デュエルマスター達は、新たなる戦いへ。
『……それで、急に同行者を増やしたいと?』
「すみません、どうしてもと言って聞いてくれなくて……」
──────2025年7月26日。
デュエルマスター全員の超獣世界への渡航を決行する日、総本部へ招集された6人……と、そこにもう1人。
「先輩はうちがそばで見とらなすぐ無茶するけん、一緒に行かせて欲しかばい!」
「こう言って聞かんのです……皆も説得を」
「すみません無理です」
「以前助けていただきましたので、わたくしからは少々言い難く……」
「まー、護守くんに関しては前例もあるみたいだしねえ?」
「また身を挺されては敵わん、互いに守り合うくらいの気構えの方が良いだろうな」
「私はノーコメントでーす」
「ちきしょう味方がいねえ!!」
しのぶに任務の事を事前に話したところ、当日の朝から家の前に張られて捕捉されてしまったのである。以前心配をかけた事から言わないという訳にも行かず、すぐに戻れるから大丈夫であるとサキトは伝えたのだが……それでは不十分だったらしい。
『モルナルクとアークゼオスに力を与えられた者か。であれば自衛のための力としては、十分ではあるだろうな』
『彼女が加わる事による計画の成否確率変動はは5%以内の誤差のみ。問題はそれほど無いと言っていいでしょう』
「……分かりました!しのぶ、なるべく俺から離れないでくれよ」
「わかっとーばい!」
『では、今回の計画について改めて説明しましょう』
クリスドが腕を翳すと、ホログラフモニターが表示される。そこに表示された映像は、サキト達は先週も見た物だ。
『諸君らに向かって貰うのは、幾つか確認された超獣世界の平行世界の一つ……こちらの世界では「新章世界」と称される世界だ』
『その中でも、自然文明に赴いて貰う。彼の地の女王と長老であれば、我らの名代であると伝えられれば話が進むだろう』
「問題はガイアハザードの連中だろうがな……」
「ガイアハザード……って何でしたっけ?」
「自然文明を守護する強力なクリーチャー達だ。《キングダム・オウ禍武斗》、《最強虫 ナゾまる》、《超機動罠 デンジャデオン》、《Q.Q.QX.》、この4体のグランセクトが自然文明を守護する戦士達であるとされている」
「ん、あー……大丈夫かね……」
「どうかされましたか、護守様?」
サキトが唸るような声を上げ、それを聞いたユウキが何事か尋ねる。サキトには、一つの懸念事項があった。
「去年9月頃、うちの学校の木に営巣していた蜂型クリーチャー達を排除したんだが……その時にQ.Q.QX.と交戦、撃破しているんだよな……大丈夫だろうか」
「そげん事あったと!?」
「ま、まあガイアハザードの任を離れて人間界に来てるかは怪しいだろうから別世界の個体かと……万一同一でもそれはそれで実力を認めさせた事にはなるんじゃないですかね」
「ともかく、4体のガイアハザードと腕試しする準備はしておいた方が良いってことだね。腕が鳴るよ」
目的地と今回の作戦目標は明示された。後は、肝心の行き来だ。
『諸君らデュエルマスターのデュエマフォン・アプリはアップデートされ、超獣世界への道となる超次元ホールを開くことが出来るのは知っての通りです』
『井星リュウが試験的に渡った際の記録から、更なる改良も済ませてある。複数人でも問題無いだろう。それと、帰還時間の指定を出来るようになっている』
「というと、こちらに戻って来れる時間を任意に設定できる感じですかー?」
『うむ。あちらで数日、数週間過ごす事となった場合も、こちらの世界には事前に指定した時刻に帰還出来るように機能を追加した』
「それはありがたいですね、学業や仕事と両立できる」
『とはいえ出発直後の時間は指定不可です。最低限、3時間以上は出発時刻とずらす必要があるでしょう』
『また、お前達が通れる超次元ホールの解放は1度行えば再使用に時間がかかる。再使用までの間隔は移動した世界次第で最長2日と予測されている』
日程感覚のズレや生活リズムに影響が出る可能性もあるが、それでもある程度時間の融通が利くようになるのは良い事だ。この機能があれば、安心してデュエルマスターの務めと日常生活を両立出来るだろう。
「さて、それでは出発するとしようか」
「現在時刻は11時、帰還時刻設定は3時間後とするか」
「設定は……えっと、こうだね」
6人がデュエマフォン・アプリを起動させ、時空移動の準備を始める。現在時刻から何時間後の時間に帰還するかの設定画面がすぐさま現れ、全員が設定を3時間後と設定する。
『それでは諸君、幸運を祈ります』
『超獣世界と人間世界双方の為、頼んだぞ』
「「「「「「了解!!」」」」」」
『Hyper dimension hole open. Dueltector summoning.』
デュエルマスター達の端末操作により、大きな超次元ホールが形成される。ここを通ればその先は──────クリーチャー達の世界。
未知なる世界への入り口に向けて、7人は飛び込んでゆく。
* * *
超次元ホールに飛び込んだ彼らは今、極彩色に輝く空間にいた。
「ここは?」
「俺は以前にもここを通った。超次元ホールから世界間を移動する際に通る、例えるならトンネルのようなものだ」
「えーと……あ、あれやね!タイムマシンで時間移動しとー時ん空間みたいな」
「まあ認識としては間違っていない……んですかね?」
某国民的漫画・アニメの描写に例えるしのぶ。実際、性質としては似たような物だろう。
「うえー、何だか変な感じ」
「この光景を見る時間はそう長くは無い。直に自然文明の領域に──────」
その時、デュエマフォンが激しく震え、警報を鳴らした。
「っ!?なに!?」
「警報ですわ!前方から……クリーチャー反応!」
「っ、しのぶ掴まれ!総員回避!」
「わぁっ!?」
突如、前方から巨大なクリーチャーが突っ込んで来た。無機的な物質で構成された蛇のような長い身体に、黒い右腕と白い左腕。人間の彫像のような顔を持つそのクリーチャーは……!
