ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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攫われたしゅうら。ホテルに潜む敵の目的とは?


Ep.17:太陽の翼と新緑の剛球

「こちら陽野、クリーチャー反応が1階へ向かって来ます!」

『りょーかい、そっちで待ち伏せてて。反応はエレベーターからかな?』

 

テルタカとヨウコは、食後に館内の見回りを始めようとしていたところでほぼ同時にクリーチャー反応の出現をデュエマフォンで把握していた。1階に来ていたテルタカの方へと上階からクリーチャーの反応が近付いて来る。

 

「照合よし、《緊縛の影バインド・シャドウ》《萎縮の影チッソク・マント》に……VAN・ベートーベン?これはしゅうらさんか……!」

『まずいね、閉所で奇襲されたのかも……あっ、ベートーベンの反応が消えた!』

「野郎ッ!!」

 

エレベーターが降下してくる。扉が開き、テルタカが駆け込むが……そこには誰もいない。

 

「いない!?反応は……上に移動中!エレベーターシャフトから逃げる気か!」

 

上を見れば、エレベーターの天井の1箇所がこじ開けられている。ここから上へと脱出したらしい。

 

「っ、これは……しゅうらさんのスマホか!」

 

床に落ちていた、しゅうらが落としたスマホをテルタカが発見する。クリーチャーが彼女を攫った事は確定的だ。

 

「相模野さん、反応は!?」

『6階でシャフト外に出た!すぐ向かって……っ、この位置は、窓から外に出たかも!そこから屋上へ向かってる!』

「敵がいるとしたら屋上か……すみません、一旦通信は切ります!」

 

ヨウコとの通信を切ると、テルタカはスマホの電話帳から番号を呼び出し、コールする。相手は無論……以前連絡先を交換していた、水晶だ。

 

『はい、もしもし。陽野さん、どうか──────』

「しゅうらさんがクリーチャーに攫われた!今屋上にいるらしい!」

『えぇっ!?お姉ちゃんが!?』

「こっちは今から屋上まで飛ぶ!相模野さんと合流して後から来てくれ!」

『ま、待──────』

 

通話を切るとテルタカはエントランスホールから外へ出て、デュエマフォン・アプリを再起動させながらホテルの上方を睨んだ。

 

「行くぞ、ボルシャック!」

『うむ、往くぞテルタカ!』

『Duel field expansion. Contract armor awakening.』

 

 

* * *

 

 

『───のような地で情報を集めていたら、網に引っかかるとはな』

「う、ぅ……っ!?」

 

目が覚めると、しゅうらはホテルの屋上にいた。そこには、青白い炎を纏いながら虚ろな目で立つ宿泊客や周辺地域の住民が数人、そしてそれらの前に立つ2体のクリーチャーがいた。

青白い炎を噴き出す馬に跨る、半身が骸骨のような亡霊の騎士。そして、赤いマントを羽織り、4本の腕で銃と剣が合わさったような武器を持つ悪魔の如き姿のクリーチャー。しゅうらはそれらの名を知らないが、只者ではない事だけは感じられた。

 

『ほう、目覚めたか……好都合だ』

『如何イタシマス、バルクライ王様』

『計画通り、この娘にこやつを取り憑かせる』

 

バルクライ王と呼ばれたクリーチャーが手を翳すと、無数の骨が組み合わさって形作られた、大蛇のようなクリーチャーが現れる。これも青白い炎のようなものが中に入り込み動かしている……霊体のクリーチャー「ゴースト」の1体である。

ゴーストという種族は、肉体を捨てて精神のみで「永遠の生」を得ようと試みている者達であり……闇の上位種族『ダークロード』の奴隷として存在している。

 

『オオォォォオォオォォォオ……』

「ふぐぅ!?んんむぅー……ぷはぁっ!?あ、貴方達、なにをする気なの!?」

『キサマニ宿ルドラゴンノ力ヲ利用スル。悪霊ニ取リ憑カセ、傀儡トシテ』

「っ!?」

『小娘、お前は知らぬであろうが、その身に宿るドラゴンは他のドラゴンや「コマンド」を封じる力を持つ。故に、我らが主に仇なす「デュエルマスター」共と対するには最適の戦力となる』

 

