ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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グラッサとタレット、そしてミロクと接触したサキト達。こうなっては、ある程度身の上は話さざるを得ず……。


Ep.33:決闘者と『物語』の力

「──────アンタたち、父さんの知り合いだったの!?」

「2人が偶然俺達の世界に来た時にな。つい最近の事だし、期間もそう長くは無いけれど」

「半月もなかったばってん、色々話したっちゃんね?」

 

サキトとしのぶは、彼女らに身の上を明かし同行する事にした。こうして接触したからには、そのまま逃げるという訳にも行かない。であれば事情を話してしまった方が警戒も薄れるであろう。それに、一番厄介な相手には、下手な隠し事は恐らく通用しない。

 

「では改めて……護守サキトだ。付き合いはそう長くならないと思うが、よろしく頼む」

「うちは蒼斬しのぶ。よろしゅうね、3人とも!」

『私はゼッちゃん。今は2人の足をやってる』

「サキトさんにしのぶさん、ゼッちゃんだね。ボクとお姉ちゃんの事は、父さんから聞いてたんですか?」

「えっと、そげな訳やなくて……」

「アンタたち()()には、こっちの世界の歴史やクリーチャーについて良く知っている者も居る。そうでしょ?」

「…………やっぱり、どこかでそういう情報は仕入れていたのか。ミロク」

 

──────仙界一の天才、ミロク。超獣世界の中でも特殊な地、蒼狼の一族が世界を5文明に分割した際に、わずかに残った未分割の土地であるという「仙界」出身の存在である。

「クロスギア」「魔弾」等を始めとした多数の「魔道具」製作者であり、複数の平行世界を渡る事が可能な技術・能力を持っている。

 

「人間?」

「人間、あるいは“超獣使い”。この超獣世界の『外』に存在する世界に住んでいる者よ。生で見るのは久しぶりね~!」

「あー……五大龍神と同じ時代から生き続けてるなら、当時実際に見た事もあり得るのか」

「そげん時代から生きとーと!?」

「ま、それだけじゃなく“アカシック兄弟”の実験の話も聞いてるからね。中々興味深い話だったわよ!」

 

アカシック兄弟の実験──────『フォージ計画』。Vtuberグループ「にじさんじ」とのコラボパックで語られた、超獣世界の天才達が行った検証実験である。平たく言えば、超獣世界の外の存在……すなわち人間、そしてその中でもデュエマを扱うデュエリスト達が、超獣世界の歴史や運命を左右する法則に関わっているのではないかという仮説から始まったものだ。

 

「ま、この2人はただの人間じゃなくて、ドラゴンの力をその身体に宿してるみたいだけどね。それで、どうしてこの世界に来たわけ?」

「本当は別の世界に向かうはずだったんだが、トラブルでこっちに漂着したんだよ。再度世界間を移動するにはインターバルが要るから、こちらで色々と見ようという事にしたんだ。ガイサーガ……『ドラグハート』関連の顛末もこの目で見たかったとは思っていたし」

「ドラグハート…………って、お姉ちゃん」

「そう言えば出会った時にミロクも言ってたわね……おばあちゃんが語ってくれた、父さんの物語に出て来た伝説の武器」

 

グラッサは、幼い頃から何度も祖母に聞かされた、父親の物語に出て来る武器の話を思い出す。

少数の例外を除けば、ドラグハートは「デッドマン」という悪党が、自らの野望の為に「デュエル・マスターズ」優勝者の魂を封じ込めた武器である。

彼女達の父グレンモルトが相棒たるドラグハート、《銀河大剣 ガイハート》を手にした所から、英雄の物語は動き始めたのだ。

 

「でも、ドラグハートってグレンモルト(おとうさん)がデッドマンを倒したことで、魂が解放されて、この世から無くなったんじゃなかったっけ?」

「そうよ。だからそれは、()()なの」

「新型?」

「クリーチャーの魂ではなく、戦いの記録……“物語”から生み出した、()()()()()()()()()!この大天才ミロクちゃんが、()()()()()()()()()()()()()()、それがこのガイサーガなのよ!!」

 

ミロクは『龍幻郷』での研究により、命あるクリーチャーの肉体から魂を奪い生み出す方法ではなく、ドラゴンの“物語”や“記憶”からドラグハートを生み出す事に成功した。その成果がグラッサの手に渡ったガイサーガと、もう一振りのドラグハートである。

確かに、ドラグハートの秘密を探り、新たな手法でそれを生み出したミロクは天才的と言えよう。しかし…………。

 

「──────父さんの物語から、作った……?今の話ホント……?」

「っ!お姉ちゃん、やめて!」

「ちょっ、グラッサちゃん!」

 

グラッサがミロクの胸倉を掴みあげた。彼女の声色には、怒りが滲み出ている。ミロクは彼女が怒っている事は理解したが、不満そうに彼女の手を払った。

 

「べ、別にいいでしょ!()()()()()()()()!デッドマンみたいに魂を使った訳じゃないし……っ!?」

「こいつは……!」

「弄んだのか……!!父さんの“物語”を!」

 

そう言うと、グラッサはその場から駆け出し、近くの森へ入っていく。それを見て、サキトは少しばかり逡巡した後に駆け出した。

 

