ドラゴン娘と決闘者   作:偽りの名 ニーサン

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強襲のキング・ロマノフ。その目的は、『魔導具』の回収と掌握。
そして、サキト達の前に立ちはだかる者は……。


Ep.36:『魔導具』と煉獄の魔神

『っつぅ……皆無事か!』

「う、うん、大丈夫ばい!」

 

突然の襲撃、咄嗟にサキトは王道の革命ドギラゴンの力を使い、しのぶとミロクを護る事には成功した。しかし、グラッサとタレットのを含む範囲まで障壁を展開する余裕は無く。

 

「く……っ?」

「Q、ケガはありませんか?」

「Q.E.Deux!!」

 

幸いにして、そちらはQ.E.Deuxが龍素によって防御障壁を展開、難を逃れたようだ。

 

「アンタ、なんで……!」

「A、あなたたちには()()がありますので。まあ、そもそもわが愛しのグラッサを護ることに、理由などいりませんがね」

「ミロクは!?」

『スルーか。まあいいが……ミロク?どこ行った!』

「あ、あそこ!」

 

サキトが庇ったはずのミロクがいない。見れば、彼女は前に出て、宙に浮かぶ敵──────キング・ロマノフを見上げ対峙していた。

 

『よもや、決闘者(キサマ)もこちらの世界に来ているとはな』

「蘇っていたのね、ロマノフ・アルファ……!」

「ロマノフ・アルファ?」

『奴の元の名だ。ナイトの一派閥、邪眼財閥の始祖としての名、なんだが……』

『その名は捨てた───』

 

ミロクの顔を見て、嘲笑うかのように顔を歪めるキング・ロマノフ。その手には、あの魔銃が握られている。

 

『この銃を覚えているか?オマエが生み出した魔導具、(マッド)(ロック)(チェスター)

 

──────ナイト達が手にする魔銃と魔弾、そして彼らの敵対勢力が扱う「クロスギア」。それらの魔導具を製作し提供したのが、他でもないミロクであるとされている。

彼らがぶつかり合った「戦国武闘会」にて、使用された魔道具がその後の超獣世界を大きく揺るがす出来事を起こしたのだが……それはまた別の話である。

ミロクは様々な魔導具を生み出しては現地のクリーチャーに使用させて実験をしたり、ある程度の成果が出た後それを放置してゆくという問題行動が多かった。

 

『一度はその力に飲まれ、“煉獄”に囚われた我であったが、“龍魂珠(アントマ・タン・ゲンド)”を取り込む事で、ついに力に打ち勝ち、蘇った。故に、こう名乗っている──────煉獄大帝、キング・ロマノフとな』

 

その力を誇示するかのように、キング・ロマノフは翼を広げる。ある意味でミロクとは縁のある相手と言えたが……グラッサ達、この世界の住人には全く未知の存在と言えよう。

 

「なんの話をしてるんだろ?」

「2人ん住む世界とは、別ん世界でん話ばしよーんごたーばい。うちも良う知らんばってん、先輩やったら……」

 

彼らが注視する中、キング・ロマノフが指を動かすと破壊されたデッドアックスが宙に浮かびあがり、奴の手元へと飛んで行く。

 

「デッドアックス!」

『今度は、他人の物語ごと利用できる物を作ったらしいな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『っ、新型ドラグハートを奪ってその技術をモノにする気か!!』

 

キング・ロマノフの目的は間違いなく、新たな技術による兵力の増強。超獣世界を支配せんとする野望のため、ミロクの生み出した技術を利用するつもりだ!

 

「させるかバーカ!!」

『発明品を放り出す悪癖も忘れてよく言う───』

『そこは全面的に同意だが、それをお前の好きにさせる訳にも行かん!手伝うぞミロク!!』

 

ミロクの周囲に浮遊する機械の腕が展開され、それらが全て異なる魔導具の武装を手にする。キング・ロマノフへと突撃するミロクを追い、サキトもドギラゴンの翼を広げ飛び出した。

対するキング・ロマノフは、魔銃を構え引き金に指を掛ける。

 

『見よ!!M・R・Cには、こういう使い方もあるのだ!!魔道具とは、使い手次第だ!!』

 

