ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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諸事情あり普段のペースより1日遅れとなりました。どうにか投稿できて良かった……。

季節は6月初旬、梅雨の時期が近付き夏へと徐々に向かってゆく……そのはずだった。


Ep.28:ドラゴン娘と早すぎる猛暑

「「「…………あづいっ!」」」

 

──────2025年6月5日。

6月に入り、暦の上では夏が始まった。この日は朝方まで雨は降っていたがその後は晴れ渡り、東京は最高気温28℃を記録していた。

一昔前であれば真夏日と言っていい気温であるが、近年の気温上昇もあり、この位であれば夏本番とは程遠いと言える気温──────だった、のであるが。

 

「先生、エアコンの温度下げませんか……!?」

「いやあ、ちゃんと動いておるはずなんじゃがのう……えー今の気温はぁ……33℃……?」

「ええっ!?」

「空調を効かせておいてこれだと……何かおかしいのではないのかぁ……?」

「す、すずちゃん?しっかりネ!」

 

2年2組の教室は酷暑の中にあった。何故か30℃越えを記録する室温に、徐々に生徒達が音を上げ始めていた。

 

「まじやば……頭へんになりそ……」

「ホンマにアカンて……なんなんこの気温……」

「ギャイ、ういちゃそ?ま、まずいんじゃないこれ!?」

「これは、尋常の事態じゃないですよ……っ!」

 

教室内で元気なのはメガ、ゼオス、トウリくらいであった。他のクラスメイトは皆、机に突っ伏し始めている。年老いた先生も、身体がふらつき始めているように見えて危険な兆候だった。

そんな時、廊下をバタバタと走って来る足音が聞こえて来た。

 

「失礼します!蟠龍トウリと、その他動ける生徒いますか!?」

「センパイ!?」

「ど、どうしたんで──────」

「いかん会長もヤバそうだ……!すみません、3人を少しばかり借りてきます!」

 

焦った様子でやって来た護守サキトが、まだ元気がある3人を引き連れ教室を慌ただしく出てゆく。先生が注意するかと思われたが、見ればその先生は床にへたりこんでいた。

 

「あ、まずい、かも…………」

 

そんな様子を見ていたアーシュも、頭がぼーっとし始めていた。

 

 

* * *

 

 

「とりあえず動けるのはこのくらいか……」

 

桜龍高校屋上、空調の効いた室内よりも更に暑くなっているそこに、校内のDGA実働部隊員と数人のドラゴン娘達が集められていた。

動けるのは現状、真久間メガ、サーヴァ・K・ゼオス、伍代ドーラ、宿禰マロン、ジュラ子・リューバー、蒼斬しのぶ、春咲栄久、ルード・ザーナ……彼女ら8人のドラゴン娘と、サキト、トウリ、ハヤトの3名である。

 

「先輩!∞ちゃんが大変やけん、早よ戻らな……!」

「落ち着いてくれしのぶ、彼女のためにも、今こっちでやらなきゃならん事があるんだ」

「護守くん、この酷暑の原因が分かったのかしら……?」

「流石にしんどいでし……」

「ええ、ようやく元凶の反応をキャッチしました……敵は校内の敷地ではなく、空にいます」

 

サキトが天を指差す。真上を見ると、そこには眩く光り輝く太陽があり…………。

 

「……おかしくない?今はまだ3時間目なのに、太陽があんな位置にあるはずない」

「っ!Absolutely, you're right! その通りですわ!」

「迂闊だった……つまり、あれはクリーチャーであると?」

「ああ。あれはまさに太陽の如き火のクリーチャー。そいつがピンポイントにこの周辺へ高熱を齎しているんだ」

「太陽のクリーチャーというと……」

 

トウリとハヤトが考え込む。太陽モチーフ、もしくは太陽に例えられるクリーチャーは流石に珍しい類だ。

 

「はっ、バクテラス……は、実働部隊にいるから違いますか」

「陽野さんが元凶はさすがに無いわね!」

「そういえば知り合いであったか。となると他に候補はおるのか?」

「……あ、もしやこいつが?」

 

ハヤトはデッキから1枚のカードを取り出す。邪道レッドゾーンのサンプルカードを返還したため、再度デッキに戻したそのカードは……殿堂に指定されている強力な1体だ。

 

