ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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今回が、キャラ設定まとめ回を除いた実質100話目の投稿となります。
皆様の拙作への閲覧と応援、いつもありがとうございます!
この物語を完走できるよう、これからも精進して行きます!

今回は観光のターン。箱根旅行2日目、箱根連山の地を彼女達は満喫する。


Ep.19:Jack-Potと箱根巡り

「うーん……昨日はお楽しみでしたね?」

「してません!お天道様に誓ってナニもしてませんが!?」

 

──────2025年5月4日。

午前8時、Jack-Pot組とDGA組の7人は、昨夜と同じく共に朝食を摂っていた。朝食も和洋のバイキング形式であり、各々が好みの料理を皿に採り口へ運んでいた。

皆で長いテーブルを囲みながら、昨夜部屋に戻らなかったしゅうらとテルタカの顛末を、彼女達は興味津々に聞いている。

 

「お姉ちゃん、大胆……!」

「もう付き合っちゃえば?」

「それは……陽野さんはどう思ってるのかしら」

「んぐっ……その、好き……では、あります。ファン云々を抜きにしても」

「何だー?歯切れが悪いぞー?」

「お付き合い出来たら、それは勿論嬉しくはありますが……立場というものもありますし」

「ファンとしての話かしら?そのくらいなら……」

「いえそうではなく……」

 

少し額を抑えながら、テルタカは言葉を続ける。

 

「今のタイミングで付き合うと、まるでうちの父が資金援助の対価として交際を強要させたみたいになるじゃないですか……っ!」

「そこかよ!?いや確かに外聞は悪いかもしれないけど!」

「あー、何も知らないで見たら悪徳スポンサーとその息子みたいな状況だねえ」

 

別に疚しい事は何もないのだが、人は自分の都合よく情報を曲解し、それを拡散するものだ。彼女達の為にも迂闊な事は出来ない……とテルタカは思っていたが。

 

「それなら……わたしから申し込んだら、大丈夫かな」

「えっ」

 

隣り合ったテルタカにしゅうらが椅子ごと身を寄せ、彼の手を取った。

 

「陽野さん、わたしは、あなたの事が……好きです。あなたが好きだと言ってくれたわたしの歌を、あなたの傍で歌いたいの!」

「う、お、おう……っ」

「わたしと、お付き合いしてくれませんか?」

 

急な攻勢に押され狼狽えるテルタカ。以前の自らの言葉にこんな返事で返され、好いている女性からこのように告白されては冷静ではいられない。断り切れる理由もなく、ゆっくりと頷くことしかできなかった。

 

「良かったわねしゅうら!良い攻め手だったわ!」

「いやーいいねえ青春してて」

「い、勢いで押し切られた感が……正直、直接お会いしたのも先々月でそれ以降の機会もそんなに無かった俺などで、本当に良いんですか?」

「ええ、あなたが良いの。わたしを守って、不安も受け止めてくれたあなたが」

「しゅうらが良いなら良いんじゃない?互いの事は、これから知って行けば」

「そうですよ!これから趣味の事とか、得意な事を教え合っていけばいいんです!」

 

確かに彼と彼女は知り合って間もない。だからと言って、それが想いの貴賤に繋がる訳ではない。出会い方が多少刺激的なものだったというだけだ。これから1人の人間として互いに触れ、知って行く事で育まれるものもあるだろう。

 

「まあでも、お互いの活動に支障が出ない付き合い方はして欲しいかもだな?」

「それはまあ、勿論です。俺も色々と忙しくなりそうですから」

「デュエルマスターだったわね。どんな事をするのかしら?」

「今はまだ準備期間という感じだけど、7月下旬くらいから本格的に向こうに度々行くことになるかなぁ?」

「向こうって、どこですか?」

「あれだよ、こちらに来て事件を起こす、クリーチャー達の生まれ故郷……」

 

そこはデュエリスト達にとっては憧れの地。闘争と危険に溢れ、人間にとって未知なる世界。

 

超獣世界(クリーチャーワールド)にね」

 

いずれその世界にデュエルマスター達全員が赴き、様々な闘いを経験する事となるだろう。

 

 

* * *

 

 

朝食を終えた後、彼女達は一度ホテルを出て箱根湯本の駅を目指し歩き始めていた。川沿いの道を下って行けば、20分ほどで駅へと辿り着く事になる。

 

