お仕事5番勝負改め、商店街5番勝負
これで決着!!という事で投稿です。
3人が調理に入ってから時間が経った頃、余りにも衝撃的なユウの登場から我に返っていった。
「初めて会ったけど…あの人一体何なんなんだよ……」
そんな中で彼と初めて会った有咲は思わず言葉を零してしまっていたが無理もない。
彼女からしたらオカマチックな服を着て現れて羽沢珈琲店の厨房へと消えていった完全な変人で完全に危険人物で完全に警戒していたのだが、彼女の呟きに他の人物達はそれぞれの記憶を口にしていた。
「あの人お菓子以外にも料理も出来るから!!ね?さーや!!」
「前にRiNGの厨房にヘルプしてたし」
「あれ?さーや、そんなのあったっけ…?」
「はぁ………」
「指輪とウェディングドレスも作ってたよ!!」
「は…?」
「スタント顔負けの運転も出来るわね…」
「はぁ……?」
「こころちゃんの家の人達をやっつけられる人……?」
「はぁあああああ!?なんだよそれ!?キャラが大渋滞してんじゃねぇか!?何者だよ!?」
その言葉に香澄が、千聖が、花音が彼の所業を口にすると有咲は即座にツッコミを入れていた。
料理はまだ分かるが、それ以外の内容は完全に異常で妄想か幻覚の類のそれにしか聞こえずユウが何者なのか気になって思わず口に出してしまうと、思いがけない言葉が返ってきた。
「うちの家政夫さん」
「は…?」
「私の新しいバイオリン制作を依頼してる職人です」
「えっ…?」
「ぇっ……私と友希那さんと…その………遠縁の親戚……です………」
「はぁああああ!?なんだよそれ!?訳分かんねぇ~!!」
レイヤと瑠唯に燈の言葉を聞いた有咲。
100歩譲って家政夫ならば理解出来なくはないのだが、そこに何がどうなればバイオリン作りの職人やら、友希那と燈の共通の親族などと言う新たな属性まで加わってきたことで彼女は絶叫した。
それだけでも属性が渋滞しているが、ここで更なる追撃が入る。
「あっ!!パパだ!!頑張れ~!!」
「そよりん、まだ足治ってないんだから、走るのはダメだって!!…やっほ~ともりん。様子見に来たよ」
「そよちゃんに…愛音ちゃん……?」
「はぁ~~~!?パパだぁ~!?」
「えっと有咲?これは――――――」
羽沢珈琲店の扉が開き、そこから愛音とそよの2人がやって来るや否やそよが奥の厨房にいるユウに声をかけたのだが、その言葉に有咲は何度目かの叫びを挙げながら驚きの余り彼女は椅子から転げ落ちてしまったのだが、そんな有咲に沙綾が素早くそよの事を説明し始めていた。
「――――状況は理解はした……納得出来ねぇけど…!!」
「何騒いでるの?」
「あっ!!パパ!!」
「ユウさん、お疲れ様です!!」
「愛音ちゃん、そよちゃんのお世話ありがとね?」
「いえいえ…って、ユウさん?なんで日菜ちゃんの首根っこ掴んでるんですか?」
有咲がなんとか説明を聞いて理解を示したタイミングでユウは厨房から顔を出してきた。
それだけなら良かったのだが、彼は日菜の首を掴んで引き摺っているのが問題だったのだが、彼自身は完全に諦めた様な表情を浮かべていた。
「これ?コイツが厨房入って来たから摘まみだしてるとこ…氷川、 さっき”もう邪魔だから入るな”って 言ったばかりだろうが!!」
「あひんっ!!」
「「えっ……」」
「手も洗わずに入ってベタベタ厨房内を触るな。衛生的に問題があるだろうが…」
「ヒナさん……あんまりです……」
「うちの日菜ちゃんが…申し訳ありません…!!」
「すいません……すいません……!!」
「いや…白鷺さん達は何も悪くないので泣かないでもらえます!?」
ユウは状況を説明すると日菜を話すと同時に彼女の尻をフライパンで引っ叩く。
その時に出た日菜の言葉にそよ達が困惑する一方でユウは何食わぬ表情で日菜に説教をしていたが、そんな彼女を見て同じバンドの3人がさめざめと泣き始めていた。
―――そんなこんなありつつ、時は流れて約束の時間がやってきた。
「待たせたな!!」
