相対するは、未知のクリーチャーと、元凶の物語……真なる邪悪。
Q.E.Deuxと名乗った少女は、大斧を手にしたままグラッサ達を見据えている。その姿は、確かに彼のドラゴン、《龍素王 Q.E.D.》と同系統の意匠が見て取れる。
「───Q.E.D.?」
グラッサも当然、その名には聞き覚えがある。父の物語に出て来た、かつての水文明に存在したドラゴンであり、ドラグハートへと封じられたクリーチャーの1体だ。
「デュエプレで出て来た擬人化されたQ.E.D.に、似ているが違う……俺にも未知のクリーチャー……っ!」
全くもって未知の相手と対峙し、サキトはその身を震わせて…………。
「──────って、何で目を輝かせてんの!?」
「当然だろ!?過去にどのカードでも言及の無い、全く知らないクリーチャーと人類で初めて遭遇したんだ!俺ァワクワクすっぞ!!」
「サキト、アンタってなんか思ったより変な奴だね!?」
緊張感が一時途切れるが、対峙するQ.E.Deuxはグラッサが背負う剣の柄を見ると笑みを零す。
「───そう、あなたが
地を蹴る音と共に、青い龍の少女が跳躍する。華奢な手足からは考えられない程に、大斧を軽々と扱い振り下ろして来る!
『ちぃっ!?』
「くっ!?」
グラッサはガイサーガの刀身を盾とし、サキトはドギラゴン閃の鎧を纏い光盾で刃を受け止めた。
「Q、ミロクは、どこ?」
「ミロクはどこって……っ、その武器もドラグハート!?」
『気を付けろグラッサ、今のこいつは結構なパワーのはず……!』
「アンタも大事な“物語”を利用されたの!?実はワタシも同じで───」
グラッサが話を聞こうとしたところで、Q.E.Deuxは斧の構え方を変え、下から掬い上げるように振るう。その勢いでグラッサは大きく撥ね飛ばされ、サキトも一気に後退させられる。
「がっ!」
『グラッサ!!』
「Q、ミロクはどこ?
『質問に質問で返すなってか……悪いが、それは言えんな。どうせすぐ会えるだろうが』
サキト個人としては、ミロク一人を狙うならいっそ行かせても構わないとは思っていた。恨みを買う謂れは多々ある者であり、どうせそう簡単にはやられないはずだ。
しかし、今はしのぶ達にミロクとタレットを任せて来た身。ここで通せば確実に巻き添えを食うだろう。
「お姉ちゃん!」
「先輩、大丈夫!?」
『どうやら、接敵したみたい』
──────それに。派手に騒いだ以上、心配してあちらからここへやって来るだろう事も、十分に予想が出来た。
『やっぱりなぁ……!』
「ミロク……」
「っ!逃げて!!」
「えっ……?」
タレットとしのぶ、そしてミロクに気付き、Q.E.Deuxがそちらを向く。ようやく見つけた相手へ向かって、距離を詰めてゆく。
「いいから早く!」
「ミロクしゃん、うちん後ろに!」
しのぶがミロクを庇い割って入ろうとした所で──────彼女は、急に跪いた。
「ありがとう、ミロク──────やっと言えた……」
「はぇっ?」
『……なんて?』
直前まで剣呑な雰囲気だったQ.E.Deuxは、何故かミロクに感謝を伝えている。サキトもグラッサも理解が一瞬追いつかず、来たばかりのタレットとしのぶは猶更だ。
「ア、アンタもしかして……」
「
「ドラゴンのクローンなんになんで人型と!?」
「“禁断の星”撃破の際、ドラゴンがこの世界から滅びた影響です。欠けた部分をリキッド・ピープルやヒューマノイドのデータによって補い、結果としてわたしはこの姿になりました」
『なるほど……ドルマゲドンⅩの影響がこんなところに』