《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》。しゅうらに宿るこのクリーチャーの力は、現状のDGAの最大戦力たるデュエルマスター達にとっても大きな脅威となり得るものだ。

サキト・テルタカ・ユウキの3名はデッキを構成するクリーチャーの大半がドラゴンかコマンド種族であり、まともに戦う事も出来なくなる。ヨウコはジャイアントが大半ではあるが、攻めと守りの最大の要であるゴルファンタジスタはドラゴン故に封じられてしまう。抗えるのは、魔道具使いのリュウのみであろう。

 

『さて、こやつらゴーストの多くは特定の感情の持ち主に反応して憑くが……この娘に憑かせるには少々仕込みが要るな』

「し、仕込み……?」

『バルクライ王様、我ガ憑イタ者ノ記憶ニヨレバ、コノ娘ハドウヤラ奏者ノヨウデス』

『ほう、奏者か』

 

顎に手を当て考え込むバルクライ王。そして、一つの案を彼は思い付いた。

 

 

 

『ならば、この小娘の指を潰せ。1本残らずだ』

 

 

 

その言葉に、しゅうらの身に悪寒が走る。このクリーチャー達は目的のため、しゅうらを痛めつけるつもりだと彼女は思い至った。

 

『戦力ニスルノデアレバ、指ヲ使エナクシテハ拙イノデハ?』

『なに、治療はしてやるとも。ただし、元通りにはせぬ。歪な形に治癒すれば、奏者としては死んだも同然』

「ひ……!」

 

しかし、彼らの意図はしゅうらの想像よりも悪辣で恐ろしかった。バルクライ王は彼女の両手を戦いに必要な機能のみ残させ、ミュージシャン生命を完全に断つつもりだ。

 

『デハ治療ヲ終エルマデ、霊ヲ憑カセタ同種ノ雄共ニ嬲ラセマショウゾ。サスレバヨリ「絶望」モ深マリマショウ』

『ふむ、良かろう。では取りかかれ。奴らが来る前にだ』

「い、嫌……!助け……っぐ!」

 

再び口を覆われ、亡霊達に身動きを封じられ屋上に這いつくばらされる。捻り上げられた腕を悪霊の騎士が掴み、霊に憑かれた観光客達が彼女ににじり寄ってゆく。全てはしゅうらを絶望させ、「絶望」を名に冠する霊の餌食とするために。

 

「(みんな……水晶……!陽野さん……!)」

 

無理矢理手を開かされ、人差し指に手がかけられる。1本1本順に潰してゆくつもりだろう。

 

「(──────助けて!!)」

 

抵抗出来ぬままに、訪れるであろう激痛に恐怖する。しゅうらの全てが破壊されんとした時──────。

 

夜空の色が、朱く染まった。

 

『ッ!?』

『ちぃっ、奴らめこの建物と周辺を全て結界で覆ったか!早く済ませろ!』

『御意──────』

 

 

 

「『そこをどけぇぇぇぇぇぇぇッ!!』」

 

 

 

突如として、空に太陽が昇った。

否、それは炎を纏う人型。燃え盛る翼を広げたそれは、屋上へと急降下すると大きな腕で悪霊の騎士を掴み、しゅうらの指を潰さんとした彼の者を先に捻り潰した。

 

『ゴォォオォオオォ!?』

「無事ですか、しゅうらさん!」

「陽野、さん……?」

「少し熱いですが、辛抱してくださいね……っ!!」

 

テルタカが炎の翼でしゅうらの身体を包む。彼女の身体に入り込んで動きを封じ、呼吸を妨げていたゴーストが焼き払われた。一瞬だけ熱を感じるが、それはすぐにしゅうらの身を暖め癒す物へと変わってゆく。

 

『存外早かったな……貴様がデュエルマスターとやらか』

「ああそうだ。お前は……《大邪眼バルクライ王》、例の真邪眼騎士団とやらの手先だな」

 

ゴーストに取り憑かれた人間達を従えたバルクライ王と、赤い甲殻で形作られた鎧を纏うテルタカが対峙する。

 

「俺とバクテラスの力で、お前を打ち砕くッ!!」

『そう簡単に行くと思うな、人間め!かかれっ!!』

 

ゴーストに憑かれた人間達が宙に浮き上がり、襲い来る。しゅうらを抱えたままテルタカは迎撃せんと身構え──────。

 

「『そりゃあ!!』」

『ゴァ!?』

 

飛来した白い球に1体が撃ち落とされた。バルクライ王を挟んで屋上の反対側、ヨウコとJack-Potの面々がそこに立っていた。

ヨウコの姿は、白いゴルフウェアに見える装甲に金色の装飾、そして緑色の太い尾が腰から生えた姿!