「こっ…こんにちは……」
「あっ!!マッスー!!それにロックも来たんだ!!」
「ますき先輩!!こっちは2人とも準備出来てますよ!!」
「ロック!!」
「はい~!!」
時間通りにマスキングがロックを連れて羽沢珈琲店に戻ってきた。
そんな彼女につくしが準備が出来ている事を告げると、マスキングは獰猛な笑みを浮かべながらロックが持っている自身のケーキを見せつける。
「アタシから行くぜ!!これがアタシのイチゴのケーキだ!!これでアタシが勝ったら”キング”って呼ばせてやる!!」
「……」
「口直し用の珈琲どうぞ」
「では、いただきます……」
そのケーキをユウが静かに眺めている前でマスキングの手によってケーキが8等分に綺麗に切り分けて5つを審査員役へと出されると、つぐみが口直し用の珈琲を審査員の席に置いたのを見た瑠唯の一言で審査員役の5人が食べ始めていた。
「しっかりとした甘さがあるけど、イチゴの微妙な酸味がいい!!」
「桐ヶ谷さんの言う通りね…」
「それにこのクリームも口当たりがとっても滑らかだね」
「ますきのケーキは安定だね……」
「マスキングのケーキは前に食った事あるけど、やっぱり美味いな」
5人からの評価は概ね好評。
それを見たマスキングは嬉しそうな笑みを浮かべると、自信満々と言った表情を浮かべながら残っていた2つをユウとつくしに差し出していた。
「ほら、食えよ」
「わぁ!!ありがとうございます!!……美味しいです!!」
「だろ?」
「どうも……」
差し出されたケーキを受け取るとつくしは一口食べて出てきた感想を聞いたマスキングは嬉しそうにしながら頷いていた。
その一方でユウの方は2口程食べただけでその手が止まってしまった。
「…うん。俺はもういいかな」
「食べないなら、モカちゃんが貰いますね~」
「ちょっと…!!」
「あぁ?なんだよ。全部食わねぇのかよ?」
「……この後に二葉ちゃんのもあるので…食いすぎると口の中が甘くなりすぎて味の評価出来なくなりそうですから」
「はい!!」
全部食べないユウに不満そうな表情を浮かべていたが、ユウはそれらしい理由を口にしながら自身が食べていたケーキを捨てようとしていたが、モカがそのケーキをユウから取って口に入れてしまったのを見た彼は口直しの珈琲を口に含んでいた。
そうしてマスキングの試食を終えると今度はつくしの番になり、彼女は厨房から自身の料理を持ってきた。
「次は私のアップルパイです!!今切り分けますね!!」
「すっげー!!上の面の網目とかめっちゃ綺麗じゃん!!」
「桐ヶ谷さん、落ち着きなさい」
「でも、色がきれいだな…」
「つくしちゃんが丸いアップルパイを持ってくる姿はまるで赤ずきんのようだね。そう思わないかい?レイヤちゃん」
「赤ずきん…?確かにその通りですね」
つくしが用意したのは円形のアップルパイ。
それを皆の前に持ってくると彼女はそれをマスキングと同じように切り分けると審査員とマスキングとユウの元へと持ってくると、皆が何も言うでもなくアップルパイを口にし始めていた。
「パイ生地のサクサク感と火の通ったリンゴの柔らかさが良いわね」
「確かにその通りだけど、シナモンの匂いが私は気になるかな」
「瀬田さんの言う通りシナモンは好き嫌いが別れるから仕方ない部分ですね」
「おいしい…!!サクサクしててしっかりリンゴって感じがする!!」
「レイヤの語彙が死んでるな…まぁ、言いたいことは分かるけど……」
「美味いなこれ!!」
「そうだね。確かにシナモンは気になる人もいるだろうけど、あんまり俺は気になんないかな。
それじゃ、最後は俺のか……持ってくるね」
審査員やマスキングが好評する中でユウも同じ様に彼女のパイを賞賛して、マスキングのケーキと違って分けられた分を完食していた。
そして、彼は丁寧に皿をテーブルに置いてから自身のお菓子を取りに行き、厨房から黒っぽいモノを手にして彼は皆の前まで戻ってきた。
「お待たせいたしました」
「この匂い…チョコケーキかな…?」
