是非本家の彼女達の活躍はYoutubeで見ていただければ……!
『ふんッ!』
「アブナイ!?」
先制で放たれた攻撃にゼオスが反応し、光剣の翼で5人を庇う。
「なんて卑怯なヤツや!」
『卑怯……?貴様らに何がわかる?ワタシは完全復活を遂げ、必ず復讐してやるのだ!』
「復讐……?」
『ワタシの邪魔をするなァッ!!』
モルナルクの一撃が5人を後退させる。不完全でも黒龍神の力は圧倒的だ。
『たかが5人で勝てるつもりだったのか?』
嗤う黒龍神。しかし、彼女達は笑顔を絶やさない。
『何を笑っている?』
「キサマには聞こえんのか?」
『なに?』
『頑張れ……頑張れ……!』
闇の中に、声が聞こえて来る。
外に残ったアオハル組の声が、懸命な生徒会の姿に心動かされた生徒達と教師の声が、彼女達が助けた人々と、クリーチャーの声まで。
彼女達がこの1か月の間、築き上げてきた絆が心を奮い立たせ、力を湧きあがらせてゆく。
「私たち、桜龍高校が相手ですッ!」
* * *
闇の中に倒れたサキトは、徐々に意識が遠のきつつあった。
(くそ………っ、最後の最後で、力になれない……ってのかっ)
目の前で戦う彼女達を見ながらも何も出来ない。手足の感覚が徐々に無くなっていく。
(動け、俺の手足っ!せめて足手纏いにならんよう、立ち上がらなきゃ……!)
両脚は動かず、両腕は鉛のように重い。そんな状態でも必死に力を振り絞るサキト。
そんな彼の頭の中に突如として、声が響いた。
『戦う力が欲しいか』
「っ、誰……だ?」
『戦う力が欲しいか』
「欲しい………っ、俺も、戦いたいっ」
その声に応えると目の前が真っ暗になり、何も無い闇の中に浮かんでいるような感覚に陥る。
そして、目の前に赤く輝く何かが現れた。
『何故戦いたい』
「闘って、勝って、そして守るべきものを守るため……今立って戦えなければ、死んでも生き残っても後悔が残る、そんなのは嫌だ……!」
『
「っ!?」
契約。契約とは何だ?ジョー編のマスター・クリーチャーとの契約とは、異なる物なのか。
疑問を口に出したかったが、サキトの身体に残された時間は少ない。
『しかし、契約は代償を伴う。君の命を削る事になるだろう。それでも───』
「やってくれ!」
『……良いのか?』
声の主は戸惑うも、サキトは即座に頷いた。
「今死ぬよりかは遥かにマシだ。それに、ここでやらなきゃ……後輩たちの頑張りは全て無駄になってしまう。俺は、彼女達の意志を守る力になりたい!」
『承知した。ならば───共に戦おう、サキト』
倒れたままのサキトの持つスマートフォンが光を放つ。空中に文字が描き出され、サキトの身体の周囲を回り始める。
“
“
“
『Contract armor awakening.』
* * *
『グォオオォオ!!』
「くっ!こいつ、モルナルクを守るつもりか!」
「ここまで来たのに、これじゃあ近付けへん!」
サキトとの戦闘中に召喚されていた悪魔龍グレイブモットが、その身を使いモルナルクへの道を阻む。この闇の中で強化されたグレイブモットはドラゴン娘達の攻撃でも中々倒れない。
ドーラに触れ、モルナルク共々負の感情から解き放つにはモルナルクへ近づかなければならないというのに。
「センパイを守りながらこのクリーチャーを倒して、モルナルクに近付かナイと……!」
「もー、やる事が多すぎるよー!?」
「──────いいや。たった今から、やる事は一つだ」
『ギァ………ッ!?』
二筋の剣閃が奔る。一瞬にして、グレイブモットの身体が4つに分かたれた。
『何!?』
「アラ?センパイ、どこに……」
分解されてゆく悪魔龍。その前に何者かが立っている。
身体には白と朱の鎧を纏い、背には蒼い外套を羽織る。
腰からは白い甲殻に覆われた尾が生え、手には七支刀と光の盾を携えていた。
「すまなかったな、不甲斐ない先輩が世話をかけた。もう足手纏いにはならん……!」
その姿は、彼の愛する切り札に似ていた。
「え………っ護守先輩!?その格好は!?」
「“契約”とやらで力を借りているらしい。短時間しか保ちそうにないが……生徒会の皆!俺が全力でサポートするから、彼女を救い出してくれッ!」
竜の騎士と呼ぶべき姿と化したサキトが、モルナルクの前に立つ!