「《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》?どーいうクリーチャーなの?」

「フェニックスという強力なクリーチャーの1体です。太陽と龍を司る、炎の不死鳥……もし本当にこいつなら厄介じゃないですか?」

「大丈夫だ。キャッチした反応は超神星の方だったから、いきなり即死は無いはずだ」

「それ大丈夫って言います!?」

「ともかく、俺とトウリとハヤトで上空まで行ってこいつを討ち取りに行きます。早く片付けないと、いい加減熱中症で死者が出てもおかしくない。我々が動けるのは火文明の力で耐性があるか、逆に純水文明のドラゴンの力で身体を冷やせているかという状態です」

「ゼオスさんは?」

「そちらは単純に基礎体力の問題かな……?」

「流石に朕もそろそろダウンしそうネ……」

 

この高温への耐性無しに動けているゼオスの体力は凄まじいと言えた。しかし、流石にこれ以上は厳しくなるだろう。

 

「吾輩たちはどうするでしか?」

「しのぶとルードさんは、ドラゴンの力を使って敷地内に水を撒き続けて欲しい。打ち水みたいな感じで、気化熱で気温を多少は下げられるはずです。残る6人は、敵の攻撃が来た際に迎撃を。デュエルフィールドを張っておくので、目撃はされないで済むはず」

「ゼオスさんは多少身体が冷えてから動いてください。無理はしないでくださいね」

「ええ、分かったワ。トウリくんも気を付けてクダサイね」

「会長達はどうでした?」

「結構キツそうだったかも、早く解決しないとまずいよー!」

「了解、早い所片付けます!!」

 

トウリとハヤトも気合が入る。そこに、サキトのデュエラッドがサイドカーのオプションを取り付けた状態で、空中を走りやって来た。

 

『サキト、こちらの用意は万全』

「それでは作戦開始。デュエルフィールド、大規模展開!コース作成!」

『Duel field expansion. Dueltector summoning. Formative a course.』

 

サキトの操作により、デュエルフィールドが桜龍高校の敷地から上空へ高く伸びるように展開される。そして屋上から、螺旋階段のように光の道が伸びてゆく。

 

「なんでこんなぐるぐるさせるの?」

「この方がスペースが狭くても緩やかな傾斜で上まで登れるからですよ、2人も相乗りさせますからね。んじゃ行くぞ、サイドカーに乗ってしっかり掴まれ」

「えっ、ちょっとこれ流石に狭──────」

「んじゃ皆さん、ここは任せますよ。発進!」

「「のわぁぁあああぁああぁああああ!!」

 

サイドカーに2人を乗り込ませたサキトがデュエラッドを発進させる。凄まじい速度で螺旋状のコースを駆け、天空へと昇ってゆく。

 

「さて、それじゃあワタシ達も始めるわよ!」

「待っててね∞ちゃん、皆!」

 

しのぶとザーナがドラゴン娘の力で、デュエルフィールド内に水を細かい霧状に撒いてゆく。それらは気温により蒸発して行くが、その際に熱を奪い周辺の気温を下げ始める。

 

「くはぁ……だいぶ動きやすくなりマシタ!」

「気を抜くな、来るぞ!!」

 

ドーラの警告に気を引き締めた所で、空から何発かの火球が降って来る。敵もこちらの動きに気付いたようだ。

 

「あれは……火が降って来るでし!?」

「折角Cooldownしたのに、あんなものを降らせるなんて!」

「幸い距離があるから、威力はかなり減衰しているようね。皆の力で十分迎撃できそうよ!」

「みんなの学校、守らないとね!」

 

彼女達の応戦が始まる。そして、舞台は空へと移る。

 

 

* * *

 

 

「くぉぉんのぉっ!!」

「ふ、振り落とされそうだ……っ!」

「しっかりしがみ付いて!うぉおぉっ!!」

 

火球の攻撃は彼らにも及んでいる。螺旋状の道を上りながら、サキトが放たれる火球をどうにか躱してゆく。ただでさえ遠心力が掛かり続けるトウリとハヤトはたまったものではない。

 

『相対距離、残り500m。同乗者は準備して』

「同じ高度に上がったらデュエルで仕掛ける、ですよね!?」

「そうだ、もう少しで着くぞ!」

「了解です!」

 

高度4000m、龍のような肉体に6本腕を持つ巨大な不死鳥が迫って来る。6枚の翼を広げ、太陽の如き光球を周囲に浮かべる怪物……超神星アポロヌス・ドラゲリオン!その左右には、眷属たるドラゴン、《ヘリオライズ・ドラゴン》が4体侍っている!