引き金を引くと、蒼く輝く巨大な剣が大量に召喚される。それは、先程森を消失させた物と同じ──────。

 

『《煉獄魔弾 エターナル・ソード》!!!』

「なっ!?」

『ナイト・マジックのエタソだと!?ふざけたもんを──────どわぁぁあぁあっ!!』

「ミロク!」

「先輩っ!!」

 

降り注ぐ英知と追撃の宝剣に、2人が撃墜される。ミロクは離れた所まで大きく吹き飛ばされ、サキトはグラッサ達の元へ墜落した。

 

『がっは……!』

「先輩、大丈夫!?しっかりして!」

『くそ、立て続けの戦闘は疲れるから一発で追い返したかったが……四の五の言ってられる場合じゃ無さそうだ!』

『さて、()()()もいただこうか』

 

キング・ロマノフが手を翳すと、先の奇襲でグラッサの手元から離れていたガイサーガが宙に浮かぶ。こちらも奪取するつもりか。

 

「ガイサーガ!!父さんの物語!!」

 

それを見て、グラッサが駆け出し取り戻そうとするが──────そこに、一つの影が割って入った。

 

「なっ……!」

 

外套を被り全身を覆い隠した何者かが、ガイサーガを奪取しグラッサを一瞥する。ガイサーガを握る右腕は黒と赤の手甲に覆われ、垣間見える顔面からは角のような物が伸びているのが分かる。

 

『ご苦労』

「……」

「クソっ……!!そいつの仲間かァ───ッ!!」

 

新たな敵は、キング・ロマノフの命でガイサーガの確保に来たらしい。グラッサが徒手で挑みかかるが、敵はガイサーガを地に突き刺すと、こちらも徒手空拳の構えで彼女を迎え撃った。

 

『あの構えは……!?』

「先輩、知っとーと!?」

『ああ、良く知ってる構えだ……しかし、俺の知る気配とは違う、一体何者だ!?』

 

外套の人物は、グラッサの拳撃を全ていなしてゆく。実力差というだけではない、あの動きは明らかに…………。

 

(なんなのコイツ───!!一発も当たらない!まるでワタシの動きが全部分かってるみたいに──────!!)

「がっ……!」

 

距離を詰めた瞬間、グラッサの顎を敵の足が蹴り上げた。追撃が来ると思われた所に、タレットの魔術が放たれ光の鎖が相手の身動きを封じた。

 

「いい()()です、義弟(タレット)!」

 

Q.E.Deuxの周囲に水のマナと龍素が溢れ出す。虚空から2門の巨大な砲門が展開され、自らの尾をアンカーとして地に固定した彼女が、動けない相手に狙いを定めた。

 

証明終了(おわり)です!龍素砲発射ァ!!!」

 

極太の光線砲が放たれ、謎の敵へと迫る。対する相手は、力を籠めると拘束を弾き飛ばし──────剣を手にする。

 

「! あの()()は!」

「うちも見た事ある!」

『間違いない、あれはモルトと同じ……爆流剣術!!』

「……()()()は、まさか……」

 

迫り来る光線に対し、見覚えのある構えを取る何者か。そしてガイサーガが振るわれると、龍素砲が真っ二つに斬り裂かれた。その一撃は紛れもなく……爆流剣術・紅蓮の太刀だ。

 

「そんな!あの人どうして爆流剣術が使えるの!?」

「モルトしゃんの同門の1人とか!?」

「いいえ、あの一撃はガイサーガと共鳴して放たれたもの!ですがグラッサ以上に、英雄の物語(ガイサーガ)と共鳴できる者など……!」

「1人だけいる……」

 

よろよろと立ち上がりながら、グラッサが呟く。彼女は、敵の正体へと思考が辿り着いた。

 

「爆流剣術を知り、ワタシたち以上に父さんを知る人。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

彼女らを見据えるその者が、外套を脱ぎ捨てる。茶色の長髪を伸ばすその女性の顔には、片目を覆い隠す仮面が被せられている。和の雰囲気を感じさせる服装は、この地に住まうヒューマノイドの一員である事を示していた。

 