「《
「きゃぁぁあ!?」
「護守!」
サキトとしのぶがその腕に引っ掛けられ、他の5人から引き離される。意図があってのものか偶然か、このままでは分断される!
「まずい!助けないと……!」
「ちょい待って陽野先輩!2時の方向からもう1体!」
「嘘でしょ、また来るの!?」
金の石座に据えられた、緑色の球体が連なって人型を模しているような姿のクリーチャーが迫り来る。これもまた、サキトやリュウには見覚えのある敵だ。
「今度は《偽りの名 13》……E1の大ボスコンビか?」
「どう致しますか?」
「……奴1体であれば、護守ならば切り抜けられるだろう。到着地点がズレる可能性はあるが……お前達4人は先に行け。俺が13を始末する」
「大丈夫なの!?」
「俺の方が恐らく対処はし易いはずだ。この規模のクリーチャーはバウンスで送還も後々危険なはず、ここで排除する」
「……了解!先に行きます!」
テルタカ、ヨウコ、ユウキ、セイカの4人が空間の先へ向かう。そちらを向こうとした13を、リュウがデュエルフィールドを展開し内部へ閉じ込めた。
「奴はワールドブレイカー、決着はすぐに付くな……覚悟して貰おう」
『作戦遂行──────異分子を排除する』
一方、サキトはシャーロックに振り回されながら、しのぶの手を掴んでいた。
「しのぶ!大丈夫か……っ!」
「と、飛ばされそうばい……!」
「っ、そうだ、ドラゴン娘の姿になってくれ!それで尻尾を俺に巻き付けるんだ!」
「う、うんっ!」
しのぶの両腕がドラゴンのものになり、頭には角が、腰からは尾が生える。その長い尾をサキトに巻き付ける事で、身体をどうにか固定した。
シャーロックはサキト達を味方から引き離すと、大きく腕を振って投げ飛ばした。
「わぁああ!?」
「ぬぅおぉぁあ!!野郎ふざけた真似を……っ!しのぶ、まだ掴まっていてくれ!」
「どげんすると!?」
「こいつをここで排除する!単純なパワーではあちらが上だが……デュエルであればこちらに分がある!」
サキトもデッキを構え、交戦態勢に入る。次元の狭間で、デュエリストとアンノウンの戦いが始まった。
「「デュエル!!」」
* * *
「俺の先攻、ヴォゲンムをマナとし、《堕魔 ザンバリー》を召喚。登場時に手札から《罪無 ズゴブ垓/堕呪 バケドゥ》を捨てる」
『滅び去れ』
リュウは手始めにザンバリーを呼び出し、手札から魔道具を墓地へ送った。対する13は──────巨大な隕石を召喚し落として来る!
「チッ……ブロックはしない、シールド全損だ。ぐぅっ!」
《偽りの名 13》はパワー24000を誇る、ワールド・ブレイカー。しかし、それ以外の能力は持たない単純な力攻めを行うクリーチャーだ。破壊されたリュウのシールドには、トリガーは3枚含まれているが……。
「バウンスでは意味が無い、それにここでこいつを使用する意味は薄いか。トリガーは使用せず……俺のターン、ドローだ」
タイマンでの戦闘という状況を鑑み、ボックドゥ2枚とガ・リュザークの使用は取りやめ手札へと収めさせる。そして、引いた手札は……あまり良いとは言えなかった。
「仕方あるまい。ここは……ボックドゥをマナとし、ツインパクト呪文発動。《龍・獄・殺》!1枚ドローし……来たか、バレッドゥを墓地へ。そして、GR召喚を行う。来い、《堕魔 ドゥザイコGR》」
『ドゥザイコ!』
ドラグ・スザークのツインパクト呪文が放たれ、手札交換を行うと同時に超GRゾーンからサイコロ型の魔道具が場に現れる。墓地には魔道具呪文も送られ、儀式の準備は整った。
「手札にも墓地にも条件を満たすドルスザクは現在いない。だが──────こいつがあれば話は別だ。開け、無月の門・
バトルゾーンのザンバリーとドゥザイコGR、そして墓地のバケドゥとバレッドゥが紋様を描き、闇の魔法陣……無月の門が開かれた!