『馬鹿な……!ワタシやあやつが行うチカラの付与ではない、クリーチャー自身の意志による同化契約だと!?』
「理屈は分からんが、ドギラゴンの声が聞こえて、俺は応えた……そうして気が付いたらこの姿になっていた」
『この世界に、クリーチャーとそこまで心を通わせる者が……残っているはずはないッ!!』
モルナルクの一撃が放たれる。サキトが左手に構えた盾は、闇の奔流を受け止め弾いてゆく。
単純なクリーチャーのパワーのみでは耐えきれないはずの攻撃を、ドラゴン娘達と同様に力を振り絞ってその身で耐えている。
更に、彼が右手に携えた刀を支えとして、闇の圧力を押し返し始めた!
「だぁらっしゃぁぁぁあああ!!」
『何だと!?』
「よし……今だ会長ッ!」
「はいっ!」
アーシュがサキトの、そしてドギラゴンの力に背を押されて駆け出す。
全力の一撃を放つモルナルクは、アーシュの動きへの対応が一拍遅れる。
「かいちょー頑張れっ!」
「ウチらがついてるで!」
「キサマを信じるぞ!」
「アーシュちゃんの邪魔はサセマセン!」
その一拍を、4人が永遠に変える。モルナルクの両腕と翼を押し返し、ついにアーシュの手が……
ドーラへと、触れた。
* * *
『おのれ……!』
アーシュがモルナルクの中へ吸い込まれるように消えると、徐々にその力が落ち始める。
「かいちょーが帰って来るまで頑張らなきゃ!」
「もう一息やで!」
「わらわたちの底力を見せてやる!」
「ミンナで交流会、成功サセテみせマス!」
「最後の踏ん張り時か……!」
その巨体を暴れ回らせるモルナルクに4人が組み付く。
彼女達を振り落とそうとする腕や翼の動きを、サキトが盾で弾き、いなしてゆく。
『貴様ら、離れろォッ!』
「っとぉ!!」
「ナンのこれしきネ!」
両腕で同時に掴みかかって来るのをゼオスとサキトが押し返す。
闇の力が、その源たる負の感情が薄まり均衡が生徒会側へ傾いている!
「ふぬぬぬぬぬぬ……!」
「見ろ!ヤツの中が!」
胴体に取り込まれていたドーラの身体が淡く光ると、アーシュと共に体外へ抜け出してゆく。
「帰って来た!」
「アーシュちゃん、ドーラちゃん……」
無事降り立った2人を見て5人は安堵する。アーシュによるドーラの説得は無事に成ったのだ。
「「「「おかえり!」」」」
「ただいま……!ほら、ドーラさんも!」
「う……ただいま」
モルナルクの身体の内から、光が漏れ出始める。闇の主である自身から生まれるそれにモルナルクは困惑していた。
依り代となったドーラと身も心も一つになっていたが故に、彼女の心境の変化はモルナルク自身へと大きな影響を及ぼしたのだ。
『この光は……ワタシを包むこの感情は何だ……?』
「それは友情の力じゃ」
唐突に、彼女達の背後から声がかけられる。見れば何やら手に大きな壺を持った校長がそこに立っていた。
「校長!?」
「やっと入って来れたわい」
『オマエは……!』
「やっぱり知り合い……というか、校長も同類って事か……」
「そこはいずれ語る時が来るじゃろうて」
校長に覚えがあるかのような反応を示すモルナルクを見てサキトは身震いする。
やはり彼も同格の五大龍神の1柱、という事になるのだろう。
「掌で転がしたつもりの彼女達は、逆境をチャンスに変えて成長した。邪魔者として彼女達から距離を置かせ排除せんとした彼は、なんとドラゴンとの絆によって再び立ち上がって来た」
『くぅ……!』
「おヌシが忌み嫌ってきた友情を育み、そして打ち勝ったのじゃ」
『馬鹿馬鹿しい……!そんな友情などワタシの闇で……!』
再び闇を収束させ、モルナルクが最後の攻撃を放とうとする。
しかしその前に、アーシュとドーラが戦闘態勢を解いたまま立つ。
「待ってくださいッ!」
「待てッ!」
「フタリトモ……!」
「これ以上、争う必要は無いと思います!」
「うぬも寂しかったのじゃろう」
『何だと……』
2人がモルナルクを説得し始める。
友を持てず孤独だった、そしてそこから1歩踏み出さんとする2人の言葉が、黒龍神の心に届き始める。
「モルナルクさん……私たちとお友達になりませんか?」
『……!ワタシはオマエたちを利用してきたんだぞ?』
「だとしても儂とうぬは似た者同士、どうしても放っておけんのじゃ」
「これからは、私たちがそばにいますから」
「うぬは、もう独りではない」
モルナルク自身から、暗闇の中に光が広がってゆく。
『そんな……ワタシの闇が……!』
モルナルクの叫びと共に、孤独の闇が……消えてゆく。
* * *
気付けば皆は元のグラウンドに戻り、雨は上がって晴れ渡る空が広がっていた。
「しばしの間、この壺の中から友情を学ぶがよい……この方がおヌシにとっても良かろう」
手のひらサイズまで小さくなったモルナルクを校長が手にしていた壺に入れる。