「あなたは……()()()()()()!“グレンフルール”!!」

「おばっ……おばあちゃん!?いっちょんそうは見えんばい!?」

『人間型でもクリーチャー、俺達の世界の人間より老いるのは遅いのかもしれんが……そうかなるほど、リベットさんの妻にして、モルトの母親か!!』

 

彼女もまた、サキトにとって初めて遭遇したクリーチャー。存在自体は当然想定されてはいたが、こうして姿を見せるのは初めての事だ。よもや、敵として相まみえるとは。

 

『言ったであろう?魔道具は、使い手次第だと。“物語”より生み出された、新型ドラグハート。それを使いこなせるのは、その物語と“共鳴”できる者のみ。故に……()()したのだ。使()()()をな』

「おばあちゃん!!どうして……!」

「! あの“仮面”、Q.E.D.の記憶(データベース)に該当アリ!デッドマンが使用していた、()()()()()()()()()です」

『デストロキールの面と同じものか!』

 

本来であれば、キング・ロマノフに与するはずも無い人物であろうが……魔導具の力で操られているのならば、その限りでは無い。

 

「それなら、あの仮面を壊せば……!!」

「A、おそらく。義祖母(おばあ)ちゃんは助かるかと」

義祖母(おばあ)ちゃん言うな、行くよ!!」

『く……しのぶ、行けるか?』

「うちは大丈夫ばい!ばってん、先輩は……」

『なに、どうにかするまでだ……っ!』

 

グラッサ達は祖母とガイサーガを奪還すべく駆け出し、サキトもそれを追うために立ち上がる。しかし、事態はさらにサキトも知らない未来へ流れてゆく。

 

『勇猛さと無謀さを混同するのは、若者の特権だな。ならばこちらも全力で、擦り潰すとしよう』

 

キング・ロマノフの言葉に応えるように、グレンフルールがガイサーガを高く掲げる。

 

『まさか……!』

『龍・解!!』

 

ガイサーガが輝きを放ち、姿を変えて行く。解き放たれたのは、大剣を携えた白い鎧の巨龍──────!

 

『爆炎覇龍 ガイフレア!!!』

 

それを見た、グラッサの足が止まる。巨体のプレッシャーに圧倒されただけではない、それは──────。

 

『ば……っ!足を止めるなグラッサ!!』

『英雄奥義──────バーニング銀河!!!』

 

そこへ、ガイフレアの一撃が炸裂する。慌てて前に出たサキトが障壁を張るが、爆炎の奔流に押し流され後退を余儀なくされてしまう。衝撃と高熱で、庇った皆もダメージは免れない。

 

『っつぅ……!無事か、皆!』

「うちは大丈夫!グラッサちゃん達は!?」

「──────ワタシたちの冒険は、ここで終わりだ」

 

灼け付く地に倒れたグラッサが、弱気な声を漏らす。彼女にとっての憧れ、グレンモルトの物語が眼前に立ち塞がり……その心が挫かれかけていた。

 

「お姉ちゃん……」

「グラッサ……」

「勝てない……」

 

焦点の合わない目で涙を流すグラッサ。それを見たQ.E.Deuxは、意を決して立ち上がる。

 

「サキト。Q、あなたはまだ立てますか?」

『いい加減疲れてきたが、ちょっと待ってくれれば回復のアテはある……!』

「では、先に行きますよ」

 

Q.E.Deuxがガイフレアへ向かって駆け出す。時間を稼ぐ腹積もりだ!

 

「Q.E.Deux!」

「タレット!グラッサを頼みます!時間は、わたしが稼ぐ!!」

『させると思うか?決闘者にはここで消えて貰おう』

『っ、しのぶ!悪いが、キング・ロマノフ相手にどうにか時間を稼いでくれ!しのぶの力なら、恐らくやれるはずだ!!』

「! わかったばい!先輩がそう言うなら、うちも頑張る!!」

 

Q.E.Deuxとサキトへ魔銃の照準を向けたキング・ロマノフへ、しのぶが水流を撃ち出して牽制する。そのままサキト達から離れた位置まで駆け出し、攻撃を仕掛けていく。

 

『この辺に……よし、潰れてねえな。グラッサとタレットもこれを食べておけ』

「これは?」

『俺の世界のカレーパンだ!非常食として懐に入れておいて助かった!』

 

