夏休みはこれからが本番、彼らは旅行へと赴く事に…………。
「ふふふ…………ふふふふふ…………」
「せ、先輩、笑いが不気味ばい」
──────2025年8月2日。
サキトとしのぶ、そして∞を加えた3人は、東京駅へ向かう電車の中にいた。この日は少々特別な用事で、彼女らと共に出かけているのだが……。
『先輩はどうしたの?』
「なんか昨日ん夜からずっとこげん調子んごたって……」
「ふふふふふ…………まさか使える日が来るとはな……!」
『先輩、そろそろ着くよ』
「っは!?っと、すまんすまん」
テンションのおかしいサキトに呼びかけ、電車を降りる準備をする。次は終点、目的地である東京駅だ。
「降りたら八重洲南口で皆と待ち合わせだったな」
「もう皆来とーかな?」
『待ち合わせの時間より早めだから、まだ揃ってはいないはず』
「楽しみやね、皆で旅行なんて!」
そう、今日から彼らは、夏休みの思い出作りとして──────2泊3日の、旅行の予定を組んでいた。
* * *
話は、2か月前に遡る。
「夏休みに、旅行ですか?」
「そーそー!皆で海に行こうよ!」
始まりは、メガから生徒会の皆への提案だった。今年の夏もまた暑くなることが予想された、6月の頭。街やテーマパークなどに行くだけでは新鮮味が無いと、彼女は旅行の計画を立てようとしていたのだ。
「朕たち5人でデスか?」
「んー、折角だしもっと誘っても良いかも?ゼオちもかいちょーも、誘いたい人いるでしょ?」
「えっ!?わ、私はその……!」
「ソレなら、トウリ君を誘わせて貰いマス!」
「躊躇いが無い!?」
「そこで迷いが無いのがある意味キサマらしいな……それでそちらはどうするのだ?」
ゼオスが先んじてトウリを誘うと言った事で、アーシュも踏み込んだ提案をし易くはなった。少し逡巡した後に、頭に浮かんだ誘いたい人々を挙げる。
「その、それじゃあ赤坂君と……それに、出来れば水晶ちゃんと、ドーラさんも……!」
「お、その2人も誘うん?うちはええと思うで」
「まあ、男子1人では居づらいだろうからもう1人誘うというのは構わんだろうよ」
「お友達は多い方が良いしねー。それじゃあ2人にも後で連絡しよっか!」
「……しかし、何か嫌な予感がするのはわらわだけか?」
そうして、始まった旅行の計画であったが…………。
「その、もしよければ、アオハル組の皆も誘って構わぬか?」
「お姉ちゃんたちも、一緒に行けたら来て欲しいな!」
「それじゃあ、折角だし──────」
「それなら先輩も──────」
──────そうして、全員の日程が奇跡的に一致した、8月2日から4日という日程で宿を取ったのであったが──────。
* * *
「…………うーん、これはもうちょっとした団体旅行ですね」
「その、お友達を誘ったらどんどん一緒に行く人数が膨れ上がって…………」
生徒会組、アオハル組、Jack-Potメンバー。加えてトウリ、ハヤト、サキト、テルタカ…………総勢19名。それが、今回の旅行の参加メンバーであった。
桜龍高校のドラゴン娘達、その大半が集まっていた。…………
「実はういちゃそも誘ったんだけど、岡山のおじいちゃんおばあちゃん家に帰省するらしくて日取りが合わなくってさー」
「20人だった可能性もあったの?」
「人数的にはいっそそっちの方がキリが良かったかもしれねーな…………」
「まあ、彼女は向こうにも友人がいたでしょうし、仕方ないかと。それで…………」
サキトの方を見るトウリ。全員集合した今でも、彼は浮かれた雰囲気を放ち続けている。
「もしかして、昨日からずっとあんな調子で?」
「うん、どげんしたら良かろう……?」
「まあそのうち落ち着くかと。今日の行先と昨日の発表のダブルパンチで浮かれてる状態だと思うんで」
「テルタカさんと蟠龍くんは理由が分かるの?」
「いちおーオレも分かります。先輩にとっちゃ朗報ですからね……プレ殿からの解禁は」
前日の、8月1日。デュエマのプレイヤー達が注目する公式からの発表があった──────半年に一度の、殿堂レギュレーション改訂である。
環境で猛威を振るったカードが投入可能枚数を減らされたり、使用を禁止されたり、あるいは制限を解除される事となる。
今回は一気に8種のカードが禁止もしくは枚数制限を課された。そして同時に……1枚のカードが、温泉の底から浮上して来たのである。
「バトライ刃がオンセン・サバキから解放されて、今の彼のデッキはより出力が上がったものね?」
「ザーナさん!つまりその……先輩のデッキが強くなって、クリーチャーとより戦いやすくなったって事ですか?」
