定員の倍以上参加希望者がいたので0回戦目(参加者抽選)に通るかどうかが一番緊張しましたね……。
サキト達がドラゴン・サーガ世界にいた間、新章世界へ向かったDGAのデュエルマスター達は……。
「──────到着したか」
サキトとしのぶがドラゴン・サーガ世界へ漂着していた頃。5人のデュエルマスター達は、無事に新章世界の第2層目…………自然文明の領域へと到着していた。
巨大な草花が立ち並ぶ森の中、開いた超次元ホールから飛び出した5人は地面へと着地する。
「全員いるか!」
「こちら陽野テルタカ、身体に異常なし、所持品も問題無いです」
「相模野ヨウコ、右に同じだよ!」
「光明院ユウキ、支障ありません」
「水原セイカ、バッチリでーす!」
全員怪我や不調も無く、所持品の紛失なども無い。不意の襲撃はあったが、サキトの状況のみが心配であるが…………。
「護守であれば無事だと信じよう。現在地はどの辺りだ?」
「コンパスは……あちゃー、効かないですね」
「それじゃあちょっと、あたしが木の上を見てみるね」
「出来るんですか?」
「たぶんこっちの世界なら……召喚!《
「あっおい待て!!」
ヨウコが手にしたカードから、自然文明のクリーチャー《とこしえの超人》を召喚する。その巨体は森から頭を出し、遥か先まで見回す事が出来た。
とこしえの超人に持ち上げられた彼女は、前方にクリーチャー達が住まう巨木や、そんな木々の上についた巨大な蕾……そしてその傍に立つ建造物を見つける。
「前方20キロ先に、おっきな花の蕾と城を発見!たぶんあれが目的地かな?」
「自然文明の中心、フェアリー城だな……確かに、そこが目的地なんだが…………」
がさがさと、草葉を掻き分けて来る音がする。それらは確実に、彼らの方へ近づいていた。
「……何者かが迫って参りますね」
「当然だ……同じ文明の者とはいえ、急に何もない所にクリーチャーが姿を現せば……」
『お、お前達、何者だーっ!!』
人参や茄子が組み合わさった馬に乗った、ドングリ頭の騎士のようなクリーチャーが現れ、彼らに剣を向けて来る。グランセクトのクリーチャー、《一番隊 ルグンドド》だろう。
「……そりゃ警戒するだろう」
「あ、あはは……ごめん」
「あー…………とりあえず、俺達は怪しい者じゃないです……はい」
ひとまず手を上げる5人。まあ、ある意味手っ取り早く接触を出来た……と言えようか?
* * *
『……「外の世界」から来たですとぉ~~~~?』
「ああ、人間の世界にいる五大龍神、ヴォルジャアクとクリスドの指示でこちらに来た。女王陛下にお目通りを……とは流石に行かないだろうな、まずは言伝を願いたい」
自然文明の村に連れて来られた5人。そこへやってきた少し上位のクリーチャー、《ボントボルト》に何者か問われたため、代表して受け答えしていたリュウはあっさりと話す。彼らの目的を考えれば、下手に隠さず話してしまった方が手っ取り早い。
『そ、そういう訳にも……』
「無理なら上司……ガイアハザードの面々でも構わん。ともかく、敵対の意思は無い事は伝えておく」
『む、むむむむむ……仕方がありません、オウ禍武斗様に報告だけさせていただきます!』
そう言うと、ボントボルトは背に生えたトンボの翅を広げ飛び去って行った。残された彼らを、住人たちは遠巻きに見続けている。
「冷静な受け答え、頼もしいですわね」
「我々の側に疚しい事は無いからな。堂々と話せば基本は問題あるまい」
「とはいえ、来てくれますかね?」
「んー、自然文明を守護する面々であれば、自分達の名を出された時点でこっちに来るとは思いますけどねー。『相手が自分たちの事を知っている』って情報だけでも、注意を払うには十分ですし」