──────ドギラゴールデンとドルマゲドンⅩの最後のぶつかり合いの際、その余波によってか──────ドラゴン・サーガの世界から、ドラゴンは姿を消した。
その後十数年の時を経て、ドラゴン達は復活しつつあるようだが…………当時からクローンを用意していたのであれば、影響を免れる筈も無い。
「わたしの
Q.E.Deuxは、Q.E.D.の当時の記憶を思い起こしながら語る。彼女と、その共同研究者の話を。
「“かれ”はわたしと同じ、研究者でした。かれの夢はミロクを超えるような武器を生み出す事。わたしたちは研究者同士すぐに心を通じ合わせ、よき理解者となりました」
「愛だね」
『……そうかぁ?』
サキトには、その話に出て来る共同研究者に心当たりがあった。ただ、そのクリーチャーに対する印象は彼女が語る物とは異なるものであり──────。
「しかしそれも一時のこと。後に“ラプラスの魔”と呼ばれる実験。その最中に起きた事故によりわたしは肉体を失い、最初のドラグハートとなり……」
『《真理銃 エビデンス》だな』
「知っていたのですか。それを切っ掛けにかれは、今まで以上に研究に没頭するようになった。ドラグハートとなったわたしにも意識はあり、彼の様子を見ながら思っていました───ああ、もどかしい。なにもしてやれぬ、身動き1つとれないこの身体が。そして───憎い。かれを惑わす
彼女の、『ラプラスの魔』事件に対する認識は、そのようなものだったという事だ。問題はそこに、大きな誤解が存在する事だが──────。
先程のダメージからどうにか立ち直ったグラッサが、ガイサーガを杖代わりに立ち上がりながらQ.E.Deuxに問いかける。
「ちょっと待って!アンタさっきありがとうって───」
「
『……おい、やめろ!Q.E.D.の記憶を引き継いでいるなら、奴が
「かのじょの発明はわたしたちを、20年ぶりに再会させてくれたのです」
「ハッ!やめなさい!!」
ミロクとサキトが止めようとするも、彼女は斧頭から生えた頭蓋骨のような装飾に口付けし──────。
「龍 解!!!」
その力を、解き放った。自然のマナ、緑色の光が激しく放たれ周囲を照らす。
『く、ゼッちゃんは一旦あっちに戻っていろ。奴と交戦するのは今のお前は危険だ』
『……了解、2人とも気を付けて』
「なんが起こっとー!?」
「“龍解”。封じられたものを一時的に開放する、ドラグハートの秘技───!」
「ミロク!あの武器何から造ったの!?」
「……“物語”よ……ガイサーガが英雄の物語なら、デッドアックスは
光の中から現れたのは、二本の斧を携えた、顔全体が不気味な触手で覆われている異形の獣人。かつての姿と異なるのは、腹部に開いた丸い空洞。
「デッドマンよ!!」
『オォオォオオオオ!!!』
《真なる邪悪 ザ=デッドマン》!!
「龍解、完了!」
『出やがったか……!』
ドラグハート・クリーチャーとして蘇ったこのデッドマンのパワーは、15000に達している。ドギラゴンの力のみでは良くて互角と言ったところか。
「さあ、デッドマン。ひさしぶりに、力を見せて」
その言葉と共に、デッドマンとQ.E.Deuxがグラッサへと襲い掛かる。ガイサーガを狙うつもりだ!
「ぐぅっ!!1人でもやっかいだってのに……!」
『タレットとミロクは下がれ!しのぶ、牽制を!』
「任せて!」
「させない!」
デッドマンの膂力を前にグラッサとサキトは防戦を強いられる。しのぶが手裏剣で牽制するが、それをQ.E.Deuxは龍素のレーザー砲で的確に撃ち落としてゆく!