コンビニで売られている市販のカレーパンを3つ、サキトが懐から取り出す。袋を開けて食らいつくと、体力とマナがサキトの身に漲って来た。

 

『っしゃぁ!!腹が減ってちゃ気力も萎える、だからそれで少しでも補給しておけよ。俺はもう一丁仕事をして来るからな……!』

「ふ、2人とも何するってのよ……あれは父さん……英雄グレンモルトなのよ……?」

『いいや、あれはあくまで“物語”だ。生きている本物じゃあない以上やりようはある』

 

サキトは今一度ガイフレアとぶつかるつもりだ。突撃する前に、当人としては柄でもないと思いながら、グラッサに激励の言葉を掛ける。

 

『グラッサ、生きている者は常に成長するものだ。過去(昨日まで)の記録から生み出された物を、今を生きている者が越えられない道理は無い』

「サキト……」

『それに、()()()()()()()()は恐らくあれよりもっと強いぞ。モルトに挑戦する気なら、あれを乗り越えなきゃな』

「サキトさん、しのぶさんは大丈夫なの?」

『ああ、あれを見ろ』

 

サキトは、奮戦するしのぶの方を指す。彼女へ向けて、キング・ロマノフの魔弾、エターナル・ソードが放たれるが──────。

 

「最初は少しえずかったけど……そげなと、うちには効かんばい!」

『ほう、ドラゴンを宿す小娘如きがと思ったが……そのドラゴンの力、存外にやるではないか!』

 

エターナル・ソードを全てかわし、しのぶが巨大化させた水の手裏剣を撃ち込んでゆく。あれだけ大量に降り注ぐ剣を、彼女は全て軽々と避けてゆく!

 

「うそ……!」

『何事にも相性はある。見た所しのぶが身に宿すドラゴンの力は、あの魔弾型エタソには滅法強い!』

『ならば、別の魔弾はどうだ?』

「させんばい!ラフルル・ラブしゃん、力ば貸して!」

『Add new creature power.』

 

魔弾を切り替えようとしたところで、しのぶが姿を変える。預けていたカード……ラフルル・ラブの力を付与し、光の翼と白い衣装に身を包んだ。

そして、キング・ロマノフが引き金を引くも、M・R・Cは沈黙し魔弾を放たなくなる!

 

『ぬぅ!?』

「これでしばらく魔弾は出せんばい!」

『魔弾もあくまで呪文の一種、呪文封じで無力化出来るというわけだ。さて、それじゃあ俺もガイフレアを相手してくるぞ!!』

 

そして、炎の翼を燃え上がらせたサキトが、Q.E.Deuxと戦うガイフレアへと突進してゆく。残されたグラッサとタレットは……。

 

「時間を稼ぐって、ワタシたちだけ逃げたって……」

「逃げる時間じゃないよ」

「え?」

「ボクもあの人達も、お姉ちゃんを信じてる。稼いでるのは、()()()()()()()()()()だ」

 

サキトとQ.E.Deuxは、彼女が奮起出来ると信じている。挫けそうな心を立て直し立ち上がれる強さがあると確信している。

 

「ボクの夢は、愛の力の素晴らしさを世界に広めることなんだ!」

 

タレットは、姉へと自らの夢を、目標を語り出す。今の彼を突き動かす想いの源を。

 

「あはは、改めて言うとなんだかちょっとテレるね。……ボクに術を教えてくれたアリエース先生の意思を、たくさんの人に知ってほしいんだ!ねえ、お姉ちゃん───お姉ちゃんの夢はなに?」

「ワタシの……夢?」

 

その言葉に、グラッサは自身の原動力を思い出す。

 

(『なんたってワタシの夢は父さん───グレンモルトを──────』)

 

 

 

「うおおおおおおおぉ!!!」

 

 

 

グラッサが雄叫びを上げた。そうだ、彼女の夢は、父に憧れるだけではない。

 

「ありがとう、助かった」

「愛だよ、お姉ちゃん」

 

そして姉弟は、サキト達と戦うガイフレアを真っ直ぐに見据える。最早、迷いはない。

 

「今から。英雄(とうさん)超えるぞ!」




今回はキリがいいここまで……!
次回、新たな力が起動する!
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