「でも、珈琲の匂いも混ざってるような気もするわね…」
「今からこちらを切り分けさせていただきます」
皆がユウが持ってきたモノが何か分かっていなかった。
誰かが匂いからチョコレートケーキだと口にするも、ユウはその言葉を流して綺端を切り落として綺麗な長方形に形を整えるとそこから綺麗に10等分に切り分けて更に盛り付けてから最後に切り分けてから、最後の仕上げとして1つずつに中央へ金粉を散らして見栄えを整えた。
「こちらで完成でございます」
「さっきつくしちゃんの素朴な見た目とは違って、豪華な感じする…」
「なんつーか…高貴って感じかな?」
「断面の層になっているね」
「金粉も使って…見た目もかなりこだわってますね」
見た目の感想を口にしていたが、それを見た透子が驚きながらその料理の名前を口にした。
「ユウさん!!これ、オペラですか!?」
「「「オペラ…?」」」
「桐ヶ谷さんの言う通りですよ。これはオペラって言って……平たく言えばフランス発祥のチョコレートケーキになります。
佐藤さんと二葉ちゃんと、俺に勝ってスイーツ強請ってきた上原さん達と場所を貸してくれた羽沢さんも……」
聞き馴染みのない名前に審査員の面々が首を傾げたが、そんな彼女達にユウが簡単に自身の作ったものについて説明をしながら、切り分けていた他のモノをマスキングやひまり達の前に置き―――
「
フランス語で皆に食べるように促すと、その言葉の意味が分かっていないが空気と彼の仕草で何となくの意味を汲み取って皆がユウの作ったケーキを口にした。
「「「「「………」」」」」
「あら?誰もしゃべらなくなった……?ともりんどういう事…?」
「分かんない……」
「有咲~?食べないなら貰っちゃうよ~?」
それを口にした者全てが言葉を出さずにマジマジと彼が出したケーキへ視線を落としていたのだが、食べているのを見ている人達は今の状況がまるで呑み込めずに困惑していた所に香澄が動かなくなった有咲のケーキを食べようと手を伸ばしたのだが―――
「あうっ!!さーや、有咲が急に叩いてきた~!!」
「香澄がケーキ取ろうとしたからでしょ…?」
「うぅ~……」
有咲はケーキに手を伸ばした香澄の手を叩き落した。
いきなりのことに驚いた香澄は沙綾に泣きついたが完全な正論を叩きつけられて涙目になってしまったが、食べ物の恨みは恐ろしいと知っている彼女は香澄の事を宥めたりせずに有咲達の方へと視線を向ける。
するとそこには――――――
「美味い…!!美味い…!!ユウさん!!美味いですよこれ!!」
「あぁ……珈琲の苦みがあるけれど、その分甘さ控えめのクリームがより際立ってるね…!!」
「香澄に拉致された時はふざけんなって思ったけど、こんな美味いもん食えるとか来て良かった…!!」
「普段から作ってもらう料理も良いけど、これもおいしい…!!」
「えぇ……私のボキャブラリーでは味の表現が出来ないですが美味しいです」
「美咲!!これ!!すっごい美味しいね!!」
「うん。こころの家で似たようなの食べたことあるけど、あれより格段においしいんだけど……」
「見た目も綺麗だし、珈琲の苦さが良いアクセントになってるよ!!レシピが気になるね…」
「つぐみ先輩!!これのレシピ教えてもらうことになってますから!!それにしても美味しい~!!」
「うっ……うめぇ……」
「冷やす時間が足りなかったかな……70点。これじゃ鳳蓮さんに出しても認められないな…」
審査員が2皿食べた後とは思えない程の速度で食べ始めていたが、その味をうまく言葉に表せない様子を見せていたが、それは他に食べている面々も同様でユウのケーキを絶賛しており、ユウを目の敵にしていたマスキングですらその味に震えていた。
そんな中でユウは見た目を整えるために切り落とした端の一部を口に放り込んで自身の味を確かめていた。
「あ~!!1人だけ食べてる~!!」
「戸山さん。これ味見ですから……それに切れ端ですよ?」
「ずるい~!!私も食べたい!!食べたい!!食べた~~~い!!」