「バトルゾーンと墓地から2枚ずつ魔道具を指定し、デッキの下に送る事でこの呪文はコスト無しで唱える事が出来──────手札、墓地、そして……デッキから直接、魔道具4つと任意のドルスザクをバトルゾーンへ呼び出す!手札のゴンバドゥ、ボックドゥ、ジグス★ガルビ、バケドゥを陣とし──────」
開かれた無月の門から、白い炎が舞い上がる。それは鳳凰の姿を取り、巨大な13へと襲い掛かる!
「グリ・ドゥ・ザン・ゼーロ……現れ出でよ!《「無月」の頂 $スザーク$》!登場時能力により、偽りの名13を焼き尽くせ!!」
『キィィイイィイィィッ!!』
『馬鹿な……!?』
“ゼニス”の力を得しデ・スザーク、$スザーク$がその炎で根絶やしのアンノウンを燃やし尽くしてゆく。偽りの名13に、これを耐える術は無い。
リュウがあえてこの形態を使ったのは──────アンノウンを差し向けた何者かがいるという確信からであった。
「焼却終了──────俺達の仕事を妨害するとあれば、容赦はせん」
* * *
「俺のターン!《爆龍覇 グレンリベット/「爆流秘術、暴龍の大地!」》をマナチャージ、ターンエンド!」
『抵抗は無駄だ』
シャーロックの白い左腕が持つ、巨大な刃が振るわれる。パワー23000、Q・ブレイカーの巨体が振るう一撃をもしまともに浴びればひとたまりもない。
サキトのシールドが一撃で4枚破壊され、2人へ破片が襲い掛かって来る。
「くぅうっ!先輩、平気ね?」
「ああ、少しばかり耐えてくれよしのぶ……シールドトリガー発動!グレングラッサ、王道の革命ドギラゴン2体!」
モルトの娘を先頭に、守りの要たるドギラゴンが2体も戦場へ駆け付ける。グラッサはすぐさま、ドラグハートを超次元から呼び出す!
『行くよ、ガイサーガ!』
「更にドギラゴンの能力、それぞれマナを2枚ブーストし、マナゾーンからクリーチャーを1体手札へ戻す!カツキング、モルトDREAM、ハヤブサリュウ、グレンアイラの合計4枚追加し、モルトDREAMとグレンアイラを手札に!」
「ドギラゴンが来てくれたけん、これであんクリーチャーば消せりゃあ……!」
「いや、そうも行かん……シャーロックは『相手がクリーチャーを選ぶ時、これを選ぶことはできない。』という耐性を持っている。ドギラゴン超やドギラゴールデンの単体除去では奴を倒せん!」
「それじゃあどげんすると!?」
「暫くは耐える!俺のターン、ドロー!よし、モルトNEXTをマナチャージし、メンデルスゾーンを2連射!……よし、栄光ルピアが2枚、ドギラゴン超とドギラゴン閃がマナへ!」
『無力を知るがいい』
再びシャーロックの攻撃が迫り、最後のシールドが砕かれる。トリガーは無し、後はドギラゴンのブロックで耐えながら……勝機を待つ。
「俺のターン!よし、グレンアイラをマナに送り、モルトNEXTを召喚!登場時能力により──────《闘将銀河城 ハートバーン》をバトルゾーンへ!ターンエンド!」
『消え失せよ、異分子』
「攻撃をドギラゴンでブロック!っぐぅううぅ!」
猛烈な一撃から、ドギラゴンが2人を守り吹き飛ぶ。サキト側にはあまり猶予は無いが……。
「行くぞ、俺のターン!しのぶ、手を貸してくれ」
「え、うん!一緒に……引くばい!」
サキトとしのぶが右手を重ね、デッキに手を翳す。2人の手が光り、運命の切り札を引き寄せる。
「「ドローっ!」」
「よし来た、現在9マナ……このクリーチャーは龍マナ武装5により、火のドラゴンが5枚以上マナにあればコストを9へ軽減する!来てくれ……《夢双龍覇 モルトDREAM》!」
『行くぞぉッ!!』
このデッキのエースたる、モルトDREAMが姿を現す。そして彼が超次元より呼び出す龍こそが、勝利の鍵!