少なくとも、1人か2人はこちらの様子を見に来るはずだ。そうして待機していると、彼らの端末に受信音が鳴る。
「メッセージ?……あ、護守さんから!」
「ご無事なようで何よりですわね。ですが、通話では無くメッセージですか」
「こっちの世界には来れて無さそうだな。ふむ……DS世界に漂着?」
「別の超獣世界に落ちてましたか。とはいえドラゴン・サーガの世界なら……まあ、時系列次第ですが揉め事は少ない方ですかね?」
ドラゴン・サーガの世界は、侵略者及び禁断との戦いを終えた後は比較的安定している世界……だった。今現在、サキト達がキング・ロマノフの襲撃に巻き込まれそうな事など、この時点では彼らは知る由も無い。
「あ、こっちに何か飛んでくるよ!」
「あれは……でっかいカブトムシと蜂ですかね?」
「上に何か乗っているな。となると……あの2体か」
村の中心にある広場に降り立つ2体の巨大昆虫。その背から、ここまでに会った者より強大な、2体のクリーチャーが降りて来た。
『我が名は
「ああ、我々は人間の世界から来た。現在我々の世界には、度々クリーチャー達が侵入して事件を起こしている。故に、そちらの代表と会い協力関係を築きたい」
『協力だと?』
「ああ。現在は侵入したクリーチャーの撃破や強制送還を行っているが、場当たり的な対処を今後も続けていくばかりでは立ち行かん。故に各文明の代表と協力し、クリーチャーの人間世界への渡航、もしくは偶発的な転移を抑える態勢を築きたい」
『ふむ……』
その言葉に、Q.Q.QX.は少しばかり思う所があったようだが……隣に立つカブトムシのクリーチャーが一歩前に出て来た。
『お前達の言いたい事は分かった!が、おいそれと女王様の所へ見知らぬ連中を通す訳には行かないな!』
「それでは、どうなさるのですか?」
『俺様、キングダム・オウ禍武斗とQ.Q.QX.を相手に力を見せてみろ!』
「やっぱりそうなるよねー……」
『見た所、お前達はそれぞれ各文明の力を扱うようだな!ならば、自然の力をまずは俺様に見せてみるといい!』
「Q.Q.QX.の相手は?」
『どちらでも構わん。相応しい力を示せるのであればな』
「それじゃあ、私が行ってみますね!お相手よろしくお願いします!」
『自信はあるようだ……では、行くぞ』
オウ禍武斗とヨウコ、Q.Q.QX.とセイカが対峙する。これが自然文明との協力の第一歩……互いを知るための、戦いが始まる。
「「デュエル!!」」
* * *
「まずはあたしのターン!《アシスター・サイネリア》をマナに置いて、《とこしえの超人》を1マナで召喚!」
『ほう、大した大きさのクリーチャーじゃないか!』
「大きいだけじゃないよ!この子がいる限り、手札以外から出るクリーチャーは代わりにマナゾーンへ行く!つまり……マナからクリーチャーを呼び出せる轟破天九十九語は、使えない!」
『なるほど、俺様達の名だけでなく力を既に知っているというのは本当らしいな』
巨大なとこしえの超人が場に現れ、その腕を広げる。だが、その巨体にもキングダム・オウ禍武斗は怯むことは無い。
『ならばその巨人から倒すまでよ!行くぞ!』
キングダム・オウ禍武斗がその角を振り翳し突進する──────対クリーチャー戦において、1ターン目であれば、相手も「マッハファイター」の能力が使えるようだ!
『オオォオォオオォオ……』
『喰らえい!
オウ禍武斗の角がとこしえの超人を貫き、同時に発生した衝撃波が──────ヨウコのシールドを全て砕く!
破天九語…………キングダム・オウ禍武斗がクリーチャーとの戦闘で勝った際、相手のシールドを9枚破壊するという豪快な能力。デュエルにおいて初期シールド枚数は5枚、シールド増加に特化したデッキでもなければ、簡単に全てのシールドは砕け散る!
