『デュエル・マスターズ』。それは、現在確認されている超獣世界の一つで行われていた、この地に存在する全文明のクリーチャー達が入り乱れる武闘レースである。
大陸の果てにあるゴールに最初に辿り着いたものが優勝者となり、その者には望むものが与えられる……と、されてきた。
その裏に潜む陰謀を知り、悪しき者の野望を打ち破った1人の英雄がいた。それこそが、あのグレンモルトである。
「──────で、主催者不在になったデュエル・マスターズが、20年ぶりに行われる事になったと。ドラゴン・サーガ世界に来たの自体は嬉しいんだが、どうしたものか」
「そげ言やあ前に言いよったね、デュエマとおんなじ名前んレースがモルトしゃんの世界にあるって。何か不安ね?」
「レースの主催がなあ……関わると厄介な事になりそうなんだ」
無論、サキトはこの新たなレースが行われる事自体は知っていた。その物語の始まりが示唆されていたカードを、彼は所持しているからだ。そして、今回の主催者が如何に厄介で傍迷惑な存在かも。
「それで、皆に連絡はついたと?」
「音声通話は出来なかったけど、どうやらチャットメッセージは通じたみたいだ。向こうはどうにか無事あちらの自然文明に到着したらしい」
「そりゃ良かった!合流はすぐ出来ると?」
「いや、俺達もあちらも、時空間移動するには暫く時間がかかりそうだ。こちらで再使用出来るようになるまで過ごすしか無いな」
となれば当然、時間を潰す必要がある。最長で2日とヴォルジャアクは言っていたが、その間こちらで過ごさなくてはならない。
「そういえば、アレは呼び出せるのか?試して見るか……よっと」
「アレって、もしかして先輩んバイクん事?」
「ああ。あれも超次元ホールを使って転送されて来るから……お、開いた!」
2人の前に空間の穴が開き、サキトのデュエラッドがそこから現れる。DGA本部からの転送が通じるのは僥倖と言えた。
『サキト、しのぶ。ここは一体?少し懐かしい雰囲気はするけど』
「超獣世界だよ。それも、お前がいた世界と同一のな」
「あ、モルトしゃんとドギラゴンのいた世界がおんなじって事は、ゼッちゃんがおった世界もおんなじって事になるんやったね」
『なるほど。ランド大陸ではないけれど、あの世界にまたやって来たのね』
デュエマフォンに映し出されるレッドゾーンZの表情は、どこか感慨深そうに見えた。ただ、それよりも2人には重要な事がある。
「なあ、転送用の超次元ホールが使えるなら、俺達を乗せて戻れないか?」
『残念だけど、転送用の超次元ホールは人間や普通のクリーチャーが使うのに適していない。今の私ならともかく、生きた人間やクリーチャーのマナに反応してホールの展開が不安定になってしまうみたい』
「どこかで実験でもしたのかな……まあ分かった、なら仕方ない」
「それじゃあ結局、時間までこん世界におるしかなかね?」
「そうなるなあ、レースの見学でもして行くか……?」
『──────レース?』
レッドゾーンZの声色が変わった。それを聞いたサキトは、何か嫌な予感に駆られる。
「……なあ、まさかとは思うが」
『参加したい。参加しよう。参加するべき。大丈夫、私が全てを抜き去るから』
「勝つのはそれはそれで問題なんだよ!?あくまであの双子の様子が見たいんであってだな!」
『どうせこの武闘レースは観客側で追いかけるのは大変。それなら参加して様子を見続ける方が楽』
「それはそうかもしれんが……!」
「双子って、モルトしゃんの子供達?」
「ああ、姉のグラッサと弟のタレットがこの年のデュエル・マスターズに参加する事になってるはずなんだ」
グレングラッサとグレンタレット、モルトとアイラの間に生まれた双子の姉弟。彼女らが新たな物語を始める時に、サキト達は居合わせる事となったのだ。
「うーん、レースにかたったら、そん2人と知り合えるとかな?先輩は2人と仲良うなりたか?」