「モルトDREAMの登場時、コスト10以内の範囲で超次元からドラグハートを呼び出す!俺が呼ぶのはコスト2のプロトギガハートと──────コスト8の《爆熱王DX バトガイ銀河》!」
『バァトガイ……ギンガァッ!!』
「バトガイ銀河、勝利の為に頼む……シャーロックを攻撃!」
「せ、先輩!?パワーで負けとるよ!?」
「それは承知の上……!」
バトガイ銀河の力のみでは、超高パワーのシャーロックには届かない。しかし、目的はバトルでの勝利ではなく、バトガイ銀河の能力で──────。
「バトガイ銀河の攻撃時、1枚ドロー!その後、進化でないドラゴンを1体、手札から場に出す!虚無のアンノウンを、更なる無が飲み込む──────」
バトガイ銀河の後ろから、黒い翼が姿を現す。それは現状、彼のデッキにおける唯一のシャーロックに対する対抗策となるクリーチャー。
「《∞龍 ゲンムエンペラー》!!」
『…………!』
夢幻の無を操るキングマスター、そして彼ら2人にとっては縁深いドラゴン……ゲンムエンペラー!
「あれ、∞ちゃんのドラゴンね!?」
「1枚だが投入しておいたお陰でこいつへの対抗策になった……!バトガイ銀河は返り討ちにされるが、このまま行く!ゲンムエンペラーは、ハートバーンによりスピードアタッカーを得る!」
「「いっけぇぇっ!!」」
ゲンムエンペラーが翼を広げ、シャーロックへと突撃する。反撃をせんと振り翳した腕は、夢幻の無へと飲み込まれ消え失せて──────。
『我の身が、朽ちて──────!?』
『……………………!!』
黒翼が、一閃。シャーロックの蛇の如く伸びた身体が、一撃のもとに断ち切られた。
「やったね!」
「ああ、これで!」
「「完・全・決・着!!」」
決着は、付いた。しかし──────シャーロックを撃破した直後、2人の周囲が歪んでゆく。
「っ!?まずい、空間が不安定に──────!」
「護守!」
この異空間内が嵐の如く荒れ始める。このままでは合流は叶わない……!
「井星さん、そちらだけでも皆と先に!俺としのぶは2人でどうにかする!」
「しかしこの様子では、同じ世界へ降りれるかも分からんぞ!」
「半端に巻き込まれて井星さんだけ1人でどこかへ放り出されるよりマシだ!行ってくれ!」
「チ……ッ!死ぬなよ!!」
リュウが苦々しげな表情を浮かべながら、シャーロックが引き起こしたであろう歪みの中心から離れ皆が進んだ方へ向かってゆく。それを見届け、サキトはしのぶの手を取った。
「すまんしのぶ、早速ピンチに巻き込んだらしい」
「……きっと大丈夫ばい。今回も、先輩が一緒やけん」
「そう思いたいな……っ、どこかへ、飛ばされる──────」
そうして、サキトとしのぶは………………その空間から何処かへと消えた。
* * *
「うわぶっ!?」
「あうっ!こ、ここは?」
2人は、どこか荒野のような場所に放り出された。草木よりも岩場の方が多く、明らかに自然文明の風景では無い。
「いつつ……あんまり熱くはない、となると新章世界の火文明領域って訳でもなさそうだ」
「これからどげんしようか……あ、あそこしゃぃ人が集まっとーばい?」
しのぶが指さす先、そこには人と、そしてクリーチャーらしき者達が複数集まっていた。そこへ周囲から続々と人が集まりつつある。
「……一応、歩いてるのに話しかけてみるか。しのぶは念のため俺の後ろに。あー、ちょっとすまない」
「おや、見かけない格好ですねぇ?服以外は火文明系のヒューマノイドっぽいけど」
両目隠れ姿の、人に近い姿の少女……スノーフェアリーだろうか。その相手に話しかけると、こちらに興味を持ったようだった。
「旅の者なんだ。この辺は初めてでな。あっちの集まりは一体、何なんだ?」
「知らないんだ?もうすぐお祭り騒ぎが始まるんだよ。もう随分と開かれてなかったんだけど、急に開催されるって事で大陸中から腕に覚えのあるのが集まっているみたい」
「お祭り騒ぎ?」
「そうだよ。20年ぶりに開かれる、大陸の果てを目指す闘い…………」
「武闘レース『デュエル・マスターズ』がね!」
「「…………えぇぇえっ!?」」
彼らが漂流したのは、予期せぬ異世界。待つのは新たな出会いと冒険、そして──────巨悪との再戦。
新章の始まり──────GT篇・開幕!