「……そこまで言うなら」
ユウの味見に香澄が声を文句を言い始めると、そんな彼女に呆れながら彼がケーキの端を差し出すと、香澄だけではなくケーキを渡されなかった全員の手が伸びて殆ど欠片程しかないケーキを一口で頬張った。
「「「「「おいし~~~~~~~!!」」」」」
「そうですか……。それじゃそろそろ判定に入ってもらいましょうか?」
皆がユウの欠片ほどのケーキを絶賛するのを見てから、そのまま審査員の方へと向き直って判定を求めると瑠唯達5人は食べた中で一番良かったものを挙げていった。
「アタシは中島さんかな~。ふーすけのも良かったけど、ケーキの端を揃えるとことかポイント高いっしょ!!」
「私も中島さんのケーキに1票です。素晴らしい味でした」
「そうだね……どれも良かったけれど、私もチョコケーキかな?つくしちゃんの素朴な見た目と味も良かったけれど、こちらのオペラだったかな?このケーキの高級感ある儚い見た目と味の方に強く惹かれてしまったよ」
「……私もこのチョコケーキだな。作ったやつの見た目が気になるけど、それ以上にうめぇ……」
「う~ん。私はつくしちゃんかな?珈琲の苦さとシナモンの匂いが気になったけど、珈琲よりもシナモンの方がいいかな?」
「……
「うっ…!!」
「薫さん!?しっかりしてください!!」
「ユウさん!!おめでとうございます!!」
判定結果は4対1対0―――
結果はユウの勝利という事で決着がついた。
それを聞いたユウは頭に巻いていたターバンを外してから審査員に笑みを浮かべながら礼の言葉をかけたが、そのビジュアルに薫が完全にノックアウトされて机に突っ伏してしまった。
そんな中でお菓子作りと間近で見ていたつくしが彼の事を称え始めていたが、ユウ個人としてはこの結果に満足いってはいなかった。
「二葉ちゃんありがとね?でも、こういうのは傲慢かもしれないけど…プロに教わった身としては満場一致で取れないとダメだと思うけどね…」
「いえ!!その差も味の好みってだけですから完敗ですよ!!」
「反省して次につなげればいいか……」
「マジかよ………どこがダメだったんだ……」
彼個人としてはレイヤがつくしに票を入れた事を悔しがっていたが、その差はレイヤの味の好みと言う個人的な部分での決着だと言われて彼は反省していた。
そんな中で自身があったマスキングは項垂れると、ユウはマスキングのケーキの感想を口にした。
「問題はスポンジ部分が堅かったですね。クリームも若干固めで口の中に入れてもあまり馴染まないせいで口当たりが気になりました。おそらく審査員役の方々もそこに気が付いたんでしょうね……」
「マスキ先輩のケーキも味は良かったですよ!!」
「それじゃ、これつくってる間に俺と二葉ちゃんの2人で作ったマフィンがあるからみんなで食べよっか?」
「「「「「はーい!!」」」」
「そう言えば、ユウさん!!その恰好…お菓子作りの師匠の服って言ってましたけど…どんな人だったんですか?凄いオシャレな女の人とかですか?」
つくしとユウの細かい指摘を聞いてマスキングは完全敗北を理解して近くにあった椅子に座りこむ。
それを見たユウは自分達の料理の間につくしと2人で作ったお菓子を食べることを提案するとマスキング以外の皆がそれに食いついて返事を返す光景を笑いながら見ていると、つくしはユウの格好の元になっているお菓子作りの師匠について聞いてしまった。
「ガタイのいいマッチョのオカマ」
「えっ…?」
「元フランス軍外人部隊出身のつけまつげした厚化粧してる日本出身の変人オカマ」
「えぇ~……」
そして、返ってきた師匠のイメージはつくしが考えていたものとは完全にかけ離れたもの。
それを聞いてしまったつくしは自分の夢見たモノが一瞬で崩れ落ちていくのを感じながらお菓子をとるために再びユウと共に厨房に消えるのだった。
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