 

『余に挑むか……!』

「なぜうちの学校を狙って来たかは知らんが……!」

「代償は高くつくぞ!」

「「「デュエル!」」」

 

3人が同時にシールドを展開し、アポロヌスと相対する。どうやら、先にそれぞれ3人の第1ターンが来るようだ。

 

「行くぞ!俺のターン、カツキングをマナゾーンへ送りターンエンド!」

「自分のターン、モモからうまれたモモキングをマナへ!ターンエンド!」

「オレのターン!冒険妖精ポレコをチャージし、ヘルコプ太の心絵を設置!能力により、デッキの上から4枚を見て……轟く侵略レッドゾーンを手札に加える!」

 

サキト達はそれぞれの初動を整え、ハヤトは早くもヘルコプ太を場に出してレッドゾーンを手札へ加えた。しかし、アポロヌスの恐ろしさが早速発揮される。

 

『余に平伏すがいい!!』

「まずい、全員防御!」

「「うぉおおああ!?」」

 

アポロヌス・ドラゲリオンが輝くとその力が瞬時に倍増し、3つの光球から熱線が放たれた。それらは3人のシールドを瞬く間に打ち砕いてゆく──────彼の不死鳥の力、メテオバーンによって発揮される、ワールド・ブレイカー付与の力!

 

「っつう、デュエプレ版じゃ無くて助かった……!」

「デュエプレ版だとどうなるんですか!?」

「概ね紙の超神羅星の元になった能力だ!」

「防ぐ手段が限られるじゃないすかそれ!っ、ともかく!」

「「「シールドトリガー、発動!」」」

 

それぞれのシールドから、トリガーが発動される。これが反撃の狼煙となるか。

 

「王道の革命ドギラゴンの革命2、トリガー化し場に登場!更に、炎龍覇グレンアイラ!ドギラゴンによりマナを2枚増やし……マナからドギラゴールデンを回収!グレンアイラにより、ヘリオライズ1体とバトルし破壊!バトルに勝った事でガイサーガを装備!」

「メメント守神宮とモモからうまれたモモキング発動!フィールド展開し、手札から参上する……未来王龍モモキングJO!タップ状態となり、このターン相手の攻撃をJOに誘導する!更にカツ・モモキングのG・ストライクによりヘリオライズ1体を攻撃不可に!」

「進化設計図とエボリューションエッグ、発動!手札に進化クリーチャー、オンソク童子、カチコミ入道、レッドゾーンF、そして超神羅星を加える!更にSMAPON登場!スーパーシールドトリガーにより、このターンオレは敗北しない!」

 

それぞれが防御を一気に整えた。これにより、ヘリオライズ達は追撃を停止せざるを得なくなる。

 

「しかし、どうします?次のターンで全員仕留められますか」

「まあ、やれなくもないな。赤坂、俺が先にアポロヌスを仕留める。ヘリオライズの方を頼めるか?」

「え、タップしてない相手は……あ、いやそうか!行けますね!」

「では行くぞ!俺のターン、ドロー!」

「そうか、自分はここでメメント守神宮のデンジャラスイッチ、オン!相手のクリーチャーを全てタップ!」

 

D2フィールド、メメント守神宮の力が発揮される。相手の攻勢を止めるにも、攻撃するチャンスを作るにも使える、全タップ効果。社の放つ光により、ヘリオライズドラゴン達が身をすくめ動けなくなる!

 

「王道の革命でアポロヌス・ドラゲリオンを攻撃!ここで……革命チェンジッ!行くぞ……《龍の極限 ドギラゴールデン》ッ!」

『行くぞ皆!!』

 

サキトの手札からドギラゴールデンが姿を現す。そしてその剣が即座に、アポロヌス・ドラゲリオンへと向けられる!