「登山とかする感じですか?」

「電車でだけどね。箱根に来たなら一度は登山鉄道とケーブルカーに乗っておきたいじゃない?」

「えっと、相模野さんは、この辺りに来たことはありますか?」

「まあそれなりに近場だからね。この近くにはカントリークラブもあるから、コースを巡った後温泉で身体を休めたりしてるよ!」

「それなら、色々お店とかも知ってそう」

「まあね。帰るのは明日だっけ?おススメのお土産屋とか紹介してあげよう!」

「よっしゃ!」

 

爽やかな山の風を感じながら、彼らは歩いてゆく。道中、彼らが泊まるホテルとは別の温泉宿を見つけるとヨウコは足を止めた。

 

「あ、ここ『天成園』もある意味オススメだね。ここは温泉宿でもあるけど、日帰り利用すればパワースポットである『玉簾の瀧』を含めた庭園を見れるし、無料で『玉簾神社』にも参拝できるようになってるね」

「へぇ……どんな御利益があるのかしら?」

「家内安全、商売繁盛、開運出世だったかな?」

「えーと祭神は……九頭龍大神・稲荷大神・恵比寿神に……水波能売神(ミヅハノメノカミ)?水の神様、か」

 

……その名を口にした時、テルタカは何か身震いのような物を感じた。この感じ、妙な悪寒がする。理由は分からないが……ボルシャックと共に近付くべきではない?

 

「あ、九頭竜大神による縁結びの御利益もあるね。ハート型の絵馬とかあるみたいだよ」

「そ、それは……ある意味見てみたいですね……!」

「カップル向けっぽいなこれ、ある意味丁度いいけどどーする?」

「すみません、縁結びは良いんですが……俺はちょっと」

「え、どうしたの?」

「勘と言うか何というか……妙な感じがありまして。俺とボルシャックが近付くと何か悪い事が起こる気が……」

「……まあ彼が何かあるって言うなら無理に寄らなくても良いんじゃない」

「うーん……まあそうね、このまま駅へ行きましょう!」

 

そうして、ひとまずこの場には寄らず先を急ぐことにした。天成園から離れると、テルタカの感じる悪寒は薄れて行った。

 

「(……何だったんだ?)」

 

彼の知らない因縁が存在するのかも知れないが……今の彼には全く与り知らぬ事であった。

 

 

* * *

 

 

箱根湯本駅から7人は箱根登山電車に乗る。一先ず目指すのは、彫刻の森駅だ。

 

「おおー、良い景色だな!」

「新緑の中を進む電車というのも、良い物ね」

 

5月の若葉生繁る山中を登山電車は進む。途中通る鉄橋からの景色はほぼ一瞬だったが、正に絶景と言えた。そして、その鉄橋を超えた所で、車両が一度停車する。

 

「あれ?ここ駅じゃないですよね?」

「あ、本当だわ。ホームにしては狭いけど……」

「ふふふ、陽野くんはご存じないか。箱根登山列車の特徴は、山の傾面を登るため『スイッチバック方式』を採っているのよ」

「スイッチバック?……あ、運転手さんが出て来た」

 

この電車を動かす運転士が車両の前方から降りて来る。彼が後方の運転席へ乗り込むと、今度は車掌が入れ替わりに前方へと向かった。

そして、再び車両が動き出し……今度は逆向きに進んでゆく。

 

「こうして進行方向を変え、ジグザグに進んで行く事で徐々に山の傾面を登って行く。これがスイッチバック方式よ!」

「へぇ……面白いです!」

「つまりここは、折り返し専用の停車場所というわけね」

 

今彼らが止まっていたのが出山信号場、ここを含め3箇所で箱根登山電車はスイッチバックを行う。次の停車駅である大平台駅で2度目、そしてそこを発車してすぐの上大平台信号場で3度目の折り返しを行い、その度に彼らは感心しきりだった。

 

「急な斜面を直角に進むのではなく、斜めに進む事で実質的な傾斜を軽減して進む……なるほどなあ」

「これも人間の知恵、というものかしら」

 

 

* * *

 

 

電車は更に山を登り、彼女達が辿り着いたのが……彫刻の森駅。そこから歩いてすぐの場所にあるのが、彫刻の森美術館だ。

 

「うわー、ほんとに野外に彫刻が飾られてるんだな」

「展示されてる彫刻が120点……全部回れるかなぁ?」

「とりあえず、今は10時半ね。12時半くらいを目安に回って行きましょうか」

 

7人は屋外に展示された数々の彫刻を見て回る。抽象的なものに、幾何学的なもの、ブロンズの人物像など、方向性も様々だ。

 

