ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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時期は6月末から7月へ。サキトは一つの悩みを抱えていた。


Ep.29:護守サキトと贈り物の悩み

「天道さん、誕生日に貰って嬉しいものって何かあります?」

「何だい藪から棒に?」

 

──────2025年6月21日。

デュエマ新パックの発売日。サキトは「クラインスペース」のデュエルスペースにて、天道アンナとデュエルをしながら話を切り出した。

 

「いやあ、来月しのぶの誕生日でして、何を贈ればいいものかなと……ぬうう、クライアッシュしか出せん!B・A・D4でコスト軽減してクライアッシュを召喚しターンエンド、自壊はEXライフで防ぎます」

「では私のターン。そうだね、定番という話ならアロマキャンドルとかが良いらしいよ。後は、アクセサリーは重いって言われがちかな?マナチャージ、再び《王導聖霊 アルファディオス》を召喚、超魂レイドでデッキを3枚表にして……ステゴロ・カイザーを下に置くよ。《サファイア・ウィズダム》でトリプルブレイク」

「そんなもんですかね……あー、クリーチャートリガーやニンジャストライクって召喚扱いでしたよね?」

「そうなるね。というわけで、サファイア・ウィズダムの能力で現在手札の枚数分、9マナ以下のクリーチャーは召喚出来ないよ」

「ぐああ!?カツキング不発、逆転撃も唱えられん!?」

「ではアルファディオスでダイレクトアタックだね。対戦ありがとうございました」

「対戦ありがとうございました……」

 

新たなドリームクリーチャーを組み込んだアンナのデッキに敗北を喫する。非ブロッカーのフィニッシャーを踏み倒せるようになった新たな天門デッキは、中々に強烈だ。

それはさておき。来月、7月15日はしのぶの誕生日だ。当然今年は祝う気でいたのだが、どのようなプレゼントを贈るか悩んでいたのだ。

 

「まあ恋人相手ならアクセサリーもありだとは思うけどね。まあ何はともあれ、最終的には彼女が何を欲しいかだよ?」

「そりゃまあそうですけど……まあ、まずはしのぶに聞いて見ますか。それじゃあ今日はこれで」

「お疲れ様、頑張りたまえよー」

 

対戦を終えサキトは店を出る。この後はしのぶと、彼女の家で過ごすつもりである。

 

 

* * *

 

 

「んー……しのぶ、俺からあげられるもので、何か欲しい物とかあるか?」

「先輩から?どげんしたと?」

「んーまあ……しのぶがどんなものなら喜ぶか聞いておかないとと」

 

その夜。しのぶの家にお邪魔したサキトは、彼女の部屋で話を切り出した。本人に聞くのが結局は1番なのであった。

 

「うちが欲しかもん……えっとね、先輩との子ど」

「まだ早え!!というかそう言う話じゃなくてな!?」

「分かっとーよ、冗談ばい。もしかして、来月のうちの……?」

「まあ……うん。いらないもの渡されても迷惑だろ?」

「先輩から貰えるものなら何でもうれしかよ!……って言いたいばってん、やっぱり使わんもんば貰うてしもうたら困るかな」

「だよなぁ……」

 

折角のプレゼント、好みに合わない物や特に使い道の無い物を渡してしまって、死蔵されるとなっては全く意味が無い。ならばどうしたものか。

 

「うーん……折角初めて先輩から貰う誕生日プレゼントやったら、身に着けらるー物が良かかも」

「身に着けられるもの?分かった。具体的な案が貰えて良かったよ」

「あ、あんまり高価なもんじゃなくて良かよ?」

「分かってるさ。楽しみにしていてくれると嬉しい」

「ひゃっ、あ……っ♡」

 

話を一段落させたサキトはしのぶを傍へと抱き寄せた。ここから先は、恋人たちのお楽しみの時間だ。

 

 

* * *

 

 

──────翌週、6月25日。

部活の無い水曜日の放課後、サキトは吉祥寺まで足を延ばしていた。目的は、ある有名ジュエリーブランド店の店舗だ。

 

「確かここの店だったな……事前の下調べは良し。値段もまあ、手頃な物を選んだと言える……はず」

 

ネットで都内の宝石店を調べ、価格や交通費諸々を考慮してサキトはこの店を選んでいた。後は、しのぶが喜んでくれる事を祈るのみだ。

しばし店内を回り、目的の品を見つける。ネットのカタログで見た通り、これならしのぶにも似合う……はずだ。

 

「お、あったあった。これだな。店員さん、すみません。こちらを購入したいのですが」

「かしこまりました。贈り物ですか?」

「はい、誕生日のプレゼントに」

「それでは、お包みいたしますね」

「よろしくお願いします」

 

価格は23,000円、30,000を超えない金額であれば普通の高校生でも手が届かない金額ではない。DGAの給金があるサキトはもっと高級な物も買えはするが、あまり高すぎても相手が恐縮してしまうらしいので、今回はこの価格帯だ。

 

「お買い上げありがとうございました」

「さてと、これで後は」

「来月の誕生日を待つだけと…………」

 

レジでラッピングされた商品を受け取り、後は電車で帰るのみ。そう思っていた所で、横から聞き覚えのある声がした。

 

「「…………ん?」」

 

互いに横を向き、顔を見合わせる。そこには、見覚えのある“同僚”が居たのであった。

 

 

* * *

 

 

「いやあ偶然だな、あんな所で買い物が被るなんて」

「本当ですよ……知り合いを避けてこっちに足を延ばしたらDGAの方の知り合いと会うとは」

 

近くの喫茶店チェーンに場を移し、サキトともう1人──────陽野テルタカは談笑していた。互いに地元ではないこんな所で目的の買い物が被るとは、正に奇縁と言った所か。