「まあそれは……出来ればな。もう1人の相棒の家族なわけだし」
「それなら出てみたっちゃ良かかもしれんばい。見守っとーだけじゃ退屈かもしれんしね」
「ううむ……分かった。一応参加するとしよう。ただ、大陸の果てを目指す規模のレースだ、1日や2日じゃ終わらない。超次元ホールの再使用が可能になったらその時点で離脱するからな」
『任せて。2人をスピードの向こう側に連れて行くから』
「本当に分かってんのかお前……」
ソニック・コマンドの性なのだろうか、レッドゾーンZはレースに勝利する気満々のようだった。厄介な事にならないよう、サキトは祈る他無かった。
「あ、あっちん参加者にそれっぽか人おらん?」
「お……確かにあの姿は間違いなさそうだ。早速声、を──────っ!?」
すぐにグラッサとタレットの姿自体は見つけた。しかし、その隣に…………極めて厄介な者を発見し、サキトは慌てて距離を取った。
「ちょ、先輩!?何で離るーと!?」
「余計なのが一緒にいるからだよ!なんで…………『ミロク』があの2人と一緒にいるんだ!」
そう、サキトが警戒していた厄介者…………《仙界一の天才 ミロク》が、グラッサとタレットと共にいたのであった。
* * *
『20年ぶりに開催された、ハゲしくアツかりし武闘レース、デュエェル・マスターズ!デュエマァ!!この大陸の果てにあるゴールに、最初に辿り着いたヤツが勝ち!!優勝者には
「んん〜、久々のこのナレーションというか実況、やはりたまらんなぁ」
「先輩!浸っとー場合やなかって!」
エントリーを済ませた後すぐに、武闘レースはスタートを切った。様々な文明から集まったクリーチャー達が入り乱れ、己の武を示すため闘いを繰り広げている。
サキトとしのぶも、開始から早々に彼らの攻撃を受けていた。サキトがデュエラッドを操り躱し、しのぶは水の手裏剣を生み出し放つ事で牽制してそれらを凌いでゆく。
『レースは既に白熱の様相を見せているぞ〜~!!前方集団の中でもまず目立っているのは、赤いバイクを駆る男と水の技を放つ少女の2人組!火文明と水文明の異色のコンビは、もしや別の大陸から来たソニック・コマンドの生き残りなのかァ〜~!?』
『ある意味間違っていない。ピースピース』
「お前がダブピしても誰にも見えないだろうに」
「ていうか先輩、良かと?あん2人から距離ば取ってばっかりだけど」
「ミロクが離れたタイミングで接触したいんだが……ええい、ずっと同行してやがるな!」
《仙界一の天才 ミロク》……超獣世界でも有数の技術者である、マッドサイエンティスト。生み出したアイテムの実験のために大勢を巻き込むわ、作った後放置したアイテムが世界を滅ぼしかけるわと厄介極まりない存在である。
今2人がいるドラゴン・サーガ世界でも、過去に平行世界から「サムライ」達をこちらの世界に呼び出しクロスギアの実験として第一回デュエル・マスターズを開催しており、その後こちらに取り残されたサムライ達が後のドラグナー達の祖先となっている。
そして、そのクロスギアの技術を得たことで、とある人物が作り出した特別な武器が──────。
「ともかく、付かず離れずを維持してあちらの様子を──────」
「あ、あれ!?先輩、あん2人ん姿が見えん!」
「何ぃ!?」
戦闘のゴタゴタで見失ったか──────と思った瞬間、突然デュエラッドが急停止した。
「むぎゅ!?せ、先輩なんで止まると!」
「いや、俺はブレーキを踏んじゃいない……っ、しのぶ!後輪を!」
「後輪?って、なんこれ!?」
2人が乗るデュエラッドの後輪に、光の縄が絡み付いている。これが動きを封じているのか。
「これは、タレットの魔術か!ということは!」
「せぇやぁぁぁああああっ!!」
裂帛の気合と共に、跳躍したグラッサが手にした大剣──────爆炎大剣ガイサーガを振り下ろして来る!
