忘却の唄・消えかけのアルタイル   作:ツナ缶マン

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新章始めました。
完全においたわしい事になることが確定するようなスタートですが…
どうぞ!!

ここから先は地獄だぞ…?



Kapitel-9
82-邂逅


夕暮れの空を見上げながらユウは街を歩いていた。

 

「………」

 

だが、そんな事をしているユウの表情はどこか上の空になっているようにも見えるのだが、誰もがそんな彼を気にする様子もなく急ぎ足で街を歩いていた。

 

 

「ゆーくん。何やってるの?」

 

「………」

 

「無視!?」

 

「もう!!ゆーくん!!あたしが声をかけてるんだから無視しないでよ~」

 

いや、歩いていたと思ったのだが、このタイミングで彼の事を呼ぶ声がしたものの彼はその言葉に返事を返さずに呆然と空を見上げていた。

 

そんな彼の態度にその声の主は不満そうな表情を浮かべながら彼の懐に入り込むほどに距離を詰めて抗議したのだが、そのタイミングでその声の人物とは別の人物の声が響いてきた。

 

「日菜、いきなり走って歩道橋を渡ったと思ったら…大きな声を出して―――ひっ……!!」

 

「あっ!!おねーちゃん!!」

 

「日菜…とにかく離れて……」

 

「………」

 

最初に声をかけてきた人物を追いかけてきたのは紗夜、そして最初に声をかけてきたのは双子の妹である日菜。

紗夜は日菜がユウに駆け寄ったのを追いかけてきたのだが、ユウの顔を見た途端に本能的な恐怖を感じて小さな悲鳴を零してしまっていたものの、その悲鳴は幸いにもその言葉は誰に耳にも届いていなかったのだが、その後に口にした日菜への注意も誰の耳にも届いていなかった。

 

「お~い。ゆーくん。無視しないでよ~?」

 

「……」

 

 

「ちょっと…ひっ…日菜…っ…!!」

 

無視されてしまった日菜はユウの横まで歩いて行くと、不意に彼の脇腹を突き始めるもユウが何かを考えてるような表情を崩さないでいる不思議な光景が紗夜の前で繰り広げられていた。

 

普段の彼女ならば日菜を強引に引き剥がしてでも止めるはずなのだが、ユウに対する本能的な恐怖心に駆られてしまい、遠巻きに震える声で日菜へと声をかけることしか出来なかったのだが、その瞬間は訪れてしまった。

 

「んっ…?氷川?……それに紗夜さん?」

 

 

「あっ…!!ゆーくん!!やっと気が付いたんだ!!」

 

「ひっ……っ!?」

 

「この人、俺の事憶えてないのに、なんで毎回震えてんだろ…?」

 

ユウはようやく日菜達の存在に気が付いて氷川姉妹のいる方へと顔を向けると、不満顔の日菜とその少し後ろで紗夜がプルプル震えていた。

氷川姉妹を知る人達が見れば何とも不思議な状況なのだが、ユウからしたらこの反応は慣れてしまっていた、その一方で自身の事を憶えてないのに怯えられて避けられていることへの疑問を口にするものの、その言葉は日菜によって掻き消されていた。

 

「もう!!さっきから声かけてるんだから無視しないでよ!!」

 

「ん?……考え事してたから全く気が付かなかった」

 

「気づかれてなかったの!?ワザとじゃなくて!?」

 

 

「あぁ~……本当に気が付かなかっただけで無視するつもりはなかった」

 

「ヒドイ!!でも!!気が付かなかったからって無視していい理由にはならないでしょ?」

 

「それは悪かった。紗夜さんもすいません…」

 

 

 

「ぃ……ぃぇ……ぁぅ………」

 

日菜は無視されたことを怒ってユウに声を挙げた。

確かにいくら彼女達に気が付かなかったとは言えども意図せずに日菜を無視をしてしまったことにユウは自身の非を認めて一緒にいた紗夜へも謝罪をしたのだが、それでも紗夜はプルプルと震えながら首を縦に小さく振っていた。

