忘却の唄・消えかけのアルタイル   作:ツナ缶マン

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おはよーございます!!
これでブライダル篇…完!!って言えたら綺麗だったと思いましたが、もう少しだけ続くんじゃ
という事で投稿です
そろそろボケたい欲が出てきたのをシリアス押し出してぐっとこらえてます


57話-ダブル・ブライダル・プリンセス

紆余曲折はあったのもの何とか撮影当日の朝を迎え、ユウの姿は友希那と共に撮影場所であるチャペルにあったのだが――――

 

「……」

 

「ゆきちゃん…怒ってる…?」

 

「怒ってないわ…」

 

「ホントに…?」

 

「それ怒ってる人が言うセリフだよ?」

 

「それはそう―――いえ、私は怒ってないわ。上原さんに胸を押し当てられてたことについてなんて全く怒ってないわ」

 

「うん。あれは完全に俺が悪いわけじゃないよね?あの後、上原さんと一緒に燐子さんも目の敵にしてたよね?」

 

「……」

 

ユウの横にいた友希那はいかにも不機嫌と言った表情を浮かべていたが、その事をユウに指摘されてしまい更に不貞腐れた表情を浮かべていた。

だが、ユウの言うようにアレはひまりが飛びついて来たことがそもそもの原因であり、ユウは全く悪くはないのだが、アレを見せられた友希那は虫の居所が悪かった。

それをツッコまれて更にムスッとした表情を浮かべていたが、友希那はそんなユウに小言を漏らしていた。

 

「ユウ、あなたの服装はなんなのかしら?…白いスーツなんて着て、新郎役のつもりかしら?」

 

「うーん…最悪はそうなるかもしれないね」

 

「それに、その帽子は何なのかしら?」

 

「帽子は一人前の証拠…ハーフボイルドに言われたんだよ」

 

「ハーフ…ボイルド…?意味が分からないわ」

 

友希那が指摘したのは今のユウの服装についてで、今の彼は白いスーツに中折れハットを被った、完全に決めきった服装だが、ユウはハーフボイルドと言う謎のセリフを口にしたことで友希那は怪訝な表情を浮かべていた。

 

だが、そんなタイミングでユウは友希那にカウンターをお見舞いした。

 

「でも、ゆきちゃんだって服装のことは言えないでしょ?パーティードレスなんて着てきてるし」

 

「…盛り上げ役に必要だからよ」

 

服装のことで指摘を入れた友希那だったが、彼女もまた今回のためにパーティードレスを着ていた。

今日は燈とひまりの撮影をするだけで友希那が着飾ってくる必要な全くないのだが、その事を指摘されると、友希那はバツの悪そうな表情を浮かべてながら不満そうな口調で言い訳をしていたが―――

 

 

 

 

「でも、よく似合ってるよ」

 

「ふふっ…そう言われると嬉しいわね」

 

「時間があったら俺達2人も写真撮ってもらう?」

 

「そうしましょう」

 

「っと、もう上原さん達が来たみたいだよ?」

 

ユウに褒められた事に加えて、一緒に写真を撮るということも言われた彼女の不満そうな様子が一瞬で消し飛び、笑みを浮かべ始めていた。

 

そのタイミングで2人の前には1台の車がやってきて、彼女達の前で止まるとその中からは見知った顔が飛び出してきた。

 

「友希那さん!!ユウさん!!おはようございます!!」

 

「上原さん、おはようございます」

 

「えぇ…おはよう」

 

 

「ユウさん!!おはようございます!!」

 

「沙綾ちゃんは朝から元気だね?」

 

「はい!!」

 

「友希那先輩!!今日はよろしくお願いします!!」

 

「えぇ…朝日さんも今日はよろしく頼むわね」

 

「どーもです。友希那さん」

 

「えぇ…」

 

最初に出てきたのは今日のモデルであるひまり、その後に続いてひまり達の準備を手伝っていた面々が顔を出し始めていたのだが、そんな彼女達の後に降りてきたのは―――

 

「友希那ちゃん!!中島さん!!おはようございます!!」

 

「ふへへ…今日はよろしくおねがいします!!」

 

「シショウ!!」

 

「ゆーくん、友希那ちゃん、やっほー」

 

「ちょっと、日菜ちゃんもイヴちゃんもちゃんと挨拶を…今日はよろしくお願いします」

 

今回の助っ人としてはある意味では最強のメンバーともいえるパスパレが全員集合して現れていたが、彼女達は他のメンバーとは明らかに気合いが違っていた。

 