「…………っ!しのぶ、どうにかして逸らす!受け流せるか!?」
「やってみるばい!」
「よし、だぁぁりゃぁっ!!」
サキトが、瞬間的に一体化したドギラゴンの力を引き出し、ガイサーガの側面に回し蹴りを食らわせる。それによって逸れた剣筋を、しのぶがバイケンの得物、二振りの忍者刀で斜めに受け流し──────叩き付けられたガイサーガにより、地面が勢いよく爆ぜた。
「どわっぶ!?何て威力だ!」
「あいたた……でも、後輪が縄から外れたばい!」
「ならどうにか撒くっ!」
「あっ、待てぇっ!!」
デュエラッドを再発進させるが、グラッサ達はその脚で走って追い駆けて来る。慣れないオフロード走行に加え、度々放たれる拘束魔法を躱すため蛇行運転をしながらとはいえ、バイクに追い縋って来るとは!
「やっぱ人型でもクリーチャー、人間より身体能力がすげえ!」
「待てーっ!!ここでアンタたちに距離を開けられる訳にはいかないのよ!」
「あの人達、避けるのが上手いよ!中々捉えられない!」
「どげんすると!?また追いつかれそうばい!」
『11時の方向に100m進んで。撒くチャンスがある』
「っ、分かった!」
レッドゾーンZの案に乗り、そちらへと進路を向ける。この速度では100mもすぐであり、目標の地点に辿り着く。
『ここで一時停止して……しのぶ、彼女の足元に攻撃して』
「こうね!?」
「なんのぉっ!!」
しのぶが放った手裏剣を、グラッサは跳び上がって回避しガイサーガを振り上げる。再び強烈な一撃が来る!
『今、発進して!』
「おうっ!」
スロットルを捻り、デュエラッドが急発進する。空を切ったガイサーガが大地に叩きつけられ──────大穴が空いた。
「へ──────わぁぁぁぁああ!?」
『地形を探査したらこの地点に地下空洞があった。彼女の剣の威力なら崩落すると思ったけど、ビンゴ』
「先に言え!?下手な大怪我させる訳にも行かんっつうのに!!」
サキトは慌てて大穴へと飛び込んでゆく。自由落下では間に合わない、やむを得ず……ドギラゴンの力を纏う。
『王道の革命、ドギラゴンッ!掴まれ、グレングラッサ!!』
「へっ!?わ、分かった!」
翼で加速したサキトが、伸ばされたグラッサの手を掴み引き寄せる。どうにか抱き抱えるような形で、彼女とガイサーガを無事に受け止めた。
『セー……フっ』
「アンタ、なんでワタシを助けて……?」
『そもそも君達姉弟と戦いに来た訳じゃ無いんだ。機を見て話をしに──────』
助けた事で戦意は一旦消えた……と思った所で、周囲から、ずるり、と這いずるような音が響き。
『『『シャァァァァァ』』』
『「ぎゃ──────っ!?」』
……周囲の壁の穴から、多数のパラサイト・ワームが湧いて出た。この空洞が営巣地だったらしい。
「キショいっ!?うわぁぁあ来るな来るなぁっ!?」
『だあぁ暴れるなグラッサ!下手に動かれると狙いがズレるッ!!』
「穴ん底でなんが起こっとーっちゃろ……?」
「お姉ちゃ~ん、大丈夫~?」
……この後ワームの群れを焼き払ってから、サキト達とグラッサ達はなし崩し的に同行する事となるのであった。
サキトはミロクを嫌いとまではギリ行かずとも、あまり関わりたくないと考えています。コード・ベスティ登場時の言動がだいぶアレだったのも要因。