「この力!まさしくデッドマン!これで続けられる!昔のように!また2人で研究を……!!」
『っ、まずい!』
デッドマンの左腕が大きく振るわれようとする。その狙いを見て、サキトは跳躍し──────。
「っ、あ゛っ……!?」
『がっは……!』
無防備だった“Q.E.Deuxへの”攻撃を庇わんとして……無理な体制が祟り、斧の一撃で諸共に吹っ飛ばされ木に叩き付けられる。
『ぐ、ぅ……言わんこっちゃねえ……っ!』
「な……っ、どうしたのです、デッドマン!わたしです!Q.E.D.です!」
『よせ、Q.E.Deux……!』
「あなたは蘇ったのです!また2人で、夢を追いかけるため──────」
『ダレだオマエハ』
「……え?」
完全に虚を突かれた顔で、Q.E.Deuxの動きが止まる。心を許した相手の言葉が信じられずにいた。
「そいつはアンタが思ってるようなヤツじゃない」
「どげな事!?」
『奴は武器に龍の魂を封じるための触媒たるものを求めていた。それが、水文明が発見に至った……『龍素』なんだ。そして──────』
『───あぁ、思い出しタ。わたしの研究に利用しテ、用が済んだかラ……』
『
──────デッドマンの研究は、当初は“禁断”に対抗するための力を求めての研究であったと、超獣世界の歴史には記されている。
しかし、その禁断が振りまいた悪意により力と欲望に溺れたデッドマンは──────Q.E.D.による龍素の発見から程なくして、共に研究していた仲間を最初のドラグハートへと封印し、ドラグハートの製造技術を完全なる物とした。
そして、歴代のデュエル・マスターズ優勝者をその手にかけ、次々とドラグハートへと変えていく。
「──────」
信頼関係を築いていると思い込んでいたQ.E.D.は、その悪意を感じとることができなかった。そうして、嘲笑うデッドマンを見た
『消えロ』
凶刃がQ.E.Deuxへと振るわれる。迫る死の刃を受け止めたのは……炎纏う大剣だった。
「グラッサ……っ」
「あなた……Q、どうして!?」
「ちょっとだまってて!」
グラッサはガイサーガを正眼に構え、デッドマンと対峙する。その背は紛れもなく、新世代の英雄の卵たるもので。
「こっちは全然気持ちの整理がついてないってのに……次から次に面倒事に巻き込みやがって……!!このっ!!」
ガイサーガを振るいデッドマンを後退させる。その姿を見て、デッドマンは忌々し気に歯ぎしりを鳴らす。
『
「ワタシは
父の宿敵に啖呵を切るグラッサ。そして、これまでに学んできた剣術をもって挑みかかってゆく!
『中々言うじゃないか、グラッサ。ともかく俺も加勢し……っ!Q.E.Deux、伏せろ!』
「なっ!?」
まだショックから立ち直りきれていないQ.E.Deuxをサキトが伏せさせ──────直後に、彼らの頭上を斧が掠めた。
「今度はなに!?」
『懐かしい気配を感じて来てみれば……デッドマン様が蘇っているとはなァ!』
『こいつ、この忙しい時に……イメン=ブーゴ、いや、得物からしてイメン=ボアロか!』
割れた仮面を被った龍人、《覇王類虹色目 イメン=ボアロ》。20年前のデュエル・マスターズにて、当時自然文明の代表的な立ち位置にいた《龍覇 サソリス》に反旗を翻したドラグナー、《龍覇 イメン=ブーゴ》の強化体と言える立ち位置のクリーチャーだ。
叛逆から後の動向が不明であったが……こちらの世界では生き延びていたらしい。しかも口ぶりからして、言わば『デッドマン派閥』と言うべきグループを作っていたと見える。森の陰から、手下と見えるビーストフォークの獣人たちが距離を詰めて来る。
『デッドマン様を、そのドラグハートをこちらへ渡して貰おうかァ!』
『そういう訳には行くか……グラッサ!』
「何!?」
『こっちの連中による横槍は俺が防ぐ。そちらは任せたぞ!』
「簡単に言ってくれるわね!?」
文句は言うものの、その闘志に揺るぎは無い。むしろ、剣を握る手に更に力が入った。
『「行くぞッ!!」』
次回、VS・ザ=デッドマン、&イメン=ボアロ!