「大和さん以外が衣装を着てるって…やる気が違い過ぎないかしら?」

 

「あはは…ジブンも賑やかし要員として衣装も車に積まれてますよ…」

 

「その……ご苦労様です…」

 

「その優しさが染みますね…」

 

あろうことか今日はひまりのためにパスパレ全員が衣装を用意してきているという徹底ぶりを見せ、その熱量にはあの友希那ですら軽く引いていた。

しかし、時間は限られているという事もあってすぐにユウが動き出していた。

 

「とりあえず中に入りましょうか。スタッフからの説明もあるので…」

 

「あれ?燈ちゃん達が来てませんけど…」

 

「大丈夫ですよ。後1時間後にここにきて撮影準備に入るように予定を組んでますから」

 

 

 

「つまりあたし達は1時間で終わらせろってことですか?」

 

「ちょっと透子…!?」

 

「ユウさん達が手を貸してくれなかったら、ここが使えなかったんだから…!!」

 

「あはは。今はそんなこと言う前に準備して撮影だよ?」

 

「急かされなくてもやりますって…!!」

 

燈達の姿はここにはないのに中に入ろうとしていたが、ユウは1時間ズレて会場に来ると伝えると、それを曲解して透子がユウに噛みついた事で沙綾とひまりが慌てていたがユウはそれをサラッと流して彼女達の撮影を進めると、透子は控室に入って行ってしまった光景に疑問を持ったのは日菜だった。

 

 

 

「ねぇねぇ、ゆーくん。透子ちゃんに対して冷たくない?」

 

「氷川?こっちはそんなつもりはないけど?」

 

「でも、あれはおかしくない?」

 

「なんか目の敵にされてるけど…なんかしたっけな…?」

 

「ふーん…そうなんだ~」

 

「とりあえず、お前うるさいから飴でも舐めてろ」

 

「ありがとー!!でも、口の中に投げ込むのはひどくない…?」

 

 

 

 

「ねぇ…友希那ちゃん?彼、本当にあんな態度を取られる理由分かってないのかしら…?」

 

「あれは間違いなく分かってないわ」

 

「なんと…!!シショウの事が分かるとは以心伝心ですね!!」

 

「イヴさん、それはちょっと違うと思います…」

 

日菜は透子の態度が気になっていたが、あんな態度を取られる理由がユウには全く分からないものの、彼はとりあえず日菜が喧しくする前に持っていた飴玉を日菜の口に投げ込んで黙らせると、そんな2人を見ていた友希那達も訳の分からないことを言い始めていた。

 

そんな事もありつつ、ひまりの準備が整ってチャペルでの撮影が始まった。

 

「ひまり、写真いい感じだよ」

 

「えへへ~…そう?」

 

 

 

「六花ちゃん。ひまりちゃんの顔に光が当たるようにあの2つの照明の角度を変えてちょうだい」

 

「ジブンが1つをやります!!」

 

「分かりました!!こんな感じですか?」

 

「ロッカさん!!その角度です!!」

 

「ひまりちゃ~ん!!眩しいと思うけど、目線もうちょっと上にあげて~」

 

嬉々とした表情を浮かべたひまりが沙綾の手による撮影されていくが、ひまりに協力していたパスパレからアドバイスが飛んでいく普通に考えればあり得な状況にチャペルのスタッフ達も代わる代わるその光景を見に来ていたが、ユウと友希那もその光景を遠巻きに眺めていた。

 

「かなり本格的だね~」

 

「えぇ…ドレスも可愛らしい装飾が多くて上原さんらしいわね」

 

 

 

「当然でしょ!!あたしの本気なんだから!!」

 

「正直驚いたわ」

 

「そうでしょう!!あたしも全力出してひまりさんのデザインしたんで!!」

 

「凄いね」

 

「…随分と余裕っすね?」

 

「余裕…ってのはよく分かんないけど…」

 

目の前で行われている撮影の本気具合に驚いていたが、そんな2人に自信満々の透子が2人に声をかけてきていた。

2人は素直に透子たちに驚いていたが、ユウの言葉が気に障ったのか透子が敵対心をむき出してユウを睨んでいた。

 

そんな視線に気が付いていないのか、ユウの口からお節介が飛び出していた。

 

「お節介かもしれないけど、そろそろ上原さん達を休ませた方が良いよ」

 

「何言ってんすか?1時間しか撮らせないつもりですか?」

 

「そんなつもりはないよ?でも、上原さん見て何も思わないの?」

 

「ひまりさん…?何を…」

 

 