「~~~~っ、ええい!しのぶとレッドゾーンZは、2人を頼む!」

「へっ!?う、うん!!」

『ん、任せて』

 

グラッサを追いかけ、サキトも森へと入り込む。2人の姿が見えなくなると、ミロクは喚き出した。

 

「なによアレ~~~!!」

「お姉ちゃんの気持ちも分かってあげて」

「ハァ?」

「お姉ちゃんは、お父さんの物語が大好きだった。小さい頃から家を留守にする事が多かった両親に代わって、お祖母ちゃんが語ってくれる物語が、両親(ふたり)との思い出で」

「そういやあ、うちらと会うた時も子供達ば預けて旅に出たって言いよったね。寂しゅうはなかったと?」

「お祖母ちゃんも、それぞれの先生や師匠もいたからね。それに、誰かのために戦い続けてるお父さん達はボク達の誇りだよ」

 

2人が幼い頃からモルトとアイラは旅に出ていて、今もまたどこかで世界を救う戦いをしているのだろう。2人は常にそう信じている。

 

「そしてそれはいつしか、追い駆ける目標になった。グレンモルトの物語は、お姉ちゃんの夢そのものなんだよ」

「夢……」

「愛だね、お姉ちゃん……」

 

流石のミロクも少しばかり思う所はあったのか、グラッサが駆けて行った方をじっと見つめていた。

 

「ばってんやっぱり、家族ん前でお父しゃんの思い出ば道具ば作るとに使うた!って言うたとは、良うなかったんやなかな?」

『無神経』

「うっ、わ、分かったわよもう!」

 

 

* * *

 

 

「はぁ……」

 

森の中の一角、大きな木の根元にグラッサは座り込んでいた。怒りとショックのあまりに駆け出してきたものの、これからどうしようかと思い悩む。

そこに、草木を掻き分け近付く音が耳に入った。すわ他参加者の襲撃か、と身構えるが──────。

 

「はぁ、はぁ……単独行動は危ないぞ、グラッサ」

「アンタは……追っかけて来たの?」

「ああ、まあその、何だ…………」

 

姿を現したサキトだが、妙に歯切れが悪い。呻き頭を掻いた後、複雑そうな顔で話を切り出した。

 

「あー……すまん、ミロクにとか、色々言いたい事はあったんだが、この件に関しては俺もとやかく言えない気がして来てな」

「どういう事?」

「あいつが言ってたろう、“超獣使い”の話。俺もその一人……デュエリストなんだ」

 

サキトが、こちらへ持ってきたカードの中から1枚を取り出し、グラッサに投げ渡す。そこに描かれるのは、正に彼女の目標たる父の姿。

 

「ちょっと、これ何!?」

「俺達の世界には、超獣世界の歴史や物語、そこに存在した人物、クリーチャーの一部がこうしてカードとして描かれているんだ。これらを使い対戦したり、彼らの力を借りたり一時的に呼び出したりして、俺達の世界に入り込んだクリーチャー達と戦うのが俺の仕事なんだよ」

 

超獣世界の外、人間達の世界に関してはグラッサには良く分からない。しかし、こうして父の、グレンモルトの物語がそちらにも伝わっている事には、何か感じ入る物があった。

 

「それでまあ、当事者からすれば俺らがやっている事もミロクと大差ないのかもしれんなと思って…………なんというか、すまないな」

「…………ううん、何というか、少なくともアンタからは『敬意』みたいな物は感じられる。そこは大丈夫だと思うよ」

「本当か?そう言ってくれるのは助かるよ」

 

グラッサから見て、少なくともサキトの態度は信用に値して見えた。こうして素直に打ち明け謝意を表したこともその一因だろう。

 

「んでまあ、アイツのフォローというのもなんだが……今回の1件は、アイツにしてはまだ配慮がある方ではあるんだ」

「えぇ……他には一体何してんの」

「そりゃもう色々とトラブルの種を撒いてるんだよ。お陰で正直直接は会いたく無かったんだよなあ……例えば、あいつはとある世界で──────」

 

サキトがミロクのやらかした一例を話そうとした時…………近くで、轟音が鳴り響いた。

 

「っ、何だ!?」

「なに今の……!」

 

2人は轟音の元へと駆け出す。茂みに分け入り、木の合間を抜けると…………そこに、多くのクリーチャー達が倒れていた。

 

「これはッ!」

 

そして、彼らに背を向けるように何者かが立っていた。その誰かは、不気味な造形をした巨大な斧を担いでおり──────。

 

「あれは……《邪帝斧 デッドアックス》か!」

「その武器、サソリスの───」

 

「Q、サソリスの? A、これはわたしのものです」

 

青いマントを身に着け、頭に龍を模した兜を被ったその者は、可憐な声でそう答えた。

 

「女のクリーチャー……?」

「なぜならわたし以上に、彼と、いや、()()()()と共鳴できる者など、いないのですから」

「名乗りなさい!」

 

グラッサの問いに答え、彼女が振り向く。その姿は、サキトが知るあるクリーチャーに似ていた。

 

 

 

「A、わが名は『Q.E.Deux』。Q.E.D.の、意志を継ぐ者」




サキトにとって、既視感はあれど未知のクリーチャー──────Q.E.Deuxとの遭遇!
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