「なんだこの……四角い枠?が並んでるだけじゃん?」

「あ、これは正面から見た方がいいものだね。こっちこっち」

 

12色に塗られた、同じ形の正方形の枠がずらりと並べられただけに見える展示物「宇宙的色彩空間」。日本の作家が作ったこの作品は、それらが重なって見える位置から観賞する事で、その印象を大きく変える。

 

「おっ?お、おぉ~!手前から奥に、虹色に色が変わってくように見える!」

「なるほど、見る角度も重要なのね……このレインボー・スパイラルが生み出すリズム、良い刺激になるかもしれないわ!」

 

ザーナは度々展示物を写真に撮ってゆく。自然の中に佇む多くの彫刻達から得られるインスピレーションが、新たな歌を生み出す刺激になるのだろう。

 

 

 

そこから更に歩き、敷地内で営業するカフェ近く。巨大な塔のような物が彼女達の前に現れる。

 

「わぁ、綺麗……!これ全部、ステンドグラスが使われているんですか?」

「そうそう。中に入って、螺旋階段で上まで登れるようになってるよ」

「それじゃあ折角だし、登ってみますか?」

「賛成!」

 

「幸せをよぶシンフォニー彫刻」と題したこの展示物は、480枚のステンドグラスによるパネルで壁面が構成されている。中に入れば、色ガラスを通して入って来る光が煌びやかな光景を生み出し人々を迎えてくれる。

 

「登っていくだけで、ステンドグラスの色も移り変わって綺麗だね」

「東南西北の方角に合わせて、春夏秋冬の場面を表しているらしいですね。こうして登っていくだけでも目を楽しませてくれるのか」

 

そうして塔の最上部に出れば、視界は一気に開け──────。

 

「うわぁ……!」

「これは絶景ね……!」

 

塔の屋上からは全方位が見渡せる。箱根連山の緑が周囲に広がり、自然の雄大さを感じられた。

 

「んんー、風が気持ちいいわ!」

「確かに、これは来て良かったですね」

 

テルタカは正直美術品の類はあまり興味がない方であったが、こうして自然と共に触れるという形式は新鮮さを感じ、普段では出来ない体験となった。こうして普段の生活では接する事のない何かに触れるのも、旅行の醍醐味と言えるだろう。

 

 

* * *

 

 

彫刻の森を一回りし、時刻は12時半を回った。彼女達は再び登山電車に乗り、一駅先の強羅駅へと到着。駅に近い人気のカフェにて、昼食を摂っていた。

 

「朝それなりに食べたけど、それなりに歩いたからかここの料理もおいしくいただけちゃうわね」

「ランチメニューのこのプレート、ジューシーな肉料理なのにこってりしすぎてないのは凄いかも」

 

各々興味のあるメニューを注文し、それらをシェアしながら頂いてゆく。コーヒーとの相性も抜群だ。

 

「このローストビーフ……流石に完全再現は難しいけど、上手く寄せて出来ないものか……」

「え、あんた自炊すんのか?」

 

増樹が驚きの声を上げる。同年代の男子であるテルタカがそういった技能を持っているとは、意外なように思われた。

 

「まあ母を亡くしてから、部活にも行かなくなった空き時間で暇を持て余すよりは……って思って始めたら、結構ハマってしまいまして……趣味みたいなもんですね。一般家庭でも作れるひと手間掛けた料理とか結構挑戦してます」

「ローストビーフ、お家でも作れるんですか!?」

「時間はかかりますがやる事は割と簡単ですからね。父にも好評貰えましたよ。まあこういうお店でやるような低温調理なんかは難しいので簡略化レシピではあるんですが」

「それは少し興味あるわね……」

 

テルタカの腕前は、流石に本格的な料理人レベルとは行かないが、趣味としてはなかなかに凝った物も作れるレベルとなっている。

 

「……機会があれば差し入れなどしましょうか?サンドイッチとかにも出来るので持ち運びは簡単ですし」

「いいんですか!?」

「しゅうら、ご馳走になるわね!」

「何でわたし!?あ、いや、私に持たせて貰う事に、なるのかな……?」

 

わいわいと話しながら昼食を平らげてゆく。午後は更に山の上へ、ケーブルカーとロープウェイで向かう予定だ。箱根連山の高みには、何が待っているだろうか。




そんなわけで、2日目観光は一旦ここで区切り後半へ続きます。オススメスポットが多くて絞るのに難儀しました。
関東、というか東京近郊在住の方は近場ながら色々と見れる箱根への旅行、オススメです。
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