忘却の唄・消えかけのアルタイル   作:ツナ缶マン

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おはよーございます。
商店街の人とバトル。
イヴちゃんもはぐみも瞬殺されたけど、今回は雲行きが怪しいですね…
という事で、ゼロワンのお仕事5番勝負改め商店街5番勝負---どうぞ


76話-ワナワナ震え、罠を踏み越え―――

美咲&ひまりとテニス勝負をすることになったユウ。

しかし、彼はラケットを受け取ってからの表情は苦々しいものになっていた。

 

「ユウ、どうしたのよ?」

 

 

 

 

 

「俺、テニスしたことない」

 

「「「えっ………」」」

 

「意外ね…ユウがやったことないなんて」

 

ユウは”今までで一度もテニスをしたことがない”と口にしながらぎこちない動きでラケットを振っていたが、この場にいた全員が意外そうな表情を浮かべてユウを見つめていた。

部活でテニスをしている美咲とひまりと未経験の素人であるユウと試合になる訳がないと言う考えがひまり達は考えていた。

 

「えぇ~っと…どうします…?」

 

「やったことないのは予想外だよ…」

 

 

 

「ルールとか経験とか関係なく、勝負は勝負だろ?」

 

「それもそうですね…でも、マジで分からないんだよな…」

 

「とりあえず、あたしと上原さんで1ポイント分アップをやりますから見ててください」

 

だが、条件は関係なく勝負事に白黒つけるとマスキングの言葉にあろうことかユウが賛同すると、美咲達はコートに入るとアップと称して軽くラリーを初めるとひまりが美咲にポイントを取られる形でそのラリーを終えていた。

 

 

「これで1ポイントで、4ポイントで1ゲームで6ゲーム先取したら勝ちってルールですね」

 

「なるほど…大体分かりました……」

 

「あはは…今回は1セットじゃ長いので3ゲーム先取ってことで…とりあえず1ゲームやってみましょうか…?」

 

「はい。お願いします」

 

ユウはそのラリーを見て大体の流れを頭に叩き込むとそのまま最初に言ったように2vs1での変則ダブルスが始まった。

 

「最初はサーブですけど…やってみます?」

 

「アンダーサーブって下から上に軽く振る感じでやると良いですよ!!」

 

「……やってみます……」

 

サーブを譲られたユウだったが、最初に見ただけでやった事すらない。

だが、彼は先ほどの美咲の動きを思い出して彼女の動きをマネするようにボールを真上にあげていた。

 

「えっ…!?オーバーハンドサーブ!?」

 

「あはは…あたしがやったのと同じ様にしようとしてる…。明後日の方向に飛んでいきそう…」

 

「ふっ……!!」

 

完全な初心者であるユウが先ほど美咲がやったのと同じオーバーハンドサーブをしようとしていたが、その光景に明後日の方向に飛ぶと勝手に思い込んでいた美咲の前でユウがラケットを振り下ろし、その打球は――――――――

 

 

 

「「えっ……?」」

 

 

 

「あっちゃ~…力入れ過ぎたのと、振るタイミング早すぎたかな…?」

 

「ホームランだ~!!」

 

「ちょっとハグミさん…そんな言い方するのは…」

 

美咲の予想通りにユウが打った球は明後日の方向―――もとい、彼女達の遥か頭上を越えていったのを見た外野と打った本人はどことなく軽い空気を出していたのだが、それを真正面から見た美咲達は互いに顔を見合わせていた。

 

「上原さん…。球、見えた…?」

 

「見えなかった……。でも、ホームランしたからで…」

 

「あはは……」

 

 

 

「サーブで2回失敗したら相手のポイントになるから、もう1回出来るのよね…?」

 

「白鷺さん、そうだったんですね!!すいません。もう1回やりますね!!」

 

ユウがミスったサーブだったが、向かい合っていた2人はその球が全く見えていなかった。

 

それはサーブ自体が明後日の方向に飛んでいったせいだとひまりは考えていたが、美咲は完全に嫌なものを感じながらも、ユウの方は再びサーブをしようと頭上にボールをトスして

先ほどよりも少し遅れたタイミングでラケットを振るっていた。

 

 

 

 

「ふん……っ!!」

 

「「「「「えっ…?」」」」」

 

 

しかし、美咲達は球を見失ってしまうと、先ほどの様にまた打ち上げたのかとも考えていたのだが―――

 

 

 

美咲達の背後からガシャーン―――という音と共が聞こえてくると、2人は驚いた表情でゆっくりと自分達の背後に顔を向けていた。

 

「えっ…?金属のネットを突き破って……」

 

「ボールが当たった校舎の壁に焦げた跡が見えるんですけど…」

 

 

「今度はホームランじゃないけど、ネットに穴開けちゃった…!?……あれ?でも、バウンドしないとダメなんだよね…?」

 

 

彼が打ったボールは美咲達のコート上を跳ねることも無くそのまま金属製のネットを破って、校舎の壁にはボールが当たったと思われる場所に黒い焦げ跡が刻み込まれていたが、美咲達は何が起こったのか分かっていなかった。

 