封印とまでは行かない以上、今後は彼女達とゆっくりと対話が出来る……はずだ。
「どうにか一件落着か……」
「あー……先輩はその、仕事的にアレで良かったん?半分見逃すような事になってもうたけど」
「まあ、一番大変な目に遭った2人がああ言ってるんだ、俺から何か言うのは野暮ってもんさ」
「いやほぼ死にかけだったではないか」
「それにあのレベルの大物が無害化したなら、下手に手を出すよりそのまま所在が分かってる方が良いだろうしな」
触らぬ神に祟りなし。神が実在しているとなればなおの事だ。
「おーい!みんなー!無事でホントに良かった!」
「お約束通り、新入生交流会は keep しましたわ」
『先輩も一緒に行ってたんだね』
「どうにか役には立てたよ……それで、だ」
「先輩?」
サキトの身体が、急にふらついた。
「やせ我慢もげん……かい……ぁぅっ」
「せんぱーい!?」
* * *
「っは!?」
「おぉ、起きたようじゃの」
目を覚ますと、サキトは保健室のベッドに寝かされていた。ベッドの横には校長の姿もあった。
「体力の消耗で眠っただけのようじゃったからの。ワシが保健室へ運んでおいたわい」
「それはどうも……皆は?」
「無事に新入生歓迎会を楽しんでおるよ。今は昼休憩直前というところかのう」
外からはざわめきと歓声が聞こえて来る。予定通り開かれた新入生歓迎会は、成功していると言えるだろう。
「そりゃ何よりです。表でも裏でも身体張った甲斐はありました」
「さて、せっかくの機会じゃ。君と話をしようと思うのじゃが」
「えー……校長の真の姿絡みとかですか?」
『それに絡めて、オマエの使う道具に関してだな』
「うぉ!?そ、そこに壺置いてあるんですか」
ベッドの下からモルナルクの声が聞こえ仰天するサキト。例の壺もここに持って来ているとは。
「君が身にまとう例の鎧じゃがの、実物も直に見て確信に至ったわい」
『ワタシ達の同輩……「炎龍神」が手掛けたものの改造であろうな』
「炎龍神……ヴォルジャアクか」
「うむ。そしてプログラムの製作元は、『海龍神』によるものじゃろう」
炎龍神ヴォルジャアク、そして海龍神クリスド。いずれもモルナルクと同格の五大龍神、火文明と水文明の祖であった。
『あやつらもそれぞれ考えがあって、人間に力を与え干渉しているのだろう』
「しかし、ヴォルジャアクの生み出す武具を誰もが扱えるよう改良を依頼しておったが、それがヒトが扱えるものに発展しておるとはのう」
「その言いよう、やっぱ校長は『天龍神』って事でいいんですね」
「おおっと、バレてしまったわい」
校長は笑顔を崩さぬまま。バレたところで彼一人ならどうとでもなるという自信の表れであろうか。
「それで、モルナルクがこうなった以上俺の仕事は規模縮小って事になるんですかね?」
『いや、ワタシが放った物ではないクリーチャーも大勢いる。それに……あの「ゾーン」とやらにはワタシは一切関与しておらぬ』
「なんですと?」
「クリーチャーが起こす事件も、ゾーンと言う異変も。まだまだ収まる事は無いじゃろうな」
黒龍神が原因でないのならば、ゾーンの発生原因は一体何なのか。単なる自然発生なのか、引き起こす黒幕が別にいるのか。
何にせよ、まだまだDGAとしての活動に一区切りとは行かなさそうであった。
「さて、もう動けるようなら、君も新入生歓迎会を楽しんできなさい」
「もういいんですか?」
「うむ、折角の学校行事じゃからの。生徒会の皆も君の部の仲間達も心配しておったし、顔を出して来るとよい」
「分かりました。それじゃあ、お世話になりました!」
ベッド脇に置かれた手荷物を纏めると、サキトは駆け出してゆく。
『契約については聞かぬのか?』
「当人もあの場で唐突に起こった事だろうからのう。後でDGAとやらからも説明があるはず、それを彼が受けてからでも遅くはあるまいて」
「ふん……」
* * *
「悪い、遅くなった!」
『先輩、ようやく来たね。皆待ってるよ』
「あ、お身体は大丈夫ですか?」
「ゆっくり寝て調子も良いから、午後からはしっかり働かせて貰うよ」
ゲーム部の出し物はアナログゲームの拡大版……校内各所を回るすごろくのような物だ。
大サイコロの用意にチェックポイントでのお題の管理、やる事はたっぷりある。
「もう次の新入生も並んでるし、食事済ませたらお願いしまーす」
「おうよ、任せろ!」
かくして、新入生歓迎会という一つの大きなイベントは無事開催され、好評を博して終わった。
激動の1か月であったと言えるが、これはまだ始まりに過ぎない。
彼ら、彼女らに待つ、人生でも一際濃い1年は、まだ始まったばかり──────
サキトの行った契約、それによる変身についてはキャラクターと世界観設定に更新を入れ解説いたします。
作中での解説もまた後日、本編の更新時に。