ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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明けましておめでとうございます。今年も拙作を何卒宜しくお願い致します。
筆者はGT第二期にバンキッシュさんが登場して驚きと興奮の真っ只中にいます。個人的に、サファイア一家の兄弟中で一番好感度高い男なので今後が楽しみだ……!

新入生交流会を終えて、突如自らに降りかかった出来事に狼狽えるアーシュ。果たして納得の行く答えを出せるのか。


Ep.23:ドラゴン娘と赤き鼓動

──────日本国内、某所にて。

 

「製作中のサンプルカードが1枚紛失したァ!?」

「とんでもない不祥事だぞ!担当者は何をしていた!!」

「申し訳ございません!ですが、昨晩までは確実に保管されていたのです!」

 

ここはとある印刷工場。そこの社長、副社長がとある社員を叱責していた。

大手玩具会社が展開するカードゲーム、その新商品のサンプルとして刷られた試作カードの中から、1枚のカードが忽然と消えていたというのだ。

公式発表まで2か月、本発売まで4か月先の商品の存在が漏洩したとなれば、取引先にとっても社にとっても大問題である。

 

「それに、工場内に誰かが侵入した形跡も無く……」

「じゃあ何故紛失したと言うんだ!」

「社長!監視カメラの映像、持って来ました!」

 

社長室に、工場内の監視カメラの映像を収めたメモリが持ち込まれる。一先ずその場にいた彼らは、映像を検分する事とした。

 

「……出入口も各廊下の窓も、本当に閉まったままか」

「……ん?今廊下の所を何か通らなかったか」

「え?ま、巻き戻してみます」

 

ふと、廊下を何かが通るのに社長が気付いた。巻き戻してみると、確かに何か黒っぽく平たい物が動いていた。

 

「虫か?」

「いえ、それにしてはこのサイズは……?」

 

所謂不快害虫の類にしては、妙なサイズであった。それに、一時停止ではその姿はブレているものの、何か角ばっている印象を受けた。

 

「肝心の保管室の様子を見るぞ」

「はい、再生します」

 

そして、その消えたサンプルを保管していた部屋の映像を流すと……暫くの後、彼らは目を疑った。

 

「こ……これは!?」

 

そこに映っていたのは──────1枚のカードがひとりでに保管棚から舞い上がり、まるで意思を持つかのように僅かな隙間へと飛び込む姿だった。

それは廊下へと出て、通用口へと向かい、建物を抜け出し──────夜の闇に消えて行った。

 

「あり得ない……カードが勝手に動くだって?」

「いえ、もしかしてこれは、例の案件じゃあ……」

「だとしたら……おい!今すぐ報告だ!例の──────DGAとかいう機関に!!」

 

 

* * *

 

 

「はぁぁ……どうしましょう……」

 

──────2025年5月21日。放課後、桜龍高校の生徒会室にて。

新入生交流会を終えた桜龍高校は、6月上旬の行事に向けて生徒達が動き出していた。

そんな中、流星アーシュは一つの悩みを抱えていた…………。

 

「アーシュはん、まだ悩んでるん?」

「メガちゃん、ギャイちゃん!その、はい……」

「あの1年の、赤坂くんだっけ?かいちょー的にはどうなの?」

「ええと、その……色々いきなりだったので……」

 

そう、4日前の新入生交流会の日。アーシュは突然自身に訪れた青春的イベントによって、心乱されていた──────。

 

 

* * *

 

 

「流星会長!一目見た時から好きになりました!オレと、お付き合いしてください!」

「へ、っ!?」

 

その日初めて会う1年生の男子から告白されたアーシュは、驚きを隠せなかった。小学生時代は色気のある話など無く、中学時代はぼっちであったアーシュ。このように面と向かって男子から告白されるなど、生まれて初めてだ。

 

「ひ、一目見た時から、ですか?」

「はい!入学式でオレたち新入生を迎えるスピーチをしているところを見て、胸に火が灯ったように思いました!」

「あぅ、えと、その、あぁありがとうございます……!?」

 

一目惚れであるというこの1年生、赤坂ハヤトの言葉はどこまで本気なのか。そして、どう答えるべきなのか。

 

(どどどどどどうしよう!?お付き合いって、あのお付き合いだよね!?でもお互いに良く知らないし、いきなり過ぎて頭が着いて行かないし!?)

「……会長?流星会長?」

「ふぇっ!?な、何ですか!?」

「えっと、頭のそれは……?」

「っ!?」

 

激しい動揺によって、無意識のうちに角が、そして腰からは尻尾も生えてしまっている。これは……拙い!