 

謝罪をしたことでこの話を終わりにしようとユウはしたのだが――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちが脇腹突っついてもしばらく無視してるんだもん!!ホントは気が付いて意地悪で無視してるって思ったんからね!!」

 

「は…?紗夜さん、今のホントですか…?」

 

「ぇ…えぇ…本当……です……」

 

「………」

 

日菜はこれで終わらなかった。

彼女はユウにしたことを自白していたのだが、ユウは彼女が腹を突いていたことすら全く気が付いておらず、それをを聞いて驚いた表情を浮かべるとそのまま彼は紗夜へと確認を取ると彼は無言になって日菜に視線を向けていた。

 

「氷川……」

 

「ん~?ゆーくん?どうしたの?」

 

ユウに声をかけられた日菜はニコニコした笑みで嬉しそうにしていたのだが――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「いきなり人の脇腹を突くって何を考えてるんじゃ~~~!!」

 

「ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~~!!」

 

 

「ひっ……!!」

 

ユウは顔面を掴んでそのまま指先で締めあげる―――所謂アイアンクローなどと呼ばれる行為を容赦なく日菜に繰り出して折檻し始めた。

 

彼の凶行とも言える行動を見た紗夜は小さな悲鳴を零して震え始めてしまったが――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ///ゆーくのせいで頭が割れちゃう~///バカになっちゃうよ~///」

 

「反応ないからって人の脇腹を突く奴はもうバカだろうが…っ!!」

 

「ひぃ~ん///ダメェ~///」

 

「………」

 

ユウからの折檻を受けている日菜を見て紗夜は完全に言葉を失ってしまった。

 

恐怖とは違う理由でプルプル震えて艶声を挙げる妹の姿を見せられる。

そんなある意味では地獄よりも酷い光景が繰り広げられてしまっては言葉を失ってしまうのは仕方のない事だった。

 

「…ったく、家に帰ったら紗夜さんに説教してもらえ」

 

「はぁ~い///」

 

「これ、絶対に反省してねぇ…」

 

そんな紗夜に気づかぬままユウは日菜への折檻を諦めて彼女を解放した。

そうするとユウは日菜達から離れるように歩き始めようとしたのだが、その行動は即座に日菜によって妨害されてしまった。

 

「ちょっと!!ゆーくん、どこ行くの?」

 

「晩飯の食材でも買いに行こうかなって」

 

「あたし達を置いて買物!?気遣いできない男の子はモテないよ!!」

 

 

 

「モテるとか気にしてないし…紗夜さんが俺の事怖がってるし、一緒にいるのが辛そうじゃん」

 

「えっ…?」

 

日菜は自分達から離れていこうとしたユウに気遣いが出来ないと文句を言うも、彼としては紗夜を気遣っての行動。

それを彼としては口に出すつもりは無かったが、思わず零れてしまったそれを聞いた紗夜は目を丸くしながら彼を見ていた中でも日菜はブレずに我が道を行っていた。

 

「ゆーくん、うちでご飯一緒に食べようよ」

 

「いや…」

 

「あっ!!1人だとダメ?だったらおデブちゃんも一緒にどう?」

 

「デネブさんは今日はいないよ。両親が出かけてる燈ちゃんの家でご飯作るって…やっべ…」

 

日菜はあろうことかユウを食事に誘っていた。

その際に彼の逃げ道を塞ごうとデネブの事も誘おうとしたのだが、ユウはうっかりデネブがいないことを口を滑らせてしまい、それを聞いた日菜はユウの腕にしがみ付き始めた。

 

「離れろって…!!」

 

「いいじゃん!!ご飯作ってよ~!!」

 

「お前、最初からそれが狙いだろ…!!ってどこにこんな力あんだよ!?」

 

「細かいことはいいじゃん~!!ご飯作って~!!」

 

「紗夜さんは俺と一緒で良いんですか?」

 