「簡単に言えばそうね。……ちなみにワタシは、温泉に沈められた子がいるからデッキを組み直す事になったわ……」
「おおう……そういや井星さんも、今回殿堂行きになったクリーチャーが2種いたから大変そうだな」
《der'Zen Mondo/♪必殺で つわものどもが 夢の跡》のプレミアム殿堂、《逆転の影ガレック》と《死神覇王 ブラックXENARCH》の殿堂送りは、ザーナ及びリュウの使用するデッキに多大なダメージを与える事となった。対してサキトは、《爆熱剣 バトライ刃》……強力なドラグハートが再び使用できるようになり、そのテンションは最高潮だ。
『行先に関しては、どうして?』
「ああ、そっちはデュエマの登場人物に所縁があって──────」
「皆ー!そろそろバス停に並ぶでしよー!!」
「待ち人数によっては
「おっと、これはいかん。行きましょう!」
「おー!!」
東京駅、八重洲南口。そこから彼女らは高速バスに乗り、今回泊まる海沿いのホテルと海水浴場を目指す。
行先は、千葉県南房総市
* * *
『うえぇ……』
「∞ちゃん、しっかり!」
「だ、大丈夫……?」
「全く、バス内でゲームをしておるからだぞ!」
約3時間をかけ、目的地に到着した彼女ら。その道中において、既に1名が乗り物酔いでグロッキーになっていた。
「大丈夫か帝王坂さん。ほい、酔い止め」
『ありがとう先輩……』
「今から今年の修学旅行が思いやられるでしね……」
「水晶たちは、今年は京都だっけ」
「そうです!お姉ちゃん達と一緒じゃないから不安だけど……」
2年生は秋に修学旅行へ行く事となる。今年は京都へ行くらしく、古都で様々な史跡に触れる事となるだろう。ともあれそれは、先の話だ。
彼女達はホテルのフロントに大きな荷物を預け、早速海へと向かう。
「今日は快晴で何よりだな」
「流石に暑いですけどね……」
男性陣は一様にサーフパンツ着用で、上には半袖のラッシュガードを着たりパーカーを羽織ったりというスタイルだ。着替えに時間がかかるであろう女性陣を待ちつつ少しばかり雑談する。
「あっちはいつ行く?」
「明日の午後とかがいいんじゃないですかね、午前は鴨川シーワールドでしょ?」
「しかしまあこの人数で大丈夫でしょうか……レンタカー借りる訳にも行きませんし」
「そこはまあ任せて欲しい。そちらはもう手配はしてある」
「お、それは何より」
1日目は海水浴を楽しみ、2日目は近くにある水族館「鴨川シーワールド」へ向かう予定だ。ただそれとは別にその後で、彼らDGA組のみで赴こうと考えている場所があった。
「ところで皆さん、どんな水着を着て来るんでしょうかね」
「楽しみにしていてと言われて、全く知らんなあ」
「先輩は楽しみですか?」
「んー、しのぶの場合水着姿自体は見慣れてはいるから──────」
「お待たせー!」
そこに、着替えを終えた女性陣がやって来た。ビキニタイプであったり、セパレートタイプであったりパレオを着けていたり……皆華やかな装いであった。
「せ、先輩……どげんね?」
「ありがとう…………」
「何が!?」
ビキニ姿のしのぶに感想を聞かれ、何故か感謝の言葉を口にするサキト。余程好みに刺さったのであろう。
「しかし、いつものより泳ぎにくそうだけど良いのか?」
「先輩、プールは泳ぐところ、海は遊ぶところばい。だから、これでよか」
「なるほど。それならその格好が良いのか。じゃあ今日は、たっぷり遊ぼう」
「ところで、そっちの皆さんは日焼け止めは塗り終わってる?」
「あー、そういやまだかな」
女性陣は更衣室で既に塗って来たのであろう、日焼け止めクリームについて尋ねられると、彼らはそちらについてすっかり失念していた。
「じゃあトウリ君、朕が塗ってあげるワ!」
「……なんでそれで自身にクリーム塗ってるんですか?」
「大丈夫、朕にマカセテ?」
「ちょっ……困ります!!困ります!!ゼオスさん!!困ります!!あーっ!!困ります!!ゼオスさん!!あーっ!!」
「……アレどうします?」
「ほっとけ。俺らも塗ってくぞ」
「完全に何かのプレイみたいな絵面だから、適当なとこで止めてやっておいてください」
「あ、ああ…………」
しばしトウリとゼオスがすったもんだした後、日焼け止めを塗り終えた彼らは海岸へ赴く。
「それじゃ、今日は折角の海水浴!目いっぱい楽しもう!」
『おーっ!!』
そうして、彼ら彼女らにとって──────色々な意味で忘れられない、3日間の旅行が幕を開ける!
というわけで、今回の舞台は千葉県南房総──────シラハマの海!
また新たな出来事が、決闘者達を待つ!