 

「ご、ごごごごめんなさいっ!考えさせてくださいぃ~~~~~~~っ!!!」

「あ、会長!待っ──────」

 

そうして、彼女はその場から逃げ出す事となってしまったのであった。

 

 

* * *

 

 

「わらわ達もこっそり見ておったが、あれは危ないところだったな……」

「はい、もう少しでバレちゃうところでした……」

「ソレは良いけれど、結局その後お返事は返していないノ?」

「その、男の子に告白されるなんて初めてでどうしたらいいか……」

「あまり結論を出すのを遅らせると、向こうにも悪いんじゃないか?キッパリ振るか、付き合うかのどちらかだろう」

 

『考えさせてください』と言ってしまったのは特に良くなかったかもしれない。焦っていたとはいえ曖昧に濁してしまったがために、今頃あちら側も判断に困っている筈。なるべく早く答えるべきなのだが……。

 

「うーん、かいちょーは恋愛とかは興味あるの?興味が無いとかならすぐに断っても良いんじゃない?」

「それはその、急だったし良く知らない相手だったからびっくりしただけで……みんなと過ごすのも好きだけど、恋愛にも興味は無いわけじゃなくて……」

「ま、アーシュはんも年頃やからな。そら興味位あるか」

「それじゃあ、お友達からって事でお試しするのも良いんじゃないかな?まずは知るとこから始めてみるとか!」

「お友達……お友達かぁ……」

 

異性の友人なんて小学生以来になるだろうか。そこから距離を測っていくというのも、一般的な高校生の付き合い方としては確かに悪くは無い。

 

「それに親衛隊だのと関わらず、ああしてキサマに接しようとする男子は珍しいだろう。これを逃したら次はあるかどうか」

「うっ……それは本当にそうなんですが……はぁ、ゼオスさんやしのぶさんが羨ましいです……」

「朕達が、デスか?」

「だってその……お2人がお付き合いしている蟠龍くんや護守先輩なら、バレても問題はないじゃないですか」

「あー、そっちの問題か……」

「私がもし男の人とお付き合いしたら……」

 

皆同時に、男性と付き合いデートするアーシュの姿を思い浮かべる。…………デート内容に差異はあれど、皆の想像の中で一つだけ一致する事があった。

 

「絶っっっっ対ドラゴン娘なのがバレちゃいます!!」

「せやな……アーシュはんただでさえテンション上がるとドラゴン化しやすいし」

「何なら楽しいデートを考えただけで角と尻尾が出そうだぞ」

「うーん……あっでも、赤坂くんってデュエリストっぽいから、案外受け入れてくれるかも!」

「なんでそんな事分かるん?」

「こないだ見てた時、センパイと同じようなカードケース?を腰に付けてたのを見たよ!」

「それなら安心デスね!」

 

もしそうであれば、そもサキトに言伝を頼むような仲の彼だ、クリーチャーの存在に関わる事であれば受け入れてくれるかもしれない。

 

「それじゃあ、まずは赤坂くんに会って、お友達からと伝えてみます!」

「おー!まずは何事もチャレンジだよかいちょー!」

「……あ、でも今日はゲーム部の人らはおれへんから、行くなら明日やね」

「あうっ、そういえばそうでした……」

 

水曜の放課後はゲーム部は休みとなっている。出鼻は挫かれたが、一旦明日まで時間を置き冷静になろうとアーシュは考えたのであった。

 

 

* * *

 

 

「はぁ……やっぱり駄目だったかぁ……?」

 

──────アーシュが決意を固める少し前。1年1組所属、赤坂ハヤトは下校の途中、桜龍学門前駅へと向かっていた。

行き先はカードショップ。サキトに進められた駅前商店街にある店舗、「クラインスペース」であった。

 

「オレには高嶺の花だったかなぁ……?」

 

彼の視点では、告白後4日に渡り音沙汰なし。考えさせてほしいというのも、体のいい断り方だったのではないかと思えて来ていたのであった。

 

「一応あの後先輩にも打ち明けてみたけど、なんだか良い顔をしてなかったしなあ」

 

……これは実際の所、アーシュ達と同じく彼女がドラゴン娘である事が露呈する危険性を案じてのものであったが、彼はその事を知る由もない。

足取り重く歩いていると……ふと、細い路地で何かが光った気がした。

 

「…………?何だ?」

 

それに興味を抱き、ハヤトは誘われるように路地へと入ってゆく。そこにあったのは、1枚のカードであった。

 

「こんな所に、デュエマのカード?誰の落とし物だ?」

 

砂埃が付いていないかと少し払ってからそのカードをまじまじと見る。そこには、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が描かれていた。

 

「え、何だこれ。もしかしてレアもの?いや、テキストも書かれてない……じゃあ、エラーカードっていう奴か?」

 

妙なモノを拾った物だ、と彼は思った。しかしこのカード、彼がデュエマ入門として触れたデッキのエースによく似ている。どこか愛着を持てそうな1枚であった。

 

「ええと名前は、《轟く──────」

 

──────次の瞬間、真っ赤な炎がカードから噴き出した。

 

「うわぁあっ!?な、何だこれ!?」

 

ハヤトの身体はたちまち炎に巻かれる。しかし、何故か彼の身体も服も、焼かれる事は無く──────。

 

『──────見つけたぜ、オレと波長の合うニンゲン……!』

「な、えっ!?この声は!?」

『てめえのカラダ、少しばかり借りさせて貰おうか……この近くに、ヤツがいる……!』

「う、わ──────っ」

 

大きく燃え上がった炎は、彼に吸い込まれるように小さくなって行き……数秒もしないうちに、消え去った。彼は何事も無かったかのように平然と歩き出す。

 

『待っていろ、今度こそオレがお前を倒す……!』

 

その瞳は生来の翠色から、青へと変わっていた。




赤坂ハヤトへと憑りついたクリーチャー。その目的は……次回へと続く!

キャラ紹介ページを更新しております。ハヤトのキャラ紹介を追記!!
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