「彼女、かなり疲れてるわね…」

 

「えっ…?」

 

ユウのお節介に透子が言葉を返した。

そして、彼に言われて透子がひまりに視線を向けるもその言葉の意味が分からずにいたが、ユウの隣にいた友希那はひまりの変化に気が付いており、その事を伝えられた透子は驚いた表情を浮かべていた。

 

「ドレスって慣れない衣装での長時間の撮影で疲れたんだろうね」

 

「そうね。ライブだと気にならないけれど、撮影用のライトは熱くて疲れるのよ…」

 

「そうらしいね。それに燈ちゃんも準備が終わってるから、入れ替わって休むにはちょうどいいんじゃない?」

 

「……」

 

2人の言葉を聞いて透子は黙り込んでいた。

時間が限られている上に透子たちはユウ達が借りている場所を間借りして撮影している以上、休んでいる時間などない。

透子としては撮影を続行する以外の選択などありえないのだが―――

 

「はい!!ひまりちゃん!!一旦休憩よ!!」

 

「えっ…!?」

 

透子が判断を下す前に、撮影を見ていた千聖の口から休憩の指示が飛んでいた。

それに驚いた透子だったが、驚いていたのは彼女だけではなかった。

 

「えっ!?千聖先輩!?なんでですか!?」

 

「千聖さん!!私、まだ出来ますよ!!」

 

「慣れないドレスでの撮影で、撮影用ライトの熱さもあるから余計に疲れるに決まってるでしょ」

 

「うっ…確かに疲れてるかもしれないですけど…!!」

 

「ヒマリさん!!メイク直したりする必要もありますから…」

 

「イヴちゃんの言う通りよ!!とにかく一旦こっちに来なさい!!」

 

驚いたのはモデルをしていたひまりと手伝いのロックも同じで、千聖の言葉に反対するがプロの意見に圧されてしまって言われるがままにひまりは後ろに下がっていく。

その光景に透子は唖然としていたが、千聖はそのままカメラマンである沙綾に視線を向けていた。

 

「沙綾ちゃんは大丈夫かしら?」

 

「はい!!熱いのは実家のパン屋で慣れてますから大丈夫です!!」

 

「なら、このまま次の撮影もお願いね?」

 

「はい!!」

 

「ライトを入口に向けてちょうだい!!」

 

千聖はスマホを覗いてから沙綾に声をかけると、沙綾は元気な声で返事を返すと千聖はそのまま流れるように指示を出して、ライトがチャペルの入り口に向けられるとその入り口はゆっくりと開け放たれる。

 

その扉を羽丘の制服を着たあこと愛音の2人が抑えるとその扉からもう1人の主役である燈がゆっくりとチャペルの中へと歩き出していた。

 

「うわぁ…!!燈ちゃん!!すっごい似合ってる!!」

 

「日菜さん、静かにしないと…!!」

 

「でも、麻弥ちゃん!!本当に似合ってるよ!!」

 

ゆっくりと、しかし堂々と歩いている燈に日菜達から声が上がっていたが、そんな彼女達の横ではモデルとしての経験が豊富なイヴと千聖はドレスに視線が向いていた。

 

「ひまりちゃんのと並ぶとかなりシンプルね…ベールとかの装飾がないわよ…あれ」

 

「ドレスにレースも模様も入ってない…!?」

 

今の燈が身に着けていたのはウェディングドレス。

デザイン自体ははひまりと同様に肩が出ているオフショルダーのデザイン。

しかし、千聖が指摘する様にひまりが身に着けていたベールやグローブなど一切着けていない。

それどころかドレス本体にも模様の入ったレース等も一切廃していることに透子はいち早く気が付いていた。

装飾らしい装飾を全て廃したデザインに透子は唖然としていたが、イヴはそれを見て思ったことをそのまま口にしていた。

 

 

 

 

 

「装飾の無いシンプルなデザイン…ですが、それによって装飾による影が一切入らない…正に純白のドレスです…!!」

 

「ドレスでなんの装飾も無い…!?そんなのあり!?」

 

イヴの言葉に透子は目を見開いて驚いていた。

 

確かに装飾があればそれに当たった光で影が出来るのは当たり前。

それに結婚式のドレスなど一生に一度のモノで、出来る限り自分を華やかに見せたいはず。

 

ユウ達も同じ様に考えるはずだと思っていたし、現に透子もそう考えてひまりらしく可愛らしいデザインになる様に花やリボンの装飾を下品にならないギリギリのレベルまで盛り込み、豪華で華やかな自身の傑作をデザインをだした。