「うあっちゃ!?」
『見たか!俺様のこの威力!』
「流石だね……けど、逆転の目はまだあるみたいだよ!5枚のシールドの中から……シールドトリガーは、3枚!」
『ぬう、反撃か!?』
打ち砕かれたシールドの中から、3つの呪文が解放される。これによって、ヨウコの運命は決まる。
「発動するのは、《フェアリー・ライフ》が2枚に……ツインパクト呪文、《
マナへと送られたカードは、1枚目が《トラップの地版》。そして2枚目が……!
「来てくれたね、ありがとう!《輝跡の大地》によって、マナからクリーチャーを呼び出し、相手とバトルさせる!呼び出すのは、あたしの相棒!《首領竜 ゴルファンタジスタ》!」
『俺様の出番だなぁ!!』
ゴルフクラブを手にした緑色の龍が現れる。そのパワーは、オウ禍武斗の力を超えている!
『むう!?あれは、異世界のドラゴンか──────!』
『ファー!!喰らいやがれぇ!』
「腕試しだから、加減はしてね!!」
ゴルファンタジスタがクラブを振り回し、巨大な鉄球を打ち出す。その一撃を受け、キングダム・オウ禍武斗は大きくダメージを受け……決着は付いた。
『ぬうう……俺様のパワーを超えて来るとはな。良かろう、まずはお前の力を認める!』
「やった!さっすがあたしの相棒!!」
『俺様達の、勝利のホールインワン!』
* * *
「それじゃあ私のターン、行きますよ!《猛菌 キューティ-2》をマナにして、《フラワー・ハート》を召喚!」
『壁となるクリーチャーか……行くぞ!我が一撃を受けて見よ!』
「それじゃあ、フラワー・ハートでブロック!」
花弁を思わせるような形をしたサイバー・ウイルスがQ.Q.QX.の一撃を防ぐ。簡単に破壊されてしまうが、フラワー・ハートはただではやられない。
「フラワー・ハートが墓地に置かれた時、直前にバトルゾーンにいたため私は1枚ドロー!」
『なるほど、我が一撃を防ぎつつ手を増やすか。中々に堅実だな』
「いやー、Q.Q.QX.さんの毒を喰らっちゃうと私のデッキはけっこうしんどくて!なのでまずは防がせて貰いました!」
──────Q.Q.QX.の能力は、ブレイクしたシールドを手札に加えさせず、そのカードを相手のデッキの上から4枚目に横向きに差し込む。そして、その横向きのカードを引いた時……相手はデュエルに敗北する。言わば、遅効性の毒だ。ドローを多用する水文明のデッキにとっては厳しい相手となる。
更に、Q.Q.QX.が盤面にいる限り、相手は自身の山札を見たり、順番を入れ替えたりできないという能力……これにより、彼女が得意とするメクレイドも封じられる。
『相性不利でありながら、私に挑むというのか?』
「はい!これをひっくり返してこそ、力の証明と言えるでしょう?私のターン、ドロー!マクスハトをマナにして、《アストラル・ハート》を召喚!登場時能力で3枚ドロー!そして進化せずに場に出たので、手札から3枚をデッキの上に好きな順番で戻します!」
可愛らしい見た目のサイバー・ウイルスが場に現れ、セイカの手札を交換する。その内容を見て、彼女は笑みを浮かべた。
「オッケー!これでターン終了!」
『ならば、今度は防げまい!受けよ、
Q.Q.QX.の一撃がシールドを1枚貫き──────破壊されず、セイカのデッキへと送られる。それは、五感を蝕む毒であり、徐々にセイカの身をも蝕んでゆく。
「っつぅ……行きますよ、私のターン、ドロー!《アイドル・ハート》をマナにして、ターン終了!」
『打つ手が無いか?ならば、もう1撃!5.S.D.!』
「あう……っ!」
2発目の攻撃が再びシールドを山札に送り、毒が撃ち込まれる。彼女の聴覚と視覚がぼやけてくる。
『降参するのならば、命までは取らぬ。どうする?』
「いえいえ、私も決闘者ですから……簡単にはあきらめません、よ!私のターン……ドロー!」
セイカが山札からカードを引く。もう彼女に残された猶予は少ない、2ターン後には仕込まれた毒が発揮される。
「……《挑戦の決闘》をマナにして、ターン終了!」
『覚悟は認めよう。しかし、それだけで勝てると思うな!三度、5.S.D.!』
これで3枚のシールドが失われ、デッキへと送られた。シールドトリガーを発動させず、じわじわと追いつめてゆくその能力は恐るべきものだ。
「私のターン……ドロー!」
触覚も麻痺して来た中、それでも彼女はカードを引き──────最後の1ターン。ここで、彼女は……勝ちに行く。
「……来ましたよ!私のマナゾーンとバトルゾーンに、サイバー種族のカードが合計5枚!よって、3マナで私の相棒が降臨します!」
『何!?』
「手札のマクスハト、~墓碑に刻まれし魔弾の名~、アストラル・ハートを進化元に……手札
水のマナが渦巻き、セイカの周囲に激流を起こす。そこから現れるのは、新たなる水星の力を持つ不死鳥!