しかし、外野のはぐみだけがそのボールを目で追えていて、何が起こったのかを口にするとユウ以外の全員が固まってしまい”何がどうなれば金属製のネットに穴が開くんだ―――”と心の中で同じ思いを抱いていた。

 

「あっちゃ~…これで1ポイントか~……バッティングは思いっきり叩いて遠くに飛ばせば走って何とかなるけど、テニスだと相手のエリアに入れないといけないから力加減が難しいな……」

 

 

 

「待って?この人このまま相手にするの…?」

 

「ボール当たったら即死しそうな感じするんですけど……」

 

失敗してポイントを取られたユウが楽しそうにしている一方、美咲とひまりは戦々恐々としていた。

 

彼が放つボールは殆ど見えておらず、威力は金属のネットを突き破るほど―――

もしもそんな球が身体に直撃したら即死するイメージが容易に想像が出来てしまったが、もはや始まった勝負から逃げることは出来なかった。

 

「うーん…でも、サーブがこれじゃ試合にならないな…。奥沢さん達がずっとサーブって事でいいですか?」

 

 

「待って?まだやる気なの!?」

 

「美咲…やるしかないよ…!!」

 

「こうなったら勝ち負けなんてどうでもいい…!!ボールを避けてでも絶対に生き残る…!!」

 

初めてのテニスとその失敗を楽しそうに受け入れるユウ。

そんな彼に対する美咲達は勝敗ではなく、生き残るという極めて原始的な目標の為に奮起し―――

 

 

 

 

―――勝負の決着が着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました!!」

 

「「い…生き残った……」」

 

ユウは満足気な表情を浮かべていたが、美咲とひまりは互いが生き残ったことを確かめ合うように抱き合ってその感触を噛み締めていた。

 

そして、肝心の勝負の結果は―――

 

「ユウが…負けた…!?」

 

「いや~!!負けた負けた!!文字通り完敗で全く勝負にならなかったね…!!」

 

「中島さんのボール…打ち上ったりバウンドしなかったりでまともにコートに入ってなかったじゃない。最後の方は多少はまともになってたけれど…」

 

「あはは…球技が苦手なんですよね。特に野球とかテニスとか道具を使うのがダメで、バットで遠くに飛ばすだけならまだしも、コートを狙うのに力加減が難しくて…」

 

ユウの完敗。それも圧倒的敗北であった。

彼のボールはその殆どがコートに入ることがなく、打ち上げてしまったり相手のコートにバウンドすることなく通り過ぎたりと散々たるものだったが、ユウは道具を使う球技が苦手だと言いながら笑って誤魔化した。

 

そんな彼を他所にマスキングはニコニコ顔でひまり達の方へと歩みよっていた。

 

「ひまり!!美咲!!よく勝った!!やるじゃねぇか!!」

 

「もうやだ…!!」

 

「生きた心地がしなかった……!!」

 

「でも、勝ちは勝ちだろ?」

 

「「うるさい!!」」

 

「次は教室だな」

 

「次の勝負は5教科の学力テストだって聞いてますよ。ユウさん1人の合計点と、みんなの中で点が良い人達の合計で勝負だって…」

 

「運動後にテストか…完全に消耗してるところを狙い撃ちか…」

 

「ユウ、頑張りなさい」

 

美咲達はユウの剛速球への恐怖から生き残ったのだが、マスキングはその恐怖が伝わらずに思わず声を挙げて、商店街チームは仲間割れの様になっていたのだが、勝負は残り2つ残っていて、マスキングがそのまま校舎の方まで戻っていく。

 

勝負の内容を聞いて消耗していると愚痴を零したユウを友希那が激励したが―――

 

「あぁ、テストを作った人達の中には燐子先輩と紗夜先輩もいて、友希那さんとかみんなもテスト受けるようにって言ってましたよ。あこもいますけど」

 

「えっ…?嫌よ…」

 

「ゆきちゃん行くよ~」

 

「ジブン達も行きましょうか…」

 

「そうね…」

 

友希那は一瞬で地獄に叩き落された。

そして、友希那はユウによって教室に引きずり込まれ、千聖や麻弥達も彼と同じテストを受けることになり、試験監督役として先ほどはぐみとの対決で仕事が無かった花音が試験監督役として彼らに問題用紙を渡していくが、これが罠だった。

 

 

「「「「読めない……!!」」」」

 

「国語と社会以外の3教科がなんで日本語以外で出題してるんだよ!!」

 

「えっと……そのテストは中島さん用だって渡されたけど…日本語じゃないの……!?」

 

「花音、私達のは変えてちょうだい……」

 

あろうことかユウ用に渡されたテストは3科目が問題が日本語ですらなかった。

完全に彼を負かすための罠であり、一緒にテストを受けていた千聖や友希那達は問題文が一切読めないという状況に陥っていたのだが―――

 

 

 

「英語はそのままなのはいいけど、数学がフィンランド語で理科がフランス語………グロンギ語だのオーバーロード語だの古代ファンガイア語に比べたら、この程度なら問題ないな……」

 

「ふえぇ~!?」

 

言語の壁と言う問題をすんなりと乗り越えて彼はそのままテストを続けていくのだった。





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