そして、桜龍高校にまた危機が訪れる……。
「──────先輩っ!」
栗茶市内の救急指定病院。サキトが運び込まれたというそこへ、しのぶは取る物も取りあえず駆け付けた。
DGA職員に連れられて、彼女はサキトの病室へ通された。関係者以外入室禁止の病室にて、彼はベッドに横たわっている。
「ん、あー……しのぶ?すまん、しくじっただだだっだだ!?そこ触るのは待ってくれ!?」
「あっ、ご、ごめん!ばってん無事で良かったばい……!」
包帯が巻かれたサキトの腹に触れてしまい、傷を塞いだばかりのそこに痛みが走る。しかし、サキトは思いの外元気そうに見えた。
「護守さんのご家族ですね?」
「えっ、あ、はい。こ、恋人ばい……」
「今回の担当医です。今回はDGAに以前から協力している医師のみで治療を担当しましたが……クリーチャーとの一体化の影響か、護守さんの治癒能力は桁違いですな。明後日には退院できるでしょう」
「ほんなこつね!?良かったぁ……」
「衝撃を受ける瞬間、自分から後ろに跳んでダメージを軽減したことも大きいようですな。ただし今夜は絶対安静、明日も無理はさせてはいけませんよ」
「先生、親族の方がいらっしゃったようです」
「分かりました。では、私はこれで。護守さん、お大事に」
「ありがとうございます」
連絡を受けてサキトの母もやって来たようだ。男性医師は病室を出て行った。
「先輩、一体何があったと?」
「うちの部の後輩がクリーチャーに憑かれてな……本気でデュエルしたが、取り憑いていた奴の能力が俺の想定外だった。見事にやられたよ」
「先輩が負けた……!?」
「憑いていた奴は、レッドゾーン……しのぶも見た事のある奴だ」
「あ……っ」
忘れもしない、3月の一件。こちらの世界に現れ、平行世界のサキトを最終的に葬った相手が、レッドゾーンであった。
「倒したはずなんに……復活してきたと?」
「まあ、切っ掛けさえあればクリーチャーは復活してくる事も多いからな……しのぶ、悪いが他の皆にも一応報せておいてくれ」
「良かばってん……ここが狙われたりしぇん?」
「恐らくはな。性格を完全に把握してるわけじゃねえが……手負いで寝込んでる所を襲うタイプじゃない」
サキトは、枕元に置いたデッキケースを手に取り握り締める。彼としても、リベンジは必ず果たす腹積もりだ。
「奴は恐らく、ドギラゴンとの戦いを望んでいる。故にやるとすれば……俺とドギラゴンを誘き出すためにどこかで暴れるというところだろうか」
* * *
──────翌日、2025年5月22日。
既に時刻は昼休み、桜龍高校は生徒達が生み出す喧騒の最中にあった。
「しのぶさんから連絡がありましたけど、先輩大丈夫でしょうか……」
「センパイがやられちゃうなんてね……でも、前みたいに傷の治りが早いからカラダの心配はいらないって言ってたね」
「とりあえず問題は、その強力なクリーチャーに取り憑かれたっていう生徒やね。今学校に来とるんかな?」
ドラ娘生徒会の5人は、昨日のうちにしのぶ経由で情報を受け取っていた。サキトの敗走と生徒のクリーチャー化、どちらの出来事も彼女達に衝撃を与えている。
「でも、憑かれた生徒がダレなのか、書いてありマセンでしたね。一体ダレなんデショウ?」
「うむ、ある程度絞れはするがな。ヤツから見て後輩、となれば1年生か2年生の誰か。そしてゲーム部の人間である事も確定しておる」
「なら、∞はんに聞きに行くのが良さそうやね。アーシュはん、行ってみよ……アーシュはん?」
「はぇっ!?す、すみません。ちょっと考え事を……」
アーシュは妙な胸騒ぎを感じていた。「彼」もすずが挙げた条件に一致している。もしかしたら……。
「それじゃとりあえず、話を聞きに行ってみよっか」
「うむ、何は無くともまずはクリーチャーを見つけなくては話にならん。4組に話を聞きに──────」
その時、室内のスピーカーからハウリング音が発せられた。緊急の校内放送だ。
『緊急事態発生!緊急事態発生!校門付近で危険人物が暴れ回っておる!生徒達は直ちに体育館へ避難せよ!直ちに避難せよ!』
「んなっ!?校長、こんな時に何を!」
「いえ、これもしかして、クリーチャー絡みかもしれません!」
「もしかしたら、例のクリーチャーかもしれマセン!行きましょう!」
「わらわは先に生徒の避難を先導しておくぞ!」
「すずぽよお願い!じゃあ行こう!」
突然の襲撃に、アーシュ達は迎撃を余儀なくされる。そしてその相手は……彼女の懸念が的中しようとしていた。
* * *
「……ん?君、こんな時間に登校かい?」
「もう昼休みだよ。遅刻どころの話じゃないぞ」
校門の前に立っていた警備員たちは、近付いて来る1人の生徒を発見した。桜龍高校の制服を着た男子生徒であり、こんな時間までサボっていた生徒だろうかと暢気に構えていた、が。
「ん?何か鳴ってるぞ」
「え?本当ですね……っ!?そこの少年!止まれ!」
『……あぁ?成程、奴の仲間って訳か……丁度良い』
スマートフォンの画面を見た1人の警備員が血相を変え、警棒を構える。それを見た男子生徒はニヤリと笑った。
「ど、どうした急に!?」
「気を付けてください!この生徒……クリーチャー憑きです!!」
「なっ!?」
現在、桜龍高校の警備員にはDGA所属のサポートスタッフが何名か紛れていた。クリーチャー案件が頻発するこの桜龍高校周辺で、事態を早期に解決するための措置である。
『ドギラゴンの契約者、護守サキトを呼びな。大人しく呼べば……手早く済ませてやる』
「何を……っ」
『呼ばねえてんなら……ここが滅茶苦茶になるかもなぁッ!!』
男子生徒の全身が赤い装甲に覆われる。クリーチャーの力を現した彼は、人間離れした跳躍で校門を飛び越え敷地内へ侵入する。
「まずい!DGA職員、全員校門へ!クリーチャーを足止めす──────」
『ノロマがッ!!』
招集をかける最中にも、クリーチャー……レッドゾーンはその駿足で校舎へと走る。これでは侵入を止められない──────!
