に気を使うほどの優しさを見せていたユウが”イマジン”と呼んだ異形に対して凄まじいほどの怒りが籠った視線を浴びせると、イマジンは怒りを覚えたのかどこからか取り出した波刃の剣で斬りかかる。
「死ね…!!」
「ユウ…!!」
「ふっ!!」
「っ…!!」
「ただの人間?それはどうかな?」
「なっ!?それは…!?」
が、その刃はユウに届くことはなく振り下ろされた剣はユウが懐から取り出した
剣を失たイマジンはすぐに後ろに飛び退いて体勢を立て直そうとしたが、ユウの手に持っていた物を見て完全に固まっていた。
「ベルト…?」
「やってられるか…!!」
「っ!!待て!!」
ユウの手に収まっていたのはベルト。
彼は振り下ろされた剣を懐から取り出したベルトで叩き落していたのだ。
友希那はその正体を知らずに首を傾げたが、イマジンはそれを知っており即座に祥子の方へと走り出すと、彼女の身体に吸い込まれるようにしてイマジンは姿を消して、凄惨な状況だけが残されていた。
「ユウ、何がどうなって…」
「ごめん。後で話す!!」
友希那はユウに話しかけるが、ユウはそれを無視して祥子に近づいて懐から取り出した何も書かれていないカードを彼女にかざす。
するとそのカードには見る見るうちに先ほどのイマジンと日付が表示されると、ユウはすぐに祥子にカードを見せていた。
「おい!!この日に何があった…!!」
「私がバンドを…CRYCHIC を辞めた日ですわ…」
「ちっ…!!そう言うことか…!!なら…!!」
「ユウ…!!あら?揺れてる…地震…?」
ユウはカードに示された日にあった事を聞くとこの惨劇の理由を理解してしまい、悪態をつく。
先ほどまで優しかったユウがいきなり豹変したことに友希那は戸惑うと同時に校舎が揺れ始めたその直後、完全に想定外の出来事が彼女を襲っていた。
「あれは…電車…?」
「ゆきちゃん!!行くよ!!」
「えっ!?ちょっと!!ユウ!!どこに行くのよ!?」
突如として音楽室の窓の向こうに謎の電車が止まっていた。
完全にあり得ない状況に襲われた友希那は完全にパニック寸前になっていた所で、ユウは友希那の手を掴んで目的地を告げた。
「あの列車で…過去にだよ」
「か…こ……?」
ユウの言葉を聞いて思考が完全に止まってしまった友希那だが、そんな彼女の腕を引いてユウは止まった列車に飛び乗る。
それと同時に列車が動き出すとすぐに列車はこの時間から跡形もなく消えるのだった。
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