 

「登場時能力により、アポロヌス・ドラゲリオンをマナへ還元する!消えろぉっ!!」

『受けるがいいッ!!』

『ぐぉぉぉおおおああああ!?』

 

ドギラゴールデンの剣から光の刃が放たれ、アポロヌス・ドラゲリオンを両断した!

 

『おのれ……報いを受けよ……!』

「ちぃっ、アポロヌス・ドラゲリオンの選ばれた時の能力により俺のマナが全て墓地へ行くが……このまま決めろ、赤坂!」

「はいっ!オレのターン、ドロー!カチコミ入道をチャージし、ヘルコプ太の心絵をオンソク童子に進化!能力によりSMAPONを捨てて2枚ドローし……ヘリオライズに攻撃!侵略、発動ッ!!」

 

オンソク童子の姿が変わる。ここに、轟速の侵略者がドギラゴールデンと並び立つ!

 

「轟く侵略!レッドゾォォォォォン!!登場時能力により、相手の場の一番パワーが高いクリーチャーを全て破壊!残るはヘリオライズ3体のみ、よって……これで全滅だッ!!」

『ぶっちぎるぜ!!!!』

 

レッドゾーンが音速を越えて駆け巡る。その鋭く速い一撃が、残ったヘリオライズ達を……一掃した!

 

「よし!」

「これで、決着だ!!」

 

アポロヌス消失と共に、気温が一気に下降し始める。異常な高温も、これで治まるはずだ。

 

 

* * *

 

 

「はぁぁああぁっ!!」

「テヤァァァァッ!!」

 

地上では、戦いの最中も放たれ続けていたアポロヌスの火球をドーラ達が防いでいた。

ドーラとゼオスはその拳で打ち払い、メガと栄久は炎に炎をぶつけ爆風で消していく。ジュラ子はなんと、マナを纏わせたラケットで打ち返すようにしていた。

 

「そろそろしんどい……!」

「……む!上空の反応が消えたでし!あの3人が元凶を倒したみたいでしよ!」

「やったばい!これで気温も元に戻るとね?」

「すぐにとは行かないでしょうけど、徐々に下がっていくはずよ。さあ、彼らを迎えましょう!」

 

ザーナの言葉に皆空を見る。青い空に走る光の道を駆け、1台のバイクが──────。

 

「あ、あれ?なんか行きより急じゃない?」

「……というか、壁を走るような姿勢に見えるな」

「Danger!皆下がって!!」

 

「「「…………ぁぁぁぁぁぁああああああああ!!」」」

 

速度と遠心力がかかった状態で、3人を乗せたデュエラッドとサイドカーが渦を巻く軌道で降りて来る。さながら筒状の構造の、壁面を走るかのように。

徐々に円の半径を広げながら降りて来た彼らは猛スピードで屋上目指し駆け下り……横滑りするように急ブレーキをかけて静止した。

 

「あ、あぶ、あぶ……!」

「せ、戦闘後に死ぬかと……!」

「Z!流石に今のは危険が過ぎる!」

『授業もあるから早く降りて来たかったでしょう?』

「それはそうだけどもなぁ……!」

「先輩!大丈夫!?」

 

凄まじい速度とGに晒されへろへろになっているが、何とか全員無事だ。しのぶとゼオスが駆け寄ってサキトとトウリを起こしてゆく。

 

「オツカレサマね!大変だったデショウ?」

「ええまあ、3人がかりで叩きのめしたので何とかなりましたが……」

「それじゃ早く戻ろう!かいちょーも元気に戻ってるはずだし!」

「そうだ、会長!」

「うわっ!」

 

一気に起き上がったハヤトが塔屋の扉に飛び込み、階段を駆け下りてゆく。どこにそんな底力が眠っていたのやら。

 

「待ってよー!」

「はは……じゃあ自分達も教室へ戻りましょうか、時間的には4限途中ってくらいでしょうかね?」

「体調不良続出で集団下校とかでもおかしくなさそうだがな……」

「後遺症などが残っておらぬか様子を見なければならぬだろうからな……全く、厄介な事件を起こしてくれたものよ」

 

そうして、彼らは各々の教室へ戻って行った。

幸いにして、深刻な熱中症の症状や後遺症を発した生徒や教員は居なかったようである。




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