「『せいやぁぁぁぁぁああ!!』」
『チィッ!?』
そこへ、デュエルフィールドが展開され……鎧を纏った少年が刀を振るい、行く手を阻んだ!
「『モモキングJO、参ジョー!!』」
『成程、お前も奴の仲間か!』
『ぬう、よもやこうしてレッドゾーン殿と相対するとは……!』
トウリと同化するモモキングが緊張に汗を垂らす。かつて王来大戦の折には、モモキングの仲間がレッドゾーンの力を継承し、共に戦った事もあった。ある意味では因縁があるとも言える。
『お前を痛めつければ、ドギラゴンとサキトとか言う奴もすぐ来るかァ?』
「先輩はまだ病院だ、ここは自分が相手になるっ!」
『抜かせェ!』
ハヤトに取り憑いたレッドゾーンが、速度を上げてフィールド内を暴れ回る。対するトウリは、受けてカウンターを食らわせる構えだ!
「カモン!」
『王来!』
「『スター進化ッ!!アルカディアス・モモキング、参ジョー……っ!?』」
しかし、纏ったスター進化の鎧が瞬時に剥がされる。このレッドゾーンの能力、尋常ではない!
『貰ったァ!!』
「ぬう……っ!?」
金色の拳がトウリに迫り──────宙に浮かんだ紋章に弾かれた。
「トウリくん!大丈夫!?」
「ゼオスさん!助かりました!」
『成程、あの時の連中と同じ、ドラゴンの力を得たニンゲンって奴か……!』
ゼオスを先頭に、すず以外のドラ娘生徒会のメンバーが駆け付ける。対峙したクリーチャー憑きの顔を見て……アーシュは衝撃を受けた。
「あ……っ!やっぱり、赤坂くん!?」
「えぇっ!?」
「そっか、確かにゲーム部の部員で後輩やったけど……!」
「知り合いですか!?」
「アーシュちゃんに告白した子デス!」
「え……えぇっ!?」
トウリは、アーシュが告白されていた事については初耳であった。驚愕に気を取られた隙に、敵は再び襲い来る!
『隙だらけだァッ!!』
「ぬうあっ!?皆さん防御を……っ!!」
「うわぁっ!!」
「メガちゃんギャイちゃん、ゼオスさん!!」
あまりの速度に、メガ達も翻弄される。そして、レッドゾーンの拳がトウリに迫り──────。
「や、やめてくださいっ!!」
『─────ッ!?』
……立ちはだかったアーシュを前に、その拳が停止する。全身が硬直したように動かず、それどころか片腕が自らの腕を止めようと掴んで来た。
『チィッ!邪魔を──────』
「今だぁっ!!」
「テヤァァァァ!!」
体勢を立て直したトウリとゼオスが一撃を食らわせる。2人の拳と蹴りに大きく後退させられ、レッドゾーンはたたらを踏んだ。
「アーシュちゃん、大丈夫ナノ!?」
「は、はいっ!もしかしたら、赤坂くんが抵抗してるのかも……!」
「とはいえ強敵です、もう一度同じように一撃食らわせられるかどうか……っ!!」
間違いなく、これまでに戦ってきた中でも屈指の強敵だ。ドラゴン娘達とトウリで対処しきれるか…………。
* * *
「護守さん、お昼をお下げしますね……っ!?先生!先生を呼んで!護守さんが!!」
ほぼ同時刻。病院の病室から、書き置きを残し護守サキトが姿を消していた。
『申し訳ありません。俺が決着を付けに行かなくてはならないので、行ってきます』
次回、激闘・邪道レッドゾーン!!
FGOのアフターストーリーでPPPという単語にトラウマを抉られましたが私は元気です。おのれプリンプリン。