日菜は恥じらいを完全に捨て、本音を一切隠さずにユウに飯を強請り始めた。

たまらずユウはケガをしないように最低限の加減をして日菜を引き剥がそうとするも、予想以上の力に思わず言葉を漏らすが、それでも日菜が剥がれない状況に自身の事を避けようとする紗夜が日菜の提案を却下する事を狙って声をかけたのだが―――

 

 

 

 

 

 

「ぇ…はい……?」

 

「ほら!!おねーちゃんもいいって!!」

 

「えっ…?」

 

「いや待て!!今のは聞き返す口調だろ!?」

 

「けってーい!!」

 

紗夜がユウへの確認の返事をしたが、日菜はその言葉を勝手に肯定の返事だと捉えてしまった。

すぐにユウがツッコもうとしたが、彼女は聞く耳を持たず我先に歩いて行ってしまうその背中を見ながらユウは紗夜に顔を向けていた。

 

「これ、逃げたら後で文句が凄そうだな……紗夜さん、本当に良いんですか?」

 

「ぇ…ぁ……日菜が…すいません……私は…その…大丈夫…です……」

 

「紗夜さんが悪いわけじゃないんですよ?」

 

「ぃ…行きましょう……」

 

「紗夜さん、そっちは紗夜さん達が渡ってきた歩道きょ―――」

 

ユウは逃げた時の日菜の行動と、震えている紗夜を見て完全に諦めモードへと入ってしまった。

 

紗夜としても彼のことは怖いが、先ほどの様な日菜と出来るだけ2人で居たくないと言う一心で何とかOKを出して歩き出そうとしたのだが、紗夜はあろうことか来た道をそのまま戻るかのように自分達が渡ってきた歩道橋へと引き返した事にユウがツッコミを入れようとしたのだが――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 

その瞬間に事件は起きた。

 

 

突如として紗夜が戻ろうとした歩道橋の上から悲鳴が響くと、ユウは即座に声がした方向に視線を向けた先には、夕日の逆光で顔は見えていないものの1人の女性が階段の上の方から真っ逆さまに落ちる瞬間を目撃してしまった。

 

 

 

ユウの身体能力ならば階段の一番下で女性を受け止める事は容易いのだが、今回はそうもいかなかった。

 

「紗夜さん…っ!!」

 

「ぇ…?」

 

既に紗夜は階段の中程まで登ってしまっており、紗夜は上から人が落ちて来ている光景に加えて、ユウに声をかけられてしまった事で身体が硬直してしまい完全に動きが止まってしまった。

 

これではこのまま受けてめても落ちてきた人に巻き込まれて紗夜が確実に怪我を負ってしまうことを即座に理解したユウは文字通りの全速力で紗夜の元まで駆け抜けていた。

 

 

「きゃ…!!」

 

 

紗夜の元まで駆け抜けたユウは彼女を階段の端へと押して人が落ちて来るルートから逸らしたその直後、彼は落ちてきた女性を受け止めたが紗夜を押しだした直後という事もあって体勢は最悪。

その結果―――

 

 

 

 

 

「不味い…っ!!」

 

ユウは落ちてきた女性を支え切ることが出来ずに足が階段から離れていってしまう。

その感覚で彼は女性と2人で階段を落ちることを察すると、女性のケガを最大限減らそうとその女性を自身の方へと抱き寄せるとそのまま2人で一番下まで落ちていった。

 

 

 

 

「っ…!!」

 

「いったぁ~……!!あれ…?そんなに痛くない…?」

 

「大丈夫ですか?ケガは……?」

 

「えっ…はい。大丈夫です…」

 

「はぁ~良かっ――――えっ……」

 

人を抱えた状態でユウは地面に叩きつけられる衝撃と共に頭部から出血しているのを感じながらも、自身が抱えている女性から返ってきた言葉に安堵して、彼は抱きかかえた女性を放すと彼女はゆっくりとその顔を上げたのだが、彼は助けた女性の顔を見た瞬間に困惑の言葉が漏れてしまった。

何故なら彼が身体を張って助けた人物の正体は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉…さん……?」

 

自身の血の繋がった姉である今井リサだったのだから―――

 

 

 

 




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