「《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》!」
『ハァァアァッ!!』
『不死鳥…………フェニックスか!』
「マーキュリー・スターフォージで、Q.Q.QX.さんを攻撃!」
マーキュリー・スターフォージから青い光線が放たれる。強力な毒を持つ代わりに比較的パワーが低いQ.Q.QX.は、それに耐えられず──────撃墜された。
『くは…………っ!なるほど、見事な戦いだった……その力を認めよう』
「あうっ!?ふー、はー…………っ、あ!身体が治ってる!」
地に墜ちたQ.Q.QX.が、毒を中和する成分を込めた針をセイカへと刺す。それにより、彼女に回っていた毒は即座に消え去った。
『あちらも決着が付いているようだな…………貴殿らは十分に力を示した。案内しよう』
「やったぁ!ありがとうございます!」
* * *
『──────貴方達が、外の世界から来たという人達ですね?』
自然文明の女王、妖精のような姿の彼女は案内された5人を快く出迎えた。ガイアハザードのうち2人がその力を認めたとなれば、拒む理由は存在しない。
「お初にお目にかかる。我々はDGA、人間の世界から来た、クリーチャーを使役し戦う者だ」
『ええ、話は聞きました。それに…………貴方が以前、こちらの世界へ来ていた事は知っています』
「え、本当ですか?」
彼女は既に、リュウが一度この新章世界へ訪れていた事を知っていたらしい。特殊な能力によるものか、それとも単に闇文明のクリーチャー達から情報を得たのか。
『驚きました。あの《零龍》を従え、その力を鬼の歴史からこちらの世界を守るため使う者がいるとは』
『何ですと!?』
『あの零龍を……!』
謁見の間に集っていた自然文明のクリーチャー達が驚愕する。かつて自然文明の領域まで侵攻して来た零龍の脅威を目の当たりにしている者達にとって、『闇王』以外にあのドラゴンを従えた者がいるというのは予想も出来なかったようだ。
「井星様が従えた事で、零龍は今の所超獣世界にも人間の世界にも被害は齎しておりません。ですから……」
『ええ、分かっています。貴方がたが無為な争いを好まない、「守護者」と呼べる立場である事は』
「それでは?」
『私の名において、ここに誓いましょう。──────我々は、貴方がたに協力します。その代わりに、1つこちらにも協力を願いたい事がありますが』
「というと、何か厄介事でもあるのかな?」
『はい。危急のものではありませんが…………近いうちに、必ず起こるであろう戦いに協力して頂きたいのです』
女王は一度目を閉じる。そして再び目を開けると、強い意志を込めた視線で彼らを見た。
『鬼の歴史──────鬼札王国による、再度の侵攻の時が近い。そう、私達は予期しています』
「──────っ!!」
超獣世界を揺るがす、大いなる戦い。その時が、確実に近付いて来ていた。
かくして自然文明との同盟を結ぶ事には成功しました。
しかし、同時に新たな戦いへと彼らは誘われる事に…………。