 

しかし、実際にユウ達が出してきたのは透子が考えていたのとは真逆の発想。

限界まで装飾を盛るのではなく、極限まで装飾を廃したデザインのドレスを叩きつけられたのだ。

 

 

 

 

 

「…お疲れ様です」

 

「燐子さん。お疲れ様です」

 

「ちょっと!?燐子さん!?あれ、なんなんですか!?」

 

「えっ…?えっ……!?」

 

「桐ヶ谷さん、ストップ」

 

「なんで、ウェディングドレスであんな装飾ゼロなんて発想になるんですか!?」

 

そんな状況で私服姿の燐子が静かにユウ達の元へと歩み寄って来ていたが、透子は思わず燐子の肩を掴んで話を聞き出そうとしていたが、ユウが半ば強引に透子を燐子から引き剥がしたが、透子は構わず疑問を燐子に付きつけると、燐子は戸惑いながらもその問いに答えていた。

 

「えっと……それはみんなで考えて…あれが高松さん”らしい”と思ったからです。高松さんらしさを表そうとして話してたらああなりました…」

 

「はっ…?」

 

改めて説明を聞いた透子。

しかし、それでも装飾を全部排除すると言う振り切った発想になるのは透子には理解できなかったが、その後の言葉に続いた言葉が透子とユウ達の一番の違いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛音ちゃんは盛りたいって言ってたけど、あれ着るのは燈ちゃんだけだしね」

 

「あっ……」

 

ユウが放った言葉で透子は全てを理解してしまった。

 

彼らがデザインして作り上げたドレスは燈以外には誰も着ることを想定していない100%燈専用の一点物。

それに対して、透子がデザインしたひまりのドレスは彼女のためにデザインしたが、”自身のブランドの目玉”という側面も持ち合わせており、100%ひまりの為だけという事ではなかった。

 

そのほんの僅かな差が透子にはとてつもなく大きな差になったのを理解したが、妙にすっきりした気持ちになっていた。

 

「あ~…これはあたしの負けです…」

 

 

 

 

 

「「負け……?」」

 

「いや、CiRCLEで勝負だって―――あっ、そう言えばユウさん寝てましたね…」

 

「あ~…寝てたわ。指輪作りで徹夜してて、桐ヶ谷さん達とあった直後位から殆ど記憶にないわ」

 

「誰からも聞いてなかったんですか!?友希那さんいましたよね!?」

 

「伝えてないわ」

 

透子は自身の負けを認めたが、燐子とユウはその言葉の意味が理解できずに声を漏らすと、その言葉を聞いた透子は負けの意味を説明しようとしたが、その際にユウは疲れて眠っていたことを思い出していた。

 

ユウの方も自身が寝ていたことは覚えていたが、寝ていた際に何があったかなど知らず、誰からも教えてもらってない事を聞いた透子は頭を抱えだしていた。

 

「なんだよそれ…あたしの頑張りなんだったんだよ…」

 

「桐ヶ谷さん?正直、その勝負って意味あったの?」

 

「そりゃありますよ!!あんな指輪見せられたら負けられないって―――」

 

 

 

「あれ見ても言える?」

 

透子の悩みに対してユウはその勝負の意義そのものを疑問に感じていたが、彼女曰く意味はあるらしいのだが、その言葉を聞いたユウはある方向を指差していた。

 

 

「燈ちゃん!!出来たら一緒に写真撮ろ!!」

 

「えっ……」

 

「ともりん!!面白そうだからいいじゃん!!」

 

「あのちゃんが言うなら…」

 

「沙綾~!!」

 

「は~い」

 

彼が指さしたその先では燈とひまり、2人の主役が並んで仲良く写真を撮り始めていた光景が広がっており、そんな光景を見た透子は不意に笑みを浮かべていた。

 

「どっちも楽しそうですね…」

 

「でしょ?しいて勝ち負けつけるならどっちも勝ち…ですよね?燐子さん」

 

「えぇ…そうですね」

 

「今はそれでいっか!!」

 

ユウと燐子の言葉を聞いて透子は先ほどまで悩んでいたのが嘘のように元気を取り戻し、これで万事解決で一件落着。

 

そうなれば良かったのだが――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「み~~~つ~~~け~~~た~~~」

 

「えっ…?」

 

「何あれ!?」

 

 

 

「あれ…!!あの時の奴だ…!!」

 

「イマジン……!!」

 

この空気をぶち壊して、撮影をしていたチャペルに招かれざる客人(イマジン)が姿を現したのだった。

 





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