 

「それでまあ、何故あそこに?」

「俺はまあ、彼女への誕生日プレゼントに……」

「えっ、そこまで被る事あります?」

「マジかー…………というかそっちも彼女いるのか」

「ええ、その……Jack-Potの、庵野しゅうらさんと」

「うっそマジで!?」

 

こう言ってはなんだが、桜龍高校のドラゴン娘達の中でも、ザーナ以外のJack-Potメンバーとはサキトは関わりは薄い方だ。しゅうらとテルタカがそのような仲になっていた事はサキトにとって寝耳に水だ。

 

「え、いつからそういうことになった?」

「先月のGWに、任務先であちらの旅行と被ってその時に……」

「はー、そりゃまさかの展開だ……というか、来月誕生日なのか」

「7月の6日だそうでして……」

 

そう、実はしのぶとしゅうらは誕生日が近かった。ついでに言えば、テルタカ自身の誕生日も7月27日と同月になっている。

 

「それでまさかの店舗被りと。大した偶然もあったもんだ」

「何を買ったんで?」

「それは流石に秘密だ。さて折角だし、どっかで1戦してから帰るとするか?」

「良いですね、近場の店でデュエルスペース借りますか」

 

そうして2人は近くのカードショップを検索、そこのデュエルスペースにて1戦交える事となった。そちらの勝敗は、今回は秘しておく事としておこう。

 

 

* * *

 

 

──────そして、翌月。7月15日。

生憎の雨模様の日、昼休みの喧騒の中でサキトは昼食とその他の用意をしていた。

 

「あぁぁ~~~~…………」

「先週からうざったい位に元気が無いなこいつ……何があったんだ一体」

「あー、Jack-Potの庵野しゅうらさんが、身に着けてたアクセサリーの話を友達としてたのを聞いたらしくてな?」

「そこそこの値段のブレスレットを……『大切な人から貰った』って言ってて……あの喜びよう絶ッッッ対恋人からとかじゃん……」

「あー…………そういう」

 

落ち込んでいる男子生徒は、以前からJack-Potのファンだったサキトのクラスメイトだ。こちらもクラス替えを経てもサキトのクラスメイトだった辺り、妙な腐れ縁があると言える。

 

「まあ諦めろ、たぶんお前じゃ敵いっこない相手だから」

「あァ!?相手知ってんのか護守ィ!!?誰だ、誰なんだよォ!!??」

「さあな。教える義理までは無いよ」

「野郎ぶっっころっしゃぁぁぁぁぁ!!」

「落ち着けお莫迦!こいつに当たってどうなる虚しいだけだ!」

 

真相を教えた所でどうなるでもなし。サキトはスルーしていつも通り、しのぶと∞との昼食に向かうのであった。

 

 

 

「というわけで、誕生日おめでとうしのぶ」

『おめでとう。プレゼントだよ』

「∞ちゃん、先輩、ありがとう!ばり嬉しかよ!」

 

いつもの空き教室にて、昼食を食べてからしのぶを祝う2人。∞の方も、しのぶへと誕生日の贈り物を用意して来たようだった。

 

「早速開けるね!∞ちゃんのプレゼントは……これ、タオル?」

『水泳用のタオル。しのぶはよく使うと思ったから』

「∞ちゃんありがとう!今んな古うなって来とったけん、ちょうど良かった!嬉しかよ~!」

「やっぱり帝王坂さん、なんだかんだしのぶの事よく理解してるなあ」

 

∞が渡したのは、吸水性の高いセームタオルと呼ばれる水泳用タオルだ。水泳用具メーカーの物であるようで、性能には信頼があるだろう。

 

「では、俺からはこれを」

「先輩のは……あ、ネックレス?綺麗……」

「7月の誕生石付きで、しずくをイメージしたものがあったから選んでみた。…………どうかな?」

 

サキトが選んだアクセサリーは、小さめのルビーを使用したネックレスだ。水の雫をイメージしたホワイトゴールドの枠の中心に吊り下げられるように付けられたルビーが、控えめながらも美しく輝いている。

 

「その、着けさせて貰ってよかね?」

「ああ、それじゃあ……っと」

 

しのぶの後ろに回り、彼女の首にネックレスをつける。彼女が制服の下に着るスクール水着の紺と対照的な赤い宝石が、確かな存在感を放っていた。

 

『うん、似合ってるね』

「素敵やね……ありがとう、先輩!絶対、ずーっと大事にするけん!」

「いやあまあ、比較的安い買い物だったから……大人になったら、もっと良い物を贈るよ、きっと」

「それでも、先輩が真剣にうちに合うものを選んでくれた事が、ばり嬉しか……!」

 

サキトのプレゼント選びは、無事成功したようだった。この贈り物は、確かな絆として2人をより強く結びつける事だろう。

 

 

 

「∞ちゃんのお誕生日は来月8日やったよね?」

「そうだったか!帝王坂さんは何が欲しい?」

『Swi○ch2かな』

「それは俺も欲しいんだが?」

 

……サキトと∞の両者とも、未だに某新型ゲーム機の抽選販売は当選していなかったのであった。




というわけで、しのぶの誕生日を中心とした回でありました。久々のアンナさん登場や、誕生日が近いしゅうらさんとテルタカの話も盛り込みつつ。

冒頭部でアンナが使用するデッキはこちら、【巨大天門アルファディオス】になります。
【挿絵表示】

これまで通り天門での防御を固めつつ、王導アルファディオスからサファイア・ウィズダムを踏み倒して制圧する事も可能な進化系天門デッキです。
ブロッカーが増えるたび進化し続ける天門デッキには参りますな……。
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