 

「ゴルファンタジスタ参上!なんてね!」

「お姉ちゃん!大丈夫!?」

「しゅうらさん、皆さんのとこへ……ちょっ、危ないから離れ……っ!」

「うぅ……っ」

「あら……お熱い感じだったかしら」

「怖い目にあって混乱してるだけです!仕方ない、フォローお願いしますね……っ!!」

 

しがみついて離れないしゅうらを抱えたまま、寄って来るゴーストに憑かれた者達を蹴りと足払いで叩きのめしてゆくテルタカ。業を煮やしたか、バルクライ王は更なるゴースト達の潜伏を解かせ、屋上に呼び寄せて行く。

 

『雑兵ではあるが、こ奴らの数を舐めて貰っては困るな!』

「なんの、行くよ!『フル……スイングッ!!』」

 

ヨウコがゴルファンタジスタのクラブを振るい、白球をフルスイングで打ち出した。強烈な回転がかかったゴルフボールは嵐のような突風を纏い、ゴーストの群れを吹き飛ばしてゆく!

 

「あたし達の剛流振(ゴルフ)は生命エネルギーの回転を纏う!肉体の無いゴーストなんかじゃ耐えられないよ!」

「しゅうらに手を出そうとしやがって、ギッタギタにしてやるー!」

「流石にアタシも今回は怒ってるから」

 

残ったゴースト達も、基本的に力の弱い者ばかり。不意打ちや拘束などの搦手無くして、ドラゴンの力を使うJack-Potの面々には敵わない。

 

「『これで終わりだ!』」

『ぬかせっ!魔弾を受けよ!『デュアル・ザンジバル』!』

 

猛然と距離を詰めるテルタカへ、バルクライ王は魔弾を連射する。しゅうらを庇い肥大化した腕でそれを受けるが……テルタカの纏う炎が魔弾の着弾と共に弱まっている!弱体化の力を持つ《魔弾デュアル・ザンジバル》!

 

「『ちぃっ!』」

『これでキサマも道連れとなる!』

「それは、どうかなっ!!」

 

バルクライ王の顔の脇を、ヨウコの打った球がかすめる。それは、大気を震わせ……()()()()()()()()に取り憑いていた1体のゴーストを、吹き飛ばした。

 

『なっ……!』

「本来の数値よりゴースト達が若干強かったのが気になってたけど……なるほどね、《呪いの影シャドウ・ムーン》を憑かせて全員のバンプアップをしていたと。でもこれで、そっちがおしまいってね!」

「ナイスオン!」

 

バルクライ王と、ゴーストの群れがパワーダウンする。闇のクリーチャー全てを強化するゴーストが排除され、上昇していたパワーが失われたのだ。

魔弾2発によって下がったバクテラスのパワーは13000、対して2000のバフを失ったバルクライ王は、11000──────。

 

『ゴガッ!?』

「消し飛べ……ボルシャック・フレア・バースト!!」

 

拳で打ち上げられたバルクライ王へと、テルタカの右腕に収束された炎が熱線の如く放たれた。邪眼の使徒は避ける事も叶わず、その身を焼かれてゆく。

 

『大帝よ、申し訳──────!!』

 

末期の言葉も遮られたまま、バルクライ王の身体は燃え尽き、塵と化した。

 

「『焼滅、完了ッ!』」

「お見事っ!」

「よっしゃー!」




ホテルに潜む魔の手は、これにて討伐完了!
ゴーストがダークロードの奴隷と言う設定は『デュエル・マスターズ パーフェクトルールBOOK』に記述がある公式設定になりますが、人間に取り憑く条件については独自設定となります。ギャイメガ初登場回の描かれ方から発展させた形に。
絶賛敵対中のダークロード勢力もいるため丁度良い相手